ドル円見通し 米9月雇用統計通過で反騰するも中東情勢緊迫で下落(23/10/10)

リスク回避的な円買いで9日深夜に148.50円を割り込み、10日早朝には148.44円まで安値を切り下げた。

ドル円見通し 米9月雇用統計通過で反騰するも中東情勢緊迫で下落(23/10/10)

ドル円見通し 米9月雇用統計通過で反騰するも中東情勢緊迫で下落

〇ドル円、10/6は米雇用統計の結果を受け発表後に149.50まで上昇、買い一巡後も149円台を維持
〇しかし中東情勢緊迫によりリスク回避的な円買いが入り、10/9朝148.97へ下落
〇その後は149円台序盤で揉み合うも深夜に148.50割り込み、10/10早朝に148.44まで安値を切り下げる
〇米9月雇用統計は予想以上の就業者増、労働市場の堅調さ示す
〇米10年債利回り10/6は総じて上昇するも10/9は低下、ダウ・ナスダックは続伸
〇149円以下での推移中は一段安警戒とし、148.25円割れからは147円台後半への下落を想定する
〇149円超えから続伸する場合は149.50試しとするが、149.30以上は反落警戒とする

【概況】

ドル円は9月21日未明の米FOMC(予想通りに利上げ見送り、年内あと1回の利上げと利上げ期間長期化を示唆)と9月22日の日銀金融政策決定会合(金融緩和継続)を挟んだ乱高下を通過して上昇基調を維持し、10月3日夜に150.15円を付けて昨年10月21日高値151.94円以来の150円台に到達したが、150円を超えた直後の数分間に売りの連鎖で147.41円まで急落、直ぐに149.32円まで戻す波乱となった。
10月4日から5日朝にかけては149円を挟んだ揉み合いで落ち着いていたが、10月6日の米9月雇用統計を控えて上昇してきた米長期債利回りが低下したことで5日午前に148.25円へ下落し、いったん149円台まで戻したところから6日未明には148.27円まで下げるなど円高感がやや優勢の局面も見られた。

10月6日は米雇用統計前のドル買いで149円まで戻していたが、21時半発表の米9月雇用統計で非農業部門就業者数が予想を大幅に超えたことで発表後には149.50円まで上昇、買い一巡後も149円台を維持していた。
しかし、イスラエルとパレスチナ・ハマスとの戦闘激化に対するリスク回避的な円買いが入ったために9日朝に148.97円へ下落し、その後は149円台序盤で揉み合っていたが、リスク回避的な円買いで9日深夜に148.50円を割り込み、10日早朝には148.44円まで安値を切り下げた。

中東情勢についてはイスラエル側の被害がここ数十年で最大規模とされ、イスラエルの死者が400人を超え、双方合わせて1600人以上の死者が発生している。レバノンの武装勢力ヒズボラによるイスラエルへの攻撃とイスラエル側からの報復等もあり、新たな中東戦争へと発展しかねないとの懸念も出ているが、今のところは状況推移を見守ろうと為替市場の反応も慎重な印象だ。
10月9日はジェファーソンFRB副議長が「追加利上げは慎重に進めることが可能」と述べ、ダラス連銀のローガン総裁が「追加利上げの必要性は低下するかもしれない」と述べるなど、FRB高官によるややハト派的な発言が相次いだこともドル円の下落要因となった。

【米9月雇用統計 予想以上の就業者増に】

10月6日に米労働省が発表した9月雇用統計では景気動向を反映するものとして最も注目されている非農業部門就業者数が前月比33万6000人増となり、8月の22.7万人増及び市場予想の17.0万人増を大幅に上回った。10月4日に発表済のADPによる民間の非農業部門就業者数が8月の18.0万人増に対して9月が8.9万人増だったこともあり、予想の倍となる増加がサプライズとなった。7月分についても当初の15.7万人増から23.6万人増に、8月も当初の18.7万人増から22.7万人増へ上方修正されたことも労働市場の堅調さを示すものとなった。
失業率は3.8%で8月と変わらず、インフレ指標である平均時給の伸び率は前月比が0.2%で8月と変わらなかったが市場予想の0.3%を下回り、前年同月比は4.2%で8月及び市場予想の4.3%を下回った。賃上げによるインフレ高進への圧力はやや後退したものの高水準を維持している。

雇用増は過去8か月で最大となり、米FRBに対しては追加利上げ圧力を増す内容だったために米長期債利回りは総じて上昇したが、米金利先物市場における年内の追加利上げ確率は11月で29%、12月までで42%でまだ5割を切っており、市場としてはこのまま頭打ちとなり2024年も利上げされた状況がしばらく続くとの見方が優勢のようだ。
今週は10月11日夜に米9月PPI(生産者物価指数)、12日に9月米CPI(消費者物価指数)、13日に9月輸出入物価指数とインフレ指標の発表が続く。12日未明にFOMC議事録公開があるが、地区連銀総裁らの発言も相次ぎ、利上げ打ち止めか追加利上げの確率が5割を超えるのかによりドル円の強弱も試されるところだ。

【米10年債利回りは2007年以来の高水準更新から低下、ダウは続伸】

10月6日の米長期債利回りは総じて上昇したが、米国市場休場中の10月9日は10年債利回りが時間外取引で低下した。
長期金利指標の10年債利回りは10月6日に前日比0.09%上昇の4.81%で終了したが、一時は4.89%をつけて2007年以来の高水準を更新後、低下した。9日の時間外取引では中東情勢による債券買い・利回り低下で一時4.62%まで低下した。30年債利回りの10月6日は前日比0.08%上昇の4.97%で終了したが、一時は5.05%まで急伸してから低下した。利上げに敏感な2年債利回りは前日比0.07%上昇の5.09%で終了した。一時は5.15%をつけたが、9月21日に5.20%をつけて2006年7月以来の最高とした後は高値更新へ進めずに高止まりの様相となっている。

NYダウは10月6日に前日比288.01ドル高と上昇した。米雇用統計後の米長期債利回り上昇を見て一時は270ドル安まで下げたが、米長期債利回りが上昇一巡から低下したことで買い戻された。9日午前にダウ先物が中東情勢により急落したがその後は長期金利低下を見て持ち直し、9日のNYダウは前日比197.07ドル高と続伸し、ナスダック総合指数も10月6日に前日比211.51ポイント高、9日に52.90ポイント高と続伸した。
米空母の派遣や米国人死亡などの報道もあり中東情勢がさらに深刻化するようだとリスク回避の債券買い・株売りへ進みかねないが、今のところは米国経済への影響は限定的とやや楽観している印象だ。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は10月6日の米雇用統計直後に149.50円へ上昇したものの中東情勢緊迫化により148.50円割れへ失速しているため、現状は戻り一巡から下落期に入っているところと思われる。10月3日夜の乱高下が落ち着いた後の10月5日午前安値を基準として目先の安値形成期を12日午前にかけて想定するが、149円台回復からは上昇再開の可能性を優先する。

60分足の一目均衡表では10月6日夜への上昇で遅行スパンが好転して先行スパンも上抜いたが、9日夜からの下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも再び転落している。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、先行スパンから転落しているうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とし、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は10月6日夜に70ポイントを超えたものの9日夜に30ポイント割れへ急低下した。その後も40ポイント以下での推移が続いているのでまだ下落余地ありとみる。強気転換には50ポイント超えから続伸するような上昇が必要と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、148.25円を下値支持線、149.00円を上値抵抗線とする。
(2)149円以下での推移中は一段安警戒とし、148.25円割れからは147円台後半(147.95円から147.50円台)への下落を想定する。147.70円以下は反騰注意とするが、148.50円以下での推移なら11日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)148.70円超えからは149円試しとするが149円手前は戻り売りにつかまりやすいとみる。149円超えから続伸する場合は149.50円試しとするが149.30円以上は反落警戒とする。

【当面の予定】

10/10(火)
休場 台湾
14:00 (日) 9月 景気ウオッチャー・現状判断DI (8月 53.6、予想 53.2)
14:00 (日) 9月 景気ウオッチャー・先行判断DI (8月 51.4、予想 51.3)
22:00 (米) ペルリFRBエコノミスト、講演
22:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、対話集会
23:00 (米) 8月 卸売売上高 前月比 (7月 0.8%)
26:00 (米) 財務省3年債入札
26:00 (米) ウォラーFRB理事、講演
28:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、タウンホール会合

10/11(水)
G20財務相・中銀総裁会議(10/13まで)
07:00 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演
10:00 (豪) ケント豪中銀総裁補、講演
15:00 (独) 9月 CPI(消費者物価指数)改定値 前月比 (速報 0.3%、予想 0.3%)
15:00 (独) 9月 CPI(消費者物価指数)改定値 前年同月比 (速報 4.5%、予想 4.5%)
17:15 (米) ボウマンFRB理事、講演
21:30 (米) 9月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (8月 0.7%、予想 0.3%)
21:30 (米) 9月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (8月 1.6%、予想 1.6%)
21:30 (米) 9月 コアPPI 前月比 (8月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 9月 コアPPI 前年同月比 (8月 2.2%、予想 2.3%)

25:15 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
26:00 (米) 財務省10年債入札
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨9月19-20日開催分
29:30 (米) コリンズ・ボストン連銀総裁、講演



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