来週の為替相場見通し:『政府・日銀の介入効果は限定的。日米金利差がドル円の支援材料』(10/7朝)

ドル円は政府・日銀による介入観測を背景に、年初来高値更新後に急落する動きとなりましたが、結果として下値の堅さを再認識する1週間となりました。

来週の為替相場見通し:『政府・日銀の介入効果は限定的。日米金利差がドル円の支援材料』(10/7朝)

『政府・日銀の介入効果は限定的。日米金利差がドル円の支援材料』

〇今週のドル円、米JOLTS雇用動態調査受け年初来高値150.16まで急伸後に147.33まで急落
〇政府・日銀によるサプライズ的な介入観測広がる
〇週末にかけては、雇用統計をはじめとする米指標の好調に149円台前半に持ち直して越週
〇ユーロドル、欧州指標好調、ECB関係者のタカ派発言に週末にかけ一時1.0600まで急伸
〇ドル円、主要テクニカルポイントの上で推移、強い買いシグナルも継続、地合い極めて強い
〇ファンダメンタルズも日米金融政策の方向性の違いと米経済の力強さがドル円を支持
〇日米金利差拡大に沿ったドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):148.00ー151.00、(EURUSD):1.0400−1.0700

今週のレビュー(10/2−10/6)

<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初149.48で寄り付いた後、(1)米政府機関の閉鎖回避に伴う安堵感や、(2)日銀短観・大企業製造業DI(結果+9、予想+6、前回+5)の市場予想を上回る結果、(3)日銀短観・非製造業DI(結果+27、予想+24、前回+23)の力強い結果(約32年ぶり高水準)、(4)上記2、3を背景としたリスク選好の円売り圧力、(5)米9月製造業PMI(結果49.8、予想48.9)の市場予想を上回る結果、(6)米9月ISM製造業景況指数(結果49.0、予想47.9)の市場予想を上回る結果、(7)米8月JOLTS雇用動態調査(結果961.0万件、予想880.0万件)の市場予想を上回る結果、(8)米長期金利の急上昇、(9)心理的節目150.00突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売りが支援材料となり、翌10/3にかけて、年初来高値150.16まで急伸しました。

しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(10)政府・日銀によるサプライズ的な介入観測(神田財務官、鈴木財務相、松野官房長官はいずれも「介入の有無についてはコメントを控える」と発言するも実弾介入の可能性は相応に高い)や、(11)上記10を背景としたロング勢の大規模ロスカットが重石となり、同日(10/3)海外時間にかけて、週間安値147.33まで急落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(12)急ピッチな下落に対する反動買い(ショート勢の利食いや長期筋の押し目買い)や、(13)米9月総合PMI(結果50.2、予想50.1)の市場予想を上回る結果、(14)米9月ISM非製造業景況指数(結果53.6、予想53.5)の市場予想を上回る結果、

(15)米8月製造業受注(結果+1.2%、予想+0.3%)の市場予想を上回る結果、(16)米新規失業保険申請件数(結果20.7万件、予想21.0万件)の良好な結果、(17)米8月貿易収支(結果583億ドル赤字、予想623億ドル赤字、前回647億ドル赤字)の赤字幅縮小、(18)米9月非農業部門雇用者数(結果33.6万人、予想17.0万人)の市場予想を大幅に上回る力強い結果が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間10/7午前3時30分現在)では、149.37前後まで持ち直す動きとなっております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0568で寄り付いた後、(1)欧米金融政策の方向性の違い(欧米金利差拡大に伴うユーロ売り・ドル買い)や、(2)ドイツ9月製造業PMI(結果39.6、予想39.8)の市場予想を下回る結果、(3)デギンドスECB副総裁による「現行金利はインフレ目標の達成に役立つ」「インフレ率は今後数カ月間低下する見込み」とのハト派的な発言、(4)米経済指標の良好な結果(米金利上昇→米ドル買い)、(5)リトアニア中銀シムカス総裁による「インフレは低下傾向にある」とのハト派的な発言、(6)心理的節目1.0500割れに伴う仕掛け的なユーロ売り・ドル買いが重石となり、翌10/3にかけて、年初来安値1.0448(昨年12/7以来の安値圏)まで急落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(7)レーンECB専務理事による「賃金からくる物価上昇圧力は残っている」「インフレは依然目標に達していない、まだやることが残っている」とのタカ派的な発言や、(8)ドイツ9月非製造業PMI(結果50.3、予想49.8)の市場予想を上回る結果、

(9)ユーロ圏9月総合PMI(結果47.2、予想47.1)の市場予想を上回る結果、(10)ラガルドECB総裁による「インフレ抑制のために金利はしばらく高止まりする」とのタカ派的な発言(早期利下げ観測の後退)、(11)ドイツ8月製造業受注(結果+3.9%、予想+1.5%)の市場予想を上回る結果、(12)シュナーベルECB専務理事による「リスクが顕在化した場合、追加利上げはあり得る」とのタカ派的な発言、(13)キプロス中銀ヘロドトゥ総裁による「最近のエネルギー価格上昇は、物価上昇圧力となる可能性がある」とのタカ派的な発言、(14)米長期金利の上昇幅縮小、(15)欧州株の持ち直しが支援材料となり、週末にかけて、週間高値1.0600まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間10/7午前3時30分現在)では、1.0593前後で推移しております。

来週の見通し(10/9−10/13)

<ドル円相場>
ドル円は政府・日銀による介入観測を背景に、年初来高値更新後に急落する動きとなりましたが、週末にかけて急速に値を戻すなど、結果として下値の堅さを再認識する1週間となりました。日足ローソク足が主要テクニカルポイントの上側で推移していることや、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の上昇トレンド」が継続点灯していること、政府・日銀による介入観測を受けても尚147円台前半までしか下がらなかったこと等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測や、(2)日銀による金融緩和の長期化観測、(3)上記1、2を背景とした日米金融政策の方向性違い(日米金利差拡大に伴う円キャリートレード継続期待)、(4)米経済の力強さ(米金利上昇でも崩れない米経済の力強さ→米主要株価指数の持ち直し期待→リスク選好の円売り再開の思惑)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。

政府・日銀による介入効果は限定的と見られることから(介入後のドル円急落は絶好の押し目機会との見方が市場参加者のコンセンサス→一時的に下がったとしてもすぐに持ち直すことが想定されるため)、当方では引き続き、ファンダメンタルズ(日米金利差拡大)に沿ったドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします(比較的早期に年初来高値150.16まで全値戻しするシナリオを想定)。尚、来週は米国のインフレ指標(米9月生産者物価指数、米9月消費者物価指数)と、米当局者発言(バーFRB副議長、ダラス連銀ローガン総裁、ジェファーソンFRB副議長、アトランタ連銀ボスティック総裁、ウォラーFRB理事、ミネアポリス連銀カシュカリ総裁、サンフランシスコ連銀デイリー総裁、ボウマンFRB理事、ボストン連銀コリンズ総裁、フィルアデルフィア連銀ハーカー総裁など)に注目が集まります。

今週末に発表された米8月雇用統計が予想以上に力強い結果を示したことで、仮に来週予定されている米インフレ指標が市場予想を上回る結果となれば、次回11月FOMCでの追加利上げが濃厚となるため、週央以降は、「米長期金利上昇→日米金利差急拡大→円キャリートレード再開→ドル円急伸」の波及経路に特に警戒が必要でしょう。

来週の予想レンジ(USDJPY):148.00ー151.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は7/18に記録した約1年5カ月ぶり高値1.1277(昨年2/24以来の高値圏)をトップに反落に転じると、今週前半にかけて、年初来安値1.0448(昨年12/7以来の安値圏)まで急落しました(週央以降に持ち直すも戻りは鈍い)。この間、日足ローソク足が主要サポートポイントを軒並み下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「ダウ理論の下落トレンド」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの弱さを強く印象付けるチャート形状となっております。向こう数週間以内には、90日線と200日線のデッドクロスを経て、弱気のパーフェクトオーダー点灯も見込まれているため、地合いの更なる悪化が警戒されます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感や、(2)欧州圏のインフレ鈍化期待、(3)上記1、2を背景としたECBによる金融引き締め休止観測(利上げサイクル終了の思惑)、(4)米FRBよる金融引き締め長期化観測、(5)上記3、4を背景とした欧米金融政策の方向性の違い(欧米金利差拡大)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。こうした中、来週は上記3を確認する目的で、欧州当局者発言(ポルトガル中銀センテノ総裁、フランス中銀ビルロワドガロー総裁、オランダ中銀クノット総裁、スペイン中銀デコス総裁、オーストリア中銀ホルツマン総裁、クロアチア中銀ブイチッチ総裁、スロバキア中銀バスレ総裁、パネッタECB専務理事、ドイツ連銀ナーゲル総裁、ラガルドECB総裁など)に注目が集まります。特にECB内でタカ派と目されているオーストリア中銀ホルツマン総裁、オランダ中銀クノット総裁、スロバキア中銀バスレ総裁の発言には警戒が必要でしょう。

ハト派的な見解が示されれば、「ECBによる金融引き締め休止観測→欧米金融政策の方向性の違い→欧米金利差拡大」の経路で、ユーロドルに強い下落圧力が加わる恐れもあるため、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0400−1.0700

注:ポイント要約は編集部

『政府・日銀の介入効果は限定的。日米金利差がドル円の支援材料』

ドル円日足

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