10月3日深夜の乱高下落ち着き149円を挟んだ揉み合い
〇ドル円、10/3夜に150.15に高値を伸ばした後、148.70台を試しながら徐々にレンジを縮小して推移
〇神田財務官の発言、数日から1か月程度のレンジでの変動幅で市場介入を判断するとの認識か
〇国内10年債利回りは10年振り高水準、株安で日銀は7か月振りETF買い
〇米ISMサービス業景況指数は低下、ADP民間雇用者数も予想を大幅に下回る
〇10/6日夜の米9月雇用統計が予想を下回る鈍化の場合、FBR追加利上げを思い留まる可能性高まるか
〇149.40以下での推移中は一段安余地ありとし、148.60割れからは148.00前後試しを想定
〇149.40超えからは上昇再開とみて150を再び試すとみる
【概況】
ドル円は10月3日夜に150円を超えて年初来高値を150.15円へ伸ばした直後の数分で147.41円まで急落したが、4日未明に149.32円へ反騰してから再び148.69円まで反落した後はこの高安レンジ内で149円を挟んだ揉み合いの推移を続けている。10月4日昼にかけて149.31円へ上昇してから夕刻に148.73円へ反落し、その後は148.70円台を繰り返し試しながら徐々にレンジを縮小している。
10月3日深夜の急落については政府・日銀による実弾介入だったのではないかとの見方もあるようだが、150円到達に対する売り注文から連鎖安が発生したものとの見方もある。いずれにせよ150円に対しては手を出しづらい印象を市場に与えた。
鈴木財務相等は為替介入を実施したのかに関してはコメントしないとしているが、急激な円安と過度な変動に対しては「あらゆる対応を排除せず、しかるべき措置を取る」とも述べている。市場介入を行う場合の現場指揮官である神田財務官は150円到達については「直接の判断材料ではない」としたが、「一定期間に非常に大きな動きがあった場合は過度な変動に当たり得る」と述べており、1日の変動幅ではなく数日ないし1か月程度のレンジにおける変動幅が非常に大きな場合も市場介入を行う判断につながるとの認識を示していると思われる。神田財務官は4日午前に岸田首相と面会しており、10月3日夜にドル円が急落したことの説明を行ったのだろうと推察される。
【国内10年債利回りは10年振り高水準、株安で日銀は7か月振りETF買い】
10月4日の国内新発10年債(372回債)利回りは前日比0.045%上昇の0.805%となり、2013年8月以来10年振りの高水準に達した。現物利回りは2年債で0.060%、5年債で0.340%、30年債で1.815%となったが、米国の長期債利回り上昇により引き上げられている側面が大きいが、円安進行による日銀の金融政策軌道修正への懸念が債券売り・利回り上昇を招いていると思われる。しかし米国の長期債利回りとの格差は依然として大きく、現状程度の国内長期債利回り上昇では円高要因にならないのではないかと思われる。
10月4日の日経平均は前日比711.06円安の大幅下落で5営業日続落したが、これに対して日銀は7か月振りにETF(上場投資信託)の買い入れを行ったが、購入規模は701億円とされる。米国の利上げ状態長期化への懸念、円安の進行による企業コスト増による圧迫感から株式市場もリスク回避的な売りが優勢となっている。
【米ISMサービス業景況指数は低下、ADP民間雇用者数も予想を大幅に下回る】
米ADPによる9月全米雇用報告では非農業部門民間就業者数が前月比8万9000人増となり、市場予想の15万3000人増を大幅に下回って8月の18万人増から半減したが2021年1月以来凡そ2年半ぶりの小幅な伸びだった。10月6日夜の米労働省による9月雇用統計では非農業部門就業者数に対する事前予想は8月の18.7万人増から16.8万人増へと伸びが鈍化するとみられているが、ADPのように予想を下回る鈍化となれば米FRBによる追加利上げを思い留まらせる可能性が高まるかもしれない。発表後はドル安反応がみられた。
米サプライ管理協会(ISM)による9月の米サービス業景況指数は53.6となり、市場予想と一致したが8月の54.5から低下した。内訳では事業活動が8月の57.3から58.8へ上昇、新規受注が8月の57.5から51.8へ低下、雇用が8月の54.7から53.4へ低下、価格は58.9で8月と変わらずだった。
S&Pグローバルによる9月の米サービス業PMI確報値は50.1となり、速報の50.2からわずかに下方修正され、8月確報の50.5から低下した。総合PMIは50.2で速報の50.1から上方修正されて8月確報の50.2と変わらずだった。
【米10年債利回りは大幅続伸後に急低下、ダウは反騰】
10月4日の米長期債利回りは総じて低下した。ADP民間雇用が冴えなかったことや米下院議長解任動議が可決されたことによる先行き不透明感と原油相場が急落したことで債券買い・利回り低下へと風向きを若干変えたようだ。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.06%低下の4.74%となった。一時は4.88%をつけて2007年以来の最高水準としたがその後に急低下した。30年債利回りも一時5.01%をつけて2007年以来の高水準としてから反落し、前日比0.07%低下の4.86%で終了した。
利上げに敏感な2年債利回りは一時5.18%をつけて9月21日につけた5.20%へ迫ってから反落して前日比0.10%低下の5.06%で終了した。
いずれも上昇一服であり、週末の米雇用統計を通過して上昇基調を継続するのか、いったん調整期に入るのか試されるところだ。
一方でNYダウは米長期債利回り低下を好感して前日比127.17ドル高と上昇、4日ぶりの反発となり、ナスダック総合指数も176.54ポイント高と反発した。ただ、NY原油がガソリン在庫の大幅増を嫌って前日比5.01ドル安(5.61%安)と急落したためにエネルギー関連株が売られている。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は10月3日夜に150円台到達から急落し、いったん下げ幅の過半を解消してから149円を挟んだ揉み合いとなっている。市場介入が疑われるほどの短時間での乱高下のため、目先は方向感を探るところだが、149.40円を超えないうちは一段安余地ありとみて148.60円を割り込む場合は6日深夜にかけての下落を想定し、149.40円超えからは上昇再開に入るとみて11日深夜にかけての上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では10月3日深夜の乱高下が落ち着いてから149円を挟んだ揉み合いに入っているため遅行スパンは実線と交錯し、先行スパンからは上抜けてきているが転落への余裕も乏しい。149.40円超えからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンから転落する場合は下げ再開を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は10月3日深夜への急落で20ポイントに迫ったが、乱高下が落ち着いたことでややジリ高の推移で5日朝には50ポイントに到達している。40ポイントを上回るうちは55ポイント超えから60ポイント台後半を目指す上昇を想定するが、40ポイント割れからは下げ再開とみて20ポイント台を目指す下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、148.60円を下値支持線、149.40円を上値抵抗線とする。
(2)149.40円以下での推移中は一段安余地ありとし、148.60円割れからは148.00円前後試しを想定する。下げ足が速まる場合は3日夜安値147.41円試しへ下値目途を引き下げるが、147.65円以下は反騰警戒とする。
(3)149.40円超えからは上昇再開とみて150円を再び試すとみる。150円到達では売られやすいとみるが、149.40円以上での推移なら6日も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の予定】
10/5(木)
休場 中国
15:00 (独) 8月 貿易収支 (7月 159億ユーロ、予想 141億ユーロ)
18:45 (英) ブロードベント英中銀副総裁、討論会
18:45 (欧) レーンECB理事、討論会
21:30 (米) 8月 貿易収支 (7月 -650億ドル、予想 -643億ドル)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.4万件、予想 21.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 167.0万人)
22:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、シンポジウム参加
23:30 (仏) ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演
24:30 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
25:00 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演
10/6(金)
休場 中国
08:30 (日) 8月 全世帯消費支出 前年同月比 (7月 -5.0%、予想 -3.9%)
14:00 (日) 8月 景気先行指数CI・速報値 (7月 108.2、予想 109.1)
14:00 (日) 8月 景気一致指数CI・速報値 (7月 114.2、予想 114.2)
15:00 (独) 8月 製造業新規受注 前月比 (7月 -11.7%、予想 1.5%)
15:00 (独) 8月 製造業新規受注 前年同月比 (7月 -10.5%、予想 -7.9%)
21:30 (米) 9月 非農業部門就業者数 前月比 (8月 18.7万人、予想 16.8万人)
21:30 (米) 9月 失業率 (8月 3.8%、予想 3.7%)
21:30 (米) 9月 平均時給 前月比 (8月 0.2%、予想 0.3%)
21:30 (米) 9月 平均時給 前年同月比 (8月 4.3%、予想 4.3%)
28:00 (米) 8月 消費者信用残高 前月比 (7月 104.0億ドル、予想 117.0億ドル)
10/9(月)
休場 米国(コロンブス・デー) 政府、為替、債券休場、株式と商品は通常)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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