ドル円見通し 150円到達から147円台前半へ急落、市場介入の疑いも(23/10/4)

ドル円は150.15円を付けて150円台に到達したが、直後に147.41円へ急落し、早々に149円台を回復してから149円を再び割り込む波乱となっている。

ドル円見通し 150円到達から147円台前半へ急落、市場介入の疑いも(23/10/4)

150円到達から147円台前半へ急落、市場介入の疑いも

〇ドル円、150.15を付け昨年10/21高値151.94以来の150円台に到達するも直後に147.41へ急落
〇市場介入と、150円ヒットによる売り注文と反落後の売り連鎖による急落の可能性、それぞれ指摘される
〇財務省、新発10年債の表面利率を年0.80%に。9月0.40%から大幅に引き上げ2013年10月以来の水準
〇米10年債利回りは一時4.82%をつけ2007年8月以来の高水準を更新、前日比0.12%高の4.80%で終了
〇ダウ・ナスダックとも大幅下落。アジア株、独仏英の主要株価指数も下落で世界連鎖株安も警戒
〇149.50以下での推移中は一段安余地ありとし、148.50割れからは10/3深夜安値147.41試しとする
〇149.50超えからは反騰継続とみて10/3夜高値150.15を再び試す上昇を想定する

【概況】

ドル円は10月3日23時の8月米雇用動態調査(JOLTS)求人数が前月比69万件増の961万件となり、4か月ぶりに増加して市場予想の880万件を上回ったところで150.15円を付けて昨年10月21日高値151.94円以来の150円台に到達したが、直後に147.41円へ急落し、早々に149円台を回復してから149円を再び割り込む波乱となっている。
ドル円は9月21日未明の米FOMCと22日の日銀金融政策決定会合を通過しながら乱高下したもののFRBのタカ派姿勢と日銀の金融緩和継続により9月25日には148.50円を超えて年初来高値を更新して26日に149円台に到達、28日未明に149.70円まで高値を切り上げたところから29日夕安値148.52円まで調整安が入ったところを買われて30日早朝には下げ幅を解消、10月3日は早朝からジリ高の展開で150円へ徐々に迫り、市場介入を警戒しながらも150円超えを試していた。

【市場介入か、150円到達後の売りの連鎖か】

150円到達から3円近い急落であり、円先物市場では大量の注文が確認されているため日本政府・日銀の市場介入だった可能性が指摘されているものの確認はできず、150円をヒットしたことによる売り注文と反落後の売り連鎖による介入以外の急落だった可能性も指摘されている。
昨年は9月22日、10月21日と10月24日の三度の市場介入があったが、市場介入へ向けた当局の円安けん制トーンが強まってレートチェックが入るという前触れが確認されており、今回はレートチェックがあった可能性も指摘されている。
鈴木財務相は10月3日の閣議後会見において「(ドル円の)水準そのものが判断基準にはならない。あくまでボラティリティーの問題だ」として従来の姿勢と変わらないトーンで発言しており、「為替相場はファンダメンタルズを反映し、安定的に推移することが重要」「引き続き高い緊張感を持って万全の対応をしていく」と述べている。

仮に市場介入だった場合、148円割れを買われて早々に149円まで戻した状況は介入を行った側にとっては効果が薄かったことになり、市場心理としては介入ないし介入への警戒や思惑で急落しても早々に買い戻されると認識され、バーゲンハント買いへ前向きとなってしまい逆効果の可能性もある。
日米金利差、政策姿勢の違い、日本の低成長による円の実力低下、円以外でもユーロやポンドが7月以降の最安値を更新するなどドル全面高の様相であることを踏まえれば、現状のドル円水準はファンダメンタルズに即したものともいえる。昨年は9月22日の介入後に一段高へ進み、10月21日と10月24日の介入でドル円は頭打ちとなったものの高止まりしており、ドル円が下落に転じたのは11月10日の米CPIが予想外の鈍化となったことによる「逆CPIショック」からだった。

【国内新発10年債表面利率は0.80%に】

財務省は10月3日に10月発行の新発10年債(第372回債)の入札において表面利率を年0.80%として9月発行の0.40%から大幅に引き上げて2013年10月以来の水準とした。
日銀が長期金利変動許容上限を事実上1.0%まで引き上げたことを反映して新発10年債の流通利回りは0.780%まで上昇しており、今回の表面利率引上げは市場の状況を反映したものだが、徐々に国内長期債利回りが上昇を続けるきっかけとなるのだろうと思われる。ただし、米長期債利回りとの格差は開きっぱなしであり、0.8%から1.0%に迫ったとしても積極的な円買いをもたらすものにはならないのではないかと思われる。また日銀は国債買い入れオペを繰り返しており、急激な長期金利上昇を容認しない姿勢も示している。

【FRB高官発言はタカ派色】

米FRB高官や地区連銀総裁らの最近の発言は年内あと1回の利上げが必要とした9月FOMCのタカ派姿勢に沿ったものが多いが、クリーブランド連銀のメスター総裁も10月3日に「経済が前回会合と同じような状況なら、私なら一段の利上げを行うだろう」と述べて追加利上げを支持した。同総裁はFOMCの投票権を持っていないが、「インフレは緩和してはいるもののなお高水準でありもう1回の利上げは正当化される」、「当面は制約的な政策を維持しなければならない」「インフレ目標は2025年末までに達成する」としたが、「利下げが近いうちに実施されるとは考えていない」とも述べている。

アトランタ連銀のボスティック総裁は「米経済が減速しインフレ率が鈍化しているため、政策金利を再び引き上げる緊急性はないが、利下げが適切になるまでには長い時間がかかる」と述べた。同総裁はハト派とみられているが、利下げ期待をいさめる姿勢と受け止められた。
FRBのバー副議長は10月2日に「年内あと1回の追加利上げが必要かどうかよりもどれほど長く十分に景気抑制的な水準で政策金利を維持するかが最も重要な問題」、「政策金利の据え置きがしばらく続く」と述べた。ボウマンFRB理事も2日に「「追加利上げが必要となる公算が大きいと予想している」と述べており、利下げの可能性は遠のいている。

【米10年債利回りは大幅続伸、ダウは大幅続落】

10月3日の米長期債利回りは米JOLTS求人件数の増加等により総じて上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは前日の4.68%から一時4.82%をつけて2007年8月以来の高水準を更新、前日比0.12%高の4.80%で終了した。
30年債利回りは前日の4.79%から一時4.95%へ上昇して2010年以来の高水準とし、前日比0.14%高の4.93%で終了した。
2年債利回りは前日比0.06%高の5.16%へ上昇して9月21日に付けたこれまでのピークである5.20%へ徐々に迫ってきている。
一方で長期金利上昇を嫌ってNYダウは前日比430.97ドル安の大幅下落で先週末から3営業日続落となり、ナスダック総合指数も248.31ポイント安と大幅下落した。中国は連休中だが10月3日は香港のハンセン指数が2.69%安、日経平均は1.64%安などアジア株が総じて下落、欧州も独仏英の主要株価指数が下落しており、世界連鎖株安も警戒される。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は9月29日夕刻安値を起点として一段高に入ったが、150円到達から急落したため、10月3日夜高値で目先の高値を付けて下落期に入ったと思われる。9月29日夕安値を基準として目先の安値形成期は10月4日午後から6日夕にかけての間と想定されるのでまだ一段安へ進む可能性が残るが、乱高下が続く可能性もあるので149.50円超えからは強気転換注意として10月3日夜高値150.15円試しとし、高値更新からは新たな上昇期入りとして10日夜にかけての上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では10月3日深夜への急落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落したため遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とするが、先行スパンへ潜り込むところからは強気転換注意とし、先行スパンを上抜くところからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は10月3日深夜への急落で20ポイントに迫り、その後も40ポイント以下での推移が続いているのでまだ下落余地ありとみるが、50ポイント超えからは上昇再開の可能性ありとみて60ポイント台後半への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、148.50円を下値支持線、149.50円を上値抵抗線とする。
(2)149.50円以下での推移中は一段安余地ありとし、148.50円割れからは3日深夜安値147.41円試しとする。安値更新の場合は147円割れもあり得るとみるが、147円以下は反騰警戒とし、その後に148円を超えるところからは上昇期入りと考える。
(3)149.50円超えからは反騰継続とみて10月3日夜高値150.15円を再び試す上昇を想定する。150円到達では再び急落する可能性があると注意するが、高値更新からは151円を目指して行く上昇期と考える。

【当面の予定】

10/4(水)
休場 中国、韓国
OPECプラス合同閣僚監視委員会
10:00 (NZ) RBNZ(ニュージーランド中銀) 政策金利 (現行 5.50%、予想 5.50%
16:55 (独) 9月 サービス業PMI・改定値 (速報 49.8、予想 49.8)
17:00 (欧) 9月 サービス業PMI・改定値 (速報 48.4、予想 48.4)
17:00 (欧) ラガルドECB総裁、講演
17:30 (英) 9月 サービス業PMI・改定値 (速報 47.2、予想 47.2)
18:00 (欧) 8月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (7月 -0.5%、予想 0.6%)
18:00 (欧) 8月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (7月 -7.6%、予想 -11.6%)
18:00 (欧) 8月 小売売上高 前月比 (7月 -0.2%、予想 -0.5%)
18:00 (欧) 8月 小売売上高 前年同月比 (7月 -1.0%、予想 -1.3%)

21:15 (米) 9月 ADP非農業部門民間雇用者数 前月比 (8月 17.7万人、予想 15.3万人)
22:45 (米) 9月 サービス業PMI・改定値 (速報 50.2、予想 50.2)
23:00 (米) 8月 製造業新規受注 前月比 (7月 -2.1%、予想 0.3%)
23:00 (米) 9月 ISM非製造業景況指数 (8月 54.5、予想 53.6)
23:05 (米) シュミッド・カンザスシティー連銀総裁、イベント挨拶
23:25 (米) ボウマンFRB理事、挨拶
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
23:30 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、挨拶

10/5(木)
休場 中国
09:30 (豪) 8月 貿易収支 (7月 80.39億豪ドル、予想 87.49億豪ドル)
15:00 (独) 8月 貿易収支 (7月 159億ユーロ、予想 141億ユーロ)
18:45 (英) ブロードベント英中銀副総裁、討論会
18:45 (欧) レーンECB理事、討論会

21:30 (米) 8月 貿易収支 (7月 -650億ドル、予想 -643億ドル)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.4万件、予想 21.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 167.0万人)
22:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、シンポジウム参加
23:30 (仏) ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演
24:30 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
25:00 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演



注:ポイント要約は編集部

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