来週の為替相場見通し:『日米金利差拡大に着目したドル買い・円売りvs介入警戒感』(9/30朝)

今週のドル円相場は、週初148.37で寄り付いた後、早々に週間安値148.25まで下落しました。

来週の為替相場見通し:『日米金利差拡大に着目したドル買い・円売りvs介入警戒感』(9/30朝)

『日米金利差拡大に着目したドル買い・円売りvs介入警戒感』

〇今週のドル円、米長期金利上昇等に週央にかけて、年初来高値149.71まで急伸
〇介入警戒感、米政府閉鎖をめぐる警戒感等に週末148.53まで下押すも149円台半ばに戻し越週
〇ユーロドル、週明け1.0656まで上昇後一時1.0488まで急落、週末は1.05台後半で推移
〇ドル円、主要テクニカルポイントの上で推移、強い買いシグナルも継続、地合い極めて強い
〇ファンダメンタルズも日米金融政策の方向性の違いとキャリートレード継続が、ドル円を支持
〇来週は週を通してアップサイドリスクに注意を要する1週間か
〇来週の予想レンジ(USDJPY):148.00ー151.00、(EURUSD):1.0350−1.0650

今週のレビュー(9/25−9/29)

<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初148.37で寄り付いた後、早々に週間安値148.25まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(1)植田日銀総裁による「現在の枠組みで粘り強く金融緩和を続ける必要がある」とのハト派的な発言や、(2)内田日銀副総裁による「YCC柔軟化は金融緩和の持続性を高めることが狙い」とのハト派的な発言、(3)シカゴ連銀グールズビー総裁による「インフレが高止まりするリスクのほうが大きい」「経済の雇用面は非常に好調」とのタカ派的な発言、(4)本邦輸入企業の実需のドル買い(買い遅れた実需筋による焦りの目線引き上げ)、(5)日米金利差拡大に着目したドル買い・円売り(円キャリートレードの活発化)、(6)心理的節目149.00突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売り、(7)米7月ケースシラー住宅価格指数(結果+0.8%、予想+0.4%)の市場予想を上回る結果、(8)米9月リッチモンド連銀製造業指数(結果5、予想▲7)の市場予想を上回る結果、

(10)米金利上昇に伴うドル買い圧力(米10年債利回りが2007年9月以来の高水準へ急上昇)、(11)ミネアポリス連銀カシュカリ総裁による「中立金利が上昇する可能性がある」「FRBは来年も金利を据え置くと予想している」とのタカ派的な発言、(12)米8月耐久財受注(結果+0.2%、予想▲0.5%)の市場予想を上回る結果、(13)米8月コア耐久財受注/除輸送機器(結果+0.4%、+0.2%)の市場予想を上回る結果が支援材料となり、週央にかけて、年初来高値149.71(昨年10/24以来、約11カ月ぶり高値圏)まで急伸しました。

その後は、(14)政府・日銀による介入警戒感(今週は岸田首相より「足元の円安について引き続き高い緊張感を持って注視していきたい」「為替相場はファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要」との円安牽制発言が見られた他、鈴木財務相からも「高い緊張感をもって市場動向を見ている」「過度な為替変動に対しあらゆる手段を排除せず」「過度な変動は好ましくない」との円安牽制発言あり)や、(15)米第2四半期GDP確報値(結果+2.1%、予想+2.2%)の市場予想を下回る結果、(16)米8月中古住宅販売成約指数(結果▲7.1%、予想▲1.0%)の市場予想を下回る結果、(17)米金利低下に伴うドル売り圧力(米10年債利回りが2007年9月以来の高水準となる4.68%から4.50%へ急低下)、(18)米政府機関閉鎖を巡る警戒感、(19)全米自動車労働組合(UAW)のストライキ拡大、(19)週末前のポジション調整(ドルロング・ポジションの手仕舞い)を背景に一時148.53まで下押す場面も見られましたが、一巡後に下げ渋ると、引けにかけて全値戻しの展開となり、本稿執筆時点(日本時間9/30午前3時30分現在)では、149.45前後まで持ち直す動きとなっております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0655で寄り付いた後、早々に週間高値1.0656まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(1)ラトビア中銀カザークス総裁による「9月の利上げは10月の休止を可能にする可能性」とのハト派的な発言や、(2)フランス中銀ビルロワドガロー総裁による「ECBは金利引き上げではなく持続性に焦点を当てるべき」とのハト派的な発言、(3)スペイン中銀デコス総裁による「不十分な引き締めも過剰な引き締めも避けるべき」とのハト派的な発言、(4)シュナーベルECB専務理事による「ユーロ圏の活動は明らかに減速しつつある」とのハト派的な発言、(5)ラガルドECB総裁による「サービス部門における雇用は減速しており全体的な勢いは鈍化」「インフレは低下し続けている」とのハト派的な発言、(6)エストニア中銀ミュラー総裁による「現状はこれ以上の利上げを予想していない」とのハト派的な発言、

(7)欧米金融政策格差(金融政策の方向性の違い)に着目したユーロ売り・ドル買い圧力(金融引き締め政策の長期化が示唆されるFRBと、金融引き締め政策の休止が示唆されるECBとの政策格差→欧米金利差拡大→ユーロ売り・ドル買い)、(8)ドイツ10月GFK消費者信頼感(結果▲26.5、予想▲26.0)の市場予想を下回る結果、(9)心理的節目1.0500下方ブレイクに伴う仕掛け的なユーロ売り・ドル買いが重石となり、週央にかけて、週間安値1.0488(1/6以来、約8カ月半ぶり安値圏)まで急落しました。

もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(10)ユーロ圏9月経済信頼感(結果93.3、予想92.4)の市場予想を上回る結果や、(11)ユーロ圏9月鉱工業信頼感(結果▲9.0、予想▲10.5)の市場予想を上回る結果、(12)ドイツ連銀ナーゲル総裁による「データがさらなるステップと必要性を示している場合は更なる利上げが必要になるかもしれない」「どこが利上げのピークかはまだ分からない」とのタカ派的な発言、(13)米長期金利の上昇幅縮小が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間9/30午前3時30分現在)では、1.0565前後まで持ち直す動きとなっております。尚、今週末に発表されたユーロ圏9月HICP速報値(結果+4.3%、予想+4.5%)および、ユーロ圏9月コアHICP(結果+4.5%、予想+4.8%)は共に市場予想を下回る結果となりましたが、ユーロ売りでの反応は限定的となりました。

来週の見通し(10/2−10/6)

<ドル円相場>
ドル円は週足ベースで4週連続陽線(年初来高値更新)を記録するなど、力強い動きが続いています。日足ローソク足が全てのテクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表転換線、基準線、雲上下限)の上側で推移していることや、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の上昇トレンド」が継続していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測(先週開催された米FOMCおよびSEPは予想以上にタカ派的な結果→米10年債利回りが2007年9月以来の高水準へ急上昇→ドル買い安心感)や、(2)日銀による金融緩和の長期化観測(先週開催された日銀金融政策決定会合および植田日銀総裁記者会見は予想以上にハト派的な結果→円金利の伸び悩み→円売り安心感)、(3)上記1、2を背景とした日米金融政策格差とそれに伴う円キャリートレードの継続期待など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。

政府・日銀による介入警戒感(イエレン米財務長官と神田財務官は先週、為替介入実施の地均しとも受け止められる発言あり。岸田首相と鈴木財務相は今週円安牽制発言を実施)が上値を抑制する可能性があるものの、昨年10/21に記録した高値151.95を突破するまでは大義名分的に実弾介入に踏み切ることは難しいと考えられることから、当方では引き続き、日米金利差拡大に着目したドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。

尚、来週は、米経済指標(米9月ISM製造業景況指数、米9月ISM非製造業景況指数、米8月JOLTS求人件数、米9月ADP雇用統計、米9月雇用統計)や、米当局者発言(パウエルFRB議長、フィラデルフィア連銀ハーカー総裁、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁、クリーブランド連銀メスター総裁、アトランタ連銀ボスティック総裁、ボウマンFRB理事、シカゴ連銀グールズビー総裁、サンフランシスコ連銀デイリー総裁)など、重要イベント目白押しの警戒weekとなります。米経済指標の力強さが示される場合や、米当局者よりタカ派的な見解が示される場合には、次回11月FOMCでの追加利上げを織り込む形で、ドル円が心理的節目150.00や、昨年高値151.95に向けて、上値を一段と伸ばすシナリオが想定されるため、来週は週を通してアップサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです。

来週の予想レンジ(USDJPY):148.00ー151.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は7/18に記録した約1年5カ月ぶり高値1.1277(昨年2/24以来の高値圏)をトップに反落に転じると、今週半ばにかけて、約8ヵ月半ぶり安値となる1.0488(1/6以来の安値圏)まで急落しました。この間、日足ローソク足が主要サポートポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表転換線、基準線、雲上下限)を軒並み下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「ダウ理論の下落トレンド」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの弱さを強く印象付けるチャート形状となっております。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感や、(2)欧州圏のインフレ鈍化期待、(3)ECBによる金融引き締め休止観測(利上げサイクル終了期待)、(4)米FRBよる金融引き締め長期化観測、(5)上記3、4を背景とした欧米金融政策の方向性の違い(欧米金利差拡大に着目したユーロ売り・ドル買い)など、ユーロドル相場の更なる下落を連想させる材料が揃っています。来週予定されているECB当局者発言(レーンECB専務理事、フランス中銀ビルロワドガロー総裁、ラガルドECB総裁、デギンドスECB副総裁など)でハト派的な見解が相次ぐ場合や、米経済指標が力強さを示す場合、米当局者よりタカ派的な発言が相次ぐ場合などには、欧米金融政策格差→欧米金利差拡大の経路で、ユーロドルに強い下押し圧力が加わる恐れが出てくるため、当方では引き続き、ユーロ売り・ドル買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします(状況次第で1/6安値1.0483を下抜け、年初来安値を更新する恐れあり)。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0350−1.0650

注:ポイント要約は編集部

『日米金利差拡大に着目したドル買い・円売りvs介入警戒感』

ドル円日足

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