ドル円見通し 9月29日夕刻の反落を解消、9月11日以降の上昇トレンドを維持(週報10月第一週)

ドル円は9月11日や9月29日に小波乱を入れつつ、米FOMCと日銀会合を通過して7月14日安値を起点とした上昇基調を継続している。

ドル円見通し 9月29日夕刻の反落を解消、9月11日以降の上昇トレンドを維持(週報10月第一週)

ドル円見通し 9月29日夕刻の反落を解消、9月11日以降の上昇トレンドを維持

〇先週のドル円、年初来高値149.70をつけた後、148.52まで反落するも149.48まで戻して越週
〇米8月コアデフレーターは前月比0.1%上昇、前月・市場予想を下回り20年11月来の低水準
〇米10年債一時4.66%まで上昇し4.58%で終了、週間では0.14%、月間では0.47%の上昇
〇今週は米9月雇用統計が最重要の焦点、他に重要指標の発表も相次ぐため、波乱含み
〇149円以上での推移するうちは9/28日高値149.70超えから150円試し
〇148.80割れからは9/29安値148.52試し、割り込む場合は147円台を試す下落期入りか

【概況】

ドル円は9月28日未明高値で149.70円を付けて年初来高値を更新、その後はジリ安の推移に入り、29日夕刻にかけては米長期債利回り低下を見て149円割れから売りの連鎖反応により148.52円まで反落したが、突っ込んだところは買い拾われて149円台を回復し、米長期債利回りの再上昇を見て30日未明には149.48円まで戻り高値を切り上げて29日夕刻への下落幅をほぼ解消した。

9月11日に植田日銀総裁インタビュー記事におけるマイナス金利解除への言及をきっかけとして9月9日早朝高値147.86円から11日夕安値145.89円まで2円近い下落となったところを起点として上昇再開に入り、9月21日未明の米FOMCと22日の日銀金融政策決定会合を通過しながらの乱高下から年初来高値更新に入り、9月28日未明には昨年10月21日高値151.94円以来の高値水準に達した。9月29日夕刻への反落においても、9月11日安値と9月21日深夜安値を結ぶ上昇トレンドの範囲にとどまっており、急落後の反騰としては9月21日深夜安値から切り返して一段高へ進んだ時に近い印象だ。
今週は10月6日の米9月雇用統計が最重要の焦点となるが、それに先立って重要指標の発表も相次ぐため、波乱含みで推移しながら150円台を目指して行けるのか、いったん仕切り直しの調整安局面に入るのか試されると思われる。

【9月30日の日銀総裁発言、出口への言及】

日銀の植田総裁は9月30日の福岡市における講演で、大規模金融緩和の出口局面での日銀の財務悪化に対する懸念について、「中央銀行は自ら紙幣を発行できる」「一時的に赤字や債務超過になっても政策運営能力は損なわれない」「利上げしている海外の中銀では赤字や債務超過の事例が見られるが通貨の信認は維持されている」とし、出口へ向けての懸念を否定する発言を行った。

積極的に出口へ向かっているとの印象を与えるものではないが、日銀は9月22日の金融政策決定会合で金融緩和政策の維持を決定して必要なら追加緩和を行うとの従来姿勢を継続したが、今年は2度の長期金利変動許容上限の引き上げを行い、植田総裁インタビューでマイナス金利解除への言及があるなど、出口論へ向けた動きもにじませている。
ただし、9月11日に市場がマイナス金利解除への言及に過剰反応した際には市場が誤解しているとの認識をリークして市場を落ち着かせるなど、円安をけん制しつつも出口論への過剰反応を抑える姿勢も見せている。

【米PCEデフレーターは鈍化】

8月の米PCE(個人消費支出)は前月比0.4%増で7月の0.9%増から低下して市場予想の0.5%増を下回った。米FRBがインフレ指標として重視しているPCEデフレーターは全体の前年比が3.5%で7月の3.4%から伸びて2か月連続の上昇だったが市場予想と一致し、コアデフレーターは前月比が0.1%上昇で7月の0.2%および市場予想の0.2%を下回って2020年11月以来の低水準となり、前年比は3.9%で予想と一致して7月の4.3%から鈍化した。
米MNIインディケーターズによる9月のシカゴ購買部景況指数は44.1となり、8月の48.7から悪化して市場予想の47.6を下回った。
米ミシガン大学による9月消費者信頼感指数確報値は68.1となり、速報の67.7から上方修正されて8月確報の69.5から悪化した。
最近注目されている1年先のインフレ期待は8月の3.5%から3.2%へ低下して2021年序盤以来の水準となり、5年先のインフレ期待は8月の3.0%から2.8%へ低下して今年最低となった。

コアPCEデフレーターの前月比と前年比が予想を下回って鈍化したことと、ミシガン大の期待インフレ率が低下したことは米FRBへの追加利上げ圧力を緩めるものと受け止められたが、まだインフレ率そのものの高止まり感は残っている。
ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は29日の講演テキストにおいて、「FF金利の誘導目標レンジ(政策金利)はピークかそれに近い水準にある」とし、「しばらくの間は景気抑制的な金融政策スタンスを維持する必要があるとみている」と述べた。追加利上げをしなくてもピークに近い水準との見方であり、利上げ状態は暫く続くとしても過度の利上げ継続へ傾斜することを否定する姿勢と思われる。同総裁はインフレ率について2024年に2.5%、2025年に2.0%に近付くと予想している。

【米10年債利回りは上昇再開感、ダウは気迷いで反落】

9月29日の米長期債利回りは総じて低下したが、前日のピークから反落してから再上昇気配を示した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比変わらずに4.58%で終了した。9月28日に一時4.688%をつけて2007年9月以来の高水準に達してから反落、29日は一時4.51%まで低下したが、終盤へ上昇しており上昇基調はなお健在と思われる。週間では9月22日終値4.44%から0.14%の上昇、月間では8月31日の4.11%から0.47%の上昇となった。

30年債利回りは0.01%低下の4.70%で終了したが、4.65%まで低下してから反騰している。9月28日には4.81%をつけて2010年4月以来13年半ぶりの高水準とした。
2年債利回りは0.01%低下の5.05%で終了したが、一時5.01%まで低下してから反発した。9月21日に付けたピークの5.20%からは低下傾向にある。
米国株式市場はマチマチ。NYダウは前日比158.84ドル安、ナスダック総合指数は18.04ポイント高だった。米連邦政府予算案を巡る混乱による政府機関一時閉鎖への懸念や全米自動車労組のスト長期化、中国景気への懸念、利上げの長期化問題等が重石となっている。

【日足、サイクル・一目均衡表分析】

【日足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は9月11日や9月29日に小波乱を入れつつ、米FOMCと日銀会合を通過して7月14日安値を起点とした上昇基調を継続している。150円手前では市場介入への警戒感もあり慎重な動きだが、日米長期金利差の拡大とドル全面高による円安ならファンダメンタルズに即した円安であり、一日の変動幅が過剰とならなければ政府・日銀の市場介入を仕掛けるのを躊躇するのではないかと思われる。また昨年も一度目の大規模介入では円安を止められなかったことを踏まえ、昨年の介入規模を超える強い意志による介入でなければ一時的に急落したところはバーゲンハントの場となりかねない。
今週は週末の米雇用統計が焦点となるため、それまではやや慎重な動きで推移すると思われるが、短期的には9月29日夕安値を押し目底とした上昇により9月28日未明高値149.70円を超えて150円前後を試し、その後に149円前後へ下げる場面も買い拾われながら雇用統計へ向かうのではないかと考える。

日足の一目均衡表では遅行スパンの好転と先行スパンを上回っての推移が続いているので上昇継続と考える。中勢としては26日基準線を下値支持線とするが、9日転換線割れから続落の場合は26日基準線試しとし、基準線割れからは遅行スパンの悪化や先行スパン上限を試す下落を想定する。

日足の相対力指数は8月後半から指数のピークを切り上げられずにいるものの60ポイント割れを繰り返し買われてしっかりしており、70ポイント超えからは70ポイント台後半を目指す可能性があるとみる。ただし、55ポイント割れからは弱気転換注意とし、50ポイント割れからは7月14日以降の上昇一巡による下落期入りとして40ポイント前後へ向かう流れと考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当面、148.52円を下値支持線、150.00円を上値抵抗線とする。
(2)149円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは9月28日未明高値149.70円超えから150円試しとし、勢い付く場合は151円に迫る上昇を想定する。149.50円以上を維持して推移するか、直前高値から0.70円を超える反落が発生しないうちは押し目買い有利の展開で上昇基調を継続するとみる。
(3)148.80円割れからは9月29日夕安値148.52円試しとするが、底割れ回避で149.20円を超えるところからは上昇再開とみる。ただし9月29日安値を割り込む場合は9月11日安値を起点とした上昇トレンドからの転落となるため147円台を試す下落期入りと考える。

【当面の予定】

10/2(月)
休場 香港、中国、インド、韓国
休場 カナダ(株式通常、商品休場)、オーストラリア(株式通常、銀行休業)
08:50 (日) 7-9月期 日銀短観・大企業製造業業況判断 (4-6月 5、予想 6)
08:50 (日) 7-9月期 日銀短観・大企業製造業先行き (4-6月 9、予想 6)
08:50 (日) 7-9月期 日銀短観・大企業非製造業業況判断 (4-6月 23、予想 24)
08:50 (日) 7-9月期 日銀短観・大企業非製造業先行き (4-6月 20、予想 23)
08:50 (日) 7-9月期 日銀短観・大企業全産業設備投資 前年度比 (4-6月 13.4%、予想 13.3%)
08:50 (日) 日銀金融政策決定会合における主な意見(9月21-22日開催分)
15:00 (英) 9月 ネーションワイド住宅価格 前月比 (8月 -0.8%、予想 -0.5%)

16:55 (独) 9月 製造業PMI・改定値 (速報 39.8)
17:00 (欧) 9月 製造業PMI・改定値 (速報 43.4)
17:30 (英) 9月 製造業PMI・改定値 (速報 44.2)
18:00 (欧) 8月 失業率 (7月 6.4%)
22:45 (米) 9月 製造業PMI・改定値 (8月 48.9、予想 48.9)
23:00 (米) 9月 ISM製造業景況指数 (8月 47.6、予想 47.8)
23:00 (米) 8月 建設支出 前月比 (7月 0.7%、予想 0.6%)
24:00 (米) パウエル米FRB議長、討論会
24:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、討論会
24:00 (英) マン英中銀委員、講演
26:30 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会

10/3(火)
休場 中国
08:30 メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
08:50 (日) 9月 マネタリーベース 前年同月比 (8月 1.2%)
09:30 (豪) 8月 住宅建設許可件数 前月比 (7月 -8.1%)
12:30 (豪) RBA(豪中銀) 政策金利 (現行 4.10%、予想 4.10%)
15:10 (英) レーンECB理事、講演
21:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、対話集会
21:45 (仏) ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演
23:00 (米) 8月 JOLTS(雇用動態調査)求人件数 (7月 882.7万件)

10/4(水)
休場 中国、韓国
OPECプラス合同閣僚監視委員会
10:00 (NZ) RBNZ(ニュージーランド中銀) 政策金利 (現行 5.50%)
16:55 (独) 9月 サービス業PMI・改定値 (速報 49.8)
17:00 (欧) 9月 サービス業PMI・改定値 (速報 48.4)
17:00 (欧) ラガルドECB総裁、講演
17:30 (英) 9月 サービス業PMI・改定値 (速報 47.2)
18:00 (欧) 8月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (7月 -0.5%)
18:00 (欧) 8月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (7月 -7.6%)
18:00 (欧) 8月 小売売上高 前月比 (7月 -0.2%)
18:00 (欧) 8月 小売売上高 前年同月比 (7月 -1.0%)

21:15 (米) 9月 ADP非農業部門民間雇用者数 前月比 (8月 17.7万人、予想 13.0万人)
22:45 (米) 9月 サービス業PMI・改定値 (速報 50.2)
22:45 (米) 9月 総合PMI・改定値 (速報 50.1)
23:00 (米) 8月 製造業新規受注 前月比 (7月 -2.1%、予想 0.2%)
23:00 (米) 9月 ISM非製造業景況指数 (8月 54.5、予想 53.7)
23:05 (米) シュミッド・カンザスシティー連銀総裁、イベント挨拶
23:25 (米) ボウマンFRB理事、挨拶
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
23:30 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、挨拶

10/5(木)
休場 中国
09:30 (豪) 8月 貿易収支 (7月 80.39億豪ドル)
15:00 (独) 8月 貿易収支 (7月 159億ユーロ)
18:45 (英) ブロードベント英中銀副総裁、討論会
18:45 (欧) レーンECB理事、討論会
21:30 (米) 8月 貿易収支 (7月 -650億ドル、予想 -653億ドル)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.4万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 167.0万人)
22:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、シンポジウム参加
23:30 (仏) ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演
24:30 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
25:00 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演

10/6(金)
休場 中国
08:30 (日) 8月 全世帯消費支出 前年同月比 (7月 -5.0%)
14:00 (日) 8月 景気先行指数CI・速報値 (7月 108.2)
14:00 (日) 8月 景気一致指数CI・速報値 (7月 114.2)
15:00 (独) 8月 製造業新規受注 前月比 (7月 -11.7%)
15:00 (独) 8月 製造業新規受注 前年同月比 (7月 -10.5%)
21:30 (米) 9月 非農業部門就業者数 前月比 (8月 18.7万人、予想 16.0万人)
21:30 (米) 9月 失業率 (8月 3.8%、予想 3.7%)
21:30 (米) 9月 平均時給 前月比 (8月 0.2%、予想 0.3%)
21:30 (米) 9月 平均時給 前年同月比 (8月 4.3%)
28:00 (米) 8月 消費者信用残高 前月比 (7月 104.0億ドル、予想 113.0億ドル)

10/9(月)
休場 米国(コロンブス・デー) 政府、為替、債券休場、株式と商品は通常

注:ポイント要約は編集部

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