146円を挟んで乱調な展開、8月30日早朝安値を割り込む
〇ドル円、J会合でのFRB議長講演を受け年初来高値更新後、8/29夜147.36まで高値切り上げ
〇米雇用関連指標、GDP改定値等不冴えを受け乱調な展開、8/31午前は前日東京安値を割り込み一段安
〇米経済指標冴えず利上げ継続観測後退、週末にかけての米指標次第で利上げ停止の見方強まるか
〇指標は弱いものの、米経済リセッション懸念は乏しく、来年前半の利下げ開始期待徐々に強まる
〇米10年債利回りは3日連続で低下、ダウ、ナスダック総合指数は4連騰
〇146.53以下での推移中は一段安余地ありとし、145.55割れからは145円前後への下落を想定
〇146.53超えからは上昇再開とみて147円台前半を目指す上昇を想定
【概況】
ドル円は8月25日のジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長講演をきっかけとして年初来高値を更新し、29日夜には147.36円まで高値を切り上げたが、米JOLTS求人件数が3か月連続低下となり8月CB消費者信頼感指数も予想外に悪化したために30日早朝安値145.64円へ急落した。30日夕刻にかけては米長期債利回り上昇を見ながら買い戻し優勢となり146.53円まで戻したが、30日夜発表の米ADP民間雇用者数が予想を下回る増加にとどまり4-6月期米GDP改定値が下方修正されたために米長期債利回りが反落した局面で145.55円へ下落した。深夜以降は米長期債利回りの低下が落ち着いたことで31日早朝には146.29円まで持ち直したが、31日午前は再び146円を割り込んでいる。
8月30日早朝安値を割り込んで一段安した状況だが、146円を挟んだ揉み合いの様相もあり、今夜の米PCE(個人消費支出)デフレーターや明日夜の米8月雇用統計の内容次第では上下に大きく波乱する可能性もあるところだ。
【ユーロ円は15年ぶり安値、円の独歩安感も拡大】
ユーロ円は159.75円を付けて2012年7月底94.08円以降の高値を更新、2008年8月以来凡そ15年ぶりの高値水準に達した。独CPIの高止まりに加えて米経済指標が前夜に続いて低調だったため、ECBの9月理事会での0.25%利上げ観測が強まる一方で米FRBが利上げ停止する可能性が高まってきたことでユーロドルが反騰したことに押し上げられたが、中長期的な円安基調が押し上げに大きく寄与している。クロス円全般の上昇による円の独歩安感が強まれば政府日銀も市場介入の口実とする可能性もある。
ドイツ連邦統計庁による8月の独CPI(消費者物価指数)速報は前年比6.4%上昇となり7月の6.5%からわずかに鈍化したものの市場予想の6.3%を上回りし、コア指数は5.5%で7月と変わらず高止まりした。
【米経済指標冴えず、利上げ継続観測後退】
米商務省による2023年4-6月期GDP改定値は年率換算前期比で2.1%増となり速報値の2.4%増から下方修正され、速報値と変わらずとの市場予想に反した。4期連続のプラスで堅調さを示しているものの金融引き締めによる影響も見られる。
設備投資は速報の7.7%増から6.1%増へ下方修正、個人消費は速報の1.6%増から1.7%増へ上方修正されたが予想の1.8%を下回った。住宅投資は速報の4.2%減から3.6%減へ上方修正された。
米ADPによる8月全米雇用報告では非農業部門民間就業者数が前月比17万7000人増となったが7月の37万1000人増(速報の32万4000人増から下方修正)から半減して市場予想の19万5000人増を下回った。項目別では金融が横ばいだったのを除けばすべての分野で増加しており雇用の堅調さは見られるものの、29日夜の求人件数減少等も踏まえて金融引き締めによる労働需給の緩和感も見られるところだ。
【米10年債利回りは3日連続で低下、ダウは4連騰】
8月30日の米長期債利回りは横ばいから低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日の4.12%から4.11%へわずかに低下したが、4.16%まで上昇していたところから4.09%へ急低下してその後にやや戻す展開となった。30年債利回りは前日とほぼ変わらずに4.23%、利上げに敏感な2年債利回りは0.01%低下の4.89%となったが一時は4.84%まで低下して8月28日のピーク時に付けた5.11%からは3営業日続落した。
米金利先物では9月FOMCでは利上げが見送られるとみられており、11月ないし12月の利上げ確率も5割以下であり、今夜の米PCEデフレーターや雇用統計内容次第ではこのまま利上げ停止となるのではないかとの見方が拡大すると思われる。
一方でNYダウは前日比37.57ドル高と上昇して4日続伸、ナスダック総合指数も75.55ポイント高で4連騰した。米経済指標は予想を下回って低調さがみられるもののリセッション入りへの懸念は乏しく、年内の利上げ状態は解消せずとも来年前半の利下げ開始期待は徐々に強まってきているようだ。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は29日夜147.36円へ急伸してから30日早朝に145.64円へ急落し、いったん戻してから30日深夜に145.55円へ一段安したため、8月30日早朝安値を底割れしたことにより新たな下落期に入っている可能性があるが、146円を挟んだ揉み合いの様相も見られる。このため、8月30日夕高値146.53円を超えないうちは一段安警戒とし、8月30日深夜安値を割り込む場合は9月1日深夜から6日早朝への下落継続と考えるが、8月30日夕高値を上抜き返す場合は30日深夜安値を目先の底とした上昇期入りとみて9月1日夜から5日夜にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では8月31日早朝への反発で遅行スパンが好転したもののその後の下落で悪化しやすい位置にあり、30日夕刻への上昇では先行スパンを突破しきれずに転落状態が続いている。
先行スパンを上抜けないうちは一段安警戒として遅行スパン悪化からは安値試し優先とするが、先行スパンを上抜き返す場合は上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は8月30日早朝と30日深夜の下落場面で30ポイント台序盤へ低下し、50ポイント台へ戻したところは売られている。このため、60ポイント以下での推移中は一段安余地ありとし、次の40ポイント割れからは20ポイント台への低下を伴う下落を想定するが、60ポイントを超えるところからは上昇再開とみて70ポイント台を目指す上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8月30日深夜安値145.55円を下値支持線、30日夕高値146.53円を上値抵抗線とする。
(2)146.53円以下での推移中は一段安余地ありとし、145.55円割れからは145円前後への下落を想定する。145円以下は反騰注意とするが、146.55円以下での推移か直前安値から1円を超える反騰がみられないうちは9月1日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。米経済指標から売られる場合は144円台中盤へ下値目途を引き下げる。
(3)146.53円超えからは上昇再開とみて147円台前半を目指す上昇を想定する。147円台到達では売られやすいとみるが、米経済指標から急伸する場合は8月29日夜高値147.36円超えを目指す可能性もあるとみる。146.53円を超えた後も146円台を維持するか、直前高値から1円を超える反落がみられない場合は1日も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の予定】
8/31(木)
休場 マレーシア
10:30 (中) 8月 国家統計局製造業PMI (7月 49.3、予想 49.1)
10:30 (豪) 4-6月期 民間設備投資 前期比 (1-3月 2.4%、予想 1.0%)
14:00 (日) 7月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (6月 -4.8%、予想 -1.3%)
16:15 ボスティック・アトランタ連銀総裁、南ア中銀主催のイベントで講演[南アフリカ・ケープタウン]
16:15 ピル英中銀理事、講演
16:55 (独) 8月 失業者数 前月比 (7月 -0.40万人、予想 1.00万人)
16:55 (独) 8月 失業率 (7月 5.6%、予想 5.7%)
18:00 (欧) 7月 失業率 (6月 6.4%、予想 6.4%)
18:00 (欧) 8月 HICP(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (7月 5.3%、予想 5.1%)
18:00 (欧) 8月 HICPコア指数・速報値 前年同月比 (7月 5.5%、予想 5.3%)
20:30 シュナーベルECB理事、講演
20:30 (欧) ECB(欧州中銀)理事会議事要旨
21:30 (米) 7月 個人所得 前月比 (6月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 7月 PCE(個人消費支出) 前月比 (6月 0.5%、予想 0.7%)
21:30 (米) 7月 PCEデフレーター 前年同月比 (6月 3.0%、予想 3.3%)
21:30 (米) 7月 PCEコア・デフレーター 前月比 (6月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (6月 4.1%、予想 4.2%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.0万件、予想 23.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 170.2万人、予想 171.0万人)
22:00 コリンズ・ボストン連銀総裁、講演
22:45 (米) 8月 シカゴ購買部協会景況指数 (7月 42.8、予想 44.1)
25:00 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
9/1(金)
08:50 (日) 4-6月期 全産業設備投資額 前年同期比 (1-3月 11.0%、予想 7.8%)
10:45 (中) 8月 財新製造業PMI (7月 49.2、予想 49.2)
16:55 (独) 8月 製造業PMI・改定値 (速報 39.1)
17:00 (欧) 8月 製造業PMI・改定値 (速報 43.7)
17:30 (英) 8月 製造業PMI・改定値 (速報 42.5)
19:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、イベント参加
21:30 (米) 8月 非農業部門就業者数 前月比 (7月 18.7万人、予想 16.8万人)
21:30 (米) 8月 失業率 (7月 3.5%、予想 3.5%)
21:30 (米) 8月 平均時給 前月比 (7月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 8月 平均時給 前年同月比 (7月 4.4%、予想 4.3%)
22:45 (米) 8月 製造業PMI・改定値 (速報 47.0)
22:45 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
23:00 (米) 8月 ISM製造業景況指数 (7月 46.4、予想 47.0)
23:00 (米) 7月 建設支出 前月比 (6月 0.5%、予想 0.5%)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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