ドル円見通し 147円台前半へ急伸後に145円台中盤へ急落、乱調な展開続くか(23/8/30)

ドル円は8月29日夜に147.36円へ急伸したが、深夜の急落で30日早朝には145.64円まで安値を切り下げた。

ドル円見通し 147円台前半へ急伸後に145円台中盤へ急落、乱調な展開続くか(23/8/30)

147円台前半へ急伸後に145円台中盤へ急落、乱調な展開続くか

〇ドル円、米JORTS求人件数不冴えでFRB利上げ打ち止め感優勢となり、8/30早朝145.64まで急落
〇ユーロやポンド等が急伸しており、全般のドル高感が一服
〇米金利先物では9月FOMCはほぼ利上げ見送り、11月ないし12月の利上げ確率も35%程度
〇今後の米経済指標次第でこのまま利上げ停止となる可能性もあるとの見方が拡大
〇146.25以下での推移中は一段安余地ありとし、145.50割れからは145円前後への下落を想定
〇米経済指標から売られる場合は144円台中盤へ下値目途を引き下げる
〇146.25から146.50にかけては戻り売り有利、146.50超えから上昇再開とみて147円台目指す上昇想定

【概況】

ドル円は8月25日のジャクソンホール会合におけるパウエルFRB議長講演での利上げ継続感から146.62円へ上昇して8月17日午前高値146.54円を超えて年初来高値を更新し、28日深夜に146.73円まで高値を伸ばした後も146.50円を挟んだ揉み合いでしっかりしていた。
29日午後からは米10年債利回りの上昇による押し上げもあり28日深夜高値を超えたところから上昇が勢い付いて昨年11月以来9か月振りの147円台に到達、米国市場時間入り早々に147.36円まで高値を伸ばした。
しかし23時発表の米JOLTS求人件数が3か月連続で低下してCB消費者信頼感指数も悪化したために米FRBの利上げ打ち止め感が優勢となり、米長期債利回り低下とともにドル円は146円割れへ急落、30日早朝には145.64円まで安値を切り下げた。

直前の急伸に対する反動もあって下げ幅が大きくなったが、ユーロやポンド等が急伸しており、全般のドル高感が一服しているようだ。
今夜はADP民間雇用報告と米GDP改定値、31日に米FRBがインフレ指標として重視する7月PCE(個人消費支出)デフレーター、9月1日に8月米雇用統計と重要指標発表が続くため波乱含みとなりそうだ。

【米求人件数3か月連続低下、CB消費者信頼感も大幅低下】

米労働省による7月雇用動態調査(JOLTS)における求人件数は33万8000件減少の882万7000件となり3か月連続の減少で市場予想の946万5000件を大幅に下回って2021年3月以来の低水準となった。
採用件数は6月の594万人から577.3万人へ減少、求人率は6月の5.5%から5.3%へ低下、採用率も6月の3.8%から3.7%へ低下した。
労働市場が緩むことで賃金インフレ圧力が低下すると市場は受け止めてドル安反応を招いた。

米コンファレンス・ボードによる8月消費者景気信頼感指数は106.1となり7月の114.0から大幅低下して市場予想の116.0への改善に反して下回った。現況指数は7月の153.0から144.8へ低下、期待指数は7月の88.0から80.2へ低下、向こう半年間の景気見通しでは「改善する」が7月の17.2%から16.2%へ低下、「悪化する」は7月の14.5%から16.8%へ上昇、収入については「増加する」が7月の17.8%から16.5%へ低下、「減少する」は7月の9.9%から12.4%へ上昇した。
総じて信頼感の低下と先行きの楽観が後退する内容となり、JOLTS求人件数悪化とともにドル安要因となった。

【米長期債利回りは低下、ダウは3連騰】

8月29日の米長期債利回りは総じて低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.09%低下の4.12%となった。午後の4.18%から4.24%まで上昇していたものの米経済指標発表後の急落で一時は4.11%まで低下して8月22日の4.37%以降の最低とした。
30年債利回りは前日比0.05%低下の4.23%、2年債利回りは0.16%低下の4.90%となった。
米金利先物では9月FOMCではほぼ利上げ見送りとみており、11月ないし12月の利上げ確率も35%程度としており、今後の米PCEデフレーターや雇用統計内容次第ではこのまま利上げ停止となる可能性もあるのではないかとの見方が拡大している。
一方でNYダウは利上げ見送りの公算を期待して前日比292.69ドル高と上昇、25日から連日200ドルを超える上昇幅で3連騰となった。ナスダック総合指数も前日比238.63ポイント高で25日から3連騰した。

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は8月28日深夜高値で146.73円を付けてから146.20円台へ下落したところから147.36円へ急伸したが、深夜の急落で30日早朝には145.64円まで安値を切り下げた。
8月29日夜高値を目先のピークとした下落期だが、今夜から週末にかけての米経済指標内容次第では上下に大きく波乱する可能性があるため146.50円超えからは上昇再開と仮定して29日夜高値試しとし、高値更新からは新たな上昇期として9月4日夜から6日夜にかけての間への上昇を想定する。146.50円を超えずにさらに安値を更新する場合は当初の安値形成期を30日夜から9月1日未明にかけての間と仮定するが、週末を続落で終わる場合は9月5日の日中にかけて下落期が長引く可能性もあると注意する。

60分足の一目均衡表では8月29日夜高値からの急落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落したため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。先行スパンからの転落中は遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とするが、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は8月29日夜の急伸時に80ポイントに迫ってからその後の急落で30ポイント台へ低下した。50ポイント以下での推移中は一段安余地ありとし、30ポイント割れからは20ポイント前後を試すとみる。強気転換は55ポイントを超えてその後も50ポイント以上を維持して指数の高値を切り上げる上昇が必要と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、145.50円を下値支持線、146.25を上値抵抗線とする。
(2)146.25円以下での推移中は一段安余地ありとし、145.50円割れからは145円前後への下落を想定する。145円以下は反騰注意とするが、146.25円以下での推移か直前安値から1円を超える反騰がみられないうちは31日も安値試しへ向かいやすいとみる。米経済指標から売られる場合は144円台中盤へ下値目途を引き下げる。
(3)146.25円から146.50円にかけての水準は戻り売り有利とみるが、146.50円超えからは上昇再開とみて147円台回復を目指す上昇を想定する。146.25円を上回っての推移なら31日も高値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の予定】

8/30(水)
休場、トルコ
10:30 (豪) 7月 住宅建設許可件数 前月比 (6月 -7.7%、予想 -0.5%)
10:30 (豪) 7月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (6月 5.4%、予想 5.2%)
14:00 (日) 8月 消費者態度指数・一般世帯 (7月 37.1 予想 37.4)
15:00 (独) 7月 輸入物価指数 前月比 (6月 -1.6%、予想 -0.2%)
15:00 (独) 7月 輸入物価指数 前年同月比 (6月 -11.4%、予想 -12.9%)
18:00 (欧) 8月 消費者信頼感・確定値 (速報 -16.0)
18:00 (欧) 8月 経済信頼感 (7月 94.5、予想 93.5)
21:00 (独) 8月 CPI( 消費者物価指数)・速報値 前月比 (7月 0.3%、予想 0.3%)
21:00 (独) 8月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (7月 6.2%、予想 6.0%)

21:15 (米) 8月 ADP非農業部門民間雇用者数 前月比 (7月 32.4万人、予想 19.5万人)
21:30 (米) 7月 卸売在庫 前月比 (6月 -0.3%)
21:30 (米) 4-6月期 GDP・改定値 前期比年率 (速報 2.4%、予想 2.4%)
21:30 (米) 4-6月期 GDP個人消費・改定値 前期比年率 (速報 1.6%、予想 1.8%)
21:30 (米) 4-6月期 コアPCE・改定値 前期比年率 (速報 3.8%、予想 3.8%)
23:00 (米) 7月 住宅販売保留指数 前月比 (6月 0.3%、予想 -1.0%)
23:00 (米) 7月 住宅販売保留指数 前年同月比 (6月 -14.8%、予想 -15.7%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計

8/31(木)
休場 マレーシア
08:50 (日) 7月 小売業販売額 前年同月比 (6月 5.9%、予想 5.5%)
08:50 (日) 7月 鉱工業生産・速報値 前月比 (6月 2.4%、予想 -1.3%)
08:50 (日) 7月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (6月 0.0%、予想 -1.4%)
10:00 (NZ) 8月 ANZ企業信頼感 (7月 -13.1)
10:30 (中) 8月 国家統計局製造業PMI (7月 49.3、予想 49.1)
10:30 (豪) 4-6月期 民間設備投資 前期比 (1-3月 2.4%、予想 1.0%)
14:00 (日) 7月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (6月 -4.8%、予想 -1.3%)
16:15 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、南ア中銀主催のイベントで講演[南アフリカ・ケープタウン]
16:15 (英) ピル英中銀理事、講演
16:55 (独) 8月 失業者数 前月比 (7月 -0.40万人、予想 1.00万人)
16:55 (独) 8月 失業率 (7月 5.6%、予想 5.7%)

18:00 (欧) 7月 失業率 (6月 6.4%、予想 6.4%)
18:00 (欧) 8月 HICP(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (7月 5.3%、予想 5.1%)
18:00 (欧) 8月 HICPコア指数・速報値 前年同月比 (7月 5.5%、予想 5.3%)
20:30 (欧) シュナーベルECB理事、講演
20:30 (欧) ECB(欧州中銀)理事会議事要旨

21:30 (米) 7月 個人所得 前月比 (6月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 7月 PCE(個人消費支出) 前月比 (6月 0.5%、予想 0.7%)
21:30 (米) 7月 PCEデフレーター 前年同月比 (6月 3.0%、予想 3.3%)
21:30 (米) 7月 PCEコア・デフレーター 前月比 (6月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (6月 4.1%、予想 4.2%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.0万件、予想 23.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 170.2万人、予想 171.0万人)
22:00 (米) コリンズ・ボストン連銀総裁、講演
22:45 (米) 8月 シカゴ購買部協会景況指数 (7月 42.8、予想 44.1)
25:00 (欧) デギンドスECB副総裁、講演


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