ドル円見通し 年初来高値更新するも、週後半の重要指標待ちで慎重な動き
〇ドル円、8/28は146.50を挟んだ揉み合いだったが、24時台に高値146.73を付けて年初来高値更新
〇8/29朝にかけては再び146.50挟みの揉み合い、週後半の重要指標控え大きく仕掛け難い
〇ジャクソンホール会合で植田総裁は金融緩和継続姿勢示す、FRBとの対比でドル高円安へ進みやすいか
〇米長期債利回りは総じて低下、米株価はNYダウ・ナスダックともに連騰
〇146円を上回るうちは上昇余地ありとし、146.73超えからは147円試しとする
〇146円割れからは、145円台中盤(145.65から145.35)への下落を想定する
【概況】
ドル円は8月25日夜のジャクソンホール会合におけるパウエルFRB議長講演をきっかけに146.62円へ上昇して8月17日午前高値146.54円をわずかに超え、週明けの28日は146.50円を挟んだ揉み合いとなったが、24時台高値で146.73円を付けて1月16日安値以降の最高値を更新した。28日は英国市場が休場で米国の主要経済指標発表もなく手掛かり難だったため、29日朝にかけては再び146.50円を挟んだ揉み合いとなっている。
今週は8月30日のADP民間雇用報告と米GDP改定値、31日に米FRBがインフレ指標として重視する7月PCE(個人消費支出)デフレーター、9月1日には8月米雇用統計と重要指標発表が続くため大きく仕掛け難く、146円台後半に対する財務相等による円安けん制の動きへの警戒感もあるため、目先は高値を試しつつもやや慎重な動きで推移しやすいのではないかと思われる。
【ジャクソンホール会合での植田総裁発言は金融緩和継続姿勢】
8月28日に日銀はジャクソンホール会合における植田総裁講演要旨をHP上に公開した。植田総裁は日本経済について「内需の基調はしっかりしている」としたものの物価については「7月の消費者物価コア指数の伸び率が前年比3.1%となったものの年末にかけて低下していくとみている」とし、「物価の基調は2%の物価安定目標に達していない」との認識を示し、「日銀は従来からの金融緩和の枠組みを維持している」とした。
8月25日のパウエルFRB議長講演では7月FOMC時点における「今後は指標次第で追加利上げも利上げ見送りもあり得る」との姿勢を継続したが、最近の米経済指標が概ね良好でリセッション入りへの懸念が後退しているために年内あと1回の利上げはあり得ると市場はみており、直近の米金利先物市場における9月FOMCでの利上げ確率は2割程度とみられているものの、11月FOMCでの利上げ確率は凡そ6割となっている。
ドル円としては米FRBの追加利上げ余地と利上げ期間が長期化する可能性に対して日銀の金融緩和政策姿勢との対比によりドル高円安へと進みやすい。また全般的なドル高基調の中で円安が進行する場合には政府・日銀も実弾での市場介入に踏み込むのも難しいとみられており、今週後半の米経済指標を手掛かりにドル高円安が進行しやすい状況ではないかと思われる。
【米長期債利回りは低下、ダウは連騰】
8月28日の米長期債利回りは総じて低下した。
長期金利指標の米10年債利回りは先週末比0.03%低下の4.21%となった。8月10日から17日へ6連騰し、22日には一時4.37%を付けて2007年11月以来凡そ16年ぶり高水準に達し、23日には前日比0.14%の大幅低下で24日は4.174%まで低下してから戻したが、25日は4.29%へ続伸してから失速し、28日も続落したことで上昇に一服感がでている。
30年債利回りは0.01%低下の4.28%、利上げに敏感な2年債利回りは0.02%低下の5.06%となった。
米財務省は8月28日に2年債入札(450億ドル)、5年債入札(460億ドル)を実施、2年債入札の最高落札利回りは5.024%を付けて17年ぶり高水準となり、5年債最高落札利回りは4.400%で2007年末以来の高水準となった。29日には7年債(360億ドル)の入札がある。
一方でNYダウは先週末比213.08ドル高と上昇、25日の247.48ドル高からの連騰となり、ナスダック総合指数も25日の126.68ポイント高から28日は114.48ポイント高の連騰となった。米国の利上げ期間長期化への懸念はあるもののリセッションを回避して景気拡大は続くとの楽観が下支えしている印象だ。8月に入ってからの米国株安に落ち着きが見られれば、日経平均へのプラス効果とともにドル円には押し上げ要因となりやすいと思われる。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は8月17日午前と21日深夜の両高値をダブルトップ型として24日未明安値144.54円まで下落したが、その後の反騰で8月17日高値を超えたため、1月16日安値を起点とした上昇は三段上げの三段目として継続している。
現状は8月24日未明安値を目先の底として上昇したところだが、147円手前では上値が重くなっているため、146円を割り込む場合はいったん下げに入るとみて29日の日中から31日未明にかけての間への下落を想定する。ただし、8月28日深夜高値146.73円を超えるところからは新たな上昇期に入ると仮定して31日夜から9月4日午前にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では146.50円を挟んだ揉み合いが続いているため遅行スパンは実線と交錯しているが、先行スパンを上回る状況を維持している。先行スパンへ潜り込まないうちは遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンへ潜り込むところからは遅行スパン悪化中の安値試しとし、先行スパンの下限を試すとみる。ただし、先行スパンへ潜り込んだ後に再び好転するところからは新たな上昇期に入るのではないかと考える。
60分足の相対力指数は8月25日深夜から28日深夜への高値切り上げに際して指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられるので目先は下げやすいと注意する。30ポイント台は押し目買いされやすいとみるが、上昇再開から一段高へ進むには60ポイントを超える必要があると思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、146.00円を下値支持線、8月28日深夜高値146.73円を上値抵抗線とする。
(2)146円を上回るうちは上昇余地ありとし、146.73円超えからは147円試しとするが、147円手前は売られやすいと注意する。
(3)146円割れからは145円台中盤(145.65円から145.35円)への下落を想定する。145.50円以下は反騰注意とし、その後に146円を超えるところからは上昇再開とするが、146円以下での推移が続く場合は30日午前にかけても安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の予定】
8/29(火)
15:00 (独) 9月 GFK消費者信頼感 (8月 -24.4、予想 -24.3)
22:00 (米) 6月 連邦住宅金融局住宅価格指数 前月比 (5月 0.7%、予想 0.6%)
22:00 (米) 6月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (5月 -1.7%、予想 -1.3%)
23:00 (米) 7月 雇用動態調査(JOLTS)求人件数 (6月 958.2万件、予想 946.5万件)
23:00 (米) 8月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (7月 117.0、予想 116.0)
26:00 (米) 財務省7年債入札
8/30(水)
休場、トルコ
07:45 (NZ) 7月 住宅建設許可件数 前月比 (6月 3.5%)
10:30 (豪) 7月 住宅建設許可件数 前月比 (6月 -7.7%、予想 -0.5%)
10:30 (豪) 7月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (6月 5.4%、予想 5.2%)
14:00 (日) 8月 消費者態度指数・一般世帯 (7月 37.1 予想 37.4)
15:00 (独) 7月 輸入物価指数 前月比 (6月 -1.6%、予想 -0.2%)
15:00 (独) 7月 輸入物価指数 前年同月比 (6月 -11.4%、予想 -12.9%)
18:00 (欧) 8月 消費者信頼感・確定値 (速報 -16.0)
18:00 (欧) 8月 経済信頼感 (7月 94.5、予想 93.5)
21:00 (独) 8月 CPI( 消費者物価指数)・速報値 前月比 (7月 0.3%、予想 0.3%)
21:00 (独) 8月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (7月 6.2%、予想 6.0%)
21:15 (米) 8月 ADP非農業部門民間雇用者数 前月比 (7月 32.4万人、予想 19.8万人)
21:30 (米) 7月 卸売在庫 前月比 (6月 -0.3%)
21:30 (米) 4-6月期 GDP・改定値 前期比年率 (速報 2.4%、予想 2.4%)
21:30 (米) 4-6月期 GDP個人消費・改定値 前期比年率 (速報 1.6%、予想 1.8%)
21:30 (米) 4-6月期 コアPCE・改定値 前期比年率 (速報 3.8%、予想 3.8%)
23:00 (米) 7月 住宅販売保留指数 前月比 (6月 0.3%、予想 -1.0%)
23:00 (米) 7月 住宅販売保留指数 前年同月比 (6月 -14.8%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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