来週の為替相場見通し:『ジャクソンホール会議を経てドル買いトレンド再開。米雇用統計に注目』(8/26朝)

ドル円は7/14に記録した直近安値137.24をボトムに反発に転じると、今週末(8/25)にかけて、年初来高値146.63(昨年11/9以来の高値圏)まで急伸しました。

来週の為替相場見通し:『ジャクソンホール会議を経てドル買いトレンド再開。米雇用統計に注目』(8/26朝)

『ジャクソンホール会議を経てドル買いトレンド再開。米雇用統計に注目』

〇今週のドル円、中国経済先行き不透明感等に、週央にかけて週間安値144.54まで下落
〇その後は米指標の好調、パウエル議長のJホールでのタカ派的講演内容に146.63まで上げ越週
〇ユーロドル、米長期金利上昇とパウエル議長のタカ派発言に週末一時1.0766まで急落
〇ドル円、主要テクニカルポイント上抜け、強い買いシグナルも成立、地合いの強さ継続
〇ファンダメンタルズも日米金利差拡大とそれに伴う円キャリートレード継続がサポート
〇引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):145.00ー148.50、(EURUSD):1.0575−1.0875

今週のレビュー(8/21−8/25)

<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初145.34で寄り付いた後、(1)中国経済の先行き不透明感(不動産バブル崩壊懸念に端を発したチャイナショック再来の思惑)や、(2)上記1を背景としたリスク回避の円買い圧力(クロス円下落→ドル円連れ安)、(3)円金利上昇に伴う円買い圧力(本邦10年債利回りが2014年1月以来の高水準となる0.68%へ上昇)、(4)重要イベント(ジャクソンホール会議)を控えたポジション調整、(5)米金利低下に伴うドル売り圧力(米10年債利回りが8/22に記録した2007年11月以来の高水準4.36%から4.17%へ急低下)、(6)米8月製造業PMI速報値(結果47.0、予想49.0)および、米8月非製造業PMI速報値(結果51.0、予想52.2)の市場予想を下回る結果が重石となり、週央にかけて、週間安値144.54まで下落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(7)米7月耐久財受注/除輸送機器(結果+0.5%、予想+0.2%)の市場予想を上回る結果や、(8)米7月シカゴ連銀全米活動指数(結果+0.12、予想▲0.22)の市場予想を上回る結果、(9)米新規失業保険申請件数(結果23万件、予想24万件)の良好な結果、(10)本邦8月東京都区部消費者物価指数/生鮮食品を除くコアCPI(結果+2.8%、予想+2.9%、前回+3.0%)の市場予想を下回る結果、(11)円金利低下に伴う円売り圧力(本邦10年債利回りが0.68%から0.64%へ急低下)、(12)パウエルFRB議長によるタカ派的な見解発表(同氏は米西部ワイオミング州で開かれたジャクソンホール会議で「インフレ率はピークから下がってきているものの依然として高すぎる。適切だと判断すればさらに金利を引き上げる用意がある」と発言)、(13)上記12を背景とした米長期金利の反転上昇(米2年債利回りは8/23に記録したボトム4.93%から5.09%へ急上昇)が支援材料となり、週末にかけて、約9ヵ月半ぶり高値となる146.63(昨年11/9以来の高値圏)まで急伸しました。

引けにかけて反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間8/26午前1時35分現在)では、146.30前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0878で寄り付いた後、(1)欧州株の堅調推移や、(2)独連銀月報による「基調インフレ率はピークに達した可能性があるものの物価圧力の緩和ペースは遅すぎる」「インフレ率が2%超で高止まりするリスクが高まっている」とのタカ派的な見解発表、(3)上記2を背景としたECBによる金融引き締め長期化観測、(4)ドイツ債利回りの急上昇(独10年債利回りは前週末金曜日に記録した2.59%から2.70%へ急上昇)が支援材料となり、翌8/22にかけて、週間高値1.0932まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(5)ユーロ圏8月非製造業PMI速報値(結果48.3、予想50.5)の市場予想を下回る結果や、(6)ユーロ圏8月総合PMI速報値(結果47.0、予想48.5)の冴えない結果(約2年9ヵ月ぶり低水準)、(7)フランス8月INSEE企業景況感指数(結果96、予想99)の市場予想を下回る結果、(8)ドイツ8月IFO景況感指数(結果85.7、予想86.8)の市場予想を下回る結果、

(9)上記5、6、7、8を背景とした欧州経済の先行き不透明感、(10)ECBによる金融引き締め休止観測(欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力)、(11)米経済指標の良好な結果、(12)パウエルFRB議長によるジャクソンホール会議でのタカ派的な発言、(13)米金利上昇に伴うドル買い圧力、(14)200日移動平均線の下方ブレイクに伴うロング勢のロスカットが重石となり、週末にかけて、週間安値1.0766(6/13以来の安値圏)まで急落しました。引けにかけて持ち直すも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間8/26午前1時35分現在)では、1.0798前後で推移しております。

来週の見通し(8/28−9/1)

<ドル円相場>
ドル円は7/14に記録した直近安値137.24をボトムに反発に転じると、今週末(8/25)にかけて、年初来高値146.63(昨年11/9以来の高値圏)まで急伸しました。この間、日足ローソク足が全てのテクニカルポイント(一目均衡表転換線、基準線、雲上限、ボリンジャーミッドバンド、21日線、50日線、90日線、200日線)を上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の上昇トレンド」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの強さを印象付けるチャート形状となっております(4時間足などの下位足でも強い買いシグナルが再点灯)。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測(注目されたジャクソンホール会議でパウエルFRB議長は追加利上げの可能性を強調。CMEが提供するfed watch toolによると、次回9月FOMCでの追加利上げの織り込み度合は1週間前の11%から19.5%へ急上昇。年内追加利上げの織り込み度合は1週間前の29.0%から47.5%へ急上昇)、(2)日銀による金融緩和の長期化観測(今週開かれた岸田首相・植田日銀総裁会談でも金融政策や為替政策に関する真新しい情報は得られず→日銀は指値オペを通じて円金利の上昇を抑制するスタンスを継続→本邦10年債利回りが事実上の上限である1%に到達するまでに相応の時間を要するとの見方が市場コンセンサス→円売り安心感)、(3)上記1、2を背景とした日米金利差拡大とそれに伴う円キャリートレードの継続期待など、ドル円相場の更なる上昇を連想させる材料が揃っています。

日本政府・当局による介入観測が上値を抑制する材料として警戒されているものの、昨年10/21に記録した高値151.95を抜けてくるまでは実弾介入に踏み切る可能性は乏しく(あくまで口先介入に留まると見られることから)、ドル高・円安の流れを食い止めるには至らないと考えられます。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします(次のターゲットは昨年10/31高値148.86)。

尚、来週は米第2四半期GDP改定値や、米7月PCEデフレータ、米8月雇用統計、米8月ISM製造業景況指数などの重要指標に加えて、バーFRB副議長講演、アトランタ連銀ボスティック総裁講演、ボストン連銀コリンズ総裁講演、クリーブランド連銀メスター総裁講演などが予定されております。特に米8月雇用統計への注目度が高く、失業率の低下や、非農業部門雇用者数の増加(+前回分の上方修正)、平均時給の伸び率高進が確認されれば、「次回9月FOMCでの追加利上げの織り込み度合上昇→米長期金利上昇→米ドル高」の波及経路で、ドル高・円安の流れが一段と加速するシナリオが想定されるため、来週もドル円のアップサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです(市場参加者が夏休み休暇から続々と戻ってくるため、来週は金融市場のボラティリティが全体的に高まる可能性あり)。

来週の予想レンジ(USDJPY):145.00ー148.50

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は7/18に記録した約1年5カ月ぶり高値1.1277(昨年2/24以来の高値圏)をトップに反落に転じると、今週末(8/25)にかけて、約2カ月半ぶり安値となる1.0766(6/13以来の安値圏)まで急落しました。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイント(一目均衡表基準線、一目均衡表転換線、一目均衡表雲上下限、ボリンジャーミッドバンド、21日線、50日線、90日線、200日線)を軒並み下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を印象付けるチャート形状となっています(特に週末にかけて200日移動平均線を下方ブレイクしたため、ロング勢のロスカットが出易い相場環境→目先は5/31に記録した安値1.0634を試すシナリオを想定)。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感(直近で発表された欧州経済指標は軒並み悪化)や、(2)上記1を背景としたECBによる金融引き締め休止観測、(3)米FRBによる金融引き締め長期化観測(ジャクソンホール会議でパウエルFRB議長は追加利上げの可能性を強調→年内追加利上げの織り込み度合が急上昇→米金利上昇→米ドル買い)、(4)上記2、3を背景とした欧米金利差拡大とそれに伴うユーロ売り・ドル買い圧力など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロ売り・ドル買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は8/31に予定されているユーロ圏8月HICP速報値に注目が集まります。市場予想を下回る結果となれば、ECBによる金融引き締め休止観測を通じて、ユーロ売りの流れに拍車がかかる恐れがあるため、来週は週後半以降のユーロドル急落リスクに警戒が必要でしょう。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0575−1.0875

注:ポイント要約は編集部

『ジャクソンホール会議を経てドル買いトレンド再開。米雇用統計に注目』

ドル円日足

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