ドル円見通し 146.54円へ年初来高値を更新してからは調整局面(週報8月第三週)

ドル円は8月7日を起点とした底上げ基調から転落しているが、145円割れを買い戻されて先週を終えた。

ドル円見通し 146.54円へ年初来高値を更新してからは調整局面(週報8月第三週)

146.54円へ年初来高値を更新してからは調整局面

〇先週のドル円、146.54まで上昇後週末一時145円割れ、上昇に一服感
〇米10年債利回りは6連騰後に反落、ダウは4日ぶり反発
〇現状のドル円上昇基調が円の独歩安とはいえないため、政府・日銀も市場介入を仕掛け難いか
〇今週は8/25のジャクソンホール会合のパウエルFRB議長講演に注目
〇145.75を超えないうちは一段安余地あり、144.93割れからは144円台前半への下落を想定
〇145.75超えからは上向きとして8/17高値146.54を試すとみる

【概況】

ドル円は8月4日夜の米雇用統計を通過して7日午前に141.51円まで下げたところから上昇再開に入り、8月10日の米CPIと11日の米PPIを通過してインフレの高止まりによる追加利上げへの懸念と、米長期債利回りの上昇で8月17日午前には146.54円へ上昇して昨年9月22日に政府・日銀が24年ぶりの市場介入を実施した時の高値145.89円を超え、1月16日安値127.22円以降の年初来高値を更新した。
しかし146円台に対する高値警戒感から利益確定売りが優勢となり、8月17日まで連騰してきた米長期債利回りが低下したことで19日未明安値で144.93円まで下げた。145円台へ戻して週を終了したが、8月15日夜安値145.09円を割り込んだために8月7日午前安値を起点とした底上げ基調が崩れて上昇一服感が出ている。

【8月25日、ジャクソンホール会合のパウエルFRB議長講演に注目】

毎年恒例のカンザスシティー連銀主催のジャクソンホール会合におけるパウエルFRB議長講演が当面する最大の焦点となる。FRBは6月FOMCで利上げを据え置いたが7月FOMCで0.25%利上げを決定した上で次回の9月会合以降は指標次第とした。8月18日未明のFOMC議事要旨では利上げ反対が2名にとどまり大半がインフレリスクの上ぶれを警戒して追加利上げ支持姿勢だったことが示された。市場はそれでも9月会合での利上げ見送りとその後も利上げ停止状態が続くとの見方を変えていないが、年内あと1回の追加利上げや利下げ開始時期が2024年中後半へずれ込む可能性も懸念されている。
パウエル議長講演がタカ派姿勢を示せばドル円は市場介入を警戒しつつも米長期債利回り上昇とともに年初来高値更新へ向かう可能性があり、ハト派姿勢を見せるようだと日米長期金利差はこれ以上拡大しないとして円高への揺れ返しへと進む可能性が高まると思われる。

【米10年債利回りは6連騰後に反落、ダウは4日ぶり反発】

長期金利指標の米10年債利回りは8月10日に3.96%へ低下した当日からの反騰で8月17日まで6連騰となり17日には一時4.33%をつけて昨年10月に付けた2021年以降のピークである4.34%に迫ったが、18日は上昇一服で前日比0.2%低下の4.26%となった。連騰後の一服商状と思われるが、金利先物市場ではまだ低い追加利上げの可能性が高まるようだと昨年10月のピークを超えて2007年11月以来の高水準へ進むことも懸念される。
30年債利回りも8月10日からの6連騰で8月17日には4.43%を付けて昨年10月のピークを超えて2011年以来の高水準に達したが、18日は0.01%低下で上昇一服となった。
2年債利回りは8月9日からの連騰で8月15日に5.02%を付けたものの7月6日に付けた5.12%には届かず上げ渋りに入ったが、18日は前日比0.02%上昇して4.95%で週を終えた。

NYダウは8月15日から17日へ3営業日続落していたが18日は25.83ドル高と小幅ながら4営業日ぶりに反発した。ナスダック総合指数は26.15ポイント安に終わり8月15日から4営業日続落となった。ダウは8月1日高値から下落基調に入り、ナスダック総合指数は7月19日高値から下落基調に入っており、ともに利下げ時期の先送りや格付け会社による銀行セクターへの格下げ見通し等に圧迫されている印象だ。
米長期債利回りが上昇基調を継続すればドル円は短期的な調整を消化して一段高へ進む可能性もあるが、米長期債利回りが上昇一服から抜け出せずに株安が続く場合は下げやすくなると注意したい。

【1月16日安値を起点とした三段上げ、市場介入への警戒感と挑発】

ドル円は昨年10月21日高値151.94円から大幅下落したが、1月16日安値127.22円を底として上昇を再開した。3月8日高値137.91円までを一段目とし、3月24日安値129.83円まで8.28円の下落となったところを押し目として6月30日高値145.06円までを二段目の上昇とし、7月14日安値137.24円まで7.82円の下落となったところを再び押し目形成として6月30日高値を超えて三段上げの三段目に入ったと思われる。
昨年9月22日の市場介入時高値145.89円を超えたことによる介入警戒感はあるものの、昨年9月22日の市場介入では当日の高安で5円幅の急落が発生したものの10月21日高値151.94円へ一段高となり、そこで再び大規模介入が行われたことでようやくドル円の上昇にブレーキがかかった経緯を踏まえれば、現状も一度の市場介入では短期的な急落反応を招いたとしてもバーゲンハント買いされて昨年10月21日高値への一段高と同様に上昇再開に入る可能性もあると市場は見ているだろう。

また、昨年もドルの全面高を背景としていたものの円の独歩安という印象があり、現状における上昇基調が円の独歩安とはいえないため、政府・日銀も市場介入を仕掛け難いとの見方もされている。政府・日銀としては150円台や昨年10月21日高値を超えることで円の独歩安という印象が強まることを抑制するためだったり、1日の上昇幅が2円を超えるような「急激な変動」に対する正常化のためという介入に際しての理屈が欲しいところと思われる。

【昨年市場介入時の経験と一段高における上値目途】

上昇相場が三段上げ型に発展する場合、二段目の上昇が最大となり一段目と三段目の上昇規模が概ね同規模となるケースがある。その場合は1月16日安値から3月8日高値までの上昇幅10.70円を7月14日安値に加算した147.94円が上値計算値となり、6月30日高値から7月14日安値までの下げ幅7.82円の倍返しなら152.82円が上値計算値となる。これらを踏まえれば8月17日高値146.54円を超えるところからはまず147円台後半から148円を試し、148円を超えるところからは心理的節目の150.00円、昨年10月21日高値151.94円、倍返しの152.82円を順次試して行くことも考えられる。

昨年9月22日の介入では当日の高値145.89円から安値140.36円まで5.53円の急落となり、10月21日から24日への2営業日連続介入で10月21日高値151.94円から10月24日安値145.50円まで6.44円の急落、さらに10月27日安値145.11円まで続落した。いずれも一目均衡表の26日基準線を試している。それらを踏まえれば実弾介入があれば26日基準線前後を試すとみるが、26日基準線前後は一旦買われやすいとみる。
市場介入前には財務相や財務官による口先けん制のトーンがそれまでよりも明らかに厳しくなること、金融機関へのレートチェックなどによる警告的な動きも見られるのだろうと思われる。

【目先は足場固め 当面のポイント】

【目先は足場固め 当面のポイント】

ドル円は8月7日を起点とした底上げ基調から転落しているが、145円割れを買い戻されて先週を終えた。当面は米長期債利回りおよび国内10年債利回り動向を見ながらの展開となるが、145円割れを繰り返し買われてしっかりすることで上昇再開に入るのか、145円割れを買い戻せなくなりいったん安値の落ち着きどころを探る展開へ進むのか試されつつ、8月25日のジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長発言を見定めて次のトレンドを形成してゆくのだろうと思われる。

(1)当初、8月19日未明安値144.93円を下値支持線、8月18日夜の反発時高値145.75円を上値抵抗線とする。
(2)145.75円を超えないうちは一段安余地ありとし、144.93円割れからは144円台前半(144.50円から144.00円)への下落を想定する。144.20円以下は反発注意とするが、日米中の株安、米長期債利回り低下、日本10年債利回り上昇の場合は143円台へ向かう可能性もあるとみる。ただしパウエル議長講演前は買い戻されやすいとみる。
(3)145.75円超えからは上向きとして8月17日高値146.54円を試すとみる。146.54円手前は反落注意とするが、146.54円超えからは147円を目指す上昇を想定する。パウエル議長講演前はいったん戻り売りされやすいとみる。

【当面の主な予定】

8/21(月)
休場 フィリピン
07:45 (NZ) 7月 貿易収支 (6月 0.09億NZドル)
15:00 (独) 7月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (6月 -0.3%、予想 -0.2%)

8/22(火)
BRICS首脳会議(8/24まで、ヨハネスブルク)
14:00 (日) 日銀 基調的なインフレ率を捕捉するための指標
17:00 (欧) 6月 経常収支・季調済 (5月 91億ユーロ)
23:00 (米) 7月 中古住宅販売件数・年率換算 (6月 416万件、予想 415万件)
23:00 (米) 7月 中古住宅販売件数 前月比 (6月 -3.3%、予想 -0.2%)
23:00 (米) 8月 リッチモンド連銀製造業指数 (7月 -9)
27:30 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、イベント挨拶、 ボウマンFRB理事発言
28:30 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、ボウマンFRB理事、討論会参加

8/23(水)
07:45 (NZ) 4-6月期 四半期小売売上高 前期比 (1-3月 -1.4%、予想 -0.2%)
16:30 (独) 8月 製造業PMI・速報値 (7月 38.8、予想 38.6)
16:30 (独) 8月 サービス業PMI・速報値 (7月 52.3、予想 51.5)
17:00 (欧) 8月 製造業PMI・速報値 (7月 42.7、予想 42.7)
17:00 (欧) 8月 サービス業PMI・速報値 (7月 50.9、予想 50.5)
17:30 (英) 8月 製造業PMI・速報値 (7月 45.3、予想 45.0)
17:30 (英) 8月 サービス業PMI・速報値 (7月 51.5、予想 50.8)
22:45 (米) 8月 製造業PMI・速報値 (7月 49.0、予想 48.9)
22:45 (米) 8月 サービス業PMI・速報値 (7月 52.3、予想 52.5)
23:00 (米) 7月 新築住宅販売件数・年率換算 (6月 69.7万件、予想 70.7万件)
23:00 (米) 7月 新築住宅販売件数 前月比 (6月 -2.5%、予想 1.4%)
23:00 (欧) 8月 消費者信頼感・速報値 (7月 -15.1、予想 -14.5)
23:30 (欧) EIA週間石油在庫統計
24:30 (米) 財務省2年変動利付債入札
26:00 (米) 財務省20年債入札
米共和党大統領選候補者討論会(ウィスコンシン州ミルウォーキー)

8/24(木)
米ジャクソンホール会合(8/26まで)
21:30 (米) 7月 耐久財受注 前月比 (6月 4.7%、予想 -4.0%)
21:30 (米) 7月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (6月 0.6%、予想 0.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.9万件、予想 24.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 171.6万人、予想 170.0万人)
25:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、インタビュー
26:00 (米) 財務省30年インフレ連動債入札

8/25(金)
08:01 (英) 8月 GFK消費者信頼感 (7月 -30、予想 -29)
08:30 (日) 8月 東京都区部CPI(消費者物価指数)生鮮食料品除く 前年同月比 (7月 3.0%、予想 2.9%)
08:50 (日) 7月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (6月 1.2%、予想 1.2%)
15:00 (独) 4-6月期 GDP・改定値 前期比 (速報 0.0%、予想 0.0%)
15:00 (独) 4-6月期 GDP・改定値・季調済 前年同期比 (速報 -0.2%、予想 -0.2%)
15:00 (独) 4-6月期 GDP・改定値・季調前 前年同期比 (速報 -0.6%、予想 -0.6%)
17:00 (独) 8月 IFO企業景況感指数 (7月 87.3、予想 86.8)
22:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、インタビュー
23:00 (米) 8月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 71.2、予想 71.2)
23:05 (米) パウエルFRB(米連邦準備理事会)議長、講演
28:00 (欧) ラガルドECB(欧州中銀)総裁、講演

注:ポイント要約は編集部

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