来週の為替相場見通し:『ドル買いトレンドの継続を想定。ジャクソンホール会議に注目』(8/19朝)

ドル円は7/14に記録した安値137.24をボトムに反発に転じると、今週後半にかけて、年初来高値146.57(昨年11/10以来、約9カ月ぶり高値圏)まで急伸しました。

来週の為替相場見通し:『ドル買いトレンドの継続を想定。ジャクソンホール会議に注目』(8/19朝)

『ドル買いトレンドの継続を想定。ジャクソンホール会議に注目』

〇今週のドル円、週後半にかけて約9カ月ぶり高値146.57まで急伸
〇日本政府の弱い介入姿勢、米指標好調、FOMC議事要旨のタカ派的内容と米金利急上昇が背景
〇その後中国の為替介入強化方針、世界的なリスクオフ到来が重石となり、週末は145.30台に反落
〇ユーロドル、中国の経済先行き不透明感等に週末にかけ一時1.0845まで下落
〇ドル円、主要テクニカルポイント上抜け、強い買いシグナルも成立、地合いの強さ継続
〇ファンダメンタルズも日米金利差拡大とそれに伴う円キャリートレード継続がサポート
〇引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週はジャクソンホール会議後のドル円急伸リスクに警戒が必要
〇来週の予想レンジ(USDJPY):143.75ー147.75、(EURUSD):1.0675−1.0975

今週のレビュー(8/14−8/18)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初144.99で寄り付いた後、早々に週間安値144.66まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(1)日本政府・当局による口先介入が殆ど見られなかったことに対する安堵感(鈴木財務相による「投機筋の動きがあればしかるべき措置をとる」との発言や、神田財務官による「為替相場について過度な変動は望ましくなく、高い緊張感を持って注視している」との発言のみ)や、(2)対人民元でのドル買い圧力(中国経済の先行き不安→人民元急落→米ドル急伸→ドル円連れ高)、(3)米7月小売売上高(結果0.7%、予想0.4%、※前月比)の市場予想を上回る結果、(4)米7月住宅着工件数(結果145.2万件、予想145.0万件)の市場予想を上回る結果、(5)米7月設備稼働率(結果79.3%、予想79.1%)の市場予想を上回る結果、(6)米7月鉱工業生産(結果+1.0%、予想+0.3%)の市場予想を上回る結果、

(7)米FOMC議事要旨のタカ派的な結果(議事要旨内に「当局者はインフレリスクによりさらなる引き締めが必要となる可能性と指摘」「当局者はインフレに著しい上振れリスクがあると指摘」との記述あり)、(8)本邦7月貿易収支(結果787億円赤字、予想479億円黒字、前回430億円黒字)の赤字転落、(9)米金利上昇に伴うドル買い圧力(米10年債利回りが昨年10/21以来の高水準となる4.32%へ急上昇)が支援材料となり、週後半にかけて、昨年11/10以来、約9カ月ぶり高値となる146.57まで急伸しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(10)中国人民銀行による元安阻止を目的とした国有銀行を通じた為替介入の方針強化(人民元急反発→米ドル急落→ドル円連れ安)や、(11)中国不動産大手の中国恒大集団による連邦破産法15条の適用申請、(12)世界的なリスクオフ到来(クロス円下落→ドル円連れ安)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間8/19午前4時10分現在)では、145.32前後まで反落する動きとなっております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0953で寄り付いた後、(1)天然ガス先物価格の上昇圧力や、(2)上記1を背景としたユーロ圏におけるインフレ率再上昇の思惑、(3)ドイツ7月卸売物価指数(結果▲2.8%、予想▲2.9%)の市場予想を上回る結果が支援材料となり、週明け早々に、週間高値1.0961まで上昇しました。

しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(4)中国経済の先行き不透明感(中国7月鉱工業生産、中国7月小売売上高、中国7月固定資産投資が軒並み冴えない結果を記録した他、中国不動産大手の中国恒大集団がニューヨークで連邦破産法15条の適用を申請)や、(5)米長期金利の急上昇(良好な米経済指標+タカ派な米FOMC議事要旨)、(6)上記4、5を背景とした世界的なリスクオフ到来(グローバルな株安・リスクアセット下落→市場心理悪化→リスク回避のドル買い圧力)、(7)ラトビア中銀カザークス総裁による「追加利上げ幅は小幅になる見通し」「追加利上げの決定前に新たな見通しの提示が必要」との慎重な発言(ECBによる金融引き締め休止観測)が重石となり、週末にかけて、週間安値1.0845(7/6以来の安値圏)まで下落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間8/19午前4時10分現在)では、1.0876前後で推移しております。尚、今週発表されたドイツ8月ZEW景況感指数(結果▲12.3、予想▲15.0)は市場予想を上回る結果となりましたが、ユーロ買いでの反応は限定的となりました。

来週の見通し(8/21−8/25)

<ドル円相場>
ドル円は7/14に記録した安値137.24をボトムに反発に転じると、今週後半にかけて、年初来高値146.57(昨年11/10以来、約9カ月ぶり高値圏)まで急伸しました。週末にかけて反落に転じるも、ダウンサイドに複数のサポートポイント(一目均衡表転換線、基準線、雲上限、ボリンジャーミッドバンド、21日線、50日線、90日線、200日線)が並んでいることや、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の上昇トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測(米経済が力強さを維持)や、(2)日銀による金融緩和の長期化観測、(3)上記1、2を背景とした日米金利差拡大とそれに伴う円キャリートレードの継続など、ドル円相場の上昇を連想さえる材料が揃っています。

ドル円が145円の大台を超えてきたため、日本政府・当局による為替介入が警戒されているものの、昨年高値151.95を上抜けてくるまでは実弾介入に踏み切る可能性は乏しく、結果として口先介入効果は限定的なものに留まると考えられます。また、中国発のリスクオフ到来についても、リスク回避の円買い(クロス円下落→ドル円連れ安)と、リスク回避のドル買いの並走が想定されるため、両者が打ち消し合うことで、ドル円相場への影響は限定的となりそうです。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。

尚、来週は8/24ー8/26の日程で開催されるジャクソンホール会議(カンザスシティ地区連銀主催の国際経済シンポジウム)に注目が集まります。特に、日本時間8/25午後11時5分から始まるパウエルFRB議長講演に市場参加者の関心が集まっており、同氏が自然利子率への言及(上振れ確認)を行う場合や、年内追加利上げの可能性を残す場合、利下げ検討は時期尚早とのスタンスを維持する場合には、「市場参加者によるタカ派的との受け止め→米FRBによる金融引き締め長期化観測→米長期金利上昇→米ドル買い」の経路で、ドル円に強い上昇圧力が加わる恐れもあるため、来週はジャクソンホール会議後のドル円急伸リスクに警戒が必要でしょう。

来週の予想レンジ(USDJPY):143.75ー147.75

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は7/18に記録した約1年5カ月ぶり高値1.1277(昨年2/24以来の高値圏)をトップに反落に転じると、今週末にかけて、約1カ月半ぶり安値となる1.0845(7/6以来の安値圏)まで急落しました。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日移動平均線、90日移動平均線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表基準線、一目均衡表転換線、一目均衡表雲上下限)を軒並み下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を強く印象付けるチャート形状となっています。目先は最後の関門として市場参加者に意識されている200日移動平均線(1.0790前後)を試す動きとなりそうです(同水準の下抜けに成功できれば、5/31に記録した安値1.0634付近まで一気に下げ足を速めるリスクあり)。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感(今週発表されたドイツ8月ZEW景況感指数は期待指数こそ市場予想を上回るも、現況指数は予想に反して急低下)や、(2)上記1を背景としたECBによる金融引き締め休止観測、(3)米FRBによる金融引き締め長期化観測、(4)上記2、3を背景とした欧米金利差拡大とそれに伴うユーロ売り・ドル買い圧力、(5)中国経済の先行き不透明感など、ユーロドル相場の更なる下落を連想させる材料が揃っています。こうした中、来週は上記1を見極める目的で、ユーロ圏8月PMI速報値や、ユーロ圏8月消費者信頼感指数速報値、ドイツ8月IFO景況指数に注目が集まります。これらのデータが市場予想を下回る場合には、ECBによる金融引き締め休止観測→欧州債利回り低下→ユーロ売りの経路で、ユーロドルに強い下押し圧力が加わるシナリオが想定されるため、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落を来週のメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0675−1.0975

注:ポイント要約は編集部

『ドル買いトレンドの継続を想定。ジャクソンホール会議に注目』

ドル円日足

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