ドル円見通し 昨年9月22日の介入時高値を意識して足踏みだが145円台でしっかり(23/8/16)

ドル円は8月15日夕刻高値で145.86円を付けて昨年9月22日に政府・日銀が市場介入した時の高値145.89円に迫った。

ドル円見通し 昨年9月22日の介入時高値を意識して足踏みだが145円台でしっかり(23/8/16)

昨年9月22日の介入時高値を意識して足踏みだが145円台でしっかり

〇ドル円、米10年債利回りの乱調な展開もあり145円台でやや慎重な動き、上昇基調は継続
〇フィッチ、米銀行経営環境格付けをAAマイナスからAプラスに引き下げ可能性、70超える米銀が対象
〇7月米小売売上高は前月比0.7%増で堅調、FRB追加利上げの可能性を意識させる
〇NY連銀8月製造業景況指数はマイナス19.0、前月比大幅低下、予想も下回り2か月連続の悪化
〇ミネアポリス連銀総裁「利下げ議論は来年以降となる可能性」、利下げ開始時期の先送り感強まる
〇145.09を上回るうちは上昇余地あり、145.86超えからは146円台序盤への上昇を想定
〇145.09割れからはいったん下げに入るとみて144円台中盤への下落を想定、144.50以下は買われやすい

【概況】

ドル円は8月15日夕刻高値で145.86円を付けて昨年9月22日に政府・日銀が市場介入した時の高値145.89円に迫ったが介入警戒感から上昇一服となり、21時半の米7月小売売上高が市場予想を上回ったところで145.81円へ戻したものの米銀格下げ見通し報道等によりNY市場入り後に145.09円まで下げた。
145円割れを回避して持ち直し、8月14日午前安値144.65円から底上げをして先週からの上昇基調は継続している印象だが、米10年債利回りが米小売売上高発表からいったん上昇して後に米銀格下げ報道により急落し、深夜以降は追加利上げを意識して再び上昇するなど乱調な展開となったこともあり、145円台でやや慎重な動きを見せている。

【米銀格下げ見通し】

大手格付け会社フィッチ・レーティングスは8月15日のCNBCインタビューにアナリストが答える形で米銀行業界の経営環境に関する格付けが現在の「AAマイナス」から「Aプラス」に引き下げられれば、70を超える米銀が格下げされるとした。同社は6月に米銀行業界の経営環境に関する格付けを「AA」から「AAマイナス」に引き下げている。また大手格付け会社ムーディーズも8月に入ってから米銀10行の格付けを1段階引き下げて見通しをネガティブとしている。

【米小売は好調】

米商務省による7月の小売売上高は前月比0.7%増となり、市場予想の0.4%増および6月の0.3%増を大幅に上回り、4か月連続のプラスとなった。自動車・同部品を除くと1.0%増(予想は0.4%)、ガソリンを除くと0.8%増、自動車・同部品・ガソリンを除くと1.0%増だった。他の米経済指標はまちまちだったが小売の堅調さが米FRBによる追加利上げの可能性を意識させた。
NY連銀による8月の製造業景況指数はマイナス19.0となり、7月のプラス1.1から大幅に低下、市場予想のマイナス1.0を下回り2か月連続の悪化となった。
米労働省による7月の輸入物価指数上昇率は前月比0.4%上昇して市場予想の0.2%を上回り6月の0.1%低下から再上昇した。前年同月比は4.4%低下だったが6月の6.1%低下から上昇した。
NAHB(全米住宅建設業者協会)による8月の住宅建設業者指数は50となり7月の56から低下して市場予想の56を下回った。

ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は15日に、インフレは依然として高すぎるとし、PCE(個人消費支出)のコアデフレーターは直近で4.1%だったが「2%へ低下させる必要がある」とし、「利下げを議論するのに妥当となり得る状況はおそらくは来年には起きず、それ以降となる可能性がある」とした。市場は年内の追加利上げの可能性を意識しつつも利上げ停止が続くと予想し、来年は利下げを期待しているところだが、カシュカリ総裁発言は利下げ開始時期の先送り感を強めたようだ。

【米10年債利回りは連騰、ダウは反落】

8月15日の米10年債利回りは前日比0.02%上昇の4.22%となったが、一時は4.28%を付けて昨年11月以降の最高値を更新し、いったん4.17%まで低下してから再上昇した。米小売売上高が堅調だったことにより上昇し、米銀格下げ見通しによるリスク回避の債券買いでいったん急低下し、追加利上げや利下げ再開時期の後ずれ感で再上昇している。30年債利回りは0.03%上昇の4.32%、2年債利回りは5.00%を付けてから4.91%へ低下して再上昇したが前日比0.01%低下の4.96%で終了した。
NYダウは前日比361.24ドル安、ナスダック総合指数も157.28ポイント安と下落した。米銀格下げ見通しと利下げ再開時期の後ずれ感、中国の小売や鉱工業生産が冴えなかったことでNY原油が続落したためにエネルギー関連株安となったことも影響したようだ。

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は8月7日午前安値141.51円を起点とした上昇基調を継続しているが、8月10日夜の米CPI発表直後に143.29円へ下げたところから一段高に入ったとして高値形成期を17日午後にかけて想定した。15日夕高値で145.86円を付けてから15日夜安値145.09円へ反落して持ち直しつつあるところのため、15日夜安値割れを回避するうちは17日午後にかけての上昇余地ありとする。また15日夜安値を起点として新たな上昇期に入る可能性もあるとみる。ただし、15日夜安値を割り込む場合はいったん下落期に入るとみて17日夜にかけての下落を想定する。

60分足の一目均衡表では8月15日夜の反落時に遅行スパンが一時悪化したが持ち直し、先行スパンを上回る状況が続いているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。先行スパンへ潜り込むところからは下落期入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、先行スパンから転落する場合は下げ足が速まる可能性があると注意する。

60分足の相対力指数は8月11日から14日夜への一段高に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられ、15日夜には40ポイントまで急落した。その後は50ポイント台を回復しているものの60ポイント以下での推移中はもう一段安余地ありとし、45ポイント割れからは30ポイント前後への低下を伴う下落を想定する。60ポイント超えからは上昇継続とみて70ポイント台への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8月15日夜安値145.09円を下値支持線、8月15日午前高値145.86円を上値抵抗線とする。
(2)145.09円を上回るうちは上昇余地ありとし、145.86円超えからは146円台序盤への上昇を想定する。146.20円以上は反落警戒とするが、145.09円割れを回避するうちは17日午前も高値試しへ向かいやすいとみる。上昇が勢い付く場合は146円台後半を試す可能性もあるとみる。
(3)145.09円割れからはいったん下げに入るとみて144円台中盤(144.65円から144.35円)への下落を想定する。144.50円以下は買われやすいとみるが、145.09円以下での推移なら17日午前も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

8/16(水)
休場、インド
11:00 (NZ) ニュージーランド中銀 政策金利 (現行 5.50%、予想 5.50%)
15:00 (英) 7月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (6月 0.1%、予想 -0.5%)
15:00 (英) 7月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (6月 7.9%、予想 6.8%)
15:00 (英) 7月 コアCPI 前年同月比 (6月 6.9%、予想 6.8%)
15:00 (英) 7月 RPI(小売物価指数) 前月比 (6月 0.3%、予想 -0.7%)
15:00 (英) 7月 RPI(小売物価指数) 前年同月比 (6月 10.7%、予想 9.0%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP・改定値 前期比 (速報 0.3%、予想 0.3%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP・改定値 前年同期比 (速報 0.6%、予想 0.6%)
18:00 (欧) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 0.2%、予想 -0.1%)
18:00 (欧) 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 -2.2%、予想 -4.2%)

21:30 (米) 7月 住宅着工件数・年率換算 (6月 143.4万件、予想 145.0万件)
21:30 (米) 7月 住宅着工件数 前月比 (6月 -8.0%、予想 1.1%)
21:30 (米) 7月 建設許可件数・年率換算 (6月 144.0万件、予想 146.3万件)
21:30 (米) 7月 建設許可件数 前月比 (6月 -3.7%、予想 1.5%)
22:15 (米) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 -0.5%、予想 0.3%)
22:15 (米) 7月 設備稼働率 (6月 78.9%、予想 79.1%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) FOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨

8/17(木)
休場、インドネシア
07:45 (NZ) 4-6月期 PPI(生産者物価指数) 前期比 (1-3月 0.3%)
08:50 (日) 7月 通関貿易収支・季調前 (6月 430億円、予想 437億円)
08:50 (日) 7月 通関貿易収支・季調済 (6月 -5532億円、予想 -4360億円)
08:50 (日) 6月 機械受注 前月比 (5月 -7.6%、予想 3.5%)
08:50 (日) 6月 機械受注 前年同月比 (5月 -8.7%、予想 -5.8%)
10:30 (豪) 7月 新規雇用者数 (6月 3.26万人、予想 1.50万人)
10:30 (豪) 7月 失業率 (6月 3.5%、予想 3.6%)

13:30 (日) 6月 第三次産業活動指数 前月比 (5月 1.2%、予想 -0.2%)
18:00 (欧) 6月 貿易収支・季調済 (5月 -9億ユーロ)
18:00 (欧) 6月 貿易収支・季調前 (5月 -3億ユーロ)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 24.8万件、予想 24.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 168.4万人、予想 170.0万人)
21:30 (米) 8月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (7月 -13.5、予想 -10.0)
23:00 (米) 7月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (6月 -0.7%、予想 -0.4%)


注:ポイント要約は編集部

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