米CPI発表を控えて円安優勢、8月3日高値に迫る
〇ドル円、143円回復後は143円割れを繰り返し買われ8/10早朝に高値143.74、8/3高値に迫る
〇昨日は米国債入札好調で米10年債利回りは低下するも2年債利回りは上昇、ダウは続落
〇今夜の米CPIは高止まりの予想、伸び率が予想を上回ればドル高、下回ればドル安反応を招きやすい
〇現時点では、9月FOMCでの利上げ見送り確率は50%超、FRB関係者ではタカ派とハト派が混在
〇142.98を上回るうちは上昇余地ありとし、143.88超えからは144円台中盤への上昇を想定
〇142.98割れからは142.50前後への下落を想定
【概況】
ドル円は7月28日の日銀金融政策発表(マイナス金利維持、長期金利変動許容上限引き上げ)後の乱高下で付けた安値138.06円から8月3日高値143.88円へ上昇、8月4日の米雇用統計を挟んだドル安により8月7日午前には141.51円まで下げたが、米雇用統計後のドル売りを消化して上昇に転じて8月8日には143円台を回復し、その後も143円割れを繰り返し買われて10日早朝には143.74円まで高値を伸ばして8月3日高値に迫ってきた。
8月10日夜の米7月CPIの内容次第では金融市場全般が大きく変動する可能性があり、9日夕から10日朝にかけて主要通貨に対するドルの強弱はまちまちだったが、ドル円は米CPI通過後も上昇基調が続くとの見方がやや優勢のようだ。
【今夜の米CPIから秋相場への流れ見えるか】
8月10日夜に米7月CPI(消費者物価指数)上昇率の発表がある。市場の事前予想では前年比が6月の3.0%から3.3%へと再び上昇し、コアCPIの前年比も6月の4.8%と変わらず高止まりと見込まれている。全体およびコア指数の前月比はいずれも6月と同じ0.2%上昇と見込まれている。伸び率が予想を上回る場合には9月ないし11月に追加利上げされる可能性が浮上してドル高となり、予想を下回るなら9月の追加利上げはなく現状のまま据え置きが続くとしてドル安反応を招きやすいと市場は見ている。
7月12日に発表された6月CPIは前年比が5月の4.0%から3.0%へと大幅に鈍化して2021年3月以来およそ2年ぶりの低い伸び率となり為替市場はドル安反応を見せ、ドル円は6月30日高値145.06円から下落に転じていた道中で140円台前半から138円台序盤へ急落して7月14日安値137.24円へ続落した。
昨年は11月10日に10月のCPI前年比が9月の8.2%から7.7%へ鈍化し、2022年2月以来の8%割れとなったことでインフレの鈍化傾向が顕著としてドル全面安となり「逆CPIショック」と呼ばれた。米CPIの前年比は2022年6月に9.1%を付けたところをピークとして鈍化傾向を続けている。8月9日時点の米金利先物市場における9月FOMCでは利上げ見送り確率が50%を超えている。
FRB関係者ではボウマンFRB理事が追加利上げ支持姿勢、NY連銀ウィリアムズ総裁が年内の利上げ余地に含みを残しつつ2024年の利下げ開始を示唆、フィラデルフィア連銀ハーカー総裁は9月FOMCでの利上げ見送りを支持するなど、タカ派的なものとハト派的なものが混在している。
【米国債入札好調で米10年債利回りは低下するも2年債利回りは上昇、ダウは続落】
8月9日の米長期債利回りは10年債入札好調により10年債利回りが0.02%低下の4.01%、30年債利回りも0.04%低下の4.17%となったが、2年債利回りはCPI再上昇を意識して0.05%上昇の4.81%となった。
米財務省が8月2日に四半期定例入札における米債発行規模増額としたことで債券売り・利回り上昇となり10年債利回りは8月4日に4.21%へ上昇したが、その後は低下に転じている。9日に実施された10年債入札は最高落札利回りが3.999%で入札直前の水準に近く応札倍率が2.56倍で今年2月以来の好調さだった。8月8日の3年債420億ドル入札も好調だったが、10日には30年債の270億ドル入札が予定されている。
利上げに敏感な2年債利回りは7月27日に4.95%まで上昇した後を4.90%を挟んだ持ち合いで推移、8月4日の低下で持ち合いから転落したが、CPI発表前に持ち直した。
一方でNYダウは前日比191.13ドル安と下落、8日の158.64ドル安からの続落だが、8月1日に35679.13ドルを付けて昨年10月底以降の高値を更新した後は8月2日から4日へ3日続落し、7日の反発を挟んで再び続落していることで上値が重い印象だ。ナスダック総合指数も8日の110.08ポイント安から9日は162.30ポイント安の続落だったが、米銀格下げの余韻もあり7月19日に14446.55ポイントを付けて10月以降の最高値とした後は調整安に入っている。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は8月2日未明と3日午後の両高値をダブルトップとして下落したが、7日午前安値を起点として上昇再開に入っている。8月3日高値143.88円に迫っているところであり米CPI発表も控えているので、ダブルトップ型を形成して下落に転じる可能性と、ダブルトップ・ブレイクで上昇が勢い付く可能性のあるところと思われる。
8月9日午後安値142.98円割れを回避するうちは上昇継続とし、9日午後安値割れからはいったん調整安に入るとみてCPI発表から続落の場合は10日深夜から15日午前にかけての間への下落を想定するが、CPI発表から一段高へ進む場合は新たな上昇期入りとして来週前半への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では9日午後への下落で遅行スパンが一時悪化したもののその後の上昇で再び好転し、先行スパンを上回った状況は継続しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。
8月9日午後安値割れからはいったん調整安に入るとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とするが、先行スパンからの転落を回避する場合はその後に遅行スパンが好転するところから上昇再開とし、先行スパンから転落する場合はその後もしばらく安値試しを続けやすくなるとみる。
60分足の相対力指数は8月8日午前から10日早朝への高値更新に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられるので反落警戒とし、50ポイント以上での推移中は上昇余地ありとするが、50ポイント割れから続落する場合は戻り一巡による下落再開とみて30ポイント以下への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8月9日午後安値142.98円を下値支持線、8月3日高値143.88円を上値抵抗線とする。
(2)142.98円を上回るうちは上昇余地ありとし、143.88円超えからは144円台中盤(144.30円から144.70円)への上昇を想定する。144.50円以上は反落注意とするが、143.50円以上での推移か直前高値から1円を超える反落が発生しないうちは11日午前も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)142.98円割れからは142.50円前後への下落を想定する。米CPI発表後の反騰で7日以降の高値を更新する場合は新たな上昇期入りとして144円台中盤への上昇を想定するが、CPI発表から続落の場合は142円割れを試す下落を想定し、142.70円以下での推移なら11日午前も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
8/10(木)
21:30 (米) 7月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (6月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (6月 3.0%、予想 3.3%)
21:30 (米) 7月 コアCPI 前月比 (6月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 コアCPI 前年同月比 (6月 4.8%、予想 4.8%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.7万件、予想 23.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 170.0万人、予想 171.0万人)
26:00 (米) 財務省30年物四半期入札(230億ドル)
27:00 (米) 7月 財政収支 (6月 -2280億ドル、予想 -1093億ドル)
28:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、ボスティック・アトランタ連銀総裁、ウェビナー参加
8/11(金)
休場 日本
15:00 (英) 4-6月期 GDP・速報値 前期比 (1-3月 0.1%、予想 0.0%)
15:00 (英) 4-6月期 GDP・速報値 前年同期比 (1-3月 0.2%、予想 0.2%)
15:00 (英) 6月 月次GDP 前月比 (5月 -0.1%、予想 0.2%)
15:00 (英) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 -0.6%、予想 0.2%)
15:00 (英) 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 -2.3%、予想 -1.1%)
15:00 (英) 6月 貿易収支・物品 (5月 -187.23億ポンド、予想 -163.00億ポンド)
15:00 (英) 6月 貿易収支 (5月 -65.78億ポンド、予想 -35.00億ポンド)
21:30 (米) 7月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (6月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (6月 0.1%、予想 0.7%)
21:30 (米) 7月 コアPPI 前月比 (6月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 コアPPI 前年同月比 (6月 2.4%、予想 2.3%)
23:00 (米) 8月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (7月 71.6、予想 71.5)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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