ドル円見通し 米雇用統計後の下落一服で142円台へ戻す展開(23/8/8)

7日夜に142円を再び割り込んだところを買われて8日未明には142.57円まで戻り高値を切り上げた。

ドル円見通し 米雇用統計後の下落一服で142円台へ戻す展開(23/8/8)

ドル円見通し 米雇用統計後の下落一服で142円台へ戻す展開

〇ドル円、8/7午前に141.51へ下げるも雇用統計後の売り一巡で買い戻し優勢となり、142円台序盤へ戻す
〇夜に142円を再び割り込んだところを買われ、8/8未明142.57まで戻り高値を切り上げる
〇日銀金融政策決定会合における「主な意見」公表、インフレ目標達成見込み示す
〇米FRB高官、追加利上げ支持しつつも来年の利下げに言及、追加利上げの有無を巡り思惑が交錯する
〇米長期債利回りは概ね上昇、NYダウは4営業日ぶり反騰、ナスダックも5日ぶりの反発
〇142円を上回るうちは上昇継続とし、142.90超えからは143円台前半への上昇を想定する
〇8/7夜安値141.80割れからは下げ再開とみて、8/7午前安値141.51円試しとする

【概況】

ドル円は8月4日の米雇用統計発表直後に142.90円へいったん上昇してから売りに転じて4日深夜には141.55円へ下落、その後は安値更新を回避したものの141円台後半での下げ渋りにとどまって先週を終えた。週明けの8月7日は午前に141.51円へ安値を若干切り下げたものの米雇用統計後の売り一巡として米長期債利回り上昇を見ながら買い戻し優勢となり142円台序盤へ戻し、7日夜に142円を再び割り込んだところを買われて8日未明には142.57円まで戻り高値を切り上げた。
8月7日はNY連銀総裁が来年の利下げを示唆する発言をする一方、ボウマンFRB理事が追加利上げを主張するなどFRBの追加利上げの有無を巡り思惑が交錯したが、8月4日の米雇用統計に対する反応が落ち着いた上で、8月10日の米7月CPI(消費者物価指数)の発表も迫っており、CPIを見定めてから次の方向性を探るという市場心理で動いている印象だ。

【日銀金融政策決定会合、主な意見ではインフレ目標達成見込みを示す】

8月7日には7月27-28日開催の日銀金融政策決定会合における「主な意見」が公表された。この会合ではマイナス金利等が現状維持とされたもののYCC(イールドカーブコントロール=長短金利操作)における長期金利変動許容上限が従来の0.5%から1.0%へ事実上引き上げられたために解釈を巡ってドル円が発表直後に凡そ3円幅の乱高下となりながら138.06円まで急落したが、YCC修正に対する市場反応が一巡した後は金融緩和政策継続感と米長期債利回り上昇を見て反騰に転じ、8月3日高値143.88円まで上昇を継続した。

主な意見をみると、YCC修正について「金融緩和を続けるため、混乱なく対応できる間に長短金利操作の柔軟性を一定程度高めておくことが望ましい」とし、金融緩和を継続しつつ先行きの金利上昇に対する予防的な見直しとして上限が引き上げられたようだ。「2%の持続的・安定的な物価上昇の実現がはっきりと視界にとらえられる状況になっている」と述べるものや、「今春ベースアップ実現を機に賃上げとサービス価格の上昇が続く新たな局面が見込まれる」との言及もあり、長短金利操作の弾力的対応を可能とすることが適当との意見多数を占めたようだ。ただ、「デフレマインド払拭の千載一遇のチャンスを手放さないために慎重な判断が必要」との意見もあり、早まった金融緩和政策の終了に釘を刺す姿勢も見られた。
市場はYCC修正により新発10年債利回りが0.60%台から0.70%程度まで上昇するとみているが、それを織り込んだ上でドル円は8月3日高値へ上昇したが、実際に新発10年債利回りの上昇が顕著になるとドル円の上昇にもややブレーキがかかる状況も見せている。

【米FRB高官、追加利上げ支持しつつも来年の利下げに言及】

8月7日にNY連銀のウィリアムズ総裁によるインタビューが報じられたが、同総裁は「物価上昇ペースは年末までに年率2.5%程度まで鈍化してFRBの目標である2%に手が届く範囲に収まる可能性がある」とし、「ターミナルレート(政策金利のピーク)想定にかなり近づいている」、「インフレ率が低下し続ければインフレ調整後の実質金利が上昇しないように来年の利下げが適切になる」との見方を示した。
一方でボウマンFRB理事は「インフレ率が目標の2%を依然として大きく上回っている」、「求人件数が労働力供給を大きく超過し労働市場は引き続きタイト」とし、「追加利上げが必要になる可能性がある」と述べた。また利上げを緩める判断については「インフレが持続的かつ相当下がるという証拠が必要であり、依然として賃金の伸びが物価高に見合っていない」として暫くは見通せない印象を示した。

8月4日の米7月雇用統計では就業者増加数が予想を下回り直近2か月分も下方修正されたことで追加利上げへの圧力が後退したとしてドル安反応が見られたが、一方では失業率の改善や平均時給の伸びが予想を上回るなど賃金インフレ圧力が顕在であることも示された。強弱内容が入り混じりだったため市場は8月10日の7月米CPIへと関心を向けている。今夜はボウマンFRB理事のパネルディスカッションでの発言やアトランタ連銀ボスティック総裁の講演が注目される。

【米10年債利回りは急落一服で反発、ダウは4営業日ぶり反騰】

8月7日の米長期債利回りは米国債入札を控えての債券売りがやや優勢となり概ね上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは先週末比0.05%上昇の4.09%となった。8月3日にかけて4連騰の上昇で4.20%を付けたところから米雇用統計後の急落で4日は0.14%低下と急落したが、市場の反応が落ち着いて再上昇気配を見せている。
30年債利回りは先週末比0.07%上昇の4.27%となった。8月3日に前日比0.21%の大幅上昇で4.30%をつけ、4日は一時4.35%へ上昇して昨年11月以来の最高水準を更新したものの米雇用統計後の低下で前日比0.10%低下となったが、7日は持ち直しがみられた。
2年債利回りは一時4.85%まで上昇したものの失速して先週末と変わらずの4.77%だった。7月27日に4.95%まで上昇した後は高止まりの様相で4.90%を挟んだ持ち合いだったが、4日に前日比0.12%低下となり持ち合いから下放れている。

一方でNYダウは前日比407.51ドル高と上昇、8月2日から4日までの3営業日続落から持ち直し、ナスダック総合指数も85.16ポイント高と上昇して5日ぶりの反発となった。米雇用統計を通過して今後の追加利上げもあり得るものの景気全般の底固さから先高期待が回復しているようだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

8月3日高値からの反落で2日夕安値を割り込んだため、8月4日午前時点では8月2日未明と3日午後の両高値をダブルトップとした下落期入りとし、3日午後高値以降の安値更新からは9日夕にかけての下落を想定するとした。
8月7日午前安値から持ち直しているため8月3日午後からの下落が一巡して上昇期に入っている可能性があるが、8月4日夜高値142.90円を超えないうちは戻り高値切り下がり基調の範囲にとどまる。このため8月7日夜反落時安値141.80円を割り込む場合は下落継続として9日夕にかけての下落を想定するが、8月4日夜高値超えからは上昇期入りとして10日午後にかけての上昇と8月3日午後高値143.88円試しを想定する。

60分足の一目均衡表では8月7日午前安値からの上昇で遅行スパンが好転して先行スパンへ潜り込んでいる。先行スパンを上抜くところからは上昇が勢い付く可能性があるとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンから転落する場合は下落継続とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は8月4日深夜の下落で30ポイントを割り込んでから60ポイント台到達へ戻しているため、50ポイント以上での推移中は上向きとして70ポイントに迫る上昇を想定するが、50ポイント割れから続落する場合は戻り一巡による下落再開とみて30ポイント前後を再び試す下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、141.80円を下値支持線、142.90円を上値抵抗線とする。
(2)142円を上回るうちは上昇継続とし、142.90円超えからは143円台前半への上昇を想定する。143.50円以上は反落注意とするが、142円台を維持しての推移か直前高値から1円を超える反落がみられないうちは9日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)8月7日夜安値141.80円割れからは下げ再開とみて8月7日午前安値141.51円試しとし、141.51円割れからは141円台序盤(141.25円から141.00円)への下落を想定する。141.80円以下での推移か直前安値から1円を超える反騰がみられないうちは9日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

8/8(火)
未 定 (中) 7月 貿易収支・米ドル建て (6月 706.2億ドル、予想 706.0億ドル)
未 定 (中) 7月 貿易収支・人民元建て (6月 4912.5億元)
10:30 (豪) 7月 NAB企業景況感指数 (6月 9)
14:00 (日) 7月 景気ウオッチャー現状判断 (6月 53.6、予想 53.9)
14:00 (日) 7月 景気ウオッチャー先行判断 (6月 52.8、予想 52.7)
15:00 (独) 7月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前月比 (速報 0.3%、予想 0.3%)
15:00 (独) 7月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (速報 6.2%、予想 6.2%)
21:15 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
21:30 (米) 6月 貿易収支 (5月 -690億ドル、予想 -650億ドル)
21:30 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
23:00 (米) 6月 卸売売上高 前月比 (5月 -0.2%、予想 -0.1%)
26:00 (米) 財務省3年物四半期入札(420億ドル)

8/9(水)
休場、シンガポール、南ア
08:50 (日) 7月 マネーストックM2 前年同月比 (6月 2.6%)
10:30 (中) 7月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (6月 0.0%、予想 -0.5%)
10:30 (中) 7月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (6月 -5.4%、予想 -4.0%)
23:30 (米) エネルギー省EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省10年物四半期入札(380億ドル)



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