ドル円 米国CPI次第ながらも押し目は買い (週報8月第1週)

先週のドル円、金曜の雇用統計では予想よりも弱いNFP(非農業部門雇用者数)を受けて米金利が下げに転じ、為替市場では一段のドル売りを見ての週末クローズとなりました。

ドル円 米国CPI次第ながらも押し目は買い (週報8月第1週)

米国CPI次第ながらも押し目は買い

〇先週のドル円、米金利上昇を材料としたドル高・円安の流れから、木曜の株安でリスクオフの円買い
〇金曜の米雇用統計不冴えで米金利が低下、一段のドル売りを見ての週末クローズ
〇8/10発表の米CPI次第で年内もう1回の利上げの可能性も、今週と来月のCPIの方向性に要注意
〇テクニカルには、絶対的な日米金利差を考えると141.14を下回ったら買いが短期的に妥当
〇今週は141.00レベルをサポートに143.00レベルをレジスタンスとする流れを見る

今週の週間見通し

先週のドル円は木曜までは米金利上昇を材料にドル高・円安の流れが続いていましたが、木曜にNYダウ先物の下げをきっかけに株安の動きがリスクオフの円買いとなり、金曜の雇用統計では予想よりも弱いNFP(非農業部門雇用者数)を受けて米金利が下げに転じ、為替市場では一段のドル売りを見ての週末クローズとなりました。

先週は円安が進行しても特に当局からの円安けん制発言も見られなかったため、おそらく円売りポジションを積み増していたとみられますが、それが木曜金曜の下げで投げさせられたという流れです。それでも米10年債利回りは4%台とまだ高い水準にありますし、ドル円も先週初の水準よりも先週末の水準は1円近く円安に位置し、動きが落ち着いてくるとドル買いが湧いてくるという動きが予想されます。

株式市場は上値が重くなっていますが、絶対的な日米金利差がある以上、長期的なドル売りポジションは取ることが出来ません。個人投資家の多くも日々のスワップ金利(1万ドルで1日あたり200円を超える受け取り)を考えると、円売りポジションに傾くのは当然と言えます。そこに短期筋のポジションが乗ってきて、動き次第で先週後半のような動きになることもあるというのが現状です。

シカゴ通貨先物の円売りポジションも先々週こそ減ったものの、先週は再び微増に転じていますので、まさに下がったところではカウンターでドル買いが入ってくるという地合いにあります。

今週の注目材料は米国CPIですが、コンセンサスは3.3%と前回の3.0%から上昇すると見られています。物の価格自体は1年前との比較ではだいぶ落ち着き始めた時期との比較ですから、以前ほどの下落率は見込めないと同時にサービス価格が高止まりしていることから全体としてのCPIは下げ止まりという予想になっています。先月CPIが3.0%時点でサービス価格のみのサービスCPIは5.7%と高どまっていたこともあり、今後はサービス価格の低下が起きない限りFRBがターゲットとする2.0%は簡単には実現できそうもありません。

市場参加者は既に利上げ打ち止めをコンセンサスとしていますが、仮に今週のCPIがコンセンサスよりも高い数字となると、年内もう1回の利上げを考える参加者が増えてくる可能性もあり、今週と来月のCPIの方向性には要注意ということになるでしょう。

テクニカルにはいつもの日足チャートをご覧ください。

大きくは6月高値と7月安値とで上下ともに見た後の落ち着きどころを探る流れにあると見てよいのですが、上下ともにピンクのラインで示したレジスタンスラインとサポートラインとでその値幅を着実に狭めている段階にあります。短期的には上下の水準の半値にあたる141.14をニュートラルな水準と考えることも出来ますが、絶対的な金利差がある以上は同水準を下回ったら買いという見方のほうが現在は妥当と思えます。

今週発表されるCPIが予想よりも強ければドル買いで動くでしょうし、逆に弱ければ下がったところはやはりドル買いというイメージです。上値は依然として143円台前半はレジスタンスと見てよいでしょうから、今週は141.00レベルをサポートに143.00レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2023年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

8月7日(月)
08:50 日銀会合(7月)主な意見 ☆
15:00 ドイツ6月鉱工業生産
21:30 ボウマンFRB理事講演 ☆
21:30 (アトランタ連銀総裁講演)

8月8日(火)
08:01 英国7月小売売上高
08:50 本邦6月貿易収支
09:30 豪州8月消費者信頼感
10:30 豪州7月企業景況感
**:** 中国7月貿易収支
15:00 ドイツ7月CPI
15:45 フランス6月貿易収支
21:15 フィラデルフィア連銀総裁講演 ☆
21:30 米国6月貿易収支
23:00 米国6月卸売売上高

8月9日(水)
**:** シンガポール市場休場
10:30 中国7月CPI・PPI ☆
23:30 週間原油在庫統計

8月10日(木)
08:01 英国7月住宅価格
16:00 トルコ6月失業率、鉱工業生産
21:30 米国7月CPI ☆
21:30 米国新規失業保険申請数
28:00 (アトランタ連銀総裁講演)

8月11日(金)
**:** 東京市場休場
15:00 英国4〜6月期GDP速報値 ☆
15:00 英国6月鉱工業生産、貿易収支
15:45 フランス7月CPI
21:30 米国7月PPI ☆
23:00 米国8月ミシガン大消費者信頼感速報値 ☆

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時−NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

7月31日(月)
週明けのドル円は若干下押ししてスタートしたものの日銀が臨時の国債買いオペを実施したことをきっかけに円安再開、欧州市場序盤には142円台乗せとなりました。その余波が海外市場でも続きNY市場前場には142.69レベルまで買いが続き、引けにかけてはやや押して引けました。

8月1日(火)
前日の流れを受け昨日もドル円は底堅い動きでスタート、欧州市場昼以降は米金利が急速に上昇した動きとともにドル買いが目立ち、米国経済指標は予想よりも弱かったものの全くドル売りにはつながらず、NY昼過ぎには143.54レベルまで上伸し、高値圏で引けました。

8月2日(水)
ドル円は東京前場こそドル買いが先行したものの日経平均が下げる動きを見て後場は円高の動きとなりました。欧州市場序盤には142.23レベルの安値をつけたものの下がったところでの買いは根強く、NY市場では強い経済指標を背景に米金利が上昇する動きとともに143.47レベルまで上昇、高値圏での引けとなりました。

8月3日(木)
ドル円は東京前場は全く動かず後場に入り日銀が臨時の買いオペをアナウンスしたことをきっかけに143.89レベルの高値をつけました。欧州市場序盤にダウ先が下げ、日経先物も下げると円高へと動き143円割れ。その後の海外市場では一貫してドルがじり安の展開となり、NY市場では弱い経済指標も手伝って142.06レベルまで続落後に142円台半ばへ戻して引けました。

8月4日(金)
雇用統計を前にドル円は142円台後半で方向感がはっきりしないもみあいを続けていました。雇用統計では失業率が3.5%、平均時給は前月比0.4%と予想よりも強いいっぽうでNFPは+18.7万人と弱い結果でした。発表直後は142.93レベルとドル高に振れましたが、その後は弱いNFPによる米金利低下、ドル売りへと方向感が定まり141.55レベルまで水準を下げ、安値圏での週末クローズとなりました。

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