番狂わせのトランプ大統領誕生に市場乱高下
今朝の時点でトランプ氏の勝利を予想していた市場関係者はほとんどいなかったのではないでしょうか。
米大統領選の開票を同時間帯に迎えた本日の東京市場でドル円は、クリントン氏の勝利と、その後のFRBの年内利上げを前提とした105円近辺の水準で取引が始まりましたが、午前中激戦州とされたフロリダ州で朝方トランプ氏の優位が伝えられ、9時台に一時104円台半ばまでドルが下落。
しかし、10時ごろには一時クリントン氏が優位に立ちドル円は急反発、高値105.45をつけました。その後11時には再びフロリダ州でトランプ氏が優位に立ったことから、102円近辺に急落、以後同州でクリントン氏が優位を回復することはありませんでした。
ただこの時点でも市場はトランプ氏の勝利を未だ確信はしておらず、最終的には選挙人数でクリントン氏の勝利の可能性が高いと考えていたものと思います。
しかし、開票が進むにつれ、トランプ氏が事前に優位とされていた州を確実に抑え、接戦州の多くでの優位が伝えられたのに対し、クリントン氏のほうは事前に選挙人獲得が確実視されていた州のいくつかで苦戦、激戦のオハイオ州をトランプ氏が押さえたあたりから票読みが拮抗し始め、午後13時半ごろにフロリダ州がトランプに堕ちるとトランプ勝利の可能性が強まりました。
この時点でドル円は本日の安値101.19をつけ、日経平均は一時1,000円を超える下落となりました。市場がトランプ氏の勝利を確信したのはこのあたりと思われ、為替も株もセリングクライマックスとなりました。
そして、残りの州の票読みが進む中ペンシルベニア州でのトランプ氏勝利が伝えられた時点で、大勢が決し、16時半ごろに一部報道機関がトランプ氏の当選を伝え、またクリントン氏がトランプ氏に電話で敗北を認めたと報道されました。
16時50分トランプ氏は勝利宣言を行い、国民に融和を呼びかけ大統領選は実質終了しました。
本日のドル円の値幅は4円27銭。現在市場は落ち着きを取り戻し、昼過ぎの安値から半分戻した103.50近辺で取引されています。
これまでの氏の言動、垣間見られる気質、基地費用負担等の日本への姿勢など考えると、トランプ大統領の誕生は特に日本にとっては悪夢のような出来事とも言えますが、事実は事実としてこれからのことを考える必要があります。
トランプ氏のこれまでの主張から経済的には法人税、所得税の軽減とインフラ投資、保護貿易化とTPP離脱NAFTAの見直しなどがすぐに思い出されますが、実現可能性については、改めて検討する必要があります。
そもそもここまでのトランプ氏の発言には一貫性が無く、当選のためのパフォーマンスとも考えられることから、これまでの言動は大まかな方向性を示してはいても、個別にはこれから集めるスタッフと実質スクラッチから作り上げていくというのが現実ではないでしょうか。ただ、実現すれば米国内の貧富の格差は拡大しながらも、全体としての景気浮揚効果はありそうです。
もうひとつ、FRBのイエレン議長に対し利上げを行わないことを非難し「恥を知れ」と言ったことも記憶に新しいところです。
利上げをしろと言っているので、市場のテーマである年内利上げはトランプ氏当選では揺るがないはずですが、政権に就くと立場は変わりますので、逆に景気浮揚のために利上げを抑制する方向に圧力をかけないともかぎりません。
いずれのんせよどこかの時期に議長交代は確実と思われ、現在の比較的安定感のあるFRBが今後も独立性を確保しながら運営を継続していけるのかどうかは重要なポイントとなります。
そもそも、政権を担当するための準備不足も指摘される中、今後来年1月20日の就任までに徐々に明らかになるであろう、施政方針、これまでの言動の現実との妥協点を個別に見極めていく必要がありそうです。
とにかく、一夜にしてこれまでの経済の根本的な枠組みの連続性が失われたに等しいのが今回の大統領選の結果です。ブレクジットの時と比べると意外に混乱度が少なかった今日の市場でしたが、それだけに、常識の通じない世界にはいるこれからの中長期的なボラティリティの増大には注意が必要です。
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