ドル円見通し 日銀YCC政策の軌道修正観測の報道で急落(23/7/28)

急激な円高反応が観測され28日早朝には138.76円まで急落した。

ドル円見通し 日銀YCC政策の軌道修正観測の報道で急落(23/7/28)

ドル円見通し 日銀YCC政策の軌道修正観測の報道で急落

〇ドル円、7/27夜の経済指標の良好な結果を受け、NY市場入りには141.31まで戻す
〇しかし日銀YCC政策の軌道修正観測の報道により急激な円高反応、7/28早朝に138.76まで急落
〇米GDP速報や耐久財受注など米経済指標は良好、追加利上げの可能性を意識してドル高反応となる
〇ECBは昨晩市場予想通りに政策金利を0.25%引き上げ、次回会合での利上げ停止の印象からユーロ急落
〇本日、日銀は金融政策決定会合の結果発表、YCCに手が付けられるのか注目される
〇米長期債利回りは総じて上昇、NYダウは13連騰後の反落
〇140.00以下での推移中は一段安余地ありとし、138.70割れからは138円前後への下落を想定する
〇140.00超えからは、7/27夜高値141.31試しとする

【概況】

ドル円は7月27日未明の米FOMCが0.25%利上げを決定、9月以降は指標次第で追加利上げも利上げ停止もあり得るとしたことを、ややタカ派色が薄れたとして全般ドル安反応となる中で27日早朝に140円を割り込み、27日午前には139.35円まで安値を切り下げたが、目先のドル売り材料消化としていったん落ち着き140円を挟んだ揉み合いで推移していた。
7月27日夜の米GDP速報等が予想を上回り、新規失業保険申請件数が前週に続いて改善したことでNY市場入りには141.31円まで戻したのだが、日銀が28日の金融政策決定会合でYCC(長短金利操作)における長期金利変動許容幅を柔軟に運用する姿勢へ軌道修正するとの報道により、急激な円高反応が観測され28日早朝には138.76円まで急落した。

日経新聞電子版は、「日銀は金融政策決定会合で長短金利操作の修正案を議論する方針」と報道し、「長期金利操作の上限を0.5%で据え置くものの市場動向に応じて超過を容認する案が浮上している」と報じた。7月21日夕刻にロイター通信社等が現状維持見込みと報道したことをきっかけに140円台序盤から夕刻に141.94円へ急伸し、神田財務官が円安けん制発言を行ったことで142円手前から調整安に入り、FOMCを通過してドル安円高基調での推移へ進んだ経緯もあり、日経の報道をサプライズとして市場はやや狼狽したようだ。
7月27日夜にかけての上昇から一転して一段安したことにより、本日の日銀金融政策決定会合と植田総裁会見内容に対しては市場も敏感な反応を示す可能性があると注意したい。

【米経済指標は良好、追加利上げの可能性も】

7月27日未明のFOMC声明および議長会見では、9月以降の各会合では利上げも利上げ停止もあり得るとしたため、市場はこのまま利上げ停止へ進む可能性と、経済指標が強くインフレ率の鈍化が続かない場合には追加利上げもあり得るとし、FOMC明けの米経済指標に注目が集まっていたが、GDP速報や耐久財受注が予想を上回り、新規失業保険申請件数が予想を下回る改善となったことで追加利上げの可能性を意識してドル高反応を見せた。
米商務省による2023年4-6月期GDP速報値は年率換算前期比2.4%増となり、市場予想の1.8%増を上回り、1-3月期の2.0%増も上回って4四半期連続のプラス成長となった。個人消費は前期比1.6%増で前期の4.2%増から鈍化したが12四半期連続のプラスとし、設備投資は7.7%増で前期の0.6%増から大幅に上昇した。一方で住宅投資は4.2%減、輸出は10.8%減となった。

米労働省による新規失業保険申請件数は7月27日までの週間で前週比7000件減の22万1000件となり、市場予想の23万5000件を下回って3週連続の改善となった。失業保険受給者総数は7月15日までの週間で169万人となり前週の174万9000人および市場予想の175万人を下回った。
米商務省による6月耐久財受注は前月比4.7%増となり5月の2.0%および市場予想の1.0%増を大幅に上回った。設備投資の先行指標である航空機を除く非国防資本財受注は0.2%増で市場予想の0.1%減を上回り、耐久財出荷は0.3%増、航空機を除く非国防資本財の出荷は0.2%増だった。

【ECBは利上げ停止に含みでユーロが急落】

ECB(欧州中銀)は7月27日夜の理事会で市場予想通りに政策金利を0.25%引き上げて4..25%としたが、ラガルド総裁が「次の動きは未定」「全ての選択肢が検討事項として残っている」と述べたことで次回会合で追加利上げを行う可能性を残したものの利上げ停止もあり得る印象を与えたため、ユーロドルは利上げ発表前に1.1149ドルへ上昇して7月25日夜安値1.1021ドル以降の高値としたが、利上げ発表後は目先の買い材料消化で売られ、総裁のハト派的発言と米GDP等が予想を上回ったことによるドル高反応も重なり1.10ドルを割り込んで28日早朝には1.0963ドルまで急落した。
米FRB、ECB共に次回会合では追加利上げの可能性も利上げ停止の可能性もあるとしたことで、今後は主要国の経済指標次第でドルの強弱も上下にブレることが考えられるが、景気指標としてはユーロ圏の低調さに対して米国の堅調さが目立っているため、ドル高基調で推移しやすくなってきたのではないかと思われる。

【日銀金融政策決定会合ではYCCに手が付けられるか?】

7月28日昼頃に日銀は金融政策決定会合の結果を発表する。日銀は7月に入ってからは前総裁時代からの大規模金融緩和政策の検証については今年12月と来年5月に検討会を行うとして検証に時間をかける姿勢を示し、7月18日にはG20財務相・中銀総裁会合後の会見で植田総裁が「前提条件が変わらなければ(金融緩和継続の)基本スタンスは変わらない」旨を発言したことで円安反応を招き、7月21日には今回の金融政策決定会合では現状維持見込みとの通信社報道をきっかけに142円に迫る上昇を見せた。

長短金利操作(YCC=イールドカーブコントロール)については、黒田前総裁時代に長期金利変動許容上限を0.25%から0.50%へ引き上げたことが事実上の利上げ措置と市場が受け止め、YCCのさらなる修正から金融緩和政策終了へ向かうのではないかとの見方が生じ、総裁交代から出口戦略が急がれるのではないかとの懸念が強まったことがあったが、植田総裁が繰り返し緩和継続姿勢を強調してきたことで1月16日以降安値を起点としてドル円は上昇してきた。
6月30日に145円に到達したことでドル円の上昇もいったん仕切り直しに入っているところだが、本日の日銀金融政策会合の内容次第では円高が勢い付く可能性とともに、金融緩和継続による安心感から円安が再開する可能性もあるところとして注目される。

【米長期債利回りは上昇、ダウは14連騰ならず】

7月27日の米長期債利回りは総じて上昇した。指標の10年債利回りは前日比0.13%上昇の4.00%、30年債利回りは0.10%上昇の4.04%、2年債利回りは0.07%上昇の4.93%となった。FOMCがややタカ派姿勢を緩めたことで26日は低下したものの、27日は前日の低下を解消して勢いある上昇となった。
一方で、NYダウは前日までの13連騰が途切れて前日比237.40ドル安と反落した。米経済指標は良好だったものの追加利上げへの警戒感と13連騰後の利益確定売りに押された。ナスダック総合指数も77.17ポイント安と下落した。NYダウの13連騰は1987年1月以来36年ぶりの連騰で、14連騰となれば1897年以来126年ぶりの快挙となるところだったが高値警戒感からいったん小休止の様相だ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は7月14日午前安値137.24円を起点とした上昇が7月21日夕高値141.94円でピークとなり下落期に入ってきた。FOMC後の下落で付けた安値139.35円から27日深夜に141.31円まで戻してから139円割れへ一段安しているため、現状は27日深夜高値を起点として新たな下落期に入っている可能性があるが、本日の日銀金融政策決定会合に対する反応次第では反騰入りの可能性もあるところとして乱高下に注意するが、軟調な展開が続く場合は8月3日にかけての下落を想定する。

60分足の一目均衡表では7月27日深夜への上昇で遅行スパンと先行スパンがともに好転したもののその後の一段安でそろって悪化している。先行スパンからの転落中は遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とする。強気転換は両スパンが再びそろって好転するところからとする。

60分足の相対力指数は7月27日夜の上昇で70ポイントに迫ってから30ポイント台へ急低下した。26日からの安値更新に際しては指数のボトムが切り上がる強気逆行気配も見られるが、10ポイント台への低下へ進む可能性もあると注意する。50ポイント以下での推移中は下向きとし、50ポイント超えからは反騰入りの可能性ありとみて60ポイント台後半への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、138.70円を下値支持線、140.00円を上値抵抗線とする。
(2)140.00円以下での推移中は一段安余地ありとし、138.70円割れからは138円前後への下落を想定する。日銀政策反応次第では137円前後へ急落する可能性もあると注意し、140円以下での推移か、直前安値から1.50円を超える反騰へ進めないうちは週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)140円超えからは27日夜高値141.31円試しとする。日銀政策反応次第では高値更新からは142円台後半へ向かう可能性もあると注意する。また27日深夜高値に届かない場合でも141円に迫った後に140円台を維持しての推移なら週明けは高値試しへ向かう可能性があるとみる。

【当面の主な予定】

7/28(金)
09:00 日銀金融政策決定会合 昼頃に結果と展望リポートを公表
10:30 (豪) 4-6月期 PPI(生産者物価指数) 前期比 (1-3月 1.0%)
10:30 (豪) 4-6月期 PPI(生産者物価指数) 前年同期比 (1-3月 5.2%)
10:30 (豪) 6月 小売売上高 前月比 (5月 0.7%、予想 0.0%)
15:30 (日) 日銀植田総裁、記者会見
18:00 (欧) 7月 消費者信頼感・確定値 (速報 -15.1)
18:00 (欧) 7月 経済信頼感 (6月 95.3、予想 95.0)
21:00 (独) 7月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前月比 (6月 0.3%、予想 0.3%)
21:00 (独) 7月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (6月 6.4%、予想 6.2%)

21:30 (米) 4-6月期 雇用コスト指数 前期比 (1-3月 1.2%、予想 1.1%)
21:30 (米) 6月 個人所得 前月比 (5月 0.4%、予想 0.5%)
21:30 (米) 6月 PCE(個人消費支出) 前月比 (5月 0.1%、予想 0.4%)
21:30 (米) 6月 PCEデフレーター 前年同月比 (5月 3.8%、予想 3.0%)
21:30 (米) 6月 PCEコア・デフレーター 前月比 (5月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 6月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (5月 4.6%、予想 4.2%)
23:00 (米) 7月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 72.6、予想 72.6)


注:ポイント要約は編集部

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