6月30日からの下落幅に対する半値戻しをクリアして142円に迫る
〇先週のドル円、週末にかけ一時141.91まで急伸、141円台後半で越週
〇植田総裁の金融緩和政策現状維持姿勢や日銀政策決定会合で現状維持の見込みとの報道等が背景
〇日銀は現状維持、米FOMCは0.25%利上げ後に利上げ停止か
〇米10年債利回りは小幅低下、NYダウは10連騰中
〇141.20円台を維持するうちは上昇継続、142円超えからは143円、144円台を順次試すか
〇141円割れからは、いったん修正安に入るとみて140円台前半試しを想定
【概況】
ドル円は6月30日に145.06円を付けて1月16日安値127.22円以降の高値を更新、昨年10月21日高値151.94円から今年1月16日安値までの下げ幅24.73円に対して17.84円の上昇で3分の2戻しラインの143.71円を超えたが、昨年9月22日に政府・日銀が市場介入した水準に迫ったことや財務相等による円安けん制発言が相次いだことで上昇にブレーキがかかり、7月7日の米雇用統計での就業者増加数が冴えず、7月12日の米6月CPIの前年比が12か月連続で鈍化して13日の米6月PPIも鈍化傾向を示したことによるドル売りで7月14日安値137.24円まで7.82円の下落幅となった。日銀が次回金融政策決定会合で金融緩和政策の軌道修正を行う可能性が取り沙汰されたことも7月14日への大幅下落の要因となっていた。
しかし137円台に対する売られ過ぎ警戒感から持ち直し、7月18日に植田日銀総裁がG20財務相・中銀総裁会合時に金融緩和政策の現状維持姿勢を強調したことから円安再開感が強まって19日夜に140円へ迫り、
7月21日未明に140.49円へ高値を切り上げてから21日午前に139.74円まで小反落したところも買われてシッカリしていた中、7月21日夕刻に日銀金融政策決定会合では現状維持の見込みとの報道をきっかけに141.94円へ急伸、神田財務官が急激な円安をけん制する発言を行ったことで142円台には届かずに上げ渋ったが、21日夜も141円台前半を買われ週を終えた。
【日銀は現状維持か】
7月27-28日に日銀金融政策決定会合がある。ロイター通信は7月21日夕刻に「日銀は長短金利操作(イールドカーブコントロール、YCC)を柱とした金融政策を修正せずに維持とする公算が大きい」と報じ、ブルームバーグ通信も「日銀は現時点で金融政策を修正する必要性は乏しい」と報じたことをきっかけにドル円が急伸した。
日銀は前回6月会合では金融政策を現状維持としたが、その後の議事要旨ではYCCを巡っては修正論も一部にみられたことで7月会合での政策修正があるのではないかとの懸念もあり、145円到達後に当面の円安が一巡したとして大幅下落に転じた。
しかし7月14日に日銀は前総裁時代からの大規模金融緩和政策の検証について一回目のワークショップを12月頃に、二回目を来年5月に行うとしたことで、検証に時間をかけて早計な軌道修正はないのではないかとの見方が再び優勢となり、7月14日以降の円安再開へのきっかけとなっていた。
7月18日には植田総裁がG20財務相・中銀総裁会合後の会見で緩和姿勢の前提や見通しに変化がないか「毎回の金融政策決定会合でチェックする」と述べたもののYCC修正へ言及せず、「前提が変わらない限りは全体のストーリー(金融緩和政策継続)は不変だ」と述べたこともその後の円安材料となった。
新発10年債等の利回りがYCCにおける長期金利許容変動上限の0.50%を常時超えてくる場合には上限引き上げの可能性も浮上するが、指値オペで抑え込んでいる状況は変わらず、この間の発言や報道を踏まえれば今回は現状維持、YCCの修正については9月以降、金融緩和からの出口へ本格的に動き出す軌道修正は年末から来年というイメージではなかろうか。
【米FOMCは0.25%利上げ後に利上げ停止か】
7月25-26日の米FOMCにおいては0.25%の追加利上げが確実視されている。前回の6月会合では利上げをいったん休止した上で年内あと2回の追加利上げ見通しを示し、パウエル議長は年内の利下げはないと強調した。しかしその後の6月CPIや6月PPIの鈍化傾向により市場では7月に利上げされても9月会合以降の追加利上げはないのではないかとの見方をいったん強めて為替市場はドル安となった。
その後、7月14日のミシガン大消費者調査による期待インフレ率の上昇や7月20日の失業保険申請件数が予想外の減少だったこと、フィラデルフィア連銀の景況指数における6か月先業況予想が2年ぶり高水準に達したこと等から9月以降の追加利上げもないとは言えなくなったとしてドル高がぶり返している。
FOMCが追加利上げの必要性について前回会合と同様の姿勢を示しつつも追加利上げの可能性があるという程度とするのか、追加利上げが必要・適切と強調してタカ派姿勢を示すのかによりドルの強弱も変わってくると思われる。またサプライズ感のない内容なら今後のインフレ指標や雇用統計等で一喜一憂する展開が続くことにもなりかねない。
【米10年債利回りは小幅低下、ダウは10連騰】
7月21日の米長期債利回りは概ね小幅低下した。長期金利指標の10年債利回りは前日比0.01%低下の3.84%となった。7月7日に4.09%まで上昇したところから19日に3.73%まで低下したが、20日は揺れ返しで0.10%上昇したが、21日は小動きにとどまった。週間では7月14日の3.83%からわずかな上昇だった。
30年債利回りは0.01%低下の3.90%、7月10日の4.09%から19日に3.83%まで低下したがその後はやや持ち直している。利上げ問題に敏感な2年債利回りは前日から横ばいの4.85%、7月6日の5.12%から7月13日に4.61%まで下げた後は持ち直している。
一方でNYダウは前日比2.51ドル高と小幅上昇だったものの10連騰した。10連騰は2017年8月以来凡そ6年ぶりの快挙だが、その時は2018年2月まで大上昇が続いている。ナスダック総合指数は30.50ポイント安と続落し、7月19日に昨年10月底以降の最高値を更新した後は上昇一服の様相だが、米国株式市場の楽観的な強気姿勢は継続している印象だ。
【4日連続陽線で26日移動平均に到達】
6月30日高値から7月14日安値までの下げ幅に対する半値戻しとなる141.15円を超えて3分の2戻しとなる142.45円に迫っている。日足チャートでは7月14日安値への下落で26日移動平均および52日移動平均を相次いで割り込んだが、20日に52日移動平均を上抜き返し、21日の急伸により26日移動平均(現在141.94円)に到達している。52日移動平均割れへ急落してからの反騰としては、昨年7月14日高値から8月2日安値まで9.00円の下落後に8月18日の上昇で26日移動平均を超えてから勢い付いて9月22日の市場介入による小波乱も超えて10月21日高値まで大上昇した経緯がある。
今年3月8日高値から3月24日安値まで8.28円の下落後に上昇再開から一段高へ進んだ際も26日移動平均を超えたところから徐々に勢い付いて6月30日高値へ続伸していった。米FOMCと日銀金融政策決定会合という重要イベントを控えているところだが、これらを強気維持で通過して7月14日安値以降の高値切り上げへ進めば、6月30日高値とのダブルトップ形成へ挑戦し、さらにダブルトップブレイクから日銀の市場介入姿勢を挑発しながら昨年10月21日高値へ再挑戦する可能性も出てくるところと注目したい。
日足は7月21日まで4日連続陽線での上昇だが、4連騰は5月11日からの上昇時、4月6日からの上昇時、昨年は8月16日から26日移動平均超えへ上昇した局面、8月26日からの上昇で7月14日高値を超えた局面、10月5日から12連騰した時などに見られる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
FOMCおよび日銀金融政策決定会合の内容次第では上下に大きく変動する可能性のあるところと注意する。
(1)当初、141.20円を下値支持線、142円を上値抵抗線とする。
(2)141.20円台を維持するか一時的に割り込んでも回復するうちは上昇継続とし、142円超えからは143円、144円台を順次試して行く上昇を想定する。FOMCと日銀金融政策決定会合を共に円安で通過する場合は145円に迫る可能性もあるが、財務相等による円安けん制も厳しくなると思われる。
(3)141円割れからは、いったん修正安に入るとみて140円台前半試しを想定する。FOMCや日銀金融政策決定会合を円高反応で通過する場合は7月14日安値からの戻り一巡による下落として139円台中盤、138円台中盤を順次試して行く可能性もあると注意する。
【当面の主な予定】
7/24(月)
07:45 (NZ) 6月 貿易収支 (5月 0.46億NZドル)
16:30 (独) 7月 製造業PMI・速報値 (6月 40.6、予想 41.0)
16:30 (独) 7月 サービス業PMI・速報値 (6月 54.1、予想 53.1)
17:00 (欧) 7月 製造業PMI・速報値 (6月 43.4、予想 43.5)
17:00 (欧) 7月 サービス業PMI・速報値 (6月 52.0、予想 51.6)
17:30 (英) 7月 製造業PMI・速報値 (6月 46.5、予想 46.0)
17:30 (英) 7月 サービス業PMI・速報値 (6月 53.7、予想 53.0)
22:45 (米) 7月 製造業PMI・速報値 (6月 46.3、予想 46.1)
22:45 (米) 7月 サービス業PMI・速報値 (6月 54.4、予想 54.0)
26:00 (米) 財務省2年債入札
7/25(火)
IMF、世界経済見通し
米連邦公開市場委員会(FOMC)初日
14:00 日銀 基調的なインフレ率を捕捉するための指標
17:00 (独) 7月 IFO企業景況感指数 (6月 88.5、予想 88.0)
22:00 (米) 5月 連邦住宅金融局FHFA住宅価格指数 前月比 (4月 0.7%、予想 0.6%)
22:00 (米) 5月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (4月 -1.7%、予想 -1.8%)
23:00 (米) 7月 コンファレンスボード消費者信頼感指数 (6月 109.7、予想 112.0)
23:00 (米) 7月 リッチモンド連銀製造業指数 (6月 -7、予想 -10)
26:00 (米) 財務省5年債入札
7/26(水)
08:50 (日) 6月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (5月 1.6%、予想 1.5%)
10:30 (豪) 6月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (5月 5.6%、予想 5.5%)
10:30 (豪) 4-6月期 CPI(消費者物価指数) 前期比 (1-3月 1.4%、予想 1.0%)
10:30 (豪) 4-6月期 CPI(消費者物価指数) 前年同期比 (1-3月 7.0%、予想 6.2%)
14:00 (日) 5月 景気一致指数CI・改定値 (速報 113.8)
14:00 (日) 5月 景気先行指数CI・改定値 (速報 109.5)
23:00 (米) 6月 新築住宅販売件数(年率換算) (5月 76.3万件、予想 72.4万件)
23:00 (米) 6月 新築住宅販売件数 前月比 (5月 12.2%、予想 -5.2%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
24:30 (米) 財務省2年変動利付債入札
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)政策金利 (現行 5.00-5.25%、予想 5.25-5.50%)
27:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、記者会見
7/27(木)
14:00 日銀金融政策決定会合(7月28日まで)
10:30 (豪) 4-6月期 輸入物価指数 前期比 (1-3月 -4.2%、予想 -0.8%)
15:00 (独) 8月 GFK消費者信頼感 (7月 -25.4、予想 -24.5)
21:15 (欧) 欧州中銀(ECB)政策金利 (現行 4.00%、予想 4.25%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.8万件、予想 23.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 175.4万人、予想 175.0万人)
21:30 (米) 6月 卸売在庫 前月比 (5月 0.0%、予想 -0.1%)
21:30 (米) 4-6月期 GDP・速報値 前期比年率 (1-3月 2.0%、予想 1.8%)
21:30 (米) 4-6月期 GDP個人消費・速報値 前期比年率 (1-3月 4.2%、予想 1.2%)
21:30 (米) 4-6月期 コアPCE・速報値 前期比年率 (1-3月 4.9%、予想 4.0%)
21:30 (米) 6月 耐久財受注 前月比 (5月 1.8%、予想 1.0%)
21:30 (米) 6月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (5月 0.7%、予想 0.1%)
21:45 (欧) ラガルド欧州中銀(ECB)総裁、記者会見
23:00 (米) 6月 住宅販売保留指数 前月比 (5月 -2.7%、予想 -0.5%)
23:00 (米) 6月 住宅販売保留指数 前年同月比 (5月 -20.8%)
26:00 (米) 財務省7年債入札
7/28(金)
**:** 日銀金融政策決定会合 昼頃に結果と展望リポートを公表
08:30 (日) 7月 東京区部CPI(消費者物価指数)・生鮮食料品除く 前年同月比 (6月 3.2%、予想 2.9%)
10:30 (豪) 4-6月期 PPI(生産者物価指数) 前期比 (1-3月 1.0%)
10:30 (豪) 4-6月期 PPI(生産者物価指数) 前年同期比 (1-3月 5.2%)
10:30 (豪) 6月 小売売上高 前月比 (5月 0.7%、予想 0.0%)
15:30 (日) 日銀植田総裁、記者会見
18:00 (欧) 7月 消費者信頼感・確定値 (速報 -15.1)
18:00 (欧) 7月 経済信頼感 (6月 95.3、予想 95.0)
21:00 (独) 7月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前月比 (6月 0.3%、予想 0.3%)
21:00 (独) 7月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (6月 6.4%、予想 6.2%)
21:30 (米) 4-6月期 雇用コスト指数 前期比 (1-3月 1.2%、予想 1.1%)
21:30 (米) 6月 個人所得 前月比 (5月 0.4%、予想 0.5%)
21:30 (米) 6月 PCE(個人消費支出) 前月比 (5月 0.1%、予想 0.4%)
21:30 (米) 6月 PCEデフレーター 前年同月比 (5月 3.8%、予想 3.0%)
21:30 (米) 6月 PCEコア・デフレーター 前月比 (5月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 6月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (5月 4.6%、予想 4.2%)
23:00 (米) 7月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 72.6、予想 72.6)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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