ドル円見通し 7月18日の日銀植田総裁発言をきっかけとした円安継続で140円に迫る (23/7/20)

ドル円は139円台中盤にとどまってしっかりしており、7月14日午前と7月18日夜の両安値をダブル底として上昇再開を試している印象だ。

ドル円見通し 7月18日の日銀植田総裁発言をきっかけとした円安継続で140円に迫る (23/7/20)

7月18日の日銀植田総裁発言をきっかけとした円安継続で140円に迫る

〇ドル円、日銀金融緩和政策の継続姿勢を受けて円安再開感が強まる、7/19夜に139.99へ上昇
〇7/19夜の上昇で、6/30高値から7/14安値までの下げ幅7.82円の3分の1戻し、139.85をクリア
〇6月米住宅着工件数低下、景気減速とインフレ鈍化傾向により追加利上げ姿勢緩むとの見方が優勢に
〇米10年債利回りは概ね低下、ダウは8連騰、ナスダック・ダウともに昨年10月底以降の最高値を更新
〇139円を上回るうちは139.99超えから140円台前半を目指す上昇を想定
〇139円割れを弱気転換注意とし、138.50割れからは一度下げに入るとみて138円前後への下落を想定

【概況】

ドル円は6月30日高値145.06円からの下落が7月14日安値137.24円で落ち着き、その後は138円割れを買われて139円台前半で売られる持ち合いを形成していたが、18日夜のG20財務相・中銀総裁会合後の会見で植田日銀総裁が金融緩和政策の継続姿勢を示したことをきっかけとして円安再開感が強まり、19日夜に139.99円へ上昇、米経済指標発表を通過した23時台にも139.98円を付けるなど140円に迫った。140円到達は時期尚早としてその後はやや軟調推移だが139円台中盤にとどまってしっかりしており、7月14日午前と7月18日夜の両安値をダブル底として上昇再開を試している印象だ。

【6月30日からの下げ幅に対する3分の1戻しを達成】

6月30日高値から7月14日安値までの下げ幅は7.82円であり、3分の1戻しにあたる139.85円を19日夜の上昇でクリアした。半値戻しは141.15円、3分の2戻しは142.45円にある。
日足チャートでは52日移動平均割れまで大幅下落した後の戻りであり、現時点では52日移動平均(現在140.24円)手前に抵抗感を見せているが、同線を超えれば中勢の強気転換目安となる26日移動平均(現在141.87円)を試す可能性も出てくると思われる。
3月8日高値137.91円から3月24日安値129.63円まで8.28円の下落幅だったところからの切り返しでは26日移動平均超えから上昇が勢い付いており、昨年8月2日安値から10月21日高値への上昇時や5月24日安値からの上昇時も26日移動平均超えが上昇継続判断の目安となっている。

【米住宅着工統計はさえず、景気減速とインフレ鈍化傾向の判断に寄与】

7月19日に発表された6月米住宅着工件数(年率換算)は前月比8%減の143万4000戸となり5月の155万9000戸(163万1000戸から下方修正、前月比は15.7%増)を下回ってマイナスに転落し、市場予想の148万戸を大幅に下回った。また先行指標である住宅着工許可件数は前月比3.7%減の144万戸となり市場予想の149万戸を下回った。
7月12日の米6月CPIが前年比で12か月連続低下となり、7月18日に発表された6月米小売売上高が前月比0.2%増にとどまって市場予想の0.5%増を大幅に下回り、6月米鉱工業生産指数が前月比0.5%低下で2か月連続のマイナスとなったことが適度な景気減速とインフレ鈍化傾向と市場は受け止めてFRBによる追加利上げ姿勢が緩むとの見方が優勢となったが、19日の住宅着工統計もこの流れを維持する内容だった。
しかし夕刻に発表された英国の6月CPIが前年比7.9%上昇と高い水準だったものの2022年3月以来の低水準だったためにポンドが急落してユーロもつれ安したために、為替市場ではドル安に一服感がでている。

【日銀金融緩和継続姿勢による円安再開感】

日銀は7月14日に植田総裁が4月会合で示した金融政策の多角的レビュー(検証)について、長期にわたって継続してきた大規模緩和策の効果と副作用を検証するとし、日銀内部の分析に加えて外部の研究者を交えて意見交換する1回目のワークショップを今年12月頃と2024年5月頃に開催するとした。これにより検証には時間がかかり大胆な軌道修正はしばらくないのではないかとの見方が強まったが、インフレ率の上昇が続いていることや新発10年債利回りの上昇により7月27-28日の日銀金融政策決定会合では長短金利操作(YCC)における長期金利変動許容上限の引き上げがあるのではないかとの見方が出ていた。
植田総裁はG20財務相・中銀総裁会合後の会見で、「(物価目標達成見通しの)前提が変わらない限りは全体のストーリー(金融緩和政策継続)は不変」と述べたため、政策の軌道修正タイミングは大きく後ずれしたと市場は受け止めている。仮に来週の会合で物価見通しが上方修正されたりYCCについて修正があったりしたとしても軽微なものにとどまるとの見方が優勢となっている。

【米10年債利回りは低下、ダウは8連騰】

7月19日の米長期債利回りは概ね低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.04%低下の3.75%となったが、一時は3.73%を割り込み7月7日に付けた4.09%以降の最低を更新した。
30年債利回りは0.06%低下の3.84%となったが、一時は3.83%まで下げて7月10日の4.09%以降の最低とした。
利上げに敏感な2年債利回りは横ばいの4.77%となったが、7月6日の5.12%から7月13日の4.61%まで低下した後は下げ渋りとなり、19日も一時4.70%まで低下したところから戻している。
FRBによる追加利上げ姿勢が鈍るとの見方が優勢との市場心理を反映しているものの来週のFOMC結果を見定めたいところだ。
一方でNYダウは8連騰の上昇で前日比109.28ドル高、ナスダック総合指数も4.38ポイント高と小幅ながら3連騰となり、ダウとともに昨年10月底以降の最高値を更新している。ダウは前日の大手銀行決算好調に続いて19日は地銀決算が好調だったこともプラス要因となったようだ。

注:ポイント要約は編集部

【60分足一目均衡表・サイクル分析】 

【60分足一目均衡表・サイクル分析】 

ドル円は7月19日夜の上昇で7月17日夜高値を超えたため、7月14日午前安値137.24円と7月18日夜安値137.71円をダブル底とした上昇期に入っている印象だ。高値形成期は17日夜高値を基準として20日夜から24日夜にかけての間と想定されるのでまだ上昇余地ありとみるが、今のところはやや右肩上がりのジグザグ上昇レベルにとどまっているので139円割れからは弱気転換注意とし、138.50円割れからは下落期入りとみて21日夜から25日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では7月18日夜安値からの反騰で遅行スパンが好転して先行スパンからも上抜けたが、その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。遅行スパンが悪化するところからはいったん安値試しへ向かうとみるが、その際に先行スパンからの転落を回避して遅行スパンが再び好転する場合は上昇再開とし、先行スパンから転落する場合は下げが長引くとみて遅行スパン悪化中の安値試しが続くとみる。

60分足の相対力指数は7月19日夜への上昇時に70ポイント台後半へ上昇してから60ポイント割れへ低下した。50ポイント台を維持するか一時的に割り込んでも回復するうちは65ポイント超えから上昇再開とみる。ただし相場が高値を更新する際に指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられる場合はその後の反落警戒とし、45ポイント割れからは下落期入りとみて30ポイント前後への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、139.00円を下値支持線、7月18日夜高値139.99円を上値抵抗線とする。
(2)139円を上回るうちは139.99円超えから140円台前半(140.10円から140.40円台)を目指す上昇を想定する。140.40円以上は反落注意とするが、139.50円以上での推移なら21日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)139.00円割れを弱気転換注意とし、138.50円割れからはいったん下げに入るとみて138円前後への下落を想定する。138.20円以下は買いも入りやすいとみるが、139円以下での推移なら21日も安値試しへ向かいやすいとみる。 

【当面の主な予定】

7/20(木)
08:50 (日) 6月 通関貿易収支・季調前 (5月 -1兆3725億円、予想 -467億円)
08:50 (日) 6月 通関貿易収支・季調済 (5月 -7778億円、予想 -6597億円)
10:30 (豪) 6月 新規雇用者数 (5月 7.59万人、予想 1.50万人)
10:30 (豪) 6月 失業率 (5月 3.6%、予想 3.6%)
15:00 (独) 6月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (5月 -1.4%、予想 -0.4%)
16:00 (仏) ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演
17:00 (欧) 5月 経常収支・季調済 (4月 40億ユーロ) 

21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.7万件、予想 24.2万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 172.9万人、予想 173.0万人)
21:30 (米) 7月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (6月 -13.7、予想 -10.0)
23:00 (米) 6月 中古住宅販売件数・年率換算 (5月 430万件、予想 420万件)
23:00 (米) 6月 中古住宅販売件数 前月比 (5月 0.2%、予想 -2.3%)
23:00 (米) 6月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (5月 -0.7%、予想 -0.6%)
23:00 (欧) 7月 消費者信頼感・速報値 (6月 -16.1、予想 -15.8)
26:00 (米) 財務省インフレ指数連動10年債入札 

7/21(金)
08:01 (英) 7月 GFK消費者信頼感 (6月 -24、予想 -26)
08:30 (日) 6月 CPI(全国消費者物価指数) 前年同月比 (5月 3.2%、予想 3.3%)
08:30 (日) 6月 CPI・生鮮食料品除く 前年同月比 (5月 3.2%、予想 3.2%)
08:30 (日) 6月 CPI・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (5月 4.3%、予想 4.2%)
15:00 (英) 6月 小売売上高 前月比 (5月 0.3%、予想 0.2%)
15:00 (英) 6月 小売売上高 前年同月比 (5月 -2.1%、予想 -1.6%)
15:00 (英) 6月 小売売上高・除自動車 前月比 (5月 0.1%、予想 0.1%)
15:00 (英) 6月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (5月 -1.7%、予想 -1.7%)

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