米CPIの鈍化でドル全面安、ドル指数とともに5営業日続落で138円台序盤
〇ドル円、昨夜の米6月CPI鈍化を受け、ドル全面安が勢い付いて深夜安値で138.15まで下落
〇6/30の年初来高値145.06から7円近くの下げ、当面は安値の落ち着きどころを探る展開か
〇米CPI、前年比で全体は12か月連続鈍化、コア指数も4%台へ鈍化、タカ派姿勢緩むと市場は受け止める
〇7月FOMCでの利上げ確率は依然9割を超えだが、9月の利上げ確率は2割を切る
〇7/12の米長期債利回りは総じて大幅低下、NYダウ、ナスダック総合指数は3連騰
〇138円割れからは137円を試す下落を想定、7/13夜の米PPIから続落の場合は136円台を試す可能性も
〇139円超えからは139.50試しとする、139.50を超える場合は140円台回復を目指す上昇期に入るか
【概況】
ドル円は6月30日に145.06円を付けて年初来高値を更新した後を144円台中心の持ち合いで推移していたが、7月6日に144円を割り込んでから下落に転じ、先週末の7月8日早朝には142円を試し、週明けの10日夜に142円を割り込んでから下げ足を速め、11日に141円を割り込み、12日は午後に139.30円まで下げてからやや下げ渋っていたものの、12日夜の米6月CPI上昇率が前年比で12か月連続の鈍化となったことによりドル全面安が勢い付いたために深夜安値で138.15円まで一段安した。
【3月並みの下落で落ち着くか、昨年10月21日からの下落時並みに発展するか見定めたい】
ドル円は6月30日高値からの下げ幅が7円近くとなり、3月8日高値137.91円から3月24日安値129.63円まで8.28円の下落規模となった時に近い下落水準だが、7月6日から5営業日続落による日足の一目均衡表では26日基準線割れに続いて遅行スパンが実線を割り込んで悪化し、先行スパンの上限に到達している。
3月24日への下落時は先行スパンからいったん転落しているが、先行スパンの下限は現在135.66円にある。昨年10月21日に151.94円で天井を打った後の11月10日に米CPIが大幅に鈍化したことによる「逆CPIショック」安では先行スパン下限まで下げた後にやや戻したもののその後に先行スパンから転落する一段安へ進み今年1月16日安値まで続落している。
市場介入警戒水準に達したことによる売りや、日経平均の大幅下落をきっかけとした円買い、米国の利上げ姿勢を織り込み済としたドル売りが材料となって売りの連鎖反応を引き起こしているが、ドル指数が5営業日続落してユーロやポンドが急伸しているため、全般的なドル安が一服しないことにはドル円も下げ止まれないのではないかと思われる。すでに相当な売られ過ぎの印象もあるが底打ち感には至らず、当面は安値の落ち着きどころを探る展開と思われる。連続の日足陰線で下げているため、反騰入りにはまず手前の日足陰線による下げ幅を解消する反騰が必要と思われる。
【米CPI、全体の前年比は12か月連続の鈍化】
7月12日夜に発表された6月の米CPI(消費者物価指数)上昇率は前月比0.2%で5月の0.1%を上回ったが市場予想の0.3%を下回った。前年同月比は3.0%となり、5月の4.0%から大きく鈍化して市場予想の3.1%を下回った。コア指数の前月比は0.2%で5月の0.4%から鈍化して市場予想の0.3%を下回り、前年同月比は4.8%で5月の5.3%から鈍化して市場予想の5.0%を下回った。
全体の前年比が大きく鈍化したことに加え、コア指数の前年比も4%台へ鈍化したことにより、FRBは7月25-26日の次回FOMCにおいて0.25%の追加利上げを決定した後はしばらく様子見に入り、年内あと2回の追加利上げが適切としてきたタカ派姿勢が緩むのではないかと市場は受け止めた。
米リッチモンド連銀のバーキン総裁は12日に「米国のインフレ率は依然として高過ぎる」「目標とするインフレ率2%を達成できるほど総需要が減速しているかどうかまだ分からない」として追加利上げ支持姿勢を示したが、今週に入ってからの米地区連銀総裁らの発言は年内あと2回の追加利上げ支持姿勢が主流なものの、アトランタ連銀総裁が利上げなしでもインフレ低下が可能との姿勢を示すなど、インフレ鈍化傾向を確認しながら利上げへの積極姿勢が徐々に後退してゆくのではないかという印象を強めている。米国金利先物市場では7月FOMCでの利上げ確率は依然として9割を超えているが9月の利上げ確率は2割を切っている。
【米10年債利回りは大幅続落、ダウは3連騰】
米CPIの鈍化を見て7月12日の米長期債利回りは総じて大幅低下した。長期金利指標の10年債利回りは前日比0.11%低下の3.86%、30年債利回りは0.06%低下の3.95%、2年債利回りは0.13%低下の4.75%となった。
10年債利回りは7月7日に一時4.094%を付けて3月2日の4.091%を超えて2022年11月以来の高水準に達したが、7月10日に前日比0.07%低下、11日に0.03%低下して12日も3営業日続落となった。
30年債利回りは7日に一時4.061%を付けて2022年11月以来の高水準に達したが上昇一巡で7月10日に0.02%低下、11日に0.02%低下して12日も続落した。
利上げに敏感な2年債利回りは7月6日に5.12%を付けて今年3月8日の5.08%を超えて2007年以来16年ぶりの高水準に達したが、米雇用統計を通過して7日に0.04%低下、10日に0.09%低下し、11日は0.02%上昇とやや戻したものの12日の反落でこの間の安値を更新している。
一方で米国株式市場はFRBのタカ派姿勢が緩むとみて買われ、NYダウは前日比86.01ドル高と上昇して3営業日続伸、ナスダック総合指数も158.26ポイント高で3営業日続伸した。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は6月30日高値145.06円をピークとして大きな修正安局面に入っている。先週末の7月8日未明に142円を試してから143円までいったん戻して一段安に入っているため、当面の安値形成期は15日早朝にかけて想定されるのでまだ下落余地ありとみる。連日の下落に対する売られ過ぎ警戒感からの反騰も入りやすいところとして139円超えを強気転換注意とし、139.50円超えからはいったん戻りを試しにかかるとみて17日午後にかけての上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では遅行スパンの悪化と先行スパンからの転落状態が続いている。26本基準線が上値抵抗線となっているので26本基準線を下回るうちは一段安警戒とするが、26本基準線超えからは強気転換注意とし、遅行スパン好転からは先行スパンの下限を試す上昇を想定する。ただし先行スパンからの転落が続くうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は7月12日深夜の下落時に10ポイント台へ低下してからやや戻しているものの30ポイントに届かずにいる。40ポイントを下回るうちは一段安警戒とし、40ポイント超えからは強気転換注意として50ポイントを試す上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、138.00円を下値支持線、139.00円を上値抵抗線とする。
(2)139円以下での推移中は一段安余地ありとし、138円割れからは137円を試す下落を想定する。137円台序盤は反発注意とするが、13日夜の米PPIから続落の場合は136円台を試す可能性もあるとみる。また138.50円を超えないか直前安値から1円を超えてさらに続伸するような反騰がみられないうちは14日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)139円超えからは139.50円試しとする。139.50円手前では戻り売りも出やすいとみるが、139.50円を超える場合は140円台回復を目指す上昇期に入るのではないかと考える。
【当面の主な予定】
7/13(木)
未 定 (中) 6月 貿易収支・米ドル建て (5月 658.1億ドル、予想 748.0億ドル)
未 定 (中) 6月 貿易収支・人民元建て (5月 4523.3億元)
15:00 (英) 5月 月次GDP 前月比 (4月 0.2%、予想 -0.3%)
15:00 (英) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 -0.3%、予想 -0.4%)
15:00 (英) 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 -1.9%、予想 -2.3%)
15:00 (英) 5月 製造業生産指数 前月比 (4月 -0.3%、予想 -0.5%)
15:00 (英) 5月 貿易収支・物品 (4月 -149.96億ポンド、予想 -147.00億ポンド)
15:00 (英) 5月 貿易収支・全体 (4月 -15.18億ポンド、予想 -15.00億ポンド)
18:00 (欧) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 1.0%、予想 0.3%)
18:00 (欧) 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 0.2%、予想 -1.2%)
20:30 (欧) 欧州中銀(ECB)理事会議事要旨
21:30 (米) 6月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (5月 -0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 6月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (5月 1.1%、予想 0.4%)
21:30 (米) 6月 PPIコア指数 前月比 (5月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 6月 PPIコア指数 前年同月比 (5月 2.8%、予想 2.6%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 24.8万件、予想 25.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 172.0万人、予想 172.3万人)
26:00 (米) 財務省30年債入札
27:00 (米) 6月 月次財政収支 (5月 -2403億ドル、予想 -1750億ドル)
7/14(金)
休場 ニュージーランド
G20財務相・中央銀行総裁会議(7/18まで、インド・ガンディーナガル)
13:30 (日) 5月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 -1.6%)
13:30 (日) 5月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 4.7%)
13:30 (日) 5月 設備稼働率 前月比 (4月 3.0%)
18:00 (欧) 5月 貿易収支・季調済 (4月 -71億ユーロ)
18:00 (欧) 5月 貿易収支・季調前 (4月 -117億ユーロ)
21:30 (米) 6月 輸入物価指数 前月比 (5月 -0.6%、予想 -0.1%)
21:30 (米) 6月 輸出物価指数 前月比 (5月 -1.9%、予想 0.0%)
23:00 (米) 7月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (6月 64.4、予想 65.5)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
東京市場のドルは154円台後半で推移、日銀による追加利上げ観測が円安のブレーキ役に(24/11/22)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
東京市場はドルが小高い。やや激しめの乱高下をたどるなか、最終的にドルは高値引け。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:編集人K
2024.11.22
ドル円154円台前半、本邦CPI高止まり等で一時154円割れ (11/22午前)
22日午前の東京市場でドル円は「往って来い」。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:山中 康司
2023.07.13
ドル円テクニカル (23/7/13)
想定以上のペースで円高が進行していますので、現時点で目指している水準を考え直します。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。