ドル円見通し 141円台序盤へ一段安、145円到達後の修正局面続く(23/7/11)

145円到達により3月24日安値129.63円を起点とした上昇一巡による修正局面がまだ続くとの円高感が優勢となった。

ドル円見通し 141円台序盤へ一段安、145円到達後の修正局面続く(23/7/11)

ドル円見通し 141円台序盤へ一段安、145円到達後の修正局面続く

〇ドル円、7/10午後高値で143円を付けるも再び戻り売り、夜142円割り込み、7/11早朝141.20台へ続落
〇145円到達後の上昇一巡による修正局面が続き、円高感が優勢となる展開
〇米地区連銀総裁らの利上げ継続支持発言相次ぐも、サプライズ感なく市場の反応は鈍い
〇米長期債利回りは総じて低下、米株価は続落後の反発
〇142.00以下で推移中は一段安余地あり、141.00割れから140.70、140.30、140.00を試す下落を想定
〇141.70超えからは142.00試しとするが、142円手前では売られやすいとみる

【概況】

ドル円は6月30日の145.06円の高値更新後は伸び悩みとなり、7月3日夜に143.98円まで下げたところを買われて144円台中心の持ち合いに入ったが、7月6日に日経平均の大幅下落などをきっかけに143.55円まで下げて持ち合いから下放れした。6日夜には米ADP民間雇用の大幅増でいったん144.64円まで反発したものの戻り売りにつかまって7日夕刻に143円を割り込み、7日夜の米6月雇用統計通過後のドル全面安により8日早朝には142.04円まで一段安した。
週明けの7月10日は実需買いと突っ込み警戒感から午後高値で143円を付けてきたが再び戻り売りに押されて10日夜には142円を割り込み、11日早朝には141.20円台へ続落した。
7月10日は米地区連銀総裁らによる年内あと2回の追加利上げを支持する発言もあったものの材料としてはすでに織り込み済みとしてドル買い反応は鈍く、145円到達により3月24日安値129.63円を起点とした上昇一巡による修正局面がまだ続くとの円高感が優勢となった。

日足の一目均衡表では26日基準線を割り込み6月30日からの下落規模は3月24日以降で最大となっており、3月8日高値から3月24日安値にかけて8.28円の下落が入った時や、昨年10月21日天井後の11月序盤に近い動きに見える。
7月12日には6月の米CPI(消費者物価指数)の発表があるが、インフレ鈍化が顕著になる場合には昨年11月10日の逆CPIショックによる急落時と同様の下げ方になる可能性も抱えているのではないかと注意したい。

【米地区連銀総裁らの利上げ継続支持発言への反応は鈍くなる】

6月13-14日の前回FOMCにおいて利上げが見送られたもののメンバーの金利予想により年内あと2回の利上げが想定され、パウエルFRB議長な年内の利下げはないと強調したが、その後もFRB高官や地区連銀総裁らの年内追加利上げ支持発言が相次いできた。
7月10日もサンフランシスコ連銀のデイリー総裁が「FRBの利上げペースを緩めることを支持する」としたももの「年内にさらに2回の追加利上げを実施するとの予想は妥当」とし、3月の米銀破綻をきっかけとした銀行の与信厳格化問題についても、当初は0.25〜050%の利上げに相当するとみていたもののそこまでの効果はないとしてやや楽観姿勢を示した。
クリーブランド連銀のメスター総裁も「FRBは物価安定の早期回復を目指し、政策金利を現行水準からいくらか引き上げ、その後しばらく据え置く必要がある」、「FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数でコアインフレ率が6%程度の横ばい圏で推移していることはインフレが頑強に高く広範に及んでいることを示している」としてインフレ抑制を継続するべきとの姿勢を示した。

しかし、これらの発言は従来の発言内容とさほど変わらずタカ派的なサプライズ感はなく市場の反応も鈍かった。逆にアトランタ連銀のボスティック総裁が「FRBによる追加利上げがなくてもインフレ率が2%目標に戻る理由がある」とし、「サービスについては多くの統計がピークアウトを示唆している」「月次データは基本的な(低下)トレンドは正しい方向に向かっている」として追加利上げを否定しないものの利上げ休止でもインフレの鈍化は続くとのハト派的姿勢を示した。
NY連銀が7月10日に公表した6月消費者調査における1年先期待インフレ率は3.83%、5月の4.07%を下回って3か月連続の低下となり、3年先期待インフレ率も5月の2.98%から6月は2.95%へと4か月振りに低下した。
日銀と中国人民銀を除く主要国の利上げが続いてきたが、そろそろその終局に来ている中で、日銀が金融緩和政策を修正する可能性についても再び意識され始めていることがドル円の大幅下落を招いている印象だ。

【米長期債利回りは総じて低下、ダウは反発】

7月10日の米長期債利回りは総じて低下、指標の10年債利回りは先週末比0.07%低下の4.00%、30年債利回りは0.02%低下の4.03%、2年債利回りは0.09%低下の4.86%となった。
10年債利回りは7月7日に前日比0.04%上昇の4.07%となり一時は4.094%を付けて3月2日に付けた4.091%を超えて2022年11月以来の高水準に達したが、10日は上昇一巡感で低下した。
30年債利回りも7日に0.05%上昇の4.05%となり一時は4.061%を付けて3月2日の4.047%を超えて2022年11月以来の高水準としたが、週明けは上昇一服で低下した。
利上げに敏感な2年債利回りは7月6日に5.12%を付けて今年3月8日の5.08%を超えて2007年以来16年ぶりの高水準に達したが、米雇用統計を通過して7日は0.04%低下の4.95%と下げ、10日も続落して最近の上昇がひとまずピークを付けた印象となっている。

一方でNYダウは7月5日から7日まで3営業日続落で凡そ700ドル安となったが10日は下げ一服で買い戻し優勢となり、ナスダック総合指数も24.76ポイント高となり4営業日ぶりの反発となった。いずれも6月16日高値の後は上げ渋ってきたが大崩れには至らずにダウは3400ドルを挟んだ持ち合いとなり、ナスダックも13500ポイント以下を買われて高止まりの様相だ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は6月30日高値145.06円をピークとして大きな修正安局面に入っている。7月6日に144円割れ、7日に143円割れから142円を試し、10日夜から11日早朝にかけては141円台序盤へ下落してきたが、戻り高値を切り下げて一段安を繰り返しているため、反騰入りにはいったん戻した後の反落で安値更新を回避してその後の上昇で戻り高値を切り上げて右肩上がりの展開に入る必要がある。
目先の安値形成期は7月6日夕安値を基準とすれば13日夕にかけて想定されるが、7月8日早朝安値を基準とすれば15日早朝にかけて延びる可能性がある。142円台回復からは強気転換注意として142円台中盤への上昇を想定するが、上昇期に入るには143円に迫るような反騰が欲しいところだ。

60分足の一目均衡表では遅行スパンの悪化と先行スパンからの転落状態が続いている。強気転換には先行スパンへ潜り込んでその上下を試すような上昇が必要であり、先行スパンからの転落中は遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とみる。

60分足の相対力指数は先週末の下落時に20ポイントを割り込み、いったん50ポイント超えへ戻してから30ポイント割れへと失速したため、まだ一段安余地ありとみる。強気転換には再び50ポイントを超え、その後の反落でも40ポイント台を維持した上で指数の高値切り上げへ進む必要があると思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、141.00円を下値支持線、142.00円を上値抵抗線とする。
(2)142.00円以下での推移中は一段安余地ありとし、141.00円割れからは140.70円、140.30円、140.00円を順次試す下落を想定する。141.50円以下での推移か直前安値から1円を超える反騰へ進めずに戻り幅の半値を削るところからは下げ再開とみる。
(3)141.70円超えからは142.00円試しとするが、142円手前では売られやすいとみる。142円超えから続伸の場合は先週後半からの下落が落ち着いての反動高局面とみて143円を目指す上昇を想定するが、142.70円以上は反落警戒とする。

【当面の主な予定】

7/11(火)
10:30 (豪) 6月 NAB企業景況感指数 (5月 8)
15:00 (英) 5月 失業率・ILO方式 (4月 3.8%、予想 3.8%)
15:00 (独) 6月 CPI(消費者物価指数)改定値 前月比 (速報 0.3%、予想 0.3%)
15:00 (独) 6月 CPI(消費者物価指数)改定値 前年同月比 (速報 6.4%、予想 6.4%)
18:00 (独) 7月 ZEW景況感 (6月 -8.5、予想 -10.5)
18:00 (欧) 7月 ZEW景況感 (6月 -10.0)
22:00 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、金融政策関連討論会参加
24:30 (米) 財務省1年債入札
26:00 (米) 財務省3年債入札

7/12(水)
08:50 (日) 5月 機械受注 前月比 (4月 5.5%、予想 1.0%)
08:50 (日) 5月 機械受注 前年同月比 (4月 -5.9%、予想 0.1%)
08:50 (日) 6月 国内企業物価指数 前月比 (5月 -0.7%、予想 0.2%)
08:50 (日) 6月 国内企業物価指数 前年同月比 (5月 5.1%、予想 4.4%)
11:00 (NZ) ニュージーランド準備銀行(RBNZ) 政策金利 (現行 5.50%、予想 5.50%)
12:10 (豪) ロウ豪中銀(RBA)総裁、講演
17:00 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、金融安定性報告書に関し記者会見

21:30 (米) 6月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (5月 0.1%、予想 0.3%)
21:30 (米) 6月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (5月 4.0%、予想 3.1%)
21:30 (米) 6月 CPIコア指数 前月比 (5月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 6月 CPIコア指数 前年同月比 (5月 5.3%、予想 5.0%)
21:30 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
22:45 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、討論会参加
23:00 (加) カナダ銀行(BOC) 政策金利 (現行 4.75%、予想 5.00%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会参加
26:00 (米) 財務省10年債入札
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
29:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演



注:ポイント要約は編集部

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