ドル円見通し 米雇用統計通過で142円を試す、145円到達で3月からの上昇一巡感(週報7月第二週)

6月の米雇用統計では非農業部門就業者数が前月比20万9000人増となったが、5月の30万6000人から鈍化して市場予想の22万5000人を下回った。

ドル円見通し 米雇用統計通過で142円を試す、145円到達で3月からの上昇一巡感(週報7月第二週)

米雇用統計通過で142円を試す、145円到達で3月からの上昇一巡感

〇先週のドル円、週末の米雇用統計でNFPが予想を下回ったことで142.04まで安値切り下げ
〇発表後も7月の追加利上げはほぼ確実との見方継続、9月の会合での連続利上げ確率は低下
〇独英等の長期債利回りの上昇顕著、米10年債利回り上昇はドル高に結びつかず
〇145円到達による介入警戒、米国の追加利上げについてもある程度織り込んで、一旦調整安か
〇142.50以下での推移中は一段安余地あり、141.83割れから141.50、21、141.00等順次試すか
〇142.70超えからは143円を試すもその後の反落を警戒

【概況】

ドル円は6月30日に145.06円を付けて1月16日安値127.22円以降の高値を更新したが、昨年9月22日の日銀市場介入水準である145円に到達したことによる高値警戒感から上値が重くなり、7月3日夜の米6月ISM製造業景況指数が予想を下回ったことで143.98円まで反落、その後は144円台での持ち合いで方向感を探る展開が続いてきた。7月6日には日経平均の大幅安等株安に対するリスク回避的な円高感が強まったことで夕刻に143.55円まで下落して144円台中心の持ち合いからいったん転落、6日夜のADP民間雇用者数が予想を大幅に超えたことでのドル高反応により144.64円まで戻したものの7月6日早朝高値に届かずに戻り高値切り下がりに終わって失速した。7月7日朝の厚労省による毎月月勤労統計調査(5月)で名目賃金が平均2.5%増と大幅な伸びとなったことにより日銀金融緩和政策の修正が意識されたことで午後には6日夕安値を割り込み、7日夜の米雇用統計前には142.87円を付けて6月26日以来の143円割れとなった。

7月7日夜の米雇用統計では非農業部門雇用者数が予想を下回ったことでADP統計での大幅増に対する反動で失望感が優勢となってドル売り反応となり、発表直後の乱高下が一巡するとドル安円高が勢い付いて8日早朝には142.04円まで安値を切り下げた。

【米6月雇用統計、就業者増加数は予想を下回るも失業率改善、平均時給高止まり】

米労働省による6月の米雇用統計では景気の強弱感を示すものとして注目される非農業部門就業者数が前月比20万9000人増となったが、5月の30万6000人から鈍化して市場予想の22万5000人を下回った。また4月分は速報の29万4000人増から21万7000人増へ、5月分は33万9000人増から30万6000人増へ下方修正されたため2か月分で11万人の下方修正となった。
20万人以上の雇用者増加は労働市場が堅調であることを示すものの、前日のADP民間統計での就業者数が49万7000人増と予想の22万8000人増を大幅に超えた後のため、期待に反して失望を買った。
失業率は5月の3.7%から3.6%へ改善し、インフレ指標である平均時給の伸び率は前月比0.4%で5月と同じだったが市場予想の0.3%を上回り、前年同月比は4.4%で5月と同じだったが市場予想の4.2%を上回り高止まり感を示した。

6月の米雇用統計は7月FOMCにおける追加利上げ姿勢を阻害しないものであり、発表後も7月の追加利上げはほぼ確実との見方が継続したが、9月の次々回会合での連続利上げ確率は低下した。
発表後の乱高下からユーロやポンドは急伸、ドル円が急落となりドル安感が強まった。シカゴ連銀総裁のグールズビー総裁は雇用統計後の発言で年内あと2、3回の利上げが適切との見通しを示したが、市場心理としては今後のインフレ鈍化が顕著になれば7月の利上げでピークとなる可能性や、年内あと2回の利上げがあったとしてもそれ以上の利上げには進まないだろうと受け止めており、それに対してECBやBOEの追加利上げ可能性が優先されてユーロやポンド、豪ドル等が急伸し、ドル円の下落にも寄与した印象だ。

【米10年債利回りは上昇したが2年債利回り低下は、ダウは続落】

7月7日の米長期債利回りはまちまちだった。長期金利指標の10年債利回りは前日比0.04%上昇の4.07%となり、一時は4.094%を付けて3月2日に付けた4.091%を超えて2022年11月以来の高水準に達した。2022年のピークは10月21日の4.338%。30年債利回りは0.05%上昇の4.05%となったが一時は4.061%を付けて3月2日の4.047%を超えて2022年11月以来の高水準とした。2022年のピークは10月24日の4.425%。
利上げに敏感な2年債利回りは0.04%低下の4.95%となった。7月6日に5.12%を付けて今年3月8日の5.08%を超えて2007年以来16年ぶりの高水準に達したが、米雇用統計発表後には4.90%まで低下してその後に戻したものの前日比マイナス圏に終わった。まだ7月6日からの乱高下の範囲ではあるが、当面の利上げピークを織り込んだ動きとも言えそうだ。

米10年債利回り上昇に対して独英等の長期債利回りの上昇が顕著なために米長期債利回り上昇がドル高に結びついていないことが7月6日から7日にかけてのドル安円高反応を招いている。
一方、NYダウは米雇用統計を利上げ期間の長期化に利すると受け止めて前日比187.38ドル安と下落し、7月5日の129.83ドル安、6日の366.38ドル安から3営業日続落となり、ナスダック総合指数も18.32ポイント安と下落して7月5日から3営業日続落に終わった。上海総合株価指数が7月5日から7日へ3営業日続落したが、欧州主要株価指数の下落が目立ち、日経平均も下げているため、株安によるリスク回避的な円高を助長しやすい状況にある。

【日足 一目均衡表・サイクル分析】

【日足 一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は3月24日安値129.63円から6月30日高値145.06円まで15.43円の上昇幅となり、1月16日安値127.22円から3月8日高値137.91円までの上昇幅10.70円に対して凡そ1.5倍の上昇となった。1月16日安値からは17.84円の上昇幅であり、昨年10月21日高値151.94円から今年1月16日安値までの下げ幅24.73円に対して凡そ72%を戻した。
しかし、昨年9月22日の日銀市場介入時の高値が145.89円であり、145円に達したことによる介入警戒感が上値を重くし、米国の追加利上げ情勢についてもある程度織り込んで買いも一巡したことでいったん仕切り直しの調整安に入っているのではないかと思われる。
7月7日の日足は当日の高安(高値144.19円、安値142.04円)で2円を超えているが、2円を超える下落規模は3月8日高値から下落開始した翌々日の3月10日(高値136.99円、安値134.11円)以来であり、3月8日から3月24日安値にかけて8.28円の下落となった局面の序盤に近いのではないかと思われる。

日足の一目均衡表では遅行スパンの好転と先行スパンを上回る状況が続いてきたが、7月6日に9日転換線を割り込み、7月7日安値および終値は26日基準線(141.83円)に迫っている。
26日基準線を一時的に割り込んでも翌日の切り返せばそこを押し目として上昇基調を継続しうるが、26日基準線を終値で割り込んで続落に入る場合は下落期入りとみて遅行スパンが実線を割り込む悪化を試しにかかり、先行スパンの上限で下げ止まれるか試すような流れへ進みやすくなると思われる。当面、9日転換線を上抜き返せず、9日転換線が階段下がりで低下し始める場合は3月並みの調整安へ進みやすいと注意する。

日足の相対力指数は6月30日高値への上昇時に75ポイントを超えたがその後の失速で7月7日終値時点で50ポイントまで低下している。50ポイント前後を押し目形成として60ポイント超えへ進めば上昇基調の継続として年初来高値更新へ進む可能性を残すが、50ポイント割れの状況が続き始める場合は下落期入りとみて30ポイント台前半への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、141.83円を下値支持線、142.70円を上値抵抗線とする。
(2)142.50円以下での推移中は一段安余地ありとし、141.83円割れからは141.50円、6月20日安値(141.21円)、141.00円前後を順次試す下落を想定する。141円前後では買い戻しも入りやすいとみるが、142円以下での推移が続くか、直前安値から1円を超える反騰へ進めないうちは翌日以降も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)142.50円から142.70円にかけての水準は戻り売りにつかまりやすいとみる。142.70円超えからは143円試しとするが、その後の反落警戒とする。
※ 今週は米地区連銀総裁らの講演やイベントでの発言も相次ぐ。経済指標としては7月12日の米6月CPI(消費者物価指数)が最大の焦点と思われるが、7月12日のNZ中銀が現状維持予想のところで追加利上げに踏み切るかどうか、12日夜のカナダ中銀が予想通りに追加利上げをするのか注目される。

【当面の主な予定】

7/10(月)
日銀支店長会議、地域経済報告(さくらリポート)
08:50 (日) 5月 経常収支・季調前 (4月 1兆8951億円、予想 1兆8840億円)
08:50 (日) 5月 経常収支・季調済 (4月 1兆8996億円、予想 1兆8678億円)
08:50 (日) 5月 貿易収支・国際収支ベース (4月 -1131億円、予想 -9731億円)
10:30 (中) 6月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (5月 0.2%、予想 0.2%)
10:30 (中) 6月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (5月 -4.6%、予想 -5.0%)
14:00 (日) 6月 景気ウオッチャー現状判断 (5月 55.0、予想 54.7)
14:00 (日) 6月 景気ウオッチャー先行判断 (5月 54.4、予想 54.2)
23:00 (米) 5月 卸売売上高 前月比 (4月 0.2%、予想 0.6%)
23:00 (米) バーFRB副議長、銀行監督等の討論会参加
24:00 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、ブルッキングス研究所イベント参加
24:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
25:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、イベント参加
28:00 (米) 5月 消費者信用残高 前月比 (4月 230.1億ドル、予想 210.0億ドル)

7/11(火)
08:50 (日) 6月 マネーストックM2 前年同月比 (5月 2.7%)
09:30 (豪) 7月 ウエストパック消費者信頼感指数 (6月 79.2)
10:30 (豪) 6月 NAB企業景況感指数 (5月 8)
15:00 (英) 5月 失業率・ILO方式 (4月 3.8%、予想 3.8%)
15:00 (独) 6月 CPI(消費者物価指数)改定値 前月比 (速報 0.3%、予想 0.3%)
15:00 (独) 6月 CPI(消費者物価指数)改定値 前年同月比 (速報 6.4%、予想 6.4%)
18:00 (独) 7月 ZEW景況感 (6月 -8.5、予想 -10.5)
18:00 (欧) 7月 ZEW景況感 (6月 -10.0)
22:00 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、金融政策関連討論会参加
24:30 (米) 財務省1年債入札
26:00 (米) 財務省3年債入札

7/12(水)
08:50 (日) 5月 機械受注 前月比 (4月 5.5%、予想 1.0%)
08:50 (日) 5月 機械受注 前年同月比 (4月 -5.9%、予想 0.1%)
08:50 (日) 6月 国内企業物価指数 前月比 (5月 -0.7%、予想 0.2%)
08:50 (日) 6月 国内企業物価指数 前年同月比 (5月 5.1%、予想 4.4%)
11:00 (NZ) ニュージーランド準備銀行(RBNZ) 政策金利 (現行 5.50%、予想 5.50%)
12:10 (豪) ロウ豪中銀(RBA)総裁、講演

17:00 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、金融安定性報告書に関し記者会見
21:30 (米) 6月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (5月 0.1%、予想 0.3%)
21:30 (米) 6月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (5月 4.0%、予想 3.1%)
21:30 (米) 6月 CPIコア指数 前月比 (5月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 6月 CPIコア指数 前年同月比 (5月 5.3%、予想 5.0%)
21:30 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
22:45 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、討論会参加
23:00 (加) カナダ銀行(BOC) 政策金利 (現行 4.75%、予想 5.00%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会参加
26:00 (米) 財務省10年債入札
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
29:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演

7/13(木)
未 定 (中) 6月 貿易収支・米ドル建て (5月 658.1億ドル、予想 753.0億ドル)
未 定 (中) 6月 貿易収支・人民元建て (5月 4523.3億元)
15:00 (英) 5月 月次GDP 前月比 (4月 0.2%、予想 -0.3%)
15:00 (英) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 -0.3%、予想 -0.4%)
15:00 (英) 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 -1.9%、予想 -2.3%)
15:00 (英) 5月 製造業生産指数 前月比 (4月 -0.3%、予想 -0.5%)
15:00 (英) 5月 貿易収支・物品 (4月 -149.96億ポンド、予想 -145.50億ポンド)
15:00 (英) 5月 貿易収支・全体 (4月 -15.18億ポンド、予想 -8.00億ポンド)
18:00 (欧) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 1.0%、予想 0.3%)
18:00 (欧) 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 0.2%、予想 -1.1%)

20:30 (欧) 欧州中銀(ECB)理事会議事要旨
21:30 (米) 6月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (5月 -0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 6月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (5月 1.1%、予想 0.4%)
21:30 (米) 6月 PPIコア指数 前月比 (5月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 6月 PPIコア指数 前年同月比 (5月 2.8%、予想 2.7%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 24.8万件、予想 24.9万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 172.0万人、予想 172.0万人)
26:00 (米) 財務省30年債入札
27:00 (米) 6月 月次財政収支 (5月 -2403億ドル、予想 -1840億ドル)

7/14(金)
休場 ニュージーランド
G20財務相・中央銀行総裁会議(7/18まで、インド・ガンディーナガル)
13:30 (日) 5月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 -1.6%)
13:30 (日) 5月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 4.7%)
13:30 (日) 5月 設備稼働率 前月比 (4月 3.0%)
18:00 (欧) 5月 貿易収支・季調済 (4月 -71億ユーロ)
18:00 (欧) 5月 貿易収支・季調前 (4月 -117億ユーロ)
21:30 (米) 6月 輸入物価指数 前月比 (5月 -0.6%、予想 -0.1%)
21:30 (米) 6月 輸出物価指数 前月比 (5月 -1.9%、予想 0.0%)
23:00 (米) 7月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (6月 64.4、予想 65.5)

注:ポイント要約は編集部

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