来週の為替相場見通し:『不冴な米雇用統計を受けて急落するも下値余地は限定的か』(7/8朝)

ドル円は6/30に記録した年初来高値145.07(昨年11/10以来の高値圏)をトップに反落に転じると、今週末にかけて、一時142.08まで急落しました。

来週の為替相場見通し:『不冴な米雇用統計を受けて急落するも下値余地は限定的か』(7/8朝)

『不冴な米雇用統計を受けて急落するも下値余地は限定的か』

〇今週のドル円、週明けの144.96を高値に伸び悩み、週末にかけて142.08まで急落
〇株価の大幅下落、米6月雇用統計の非農業部門雇用者数の予想比の悪化等が背景
〇ユーロドル、週後半にかけ1.0833まで下落するも週末のドル売りに一時1.0974まで急伸
〇ドル円、テクニカルの地合いは崩れておらず、足元の下落は一時的なポジション調整か
〇ファンダメンタルズも日米金利差急拡大、実弾介入可能性の低さがドル円をサポート
〇引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):141.00ー145.00、(EURUSD):1.0775−1.1075

今週のレビュー(7/3−7/7)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初144.37で寄り付いた後、(1)日米金利差拡大に着目したドル買い・円売り(円キャリートレード)や、(2)日銀短観の良好な結果(大企業製造業DIが7四半期ぶりに改善)、(3)日経平均株価の堅調推移(リスク選好の円売り圧力)、(4)米金利上昇に伴うドル買い圧力が支援材料となり、週明け早々に、週間高値144.96まで上昇しました。

しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(5)6/30に記録した年初来高値145.07を背にした戻り売り圧力や、(6)神田財務官による「為替に関して米国を含め様々な意思疎通を行っている」との円安牽制発言、(7)鈴木財務相による「為替について財務官レベルで米国と緊密に連携を図っていることは事実」との円安牽制発言、(8)株式市場の大幅下落(リスク回避の円買い圧力)、(9)米6月非農業部門雇用者数(結果20.9万人、予想22.9万人)の市場予想を下回る結果(前回分も33.9万人から30.6万人へ下方修正)、(10)米金利低下に伴うドル売り圧力、(11)週末前のポジション調整(短期筋の大規模ストップSELL)が重石となり、週末にかけて、週間安値142.08まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間7/8午前3時30分現在)では、142.15前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0911で寄り付いた後、(1)フランス国内で広がる暴動の深刻化や、(2)ドイツ6月製造業PMI(結果40.6、予想41.0)の冴えない結果、(3)ドイツ5月貿易収支(結果144億ユーロ黒字、予想173億ユーロ黒字)の市場予想を下回る結果、(4)ロシアを巡る地政学的リスク(プーチン露大統領は上海協力機構のオンライン首脳会議で「ロシアは西側の制裁と挑発に立ち向かう」と発言)、(5)ユーロクロスの軟調推移(ユーロポンドやユーロスイスの下落→ユーロドル連れ安)、(6)ユーロ圏6月総合PMI(結果49.9、予想50.3)の冴えない結果、(7)ユーロ圏5月生産者物価指数(結果▲1.9%、予想▲1.7%)の市場予想を下回る結果、(8)ECBによる「1年先の期待インフレ率が前回5月調査時点の4.1%から3.9%へ低下した」との見解発表、(9)イタリア中銀ビスコ総裁による「さらなる利上げのみがインフレ抑制のために必要な方法ではない」との慎重な発言、(10)米経済指標の力強い結果、(11)米長期金利の急上昇、(12)欧州株の大幅下落が重石となり、週後半にかけて、週間安値1.0833まで下落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(13)米6月非農業部門雇用者数の市場予想を下回る結果(前月分も下方修正)や、(14)上記13を背景とした米長期金利の急低下、(15)短期筋のショートカバーが支援材料となり、週末にかけて、週間高値1.0974まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間7/8午前3時30分現在)では、1.0969前後で推移しております。

来週の見通し(7/10−7/14)

<ドル円相場>
ドル円は6/30に記録した年初来高値145.07(昨年11/10以来の高値圏)をトップに反落に転じると、今週末にかけて、一時142.08まで急落しました(日足ローソク足が一目均衡表転換線や21日移動平均線を下方ブレイク)。但し、ダウンサイドに複数のテクニカルポイント(一目均衡表基準線、雲上下限、90日線、200日線)が並んでいることや、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「ダウ理論の上昇トレンド」が成立していること、90日線と200日線のゴールデンクロス(強気のパーフェクトオーダー点灯)が射程圏内に入っていること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは崩れていない(足元の下落はあくまで上昇トレンドの過程で見られる一時的なポジション調整)と判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測(次回7/26FOMCでの25bp利上げが92.4%織り込まれている状況。米雇用統計で発表された平均時給も伸び率加速)や、(2)日銀による金融緩和の長期化観測(植田日銀総裁は政策修正に対して慎重な見方→YCC修正の後ずれ観測)、(3)上記1、2を背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米金利差急拡大→円キャリートレード継続への安心感)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。政府・日銀による円安牽制が都度上値を抑制する可能性があるものの、昨年高値151.95を突破するまでは、実弾介入に踏み切る可能性が低いと考えられるため、円安牽制に対する市場の感応度は徐々に低減すると考えられます。

こうした中、来週は7/12に予定されている米6月消費者物価指数や、ブラックアウト期間突入前の米当局者発言(バーFRB副議長、サンフランシスコ連銀デイリー総裁、クリーブランド連銀メスター総裁、アトランタ連銀ボスティック総裁、リッチモンド連銀バーキン総裁、ミネアポリス連銀カシュカリ総裁、ウォラーFRB理事など)に注目が集まります。米6月消費者物価指数が市場予想を上回る場合や、米当局者よりタカ派的な発言が相次ぐ場合には、日米金融政策格差に着目した円キャリートレード再開が見込まれることから、ドル円に強い上昇圧力が加わるシナリオが想定されます。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(USDJPY):141.00ー145.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は6/22に記録した高値1.1012をトップに反落に転じると、今週後半にかけて、一時1.0833(6/15以来の安値圏)まで下げ幅を広げましたが、週末にかけては一転持ち直し、約2週間ぶり高値となる1.0974まで反発しました。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線、基準線、雲上下限、21日線、50日線、90日線、200日線、ボリンジャーミッドバンド)の上側で推移していることや、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のパーフェクトオーダー」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます。

但し、アップサイドには強力なレジスタンスとして意識されている1.1100の壁(同水準は4/14高値1.1077、4/26高値1.1096、5/3高値1.1092、5/4高値1.1092と過去4度止められている強力な抵抗帯)が控えているため、余程強いユーロ買い・ドル売り材料が出てこない限り、ここからの更なる上昇は容易では無いと考えられます(一巡後の反落リスクに要警戒)。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感(ユーロ圏6月総合PMIが昨年12月以来の50割れ)や、(2)ユーロ圏における期待インフレ率の低下(1年先の期待インフレ率が前回5月調査時点の4.1%から3.9%へ低下)、(3)上記1、2を背景としたECBによる金融引き締め打ち止め観測(ECB当局者はタカ派的な発言を繰り返すも市場のユーロ買いでの感応度は低下傾向)、(4)米FRBによる金融引き締め長期化観測(次回7/26FOMCでの25bp利上げが92.4%織り込まれている状況)、(5)上記3、4を背景とした欧米金利差拡大観測など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。

こうした中、来週は7/11に予定されているドイツ7月ZEW景況感指数と、7/12に予定されている米6月消費者物価指数に注目が集まります。ドイツ7月ZEW景況感指数が市場予想を下回る場合(欧州経済の悪化懸念→ECBによる金融引き締め打ち止め観測→欧州債利回り低下→ユーロ売り)や、米6月消費者物価指数が市場予想を上回る場合(米インフレ懸念再燃→FRBによる金融引き締め長期化観測→米金利上昇→米ドル買い)には、欧米金融政策の方向性の違いが改めて意識される形で、ユーロドルが下げ足を速めるシナリオが想定されるため、当方は週央以降のユーロドル下落をメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0775−1.1075

注:ポイント要約は編集部

『不冴な米雇用統計を受けて急落するも下値余地は限定的か』

ドル円日足

オーダー/ポジション状況

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