ドル円見通し 米長期債利回り上昇で反発するも株安を意識して戻り高値切り下がり基調
〇ドル円、7/6は日経平均大幅下落やアジア株安を見て円高が優勢となり、夕刻143.55へ下落
〇夜に発表された経済指標の良好な結果を受け、長期債利回り上昇・ドル高反応、23時過ぎ144.64へ戻す
〇その後米長期債利回りが上昇一巡で失速、戻り売り優勢となり144円を割り込む
〇ADPの民間雇用者数が予想を超える大幅増、ドル高反応のきっかけに、ISMサービス業も予想上回る改善
〇米長期債利回りは総じて上昇、米2年債利回りは2007年以来の高水準、米株価は下落
〇7/6夜安値143.55割れからは、143円前後への下落を想定する
〇144.64超えからは反騰入りとみて、145円超えを目指す上昇を想定する
【概況】
ドル円は6月30日午前に145.06円を付けて年初来高値を更新し、7月3日夜の6月米ISM製造業景況指数の悪化をきっかけに143.98円まで下げた後は144円台での持ち合いだったが、7月6日は日経平均の大幅下落や上海総合株価指数などのアジア株安を見てリスク回避的な円高が優勢となり夕刻には143.55円へ下落して持ち合いから下放れた。
7月6日夜の米経済指標発表を控えて下げ渋っていたところ、21時半の米ADP民間雇用者数が予想を大幅に超える増加となったことをサプライズとして米長期債利回り上昇・ドル高反応となり、6月の米ISMサービス業景況指数も予想を上回る改善となったことで23時過ぎには144.64円まで戻した。米長期債利回りが上昇一巡で失速したためにその後は戻り売り優勢となって144円を割り込み、7日午前序盤にかけては144円を挟みながらややジリ安の推移となっている。
【ADPの民間雇用者数が予想を大幅に超える増加、ISMサービス業も予想上回る改善】
7月6日に米民間雇用サービス会社ADPが発表した6月全米雇用報告では、非農業部門民間就業者数が前月比49万7000人増となり、5月の26万7000人増および市場予想の22万8000人増を大幅に上回った。予想を大幅に超える増加により7月7日の米労働省による雇用統計でも堅調な数字が見込まれるとして米長期債利回りが上昇、為替市場はドル高反応を見せた。
米労働省による新規失業保険申請件数は7月1日までの週間で前週比1万2000件増の24万8000件となり2週ぶりの悪化で市場予想の24万5000件を上回った、また失業保険受給者総数は6月24日までの週間で172万人となり前週から1万3000人減少して市場予想の174万5000人を下回った。1週遅れの失業保険受給者数が減少したものの新規失業保険申請件数が悪化したことはADP発表後のドル高に若干のブレーキをかけた。
米商務省による5月の貿易赤字は前月比7.3%減の689億8200万ドルで2か月振りの縮小となった。
S&Pグローバルによる6月の米サービス業PMI改定値は54.4となり速報の54.1から上方修正され、総合PMIも速報の53.0から53.2へ上方修正された。
米サプライ管理協会(ISM)による6月の米サービス業景況指数は53.9となり5月の50.3から大幅に上昇して市場予想の51.9を上回った。内訳では事業活動が5月の51.5から59.2へ、新規受注が52.9から55.5へ、雇用が49.2から53.1へと顕著に上昇した。価格は5月の56.2から54.1へ低下した。
米労働省による5月雇用動態調査(JOLTS)では非農業部門求人数が前月比49万6000件減の982万4000件となり2か月振りに減少した。
【米2年債利回りは3月のピークを超えて2007年以来の高水準に】
米ADP統計やISMサービス業景況指数が予想を上回ったことでFRBによる追加利上げと利上げ状態の長期化が見込まれるとして7月6日の米長期債利回りは総じて上昇した。
指標の10年債利回りは前日比0.10%上昇の4.03%で、一時は4.09%を付けて3月2日に付けた4.09%に並んだが、ISM統計発表後に上昇一巡となって上げ幅を削った。
30年債利回りは0.07%上昇の4.00%となり、5月25日のピークを超えて3月2日の4.05%以来の高水準に達した。
利上げに敏感な2年債利回りは前日比0.04%上昇の4.99%となったが、一時は5.10%を付けて2007年以来16年ぶりの高水準に達した。
米金利先物市場では7月FOMCでの追加利上げはほぼ確実とし、2024年上半期までは利上げ状態が続くとの見方が強まっている。6月FOMCでは利上げを休止したものの年内あと2回の利上げ見通しとし、年内の利下げはないと強調されたが、その後のECBフォーラムでのパウエルFRB議長発言も利上げ継続姿勢を示してきた。7月6日はダラス連銀のローガン総裁が6月FOMCでは利上げを継続することが適切だったとし、年内あと2回の利上げを支持する姿勢を示している。
米追加利上げと利上げ状態の長期化への警戒感が高まったことでNYダウは前日比366.38ドル安と下落、ナスダック総合指数も112.61ポイント安と下落した。7月6日は英独などの長期債利回りも上昇しており、金融引き締めによる景気減速への懸念が改めて強まりつつある印象だ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は7月3日の上昇では6月30日高値145.06円に届かず、3日深夜の下落で143.98円を付けて30日深夜安値144.20円を割り込んだために戻り高値が切り下がって安値も切り下がるやや右肩下がりの展開に入ったが、7月6日も夕刻へ安値を更新し、夜の反発では6日早朝高値に届かずに右肩下がりの展開が続いている。
現状は7月6日夕安値で目先の底を付けて戻したが、6日夜高値で戻り一巡となり下落再開に入っている印象だ。7月6日夕安値143.55円割れを回避するうちは7日の日中から10日夜にかけての間への上昇余地ありとするが、6日夕安値割れからは新たな下落期入りとして11日午後から13日夕にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表で6日夕刻への下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落した。6日夜へ戻してから失速したために両スパンそろっての悪化となっているため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。強気転換は6日夜高値超えからとし、その際は遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は6日夕刻への下落で30ポイントへ下落、いったん50ポイントまで戻してから再び失速している。55ポイントを超えないうちは一段安警戒とし、40ポイント割れからは20ポイント台への低下を伴う下落を想定する。55ポイント超えからは反騰入りとみて60ポイント台後半への上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月6日夜安値143.55円を下値支持線、7月6日夜高値144.64円を上値抵抗線とする。
(2)7日の日中は144円を挟んだ揉み合い程度とみるが、7月6日夜高値を超えないうちは一段安余地ありとし、143.55円割れからは143円前後への下落を想定する。143円以下は反騰注意とするが、144円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)144.64円超えからは反騰入りとみて145円超えを目指す上昇を想定する。145円前後は戻り売りも出やすいとみるが、144.64円を超えた後も144.50円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
7/7(金)
14:00 (日) 5月 景気先行指数(CI)速報値 (4月 96.8、予想 97.6)
14:00 (日) 5月 景気一致指数(CI)速報値 (4月 97.3、予想 97.2)
15:00 (独) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 0.3%、予想 0.0%)
15:00 (独) 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 1.6%、予想 0.5%)
17:30 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
21:30 (米) 6月 非農業部門就業者数 前月比 (5月 33.9万人、予想 22.5万人)
21:30 (米) 6月 失業率 (5月 3.7%、予想 3.6%)
21:30 (米) 6月 平均時給 前月比 (5月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 6月 平均時給 前年同月比 (5月 4.2%)
23:30 (英) マン英中銀委員、講演
25:45 (欧) ラガルドECB総裁、パネル討論会
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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