FOMC議事要旨公開で上昇するも勢い鈍く144円台を維持しての持ち合いで様子見続く
〇ドル円、7/6未明FOMC議事要旨を挟み144.69まで戻すも議事要旨にサプライズ感なく再び軟調に推移
〇FOMC議事要旨、大半は利上げ休止に賛成だが一部に0.25%利上げ主張の参加者がいたことが示される
〇7/5米長期債利回り、FOMC議事要旨通過後は総じて上昇、NYダウ、ナスダックは下落
〇市場は7/6のADP民間雇用、ISMサービス業景況指数、7/7の6月米雇用統計を見定めか
〇7/3夜高値144.91を超えないうちは一段安余地ありとするが、144円前後では買われやすいとみる
〇144.91超えからは6/30高値145.06台序盤を試す上昇を想定
【概況】
ドル円は6月30日午前に145.06円を付けて年初来高値を更新し、7月3日夜の6月米ISM製造業景況指数の悪化をきっかけに143.98円まで下げたが、その後は144円台に収まっての持ち合いを続けている。
7月4日夜安値144.19円を起点として5日午後にかけては米長期債利回り上昇によりややジリ高となり144.73円まで戻し、23時の米製造業新規受注が冴えなかったことや米長期債利回りの低下局面で深夜安値144.07円まで下げたが、6日未明のFOMC議事要旨を挟んで6日早朝には144.69円まで戻した。しかしFOMC議事要旨にサプライズ感はなく戻り一巡後は再び軟調な推移を見せている。
7月5日午前に発表された財新とS&Pグローバルによる6月中国サービス業PMIは53.9となり5月の57.1から低下して今年1月以来の低水準になったことや、夕方のユーロ圏サービス業PMI改定値が速報の52.4から52.0へ低下したことは7月3日の米ISM製造業景況指数や独欧の製造業PMIの下方修正とともに景気減速感を示した。5月のユーロ圏PPIが前月比で1.9%低下して前年比でも1.5%低下したこともインフレの抑制感を示したがいずれも決め手には欠いた。
米商務省による5月製造業受注は前月比0.3%増となり3カ月連続のプラスだったものの4月の0.3%増と変わらず市場予想の0.8%増を下回った。
【FOMC議事要旨、一部に利上げ主張も】
FRB(米連邦準備制度理事会)は7月6日未明に6月13-14日開催のFOMC(連邦公開市場委員会)議事要旨を公表した。当該FOMCでは利上げが見送られたもののメンバーの金利予想として年内あと2回の利上げ見通しが示され、パウエルFRB議長は会見で年内の利下げはないとの見方を示していた。
議事要旨では大半の参加者がこれまでの利上げ効果を見定めたいとして利上げ休止に賛成したが、一部には0.25%利上げを主張する参加者がいたことが示された。またメンバーの認識は総じて「インフレが受け入れがたいほど高い」とし、「人手不足が続き、労働市場の需給が非常に逼迫し、景気が当初の見込みよりも強く、インフレが2%の目標へ低下するとの明白な兆候がほとんどない」というものだった。
FOMC議事要旨には特段のサプライズ感はなかったものの、追加利上げの可能性は濃厚であり、早期の利下げへの期待はかなり薄いと再認識されて米長期債利回りが上昇、為替市場はドル高反応となったが、大きな動きには至らず、今夜のADP民間雇用やISMサービス業景況指数、7日夜の6月米雇用統計を見定めたいという印象だった。
ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は5日に「前回FOMCで金利を据え置いたのは妥当な措置」、「景気が堅調に推移する中でいずれ追加利上げが必要になる」と述べている。
米金利先物市場においては7月の0.25%利上げはほぼ確実とされ、9月FOMCでは再び利上げ停止されるとの見方が凡そ7割、9月の連続利上げ確率は2割弱となっているようだ。
【米長期債利回りは上昇】
7月5日の米長期債利回りは日中に上昇し、その後に若干の乱高下を入れながらもFOMC議事要旨通過後は総じて上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.07%上昇の3.93%で終了したが、一時は3.83%まで低下してからの上昇だった。30年債利回りは前日比0.06%上昇、利上げに敏感な2年債利回りは0.01%上昇の4.95%だったが、一時4.83%まで低下したところから低下幅を解消する上昇で7月3日に付けた4.96%に迫った。
2年債と10年債の利回り格差は7月3日に逆イールドとして1981年以来42年ぶりの乖離となったが7月5日も高水準を維持している。逆イールド発生から半年ないし2年後に大きなリセッションが発生していることを踏まえれば先行きの景気後退への不安心理が金融市場には付きまとっているといえる。
一方で7月5日のNYダウは前日比129.83ドル安と下落、ナスダック総合指数も25.12ポイント安と下落した。中国財新のPMIが冴えなかったこと、FOMC議事要旨での追加利上げ姿勢、米中対立が深刻化しており半導体やEV車向け素材およびAIを巡って双方の輸出規制の動きが株式市場には徐々に重石となってきている印象もある。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は7月3日の上昇では6月30日高値145.06円に届かず、3日深夜の下落で143.98円を付けて30日深夜安値144.20円を割り込んだために戻り高値が切り下がって安値も切り下がるやや右肩下がりの展開となりつつあるが、4日以降は144円台を維持してほぼ横ばい推移で持ち合いを形成している。
当面は145円前後で売られ144円割れは買われやすい展開とみるが、7月3日夜安値143.98円割れからは143円台中盤への下落余地ありとし、145.06円超えから続伸する場合は円安が勢い付いた状況に入って145円台中盤を目指す流れとみる。
60分足の一目均衡表では144円台を中心とした持ち合いのために遅行スパンおよび先行スパンは実線と交錯しており方向感に欠ける。7月3日夜高値超えからは上昇期入りとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とし、3日深夜安値割れからは下落継続とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数も144円台中心の持ち合いのために方向感に欠け、40ポイント割れは買われて60ポイント前後で売られている。65ポイント超えからは上昇が勢い付くとみるが、次に40ポイントを割り込む場合は下げ足が速まる可能性もあると注意する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月3日深夜安値143.98円を下値支持線、7月3日夜高値144.91円を上値抵抗線とし、6日の日中はこの高安レンジ内での持ち合いとみる。
(2)7月3日夜高値144.91円を超えないうちは一段安余地ありとするが、144円前後では買われやすいとみる。ただし3日夜安値143.98円割れからは143円台中盤(143.70円から143.30円)を試し、7日午前にかけても安値試しを続けやすいとみる。
(3)144.91円超えからは6月30日高値145.06円台序盤を試す上昇を想定する。145円到達ではまだ売られやすいところと注意するが、145.06円超えから勢い付く場合は145.20円から145.50円手前にかけての水準を試す可能性もあるとみる。144.91円を超える場合は7日午前も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
7/6(木)
10:30 (豪) 5月 貿易収支 (4月 111.58億豪ドル、予想 107.00億豪ドル)
15:00 (独) 5月 製造業新規受注 前月比 (4月 -0.4%、予想 1.2%)
15:00 (独) 5月 製造業新規受注 前年同月比 (4月 -9.9%、予想 -9.3%)
18:00 (欧) 5月 小売売上高 前月比 (4月 0.0%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 5月 小売売上高 前年同月比 (4月 -2.6%、予想 -2.7%)
21:15 (米) 6月 ADP民間非農業部門就業者数 前月比 (5月 27.8万人、予想 22.8万人)
21:30 (米) 5月 貿易収支 (4月 -746億ドル、予想 -690億ドル)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.9万件、予想 24.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 174.2万人、予想 174.5万人)
21:45 (米) ローガン・ダラス連銀総裁、パネル討論会
22:45 (米) 6月 サービス業PMI改定値 (速報 54.1、予想 54.1)
23:00 (米) 6月 ISM非製造業景況指数 (5月 50.3、予想 51.0)
23:00 (米) 5月 雇用動態調査(JOLTS)求人件数 (4月 1010.3万件、予想 993.5万件)
24:00 (米) EIA週間石油在庫統計
7/7(金)
08:30 (日) 5月 全世帯消費支出 前年同月比 (4月 -4.4%、予想 -2.5%)
14:00 (日) 5月 景気先行指数(CI)速報値 (4月 96.8、予想 97.6)
14:00 (日) 5月 景気一致指数(CI)速報値 (4月 97.3、予想 97.1)
15:00 (独) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 0.3%、予想 0.0%)
15:00 (独) 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 1.6%、予想 0.5%)
18:00 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
21:30 (米) 6月 非農業部門就業者数 前月比 (5月 33.9万人、予想 22.5万人)
21:30 (米) 6月 失業率 (5月 3.7%、予想 3.6%)
21:30 (米) 6月 平均時給 前月比 (5月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 6月 平均時給 前年同月比 (5月 4.2%)
23:30 (英) マン英中銀委員、講演
25:45 (欧) ラガルドECB総裁、パネル討論会
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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