米GDP確定値上方修正等でドル高感強まり145円に迫る
〇ドル円、6/29夜の米GDP確定値上昇修正や新規失業保険申請件数の予想比減少で144.89まで上昇
〇今夜は米PCEデフレータ、ミシガン大消費者信頼感指数、シカゴ購買部協会景気指数等の重要指標が発表
〇結果によりドル高が勢い付く場合は145円台後半への上昇も想定される
〇米長期債利回りはGDP上方修正等により大幅上昇、米金利先物市場7月FOMCの利上げ確率は9割近い
〇6/29夜反落時の安値144.12を上回るうちは上昇余地ありとする
〇144.89超えからは145.00ー145.25を試す上昇を想定
〇144.12割れからはいったん調整安に入るとみて143.70から143.30円台への下落を想定
【概況】
ドル円は6月29日夜高値で144.89円を付けて1月16日安値127.22円以降の高値を更新、昨年11月上旬以来およそ7か月半ぶりの高値水準に到達している。先週末の6月24日未明に143.87円を付けて144円に迫った後、当局の円安けん制発言が入ったことで143円をいったん割り込んだものの、そこを新たな起点として上昇再開に入り、6月27日深夜に144.16円、28日深夜に144.61円と高値を伸ばして来た。6月29日夜は米GDP確定値が予想以上に上昇修正されたことや週間新規失業保険申請件数が予想外に減少したことによりFRBの追加利上げ継続感が強まったとして為替市場はドル高となり、ドル円は144.89円まで高値を切り上げ、30日早朝にかけても144円台後半を維持して上昇基調を継続している。
今夜は米PCEデフレーターやミシガン大消費者信頼感指数、シカゴ購買部協会景気指数等の重要指標発表が相次ぐため、ドル高が勢い付くか、いったん仕切り直しの調整に入るのか試されると注目したい。
【米GDP確定値は上方修正】
米商務省による2023年1-3月期GDP確定値は年率換算で前期比2.0%増となり、改定値の1.3%増から大幅な上方修正となった。GDPの凡そ7割を占める個人消費は4.2%増で改定値の3.8%増から上方修正され、輸出は7.8%増で改定値の5.2%増から大幅上方修正された。一方で住宅投資は4.0%減で改定値の5.4%から下方修正され、設備投資も0.6%増で改定値の1.4%増からは下方修正されたが、全体としては米FRBの追加利上げ継続姿勢に寄与する内容となった。
米労働省による新規失業保険申請は6月24日までの週間で前週比2万6000件減の23万9000件となった。6週ぶりの改善で市場予想の26万5000件を大幅に下回った。失業保険受給者総数は6月17日までの週間で174万2000人となり、こちらも前週の176万1000人から減少して市場予想の176万5000人を下回った。
5月の米住宅販売保留指数は前月比2.7%減となり、4月の0.4%減から悪化して市場予想の0.5%減を大きく下回り、前年同月比は20.8%減で4月の22.8%減からやや持ち直したものの市場予想の20.5%減を下回った。住宅関連については金利上昇と価格上昇による買い控えの影響が出ている。
【パウエル議長、追加利上げ継続姿勢を29日も示す】
FRBのパウエル議長は6月29日のスペイン中銀主催イベントで、「FOMCの大半のメンバーが年内あと2回以上の利上げが適切になると想定している」、「今後数カ月は緩やかなペースの金利決定が続く」、「基調的なインフレ率は昨年のピークから低下しているもののFRBが目標とする2%の倍以上の水準で推移しており、2%に戻すにはまだ長い道のりが残されている」と述べた。
パウエル議長はECBフォーラムにおいても同様の発言を繰り返しており、前回FOMC(6/13-14開催)とその後の半期に一度の米上下院議会証言でも追加利上げを強調してきた。
今週の発言には特段のサプライズはないものの利上げ継続感、年内の利下げは想定されていないとの見方が再認識されている。
一方で日銀の植田総裁はECBフォーラムにおいて金融緩和継続姿勢を示し、円安については米英欧3中銀の利上げによるものと述べるなど円安へのけん制感や金融緩和からの脱却を急ぐ姿勢は見られず、ドル円は日米金融政策の差によるドル高円安基調を継続している。
アトランタ連銀のボスティック総裁は6月29日に利上げを急ぐ必要はないとの発言を行っているが、「インフレ期待が困難な方向に動き出せば利上げせざるを得なくなる」としており、ややハト派的ではあるがパウエル議長のタカ派姿勢を薄めるものにはなっていないようだ。
【米長期債利回りは低下、前日戻したNYダウは反落】
6月29日の米長期債利回りはGDP上方修正等により総じて大幅上昇した。指標の10年債利回りは前日比0.13%上昇の3.84%、30年債利回りは0.09%上昇の3.90%、利上げに敏感な2年債利回りは0.15%の大幅上昇で4.87%を付けた。米金利先物市場における7月FOMCでの利上げ確率は9割近くへ上昇している。
一方でNYダウは前日比269.76ドル高と上昇し、ナスダック総合指数は0.42ポイント安と下落した。ダウはGDP上方修正による景気後退不安の解消で買われ、ナスダックは米長期債利回り上昇を嫌って上昇しきれなかったようだ。6月28日に公表された米FRBによる銀行に対するストレステスト(健全性審査)で米大手23銀行すべてが合格したことも金融株高とダウの上昇に寄与したようだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は6月24日未明高値143.87円から26日夕刻安値142.94円へ反落したところを起点として上昇期に入っており、6月29日夜も高値を切り上げて上昇基調を継続している。6月26日夕安値から3日を経過した29日夜安値を起点として新たな上昇期に入った可能性も考えられるので、6月29日夜反落時の安値144.12円を割り込まないうちは週明けへの上昇継続とするが、144.12円を割り込む場合はいったん仕切り直しの調整期に入るとみて7月3日夜にかけての下落を想定する。
60分足の一目均衡表では6月27日午後からの上昇で遅行スパンが好転して先行スパンを上抜いた状況も維持されているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。先行スパンを上回るうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところからは上昇再開とするが、先行スパンに潜り込むところからはいったん下げに入るとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は29日夜に50ポイントを割り込んだところから反発したが、28日夜高値時からは指数のピークが切り下がる弱気逆行の気配がみられる。65ポイント超えからは上昇再開として70ポイント台中盤を目指すとみるが、45ポイント割れからは下落期入りとして30ポイント前後への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、144.12円を下値支持線、144.89円を上値抵抗線とする。
(2)144.12円を上回るうちは上昇余地ありとし、144.89円超えからは145円台序盤(145.00円から145.25円)を試す上昇を想定する、夜の米経済指標等からドル高が勢い付く場合は145円台後半への上昇を想定する。
(3)144.12円割れからはいったん調整安に入るとみて143円台中盤(143.70円から143.30円台)への下落を想定する。143.50円以下は反発注意とするが、144円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
6/30(金)
休場 トルコ
10:30 (中) 6月 国家統計局製造業PMI (5月 48.8、予想 49.0)
14:00 (日) 5月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (4月 -11.9%、予想 -2.7%)
15:00 (英) 1-3月期 GDP・改定値 前期比 (速報 0.1%、予想 0.1%)
15:00 (英) 1-3月期 GDP・改定値 前年同期比 (速報 0.2%、予想 0.2%)
15:00 (英) 1-3月期 経常収支 (10-12月 -25億ポンド、予想 -85億ポンド)
15:00 (独) 5月 小売売上高 前月比 (4月 0.8%、予想 0.0%)
15:00 (独) 5月 小売売上高 前年同月比 (4月 -8.6%、予想 -4.9%)
16:55 (独) 6月 失業者数 前月比 (5月 0.90万人、予想 1.40万人)
16:55 (独) 6月 失業率 (5月 5.6%、予想 5.6%)
18:00 (欧) 5月 失業率 (5月 6.5%、予想 6.5%)
18:00 (欧) 6月 HICP(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (5月 6.1%、予想 5.6%)
18:00 (欧) 6月 HICPコア指数・速報値 前年同月比 (5月 5.3%、予想 5.5%)
21:30 (米) 5月 個人所得 前月比 (4月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 5月 PCE(個人消費支出) 前月比 (4月 0.8%、予想 0.2%)
21:30 (米) 5月 PCEデフレーター 前年同月比 (4月 4.4%、予想 3.8%)
21:30 (米) 5月 PCEコア・デフレーター 前月比 (4月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 5月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (4月 4.7%、予想 4.7%)
22:45 (米) 6月 シカゴ購買部協会景況指数 (5月 40.4、予想 43.8)
23:00 (米) 6月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 63.9、予想 63.9)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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