ドル円見通し ECBフォーラムでの米利上げ継続姿勢で年初来高値更新(23/6/29)

ドル円は28日夜のECBフォーラムにおけるパウエル米FRB議長の利上げ継続姿勢を受けて深夜には144.61円まで年初来高値を伸ばし、その後も144円台を維持している。

ドル円見通し ECBフォーラムでの米利上げ継続姿勢で年初来高値更新(23/6/29)

ECBフォーラムでの米利上げ継続姿勢で年初来高値更新

〇ドル円、6/28深夜に144.61まで年初来高値を伸ばす
〇6/28 ECBフォーラム、日銀は金融緩和政策継続、米英欧は金融引き締め継続を改めて強調
〇ドル高円安基調は継続、市場は昨年9月のような市場介入を伴う円安阻止への動きを見定める
〇米長期債利回りは低下、NYダウは半導体関連売りも影響して反落、ナスダックは小幅ながら連騰
〇143.70を上回るうちは上昇余地ありとし、144.61超えからは145円を試す上昇を想定
〇143.70割れからは143円台序盤への下落を想定

【概況】

ドル円は6月27日深夜高値で144.16円を付けて1月16日安値127.22円以降の高値を更新したが、28日の日中も143円台後半へ下げたところを買われて上昇基調を維持し、28日夜のECBフォーラムにおけるパウエル米FRB議長の利上げ継続姿勢を受けて深夜には144.61円まで年初来高値を伸ばし、その後も144円台を維持している。
144円に迫った局面から神田財務官や鈴木財務相、松野官房長官らが円安けん制発言を繰り返すようになり、昨年9月の日銀単独での円買い介入水準に迫ってきていることでの高値警戒感も出やすいところだが、FRBの7月FOMCでの利上げ再開と日銀の金融緩和継続姿勢の差によるドル高円安基調は継続しており、市場としては昨年9月のような市場介入を伴う円安阻止への動きが出てくるのかどうかを試しにかかっている印象だ。

【ECBフォーラム、米英欧の利上げ継続姿勢を改めて確認】

米欧英日等の中銀総裁は6月28日の欧州中銀(ECB)主催の国際金融会議=ECBフォーラムの討論会に参加し、日銀が金融緩和政策継続の正当性を主張する一方で米英欧はインフレ抑制のための金融引き締めの継続が必要との姿勢を改めて強調した。
ECBのラガルド総裁は27日に続いて「基調的なインフレが低下基調にあることを示す十分な証拠はまだ得られていない」、「7月に利上げを決定する公算が大きい」との述べ、英中銀のベイリー総裁もG7の中で最も高水準のインフレに直面している状況にあって「必要なことをする」、「(前回会合での)0.50%利上げは0.25%利上げを続けて行うより効果的」として利上げ継続姿勢を強調した。
一方で日銀の植田総裁はインフレの再加速を合理的に確信できればいずれは金融政策転換の根拠になり得るとしたものの、当面は条件を満たさないために金融緩和政策を継続するとした。

米FRBのパウエル議長は「物価安定を達成するためにはまだ十分に景気抑制的ではない」とし、今後の利上げについて「検討から外していない」、「もっとやるべきことがあり一層の利上げが適切な可能性がある」と述べた。議長は「大半のFRB当局者が年内あと2回の利上げを見込んでいる」とし、「インフレが急低下して2%へ戻ると確信すれば金融緩和を考え始められるが、近い将来に考えていることではない」とも述べた。
米金利先物市場においては7月FOMCでの利上げ確率が8割に迫り、政策金利が5%を超える水準で2024年3月まで推移するとの見方を反映している。

【米長期債利回りは低下、前日戻したNYダウは反落】

6月28日の米長期債利回りは総じて低下した。指標の10年債利回りは前日比0.06%低下の3.71%、30年債利回りは0.03%低下の3.81%、利上げに敏感な2年債利回りは0.04%低下の4.72%となった。
ECBフォーラムでのパウエル議長による追加利上げ姿勢については前回FOMCや半期に一度の米議会での金融政策証言の内容と変わらないものとして利回り上昇反応は見られなかった。10年債利回りは3.70%弱から3.80%台の水準で持ち合いの様相で推移しており、28日は前日の上昇を解消する小反落で持ち合いの範囲にとどまっている。 

一方でNYダウは前日比74.08ドル安と反落した。6月16日から26日まで6営業日続落していたところから27日に前日比212.03ドル高と7日ぶりに反発したが、買い戻し一巡後は利上げ継続感を嫌気して売られ、バイデン政権がAIの中国輸出に関して規制を強化する姿勢を示したことによる半導体関連売りも圧迫要因となったようだ。ただ、ナスダック総合指数は27日の219.89ポイント高から28日も36.08ポイント高と小幅ながら連騰しており、利上げ継続による景気への影響に関する楽観がやや優勢の印象だ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】 

【60分足一目均衡表・サイクル分析】 

ドル円は6月24日未明高値143.87円から26日夕刻安値142.94円へ反落したところを起点として新たな上昇期に入っており、27日深夜高値144.16円を28日深夜高値144.61円で上抜いており、上昇基調を継続している。目先の高値形成期は30日深夜にかけて想定されるのでまだ上昇余地が残るが、143.70円を割り込む場合はいったん調整安に入るとみて7月3日午後にかけての下落を想定する。

60分足の一目均衡表では6月27日午後からの上昇で遅行スパンが好転して先行スパンを上抜いた状況も維持されているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。先行スパンから転落しないうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところからは上昇再開とするが、先行スパンから転落する場合はいったん下げに入るとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。 

60分足の相対力指数は28日夜に70ポイント台後半へ上昇した後も60ポイントを挟んでしっかりしているのでまだ上昇余地ありとするが、28日深夜高値を超える際に指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられる場合は反落注意とし、50ポイント割れから続落に入る場合は40ポイント弱への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、143.70円を下値支持線、144.61円を上値抵抗線とする。
(2)143.70円を上回るうちは上昇余地ありとし、144.61円超えからは145円を試す上昇を想定する、145円手前は反落注意とするが、勢い付く場合は145円台序盤へ向かう可能性もあるとみる。また144円以上での推移か直前高値から1円を超える反落がみられないうちは30日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)143.70円割れからは143円台序盤(143.25円から143.00円)への下落を想定する。143.10円以下は反発注意とするが、143.70円を下回っての推移なら30日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

6/29(木)
休場 トルコ、シンガポール、マレーシア、インドネシア
EU首脳会議(ブリュッセル 6/30まで)
10:30 (豪) 5月 小売売上高 前月比 (4月 0.0%、予想 0.1%)
14:00 (日) 6月 消費者態度指数・一般世帯 (5月 36.0、予想 36.1)
15:30 (米) パウエルFRB議長、金融安定性関連会議参加
18:00 (欧) 6月 消費者信頼感・確定値 (速報 -16.1)
18:00 (欧) 6月 経済信頼感 (5月 96.5、予想 96.0)
21:00 (独) 6月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前月比 (5月 -0.1%、予想 0.2%)
21:00 (独) 6月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (5月 6.1%、予想 6.3%)

21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 26.4万件、予想 26.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 175.9万人)
21:30 (米) 1-3月期 GDP・確定値 前期比年率 (改定値 1.3%、予想 1.4%)
21:30 (米) 1-3月期 GDP個人消費・確定値 前期比年率 (改定値 3.8%)
21:30 (米) 1-3月期 コアPCE・確定値 前期比年率 (改定値 5.0%)
23:00 (米) 5月 住宅販売保留指数 前月比 (4月 0.0%、予想 -0.5%)
23:00 (米) 5月 住宅販売保留指数 前年同月比 (4月 -22.6%)
25:30 (英) テンレイロ英中銀委員、講演
28:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演

6/30(金)
休場 トルコ
08:30 (日) 5月 失業率 (4月 2.6%、予想 2.6%)
08:30 (日) 6月 東京区部CPI(消費者物価指数)・生鮮食品除く 前年同月比 (5月 3.2%、予想 3.4%)
08:50 (日) 5月 鉱工業生産・速報値 前月比 (4月 0.7%、予想 -1.0%)
08:50 (日) 5月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (4月 -0.7%、予想 4.4%)
10:30 (中) 6月 国家統計局製造業PMI (5月 48.8、予想 49.0)
14:00 (日) 5月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (4月 -11.9%、予想 -2.4%)
15:00 (英) 1-3月期 GDP・改定値 前期比 (速報 0.1%、予想 0.1%)
15:00 (英) 1-3月期 GDP・改定値 前年同期比 (速報 0.2%、予想 0.2%)
15:00 (英) 1-3月期 経常収支 (10-12月 -25億ポンド、予想 -93億ポンド)

16:55 (独) 6月 失業者数 前月比 (5月 0.90万人、予想 1.50万人)
16:55 (独) 6月 失業率 (5月 5.6%、予想 5.6%)
18:00 (欧) 5月 失業率 (5月 6.5%、予想 6.5%)
18:00 (欧) 6月 HICP(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (5月 6.1%、予想 5.6%)
18:00 (欧) 6月 HICPコア指数・速報値 前年同月比 (5月 5.3%、予想 5.5%)
21:30 (米) 5月 個人所得 前月比 (4月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 5月 PCE(個人消費支出) 前月比 (4月 0.8%、予想 0.2%)
21:30 (米) 5月 PCEデフレーター 前年同月比 (4月 4.4%、予想 3.8%)
21:30 (米) 5月 PCEコア・デフレーター 前月比 (4月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 5月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (4月 4.7%、予想 4.7%)
22:45 (米) 6月 シカゴ購買部協会景況指数 (5月 40.4、予想 44.0)
23:00 (米) 6月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 63.9、予想 63.9)

注:ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る