ドル円、日米金融政策格差に着目したドル買い・円売りが継続。年初来高値を連日で更新
〇ドル円、米国時間にかけ一時144.63まで上昇、下値堅く144円台半ばで推移
〇ECBフォーラムでのパウエル議長のタカ派発言、植田日銀総裁のハト派発言、主要国の株価堅調等が背景
〇ユーロドルECB関係者の相次ぐタカ派発言に1.0963まで上昇後、一時1.0897まで反落
〇主要通貨に対するドル買い圧力、欧州債利回り低下等が重石に
〇ドル円、上方にレジスタンス不在、強い買いシグナルも継続、テクニカルの地合い強い
〇ファンダメンタルズも日米金融政策の方向性の顕著な違いがドル円をサポート
〇本日の予想レンジ:143.75ー145.25
海外時間のレビュー
28日(水)のドル円相場は堅調な値動き。(1)神田財務官による「為替動向について高い緊張感を持って注視している」「行き過ぎた動きがあれば適切に対応する」との円安牽制発言が重石となる中、アジア時間朝方にかけて、安値143.74まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(2)バイデン米大統領による「米国経済は強固でありリセッションに陥るとは予想していない」との楽観的な発言や、(3)日米金融政策格差に着目したドル買い・円売り(円キャリートレード)、(4)日経平均株価の急上昇(リスク選好の円売り圧力)、(5)欧米株の堅調推移(クロス円上昇→ドル円連れ高)、(6)パウエルFRB議長による「あと2回の利上げが多数派」「政策は制約的だが十分ではない」「連続利上げの可能性を選択肢から外さず」とのECBフォーラムでのタカ派的な発言、(7)植田日銀総裁による「基調的なインフレは目標を下回っているため政策変更を実施していない」とのECBフォーラムでのハト派的な発言が支援材料となり、日本時間23時過ぎにかけて、年初来高値144.63(昨年11/10以来の高値圏)まで上昇しました。
引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間6/29午前5時20分現在)では、144.41前後で推移しております。尚、昨日は鈴木財務相からも「為替相場について行き過ぎた動きに適切な対応をとる考えは変わらない」との円安牽制発言が見られましたが、ドル売り・円買いでの反応は限定的となりました。
28日(水)のユーロドル相場は上値の重い展開。(1)ラガルドECB総裁による「ECBが近い将来に完全な自信を持ってピーク金利に達したと宣言できる可能性は低い」「見通しに大きな変化がない限り7月も利上げを続ける」との前日のタカ派発言や、(2)レーンECB専務理事兼チーフ・エコノミストによる「7月利上げは妥当」「インフレが十分に鈍化するまではかなりの道のり」とのタカ派的な発言、(3)デギンドスECB副総裁による「金利についてはまだやるべきことがある」「7月利上げは既定路線」とのタカ派的な発言、(4)エストニア中銀ミュラー総裁による「我々が有するあらゆる手段を利用しなければならない」とのタカ派的な発言、(5)欧州株の堅調推移が支援材料となり、欧州時間朝方にかけて、高値1.0963まで上昇しました。
しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(6)対主要通貨でのドル買い圧力や、(7)欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力、(8)ECBフィキシングに絡むユーロ売り・ドル買い圧力が重石となり、日本時間23時過ぎにかけて、安値1.0897まで反落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間6/29午前5時20分現在)では、1.0916前後で推移しております。尚、昨日はラガルドECB総裁より「基本シナリオ通りなら7月に利上げする可能性が高い」「コアインフレが低下している十分な証拠はない」との発言が見られましたが、市場の反応は限定的となりました。
本日の見通し
ドル円は一時144.63まで急伸するなど、約7カ月半ぶり高値圏へと急伸しました(年初来高値を連日で更新)。日足ローソク足が主要テクニカルポイントの上側で推移していること(アップサイドにレジスタンスが不在であるため戻り売りが出にくい)や、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のバンドウォーク」「ダウ理論の上昇トレンド」が成立していること、日足のみならず、1時間足や4時間足、週足でも強い買いシグナルが点灯していること等を踏まえると、テクニカル的に見て地合いは極めて強いと判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測(パウエルFRB議長は昨日のECBフォーラムで年内2回の利上げの可能性について示唆)や、(2)日銀による金融緩和の長期化観測(植田日銀総裁は昨日のECBフォーラムで基調的なインフレが目標を下回っていることを挙げた上で緩和政策維持の正当性を示唆)、(3)上記1、2を背景とした日米金融政策の方向性の顕著な違い(日米金利差拡大→円キャリートレード活発化)、(4)日本とその他各国との金利差拡大(クロス円上昇→ドル円連れ高)など、ドル円相場の続伸を連想させる材料が揃っています。本邦当局による介入警戒感が燻っているものの、昨年高値151.95を超えてくるまでは実弾介入に踏み切る可能性は低いと見られることから、当方では引き続き、ドル円相場の続伸をメインシナリオとして予想いたします(口先介入に対する「円買い」感応度は日に日に低下)。
尚、本日は米1ー3月期GDP統計確報値(21:30)や、米新規失業保険申請件数(21:30)、米5月中古住宅販売成約指数(23:00)、アトランタ連銀ボスティック総裁講演(04:00)に注目が集まります。状況次第では、心理的節目145.00を試すシナリオも想定されるため、特に海外時間帯のアップサイドリスクに注意が必要でしょう。
本日の予想レンジ:143.75ー145.25
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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