ドル円見通し 財務省の円安けん制を意識しながらも144円台到達で年初来高値更新(23/6/28)

ドル円は6月27日深夜高値で144.16円を付けて1月16日安値127.22円以降の高値を更新した。

ドル円見通し 財務省の円安けん制を意識しながらも144円台到達で年初来高値更新(23/6/28)

財務省の円安けん制を意識しながらも144円台到達で年初来高値更新

〇ドル円、6/27深夜高値で144.16をつけ、昨年11/10以来の144円台に
〇145円に迫る状況では一段と厳しい口先介入やレートチェック、実弾介入への警戒感も強まりやすい
〇6/27夜に発表された米経済指標は総じて市場予想を上回り、米FRBの追加利上げに寄与する内容
〇7月FOMCの利上げ可能性が強まったと市場は受け止め、米長期債利回りは総じて上昇
〇143円台を維持して推移か、直近高値から1円超える反落が発生しない内は高値試しへ向かいやすい
〇143.29割れからは6/26夕安値142.94試しとし、142.94割れからは142円台中盤への下落を想定

【概況】

ドル円は6月27日深夜高値で144.16円を付けて1月16日安値127.22円以降の高値を更新した。144円台は昨年11月10日に米CPIの大幅鈍化により急落した「逆CPIショック」時以来。1月16日安値からの上昇幅は16.94円に拡大して昨年10月21日高値151.94円から今年1月16日安値までの下落幅24.72円対して凡そ68%を戻した。ECBフォーラムにおいてラガルドECB総裁がインフレ抑制のために7月理事会での追加利上げ姿勢を強調したことでユーロドルとユーロ円が上昇、米経済指標が総じて市場予想を上回ったことでFRBによる追加利上げ見通しがより強まったとして米長期債利回りが上昇したため、ドル買い円売りの流れとなった。
神田財務官や鈴木財務相および松野官房長官等による円安けん制の発言が相次いでおり、昨年9月と10月の市場介入も思い起こされるため、145円に迫る状況においては一段と厳しい口先介入やレートチェック、あるいは実弾の市場介入への警戒感も強まりやすいところだが、市場心理は当局の姿勢の強さや許容水準を試すような円安を仕掛けてゆきやすい状況にもあると思われる。

欧州中銀(ECB)のラガルド総裁は27日に「インフレ率は低下しているものの、物価上昇は価格転嫁という形で経済全体に段階的に波及していく」「断固として対応する必要がある」と述べて7月の次回理事会での利上げ継続姿勢を強調した。
鈴木財務相は27日に閣議後の会見で「為替市場に急速で一方的な動きも見られる」「為替市場の動向を強い緊張感を持って注視し、行き過ぎた動きに対しては適切に対応する」と述べている。

【米経済指標、総じて市場予想を上回る】

6月27日夜に発表された米経済指標は総じて市場予想を上回り、米FRBの追加利上げに寄与する内容だった。米商務省による5月耐久財受注額は前月比1.7%増となり、市場予想の1.0%減を上回り、4月の1.2%増も上回った。設備投資の先行指標である航空機を除く非国防資本財受注は0.7%増で市場予想の0.0%を上回った。
米連邦住宅金融庁(FHFA)による4月住宅価格指数は前年同月比では3.1%上昇で3月の3.7%上昇から鈍化したものの、前月比0.7%上昇で3月の0.5%上昇および市場予想の0.5%上昇を上回った。また4月ケースシラー住宅価格指数は前年同月比1.7%低下だったが市場予想の2.6%低下を上回った。

米コンファレンスボードによる6月消費者景気信頼感指数は109.7となり、5月の102.5から大幅に上昇して市場予想の104.0を上回った。このうち現況指数は155.3で5月の148.9から上昇、期待指数は79.3で5月の71.5から上昇した。
米商務省による5月新築一戸建て住宅販売件数(年換算)は前月比12.2%増の76万3000戸となり、市場予想の67万5000戸を大幅に上回り3か月連続のプラスとなった。また販売価格中央値も前月比3.5%上昇の41万6300ドルとなり、2ヶ月振りに上昇した。

【米長期債利回り上昇、NYダウは反発】

6月27日の米長期債利回りは総じて上昇した。ECBの追加利上げ姿勢と米経済指標が総じて良好だったことにより7月FOMCでの利上げ可能性が一層強まったと市場は受け止めている。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.04%上昇の3.77%、30年債利回りは0.02%上昇の3.84%、利上げに敏感な2年債利回りは0.01%上昇の4.76%となった。
一方でNYダウは6営業日続落してきたが27日は前日比212.03ドル高と7営業日ぶりの上昇となり、ナスダック総合指数は219.89ポイント高で3日ぶりに反発した。米長期債利回りがやや上昇したものの小幅上昇だったために影響は少なく、逆に米経済指標が良好だったことがプラスと受け止められて売られ過ぎ感から買い戻し優勢となり、27日の上海総合株価指数が反騰したことも押し上げ要因となったようだ。
6月28日にはパウエル米FRB議長講演、30日には個人消費支出(PCE)物価指数の発表も控えているのでここからはやや慎重な動きになりやすいところか。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は先週末に143.87円へ上昇してから26日夕刻に142.94円まで反落したものの、27日深夜に144.16円へ一段高している。26日夕安値を起点として新たな上昇期に入っていると思われるが、24日未明高値を基準として目先の高値形成期は7月1日未明にかけて想定されるのでまだ上昇余地ありとみる。
財務省等による円安けん制もあるため144円台後半へ上昇する場面では反落注意とするが、143円台を維持しての推移か、直近高値から1円を超える反落が発生しないうちは29日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。弱気転換は26日夕安値割れからとする。

60分足の一目均衡表では6月27日午後からの上昇で遅行スパンが好転して先行スパンを上抜いた状況も維持されているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。先行スパンから転落しないうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところからは上昇再開とするが、先行スパンから転落する場合はいったん下げに入るとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は27日夜の50ポイント割れを買われてしっかりしているので70ポイント台を試す上昇余地ありとみるが、45ポイント割れからはいったん下げに入るとみて30ポイント台序盤への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6月27日夜安値143.29円を下値支持線、144.20円を上値抵抗線とする。
(2)143.29円を上回るうちは上昇余地ありとし、144.20円超えからは144.50円台、勢い付く場合は144.70円台への上昇を想定する。144.70円以上は反落注意とするが、27日夜安値を上回っての推移なら29日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)143.29円割れからは26日夕安値142.94円試しとし、142.94円割れからは142円台中盤への下落を想定する。142.50円以下は反騰注意とするが、27日夜安値を割り込んでの推移なら29日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

6/28(水)
休場 トルコ、フィリピン、インド
10:30 (豪) 5月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (4月 6.8%、予想 6.1%)
15:00 (独) 7月 GFK消費者信頼感 (6月 -24.2、予想 -23.0)
21:30 (米) 5月 卸売在庫 前月比 (4月 -0.2%、予想 -0.1%)
22:30 (米) パウエルFRB議長、ECBフォーラム講演
22:30 (欧) ラガルドECB総裁、植田日銀総裁、ベイリー中銀総裁、ECBフォーラム講演
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省7年債、2年物変動利付債入札

6/29(木)
休場 トルコ、シンガポール、マレーシア、インドネシア
EU首脳会議(ブリュッセル 6/30まで)
08:50 (日) 5月 小売業販売額 前年同月比 (4月 5.0%、予想 5.2%)
10:00 (NZ) 6月 ANZ企業信頼感 (5月 -31.1)
10:30 (豪) 5月 小売売上高 前月比 (4月 0.0%、予想 0.1%)
14:00 (日) 6月 消費者態度指数・一般世帯 (5月 36.0、予想 36.1)
15:30 (米) パウエルFRB議長、金融安定性関連会議参加
18:00 (欧) 6月 消費者信頼感・確定値 (速報 -16.1)
18:00 (欧) 6月 経済信頼感 (5月 96.5、予想 96.0)

21:00 (独) 6月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前月比 (5月 -0.1%、予想 0.2%)
21:00 (独) 6月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (5月 6.1%、予想 6.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 26.4万件、予想 26.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 175.9万人)
21:30 (米) 1-3月期 GDP・確定値 前期比年率 (改定値 1.3%、予想 1.4%)
21:30 (米) 1-3月期 GDP個人消費・確定値 前期比年率 (改定値 3.8%)
21:30 (米) 1-3月期 コアPCE・確定値 前期比年率 (改定値 5.0%)
23:00 (米) 5月 住宅販売保留指数 前月比 (4月 0.0%、予想 -0.5%)
23:00 (米) 5月 住宅販売保留指数 前年同月比 (4月 -22.6%)
25:30 (英) テンレイロ英中銀委員、講演
28:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演


注:ポイント要約は編集部

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