ドル円見通し 財務相の円安けん制で一時143円を割り込むもしっかり
○ドル円、財務相の円安けん制発言からドル買い円売りにブレーキがかかり、6/26夕刻142.94まで下げる
〇しかし143円割れは買われ深夜143.71まで戻し、6/27早朝にかけては143.50挟みの揉み合いでしっかり
○財務官と財務相による円安けん制発言、昨年9月と10月の市場介入を思い起こさせる
○米長期債利回りは概ね横ばい程度の動き、NYダウは6営業日続落、ナスダックも前日から続落
○142.94を割り込まないうちは上昇余地ありとし、143.87超えからは144円台前半を試す上昇を想定する
○142.94割れからは142.65近辺、次いで142円台前半(142.50から142.00)への下落を想定する
【概況】
ドル円は英中銀やノルウェー中銀が市場予想を上回る利上げを決定し、パウエルFRB議長が半期に一度の議会証言で年内あと2回の利上げが適切として年内の利下げを否定したことを背景に先週末の24日未明には143.87円へ上昇して年初来高値を更新し、144円に迫っていた。
6月26日は円安の進行に対して鈴木財務相が「行き過ぎた動きがあれば適切に対応する」等と発言、松野官房長官も同様の円安けん制発言をしたことでドル買い円売りにブレーキがかかり夕刻には142.94円まで下げたが、143円割れは買われて26日深夜には143.71円まで戻し、27日早朝にかけては143.50円を挟んだ揉み合いでしっかりしている。
6月26日に発表された独IFOによる6月景況指数が88.5となり、5月の91.5から悪化して市場予想の90.6を下回ったことにより景気減速感が意識されて欧州長期債利回りが低下、米長期債利回りが連れて低下したこともドル円の下落要因となったが、当局の円安けん制を意識しつつも市場はドル円の先高感が継続と見ている印象だ。
【日本当局による円安けん制、昨年9月と10月の市場介入を思い起こさせる】
6月26日に神田財務官は記者団の円安に関する取材に対して「足元の動きは急速で一方的だ」とし、「高い緊張感を持って注視するとともに行き過ぎた動きに対しては適切に対応する」、「あらゆるオプションがアベイラブルだ。何かを排除していることはない」と述べて円安をけん制した。
鈴木財務相も「(円安で)行き過ぎた動きがあれば適切に対応する」「緊張感を持ってこれからも見ていく」とし、松野官房長官も同様の発言を行った。
日銀は昨年9月と10月に大規模な単独介入を実施し、当初の9月22日介入での市場反応は一時的だったものの10月21日介入では151.94円を付けたところでドル円が天井となり、その後の大幅下落のきっかけとなった。昨年の介入は1998年6月以来24年3か月ぶりであり、いずれの介入も主要国の協調介入ではなくて単独介入だったが、米国等による批判はなく当然のことと理解された。インフレ抑制のために米国としてはドル高によるデフレ効果は重要であり、日銀の単独介入なら了承するということだったのだろうと推察された。
昨年9月22日の介入では高値145.89円から安値140.36円まで5円を超える急落が発生したが、一度の介入では円安は収まらないとして早々に買い戻されている。
昨年10月21日の介入では151.94円を付けたところから当日に146.18円まで5円を大きく超える急落が発生し、翌日に149円台中盤まで戻したところで戻り売りされ、145円を支持線として暫く高値圏を維持していたが、11月10日の米CPI上昇率大幅鈍化による逆CPIショックで140円割れへと急落していった。
現状は主要国の再利上げや利上げ継続姿勢が強まる中で日銀の大規模金融緩和が続いている状況での円安ドル高であり、昨年9月の介入水準に迫っているところだが、昨年の経験を活かせば最初の介入ではバーゲンハント買いされ、その後の連続介入のありかたで政府・日銀の円安阻止姿勢の強さを測るという展開になるのではないかと思われる。
【米長期債利回りは低下から横ばい程度の動き、NYダウは続落】
6月26日の米長期債利回りは概ね横ばい程度の動きだった。指標の10年債利回りは前日比0.01%低下の3.73%、概ね3.74%から3.68%のレンジで推移した。主要国の利上げが相次ぎ米国も追加利上げ姿勢のため長期金利は上昇しやすい環境にはあるものの、金融引き締めの長期化による景気後退リスクも根強いために株安の中で安全資産として債券が買われると長期債利回りも伸びを欠くことになる。30年債利回りは横ばいの3.82%、利上げに敏感な2年債利回りは横ばいの4.75%だった。
米金利先物市場については7月のFOMCでの利上げ確率が7割強、来年1月まで5%以上で推移するとの予想が反映されている。
6月26日のNYダウは前日比12.72ドル安と小幅ながら6月16日から6営業日続落、ナスダック総合指数も156.74ポイント安で23日から続落した。上海総合株価指数は連休を挟んで6月19日から26日へ4営業日続落しており、主要国の引き締め政策と中国の景気回復が鈍く当局の景気対策も利下げ以外には見られないことで売られている。株安はドル円にとっては上昇を抑える圧迫要因となるため、26日の財務省等による円安けん制とともに目先のドル円の上値を重くしやすいところと思われる。
【日足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は6月24日未明高値で143.87円を付けたところから26日夕刻に一時143円を割り込んでから再び持ち直しているところだが、144円手前に抵抗感を見せている。6月24日未明高値を超えないうちは28日未明にかけて安値を試す可能性があると思われるが、24日未明高値超えからは新たな上昇期に入るとみて7月1日未明にかけての上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では6月24日未明高値からの上げ渋りにより遅行スパンが実線と交錯しているが、先行スパンを上抜いた状況は維持されている。6月24日未明高値超えからは一段高に入るので遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンへ潜り込むところからは下向きとして遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、先行スパンから転落する場合は下げ足が早まる可能性があると注意する。
60分足の相対力指数は6月26日に50ポイントを割り込んだところから戻したものの60ポイント台へ進めずにいる。60ポイント超えからは上昇再開とみて70ポイント台を目指す上昇を想定するが、40ポイント割れからは30ポイント割れを試す下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6月26日夕安値142.94円を下値支持線、6月24日未明高値143.87円を上値抵抗線とする。
(2)142.94円を割り込まないうちは上昇余地ありとし、143.87円超えからは144円台前半(144.10円から144.50円手前)を試す上昇を想定する。144.50円以上は反落警戒とするが、144円台を維持しての推移なら28日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)142.94円割れからは142.65円近辺、次いで142円台前半(142.50円から142.00円)への下落を想定する。142.20円以下は反騰注意とするが、142.94円以下での推移なら28日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
6/27(火)
ダボス会議(6/29まで、中国・天津)
14:00 (日) 4月 景気先行指数CI・改定値 (速報 97.6)
14:00 (日) 4月 景気一致指数CI・改定値 (速報 99.4)
17:00 (欧) ラガルド欧州中銀(ECB)総裁、ECBフォーラム講演
21:30 (米) 5月 耐久財受注 前月比 (4月 1.1%、予想 -1.0%)
21:30 (米) 5月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (4月 -0.2%、予想 -0.1%)
22:00 (米) 4月 連邦住宅金融局住宅価格指数 前月比 (3月 0.6%、予想 0.5%)
22:00 (米) 4月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (3月 -1.2%、予想 -2.6%)
23:00 (米) 5月 新築住宅販売件数・年率換算 (4月 68.3万件、予想 67.5万件)
23:00 (米) 5月 新築住宅販売件数 前月比 (4月 4.1%、予想 -1.2%)
23:00 (米) 6月 コンファレンスボード消費者信頼感指数 (5月 102.3、予想 104.0)
23:00 (米) 6月 リッチモンド連銀製造業指数 (5月 -15、予想 -12)
26:00 (米) 財務省5年債入札
6/28(水)
休場 トルコ、フィリピン、インド
10:30 (豪) 5月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (4月 6.8%、予想 6.1%)
15:00 (独) 7月 GFK消費者信頼感 (6月 -24.2、予想 -23.0)
21:30 (米) 5月 卸売在庫 前月比 (4月 -0.2%、予想 -0.1%)
22:30 (米) パウエルFRB議長、ECBフォーラム講演
22:30 (欧) ラガルドECB総裁、植田日銀総裁、ベイリー英中銀総裁、ECBフォーラム講演
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省7年債、2年物変動利付債入札
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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