『円キャリートレード再開でドル円は約7カ月半ぶり高値圏へと急上昇』
〇今週のドル円、週末にかけて一時143.88まで上昇、高値圏で越週
〇欧州での利上げ相次ぎ、本邦の金融緩和継続方針との対比からの円売り強まる
〇FRB関係者からタカ派発言続き、米長期金利は上昇
〇ユーロドル、欧州債利回り上昇等に1.1012まで上昇後、週末1.08台まで失速
〇ドル円、テクニカル的に地合いの強さを決定付けるチャート形状
〇ファンダメンタルズ的に見ても、ドル円相場の続伸を連想させる材料揃う
〇引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):141.75ー145.25、(EURUSD):1.0775−1.1025
今週のレビュー(6/19−6/23)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初141.80で寄り付いた後、(1)日経平均株価の冴えない動きや、(2)上記1を背景としたリスク回避の円買い圧力、(3)鈴木財務相による「為替動向については日々注視している」「必要であれば適切に対応する」との円安牽制発言、(4)西村経済産業相による「過度な変動・投機的な動きはしっかりと注視しなければならない」との円安牽制発言、(5)米金利低下に伴うドル売り圧力、(6)米主要株価指数の冴えない動きが重石となり、翌6/20にかけて、週間安値141.21まで下落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(7)日経平均株価の持ち直し(リスク選好の円売り再開)や、(8)安達日銀審議委員による「一番恐れているのは拙速な政策変更で再びデフレに陥ること」「円安修正のために金融政策使うと物価目標への道を阻害してしまう」とのハト派的な発言、(9)植田日銀総裁による「経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していく」とのハト派的な発言、(10)クックFRB理事による「インフレ率はまだ目標に戻っていない」とのタカ派的発言、(11)アトランタ連銀ボスティック総裁による「2024年の利下げは予想せず」とのタカ派的な発言、(12)主要国による政策金利引き上げ(スイス中銀による25bpの利上げ+ノルウェー中銀による50bpの利上げ+トルコ中銀による650bpの利上げ+英中銀による50bpの利上げ)、
(13)上記12を背景とした日本とその他各国との金利差拡大(円キャリートレード活発化期待)、(14)米5月景気先行指数(結果▲0.7%、予想▲0.8%)の市場予想を上回る結果、(15)米5月中古住宅販売件数(結果430万件、予想425万件)の市場予想を上回る結果、(16)パウエルFRB議長による「今年あと2回の利上げが適切となろう」とのタカ派的な発言、(17)ボウマンFRB理事による「インフレ抑制のために追加利上げが必要」とのタカ派的な発言、(18)米金利上昇に伴うドル買い圧力が支援材料となり、週末にかけて、週間高値143.88(昨年11/10以来、約7ヵ月半ぶり高値圏)まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間6/24午前3時30分現在)では、143.74前後で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0942で寄り付いた後、(1)リトアニア中銀シムカス総裁による「7月利上げに疑いはない」「9月利上げが必要かを判断するのは時期尚早」とのタカ派的な発言や、(2)レーンECB専務理事兼チーフ・エコノミストによる「7月に追加利上げし、9月は様子を見るのが適切」とのタカ派的な発言、(3)シュナーベルECB専務理事による「インフレリスクは上方向に傾いている」「利上げ継続が必要」とのタカ派的な発言、(4)フィンランド中銀レーン総裁による「利上げ決定時の判断材料となる基調的なインフレ率は総合インフレ率ほど減速していない」とのタカ派的な発言、(5)スロバキア中銀カジミール総裁による「インフレがすぐに低下するとは予想していない」「コア・インフレは依然として頑強」とのタカ派的な発言、
(6)ドイツ連銀ナーゲル総裁による「2%のインフレ目標は達成可能だが、依然として長い道のり」とのタカ派的な発言、(7)パウエルFRB議長による「利上げの初期段階ではスピードが重要だったが現在はそれほど重要ではない」「より緩やかなペースでの金利引き上げが合理的かもしれない」との慎重な発言、(8)米金利低下に伴うドル売り圧力、(9)欧州各国(スイス中銀、ノルウェー中銀、英中銀)の政策金利引き上げ発表、(10)上記9を背景としたECBによる更なる金融引き締め実施の思惑、
(11)欧州債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.1012(5/8以来、約1ヵ月半ぶり高値圏)まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(12)急ピッチな上昇に対する反動売りや、(13)パウエルFRB議長による「今年あと2回の利上げが適切となろう」とのタカ派的な発言、(14)米金利上昇に伴うドル買い圧力、(15)欧州株の冴えない動きが重石となり、週末にかけて、週間安値1.0844(6/15以来の安値圏)まで急落しました。引けにかけて反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間6/24午前3時30分現在)では、1.0892前後で推移しております。
来週の見通し(6/26−6/30)
<ドル円相場>
ドル円は3/24に記録した安値129.65をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、約7カ月半ぶり高値となる143.88(昨年11/10以来の高値圏)まで急伸しました。この間、主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線、基準線、雲上下限、21日線、90日線、200日線、ボリンジャーミッドバンド)を軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のバンドウォーク」「ダウ理論の上昇トレンド」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの強さを決定付けるチャート形状となりつつあります。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測(パウエルFRB議長は「今年あと2回の利上げが適切となろう」と発言)や、(2)日銀による金融緩和の長期化観測(植田日銀総裁や安達日銀審議委員によるハト派的なスタンス)、(3)上記1、2を背景とした日米金融政策の方向性の違い、(4)日本とその他各国との金利差拡大(オーストラリア中銀、カナダ中銀、欧州中銀に続いて、今週はスイス中銀、ノルウェー中銀、トルコ中銀、英中銀が政策金利の引き上げを決定)、(5)上記3、4を背景とした円キャリートレードの活発化期待など、ドル円相場の続伸を連想させる材料が揃っています。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は日米の物価指標(本邦6月東京都区部消費者物価指数、米5月PCEデフレータ)に加えて、ポルトガルのシントラで開催されるECBフォーラムでの日米欧英当局者発言(植田日銀総裁、パウエルFRB議長、ラガルドECB総裁、ベイリーBOE総裁)に注目が集まります。また、上記以外にも、日銀が公表する日銀金融政策決定会合での主な意見(各審議委員のインフレに対する見解の見極め)や、本邦当局による口先介入(円安牽制発言)にも警戒が必要でしょう。
来週の予想レンジ(USDJPY):141.75ー145.25
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は5/31に記録した安値1.0634をボトムに反発に転じると、今週後半にかけて、約1カ月半ぶり高値1.1012(5/8以来の高値圏)まで急伸しました(週末にかけて1.0844まで急落するも下値は堅い)。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線、基準線、雲下限、21日移動平均線、90日移動平均線、200日移動平均線、ボリンジャーミッドバンド)の上側で推移していることや、来週中に21日移動平均線と90日移動平均線のゴールデンクロスを経て強い買いシグナルを示唆する「強気のパーフェクトオーダー」の成立が見込まれていること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます(週末にかけての急落は、上昇トレンドの過程で見られる一時的な押し目と整理)。
但し、ファンダメンタルズ的に見ると、ECBによる金融引き締め長期化観測(先週開催されたECB理事会で25bpの利上げに踏み切った他、声明文やラガルドECB総裁記者会見、その後の欧州当局者発言は総じてタカ派的な内容)が浮上する一方で、米FRBによる金融引き締め長期観測(パウエルFRB議長が議会証言でタカ派的なスタンスを示唆)も浮上しているため、来週は「米ドル高」と「ユーロ高」が綱引き状態になることが予測され、ユーロドルは方向感を見出しづらい時間帯となりそうです。
当方は中長期的なユーロドル上昇を見込んでいますが、短期的には(来週1週間に限っては)、レンジ相場が続くと予想いたします。尚、来週は、ドイツ6月IFO景況感指数や、ユーロ圏6月欧州委員会景況指数、ユーロ圏6月消費者物価指数速報値に加えて、ポルトガルのシントラで開催されるECBフォーラムでのECB当局者発言(ラガルドECB総裁、パネッタECB専務理事、エルダーソンECB専務理事、シュナーベルECB専務理事、デギンドスECB副総裁、レーンECB専務理事)に注目が集まりそうです。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0775−1.1025
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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