米CPI発表直後の乱高下から140円台序盤へ上昇
〇ドル円、6/13米5月CPI発表直後に乱高下するも米長期債利回り上昇を素直に反映しドル高円安の流れ
〇主要中銀による追加利上げ姿勢を踏まえCPI反応の強弱は分かれ、為替市場の動きはまちまち
〇米5月CPI、全体は顕著に鈍化しおよそ2年ぶりの低水準、コア指数は若干の鈍化で高止まりの様相
〇米金利先物市場では6月FOMC利上げ停止確率が9割を超え、7月の追加利上げ確率が6割強に
〇米長期債利回りは年内利下げ期待後退として上昇、株式市場は当面の利上げ停止が濃厚としNYダウ続伸
〇140円以上を維持するか、割り込んでも回復するうちは140.30超えから140円台後半への上昇を想定
〇139.70割れからは下落再開を警戒して139円台前半への下落を想定
【概況】
ドル円は6月13日夜の米5月CPI発表直後に139.94円へ上昇してから139.00円へ反落したが、米長期債利回り上昇を確認して反騰に転じて14日早朝には140.30円へ高値を切り上げた。
米CPIは全体の前年比が大きく鈍化したもののコア指数は僅かな鈍化で高止まりの様相となり、ユーロドルは上昇後に下落、ポンドドルは14日未明へ上昇してからやや下げたものの一段高状態を維持、豪ドル米ドルは直後の乱高下で5月31日以降の高値を更新してから反落するなど、為替市場の動きはまちまちの側面も見られた。
米FRBが利上げをいったん停止した上で追加利上げ余地を探る公算の中、主要中銀による追加利上げ姿勢を踏まえてCPI反応の強弱も分かれた印象だが、今週末の日銀金融政策決定会合における現状維持見通しによりドル円は米長期債利回り上昇を素直に反映してドル高円安の流れとなった。
今夜の米PPIから明朝のFOMCをドル高円安で通過してゆく場合は141円を試す可能性のある局面とみるが、5月29日と5月30日に141円を試したところで失速しており、30日には日銀・金融庁・財務省の三者会合も持たれたため141円に迫る水準では高値警戒感も出やすいと注意する。
【米5月CPI、全体は顕著に鈍化、コア指数は若干の鈍化にとどまる】
5月の米CPI(消費者物価指数)上昇率は全体の前月比が0.1%となり、4月の0.4%から大幅に鈍化して市場予想の0.2%を下回った。前年同期比は4.0%となり、4月の4.9%から大幅に鈍化して市場予想の4.1%を下回り、11か月連続の鈍化で2021年3月以来およそ2年ぶりの低水準となった。内訳ではガソリンが19.7%低下したことや中古車・トラックが4.2%低下したことが影響したようだ。
変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数の上昇率は前月比0.4%となり、4月と変わらずに予想と一致し、前年同月比は5.3%で4月の5.5%から若干低下したものの予想と一致して高止まりの様相となった。
米CPI全体の鈍化傾向が顕著だったために6月FOMC(15日3時に政策金利等を発表、3時半にパウエルFRB議長会見)では利上げをいったん停止すると見込まれるものの、コア指数の高止まりにより7月以降に追加利上げされる可能性をやや高めたのではないかと市場は受け止めているようだ。
FRBとしてはインフレはまだ高すぎるとしても、3月の米銀破綻をきっかけとした信用不安による銀行与信基準の厳格化が実質的な利上げ効果をもたらしていることもあり、インフレ抑制への積極姿勢を示すのか、市場心理を冷やさないように気を遣うのか難しい判断となる。
前回のFOMCでは「追加の引き締めが適切」との文言を削除して6月FOMCでの利上げ停止姿勢を示したものの、パウエル議長は「利上げ停止を決定したわけではない」と会見で述べて利下げ待望論へ釘を刺した。その後のFRB高官や地区連銀総裁の発言はしばらく追加利上げ支持姿勢が目立っていたが5月末にかけては利上げ停止が適切との姿勢が繰り返された。
米金利先物市場においては6月FOMCの利上げ停止確率が9割を超え、7月の追加利上げ確率が6割強となっている。
【米長期債利回りは上昇、NYダウは6営業日続伸】
6月13日の米長期債利回りは総じて上昇した。長期金利指標の10年債利回りは前日比0.08%上昇の3.82%となった。米CPI発表直後に3.68%へいったん低下してから14日早朝に3.85%まで急伸し、5月26日に付けた3.86%に迫った。30年債利回りは前日比0.04%上昇の3.92%、利上げに敏感な2年債利回りは前日比0.09%上昇の4.67%となり、5月28日の4.66%を超えて3月24日の3.56%以降の最高値とした。
長期債利回りとしては6月の利上げ停止でも7月以降の追加利上げの可能性が高まり年内の利下げ期待は後退したと受け止めたようだ。
一方でNYダウは前日比145.79ドル高と上昇して6営業日続伸となり、高値で34310.28ドルを付けて5月1日高値を超えて3月15日安値31429.82ドル以降の高値を更新、ナスダック総合指数も111.40ポイント高で4連騰となり、昨年10月13日安値10088.83ポイント以降の高値を更新した。株式市場としては当面の利上げ停止が濃厚となり、追加利上げがあったとしてもあと1回程度との楽観的な受け止め方で金融引き締めによる景気減速がソフトランディングするとみているようだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は6月13日夜の米CPI発表直後の乱高下で139.00円を付けたものの6月9日午前安値138.72円からは底上げをして140円台序盤へ上昇したため、6月9日午前安値を起点とした上昇基調の継続として15日の日中にかけての上昇余地ありとみる。ただし、今夜の米PPI及び明日未明のFOMCを通過して乱高下する可能性もあると注意し、140円台前半にとどまって139.50円割れへ下落する場合は下落期入りの可能性を優先して16日にかけての下落を想定する。
60分足の一目均衡表では6月13日夜からの反騰で遅行スパンが好転して先行スパンを上抜いたが、その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。ただし米PPIやFOMCを通過して乱高下する可能性に注意し、遅行スパン悪化からは安値試し優先とし、先行スパンから転落する場合は下げ足が速まると警戒する。
60分足の相対力指数は13日夜の40ポイント割れから60ポイント台後半へ上昇したところのため、50ポイント以上を維持するうちは70ポイント台への上昇余地ありとするが、50ポイント割れからは下落再開の可能性を優先して30ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、139.70円を下値支持線、14日早朝高値140.30円を上値抵抗線とする。
(2)140円以上を維持するか一時的に割り込んでも回復するうちは140.30円超えから140円台後半への上昇を想定する。141円手前は反落警戒とするが、140円台を維持するか直前高値から0.70円を超える反落が発生しないうちは15日の日中も高値試しを続けやすいとみる。またFOMC反応次第では急伸もあり得るところと注意する。
(3)139.70円割れからは下落再開を警戒して139円台前半への下落を想定する。139.25円以下は反騰注意とするが、FOMCから急落商状の場合は138円台後半への下落を想定し、15日の日中も安値試しを続けやすいとみる。
【当面の主な予定】
6/14(水)
15:00 (英) 4月 月次GDP 前月比 (3月 -0.3%、予想 0.2%)
15:00 (英) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 0.7%、予想 -0.1%)
15:00 (英) 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 -2.0%、予想 -1.8%)
15:00 (英) 4月 貿易収支・物品 (3月 -163.56億ポンド、予想 -165.00億ポンド)
15:00 (英) 4月 貿易収支・全体 (3月 -28.64億ポンド、予想 -35.00億ポンド)
15:00 (独) 5月 WPI(卸売物価指数) 前月比 (4月 -0.4%)
18:00 (欧) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 -4.1%、予想 0.8%)
18:00 (欧) 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 -1.4%、予想 0.7%)
21:30 (米) 5月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (4月 0.2%、予想 -0.1%)
21:30 (米) 5月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (4月 2.3%、予想 1.5%)
21:30 (米) 5月 PPIコア指数 前月比 (4月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 5月 PPIコア指数 前年同月比 (4月 3.2%、予想 2.9%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)政策金利 (現行 5.00-5.25%、予想 5.00-5.25%)
27:30 (米) パウエル米FRB議長、記者会見
6/15(木)
日銀・金融政策決定会合初日
07:45 (NZ) 1-3月期 GDP 前期比 (10-12月 -0.6%、予想 -0.1%)
07:45 (NZ) 1-3月期 GDP 前年同期比 (10-12月 2.2%、予想 2.6%)
08:50 (日) 4月 機械受注 前月比 (3月 -3.9%、予想 3.2%)
08:50 (日) 4月 機械受注 前年同月比 (3月 -3.5%、予想 -8.3%)
08:50 (日) 5月 通関貿易収支・季調前 (4月 -4324億円、予想 -1兆2868億円)
08:50 (日) 5月 通関貿易収支・季調済 (4月 -1兆172億円、予想 -8111億円)
10:30 (豪) 5月 新規雇用者数 (4月 -0.43万人、予想 1.50万人)
10:30 (豪) 5月 失業率 (4月 3.7%、予想 3.7%)
11:00 (中) 5月 小売売上高 前年同月比 (4月 18.4%、予想 13.7%)
11:00 (中) 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 5.6%、予想 3.5%)
13:30 (日) 4月 第三次産業活動指数 前月比 (3月 -1.7%、予想 0.4%)
18:00 (欧) 4月 貿易収支・季調済 (3月 170億ユーロ、予想 50億ユーロ)
18:00 (欧) 4月 貿易収支・季調前 (3月 256億ユーロ)
21:15 (欧) 欧州中銀(ECB)政策金利 (現行 3.75%、予想 4.00%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 26.1万件、予想 25.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 175.7万人)
21:30 (米) 5月 輸入物価指数 前月比 (4月 0.4%、予想 -0.6%)
21:30 (米) 5月 輸出物価指数 前月比 (4月 0.2%、予想 -0.3%)
21:30 (米) 6月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (5月 -31.8、予想 -15.1)
21:30 (米) 5月 小売売上高 前月比 (4月 0.4%、予想 -0.1%)
21:30 (米) 5月 小売売上高・除自動車 前月比 (4月 0.4%、予想 0.1%)
21:30 (米) 6月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (5月 -10.4、予想 -12.5)
21:45 (欧) ラガルド欧州中銀(ECB)総裁、記者会見
22:15 (米) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 0.5%、予想 0.1%)
22:15 (米) 5月 設備稼働率 (4月 79.7%、予想 79.7%)
23:00 (米) 4月 企業在庫 前月比 (3月 -0.1%、予想 0.2%)
24:35 (英) カンリフ英中銀副総裁、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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