米ISMサービス業景況指数が予想外の悪化でドル安反応
〇ドル円、米ISMサービス業景況指数悪化で6/5深夜安値139.24へ急落、雇用統計による上昇分ほぼ解消
〇FOMCを前に、金利先物市場での6月利上げ確率は約2割、利上げ見送り確率が約8割
〇与信基準厳格化が事実上の引き締め効果増大を示している事も、利上げサイクル終了期が近い印象に
〇米長期債利回りは総じて低下、5月から続く上昇の勢いがややトーンダウンか
〇前日大幅高のNYダウ反落、ISMサービス業景況指数不冴えが不況リスクを再び増大させた事が要因
〇140円以下での推移中は一段安余地あり、139円割れからは6/1深夜安値138.45試しへ向かうとみる
〇140円手前は戻り売りにつかまりやすい、140円超えからは6/5高値140.45手前を試すとみる
【概況】
ドル円は6月2日夜の米5月雇用統計での非農業部門就業者数が大幅に増加したことでFRBの追加利上げ公算が高まったとして米長期債利回りが上昇したために139円を挟んだ揉み合い水準から6月3日未明に140円台到達へ急伸し、5日夕刻にかけて140.45円まで高値を伸ばしていた。しかし、5日夜の米ISMサービス業景況指数が予想外に悪化したことでドル安へ風向きが急旋回したために5日深夜安値139.24円へ急落した。その後の持ち直しも続かず6日午前序盤は安値更新へ余裕が乏しくなっている。
FRB高官や地区連銀総裁らの6月利上げ見送り支持発言等により5月29日午前高値140.91と5月30日午後高値140.92円をダブルトップとしていったん下落していたが、2日夜の米雇用統計が予想以上に強かったことで6月の利上げが見送られても7月ないし9月に追加利上げされる公算が高まり、年末にかけての利下げ再開期待も遠のいたと市場が受け止めたことが2日夜からの反騰だったが、5日夜のISMサービス業景況指数が予想外に悪化したことで雇用統計による上昇分をほぼ解消した。
【ISMサービス製造業景況指数、5か月振り低水準に】
米サプライ管理協会(ISM)による5月の米サービス業景況指数は50.3となり4月の51.9から悪化して市場予想の52.3を割り込み2022年12月以来5カ月ぶりの低水準となった。
内訳では事業活動が4月の52.0から51.5へ悪化、新規受注が4月の56.1から52.9へ悪化、雇用は4月の50.8から49.2へ悪化した。インフレ指標でもある価格指数は4月の59.6から56.2へと低下して3年ぶり低水準となった。
ISMに先立って発表されたS&Pグローバルによる5月米サービス業(PMI)確報値は54.9となり4月確報値の53.6から改善したものの速報値の55.1から下方修正され、製造業とサービス業を合わせた総合指数確報値は54.3となり4月確報値の53.4から改善したものの速報値の54.5から下方修正された。
米商務省による4月の米製造業受注は前月比0.4%増となり3月の0.6%増に続いて2か月連続のプラスだったが市場予想の0.8%増を下回った。変動の激しい輸送関連を除くと0.2%減で国防関連を除くと0.4%減だった。
6月13-14日にFOMCが開催されるが、5月末にかけてFRB高官や地区連銀総裁らが利上げの一時停止が妥当との見方を繰り返し示したことで6月FOMCでの利上げはほぼ見送られる公算と市場は見ており、金利先物市場での6月利上げ確率は2割程度、利上げ見送り確率が8割程度となっている。
7月以降については今後の米経済指標、特にインフレ指標がどの程度低下するのかによると思われるが、昨年3月からのハイペースでの利上げ連続による景気への影響も出始めており、雇用統計にみられるような労働市場の堅調さと共に景況感の悪化傾向がみられること、信用不安問題も片付かずに与信基準の厳格化が事実上の引き締め効果増大を示していることもあり、仮に追加利上げがあったとしても利上げサイクルの終了期が近いという印象が優勢となってきているのではないかと考える。
【米10年債利回りは低下、前日大幅高のNYダウは反落】
6月5日の米長期債利回りは総じて低下、指標の10年債利回りは前日比0.01%低下の3.69%となった。米経済指標発表前は2日夜の米雇用統計後の上昇を継続して3.76%まで切り上がっていたが、ISMサービス業景況指数の悪化から3.66%へ急低下してからやや戻した。30年債利回りは前日比変わらずの3.89%、利上げに敏感な2年債利回りは前日比0.04%低下の4.47%となったが、一時4.58%まで上昇したところからの反落だった。5月から米長期債利回りは総じて上昇してきたが、その勢いもややトーンダウンし始めている印象だ。
一方でNYダウは6月2日に前日比701.19ドル高の大幅上昇で今年最大の上げ幅となったが、5日は大幅上昇後の反動安により前日比199.90ドル安と下落した。週末の米雇用統計では労働市場の強さが示されて景気後退リスクが薄まったとして積極的に買われたが、5日のISMサービス業景況指数の悪化が不況へのリスクを再び増大させたことが反落要因となった。また銀行の資本要件が厳しくなるとの米WSJ紙報道により銀行株が売られたことも影響した。6月2日にかけて2連騰していたナスダック総合指数は前日比11.34ポイント高と小幅下落した。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は6月1日深夜安値を起点として反騰入りしたが、5日夕刻高値で140.45円を付けたところから1円を超える反落となり、戻り一巡により下落期入りしたと思われる。目先の安値形成期は6月6日夜から8日夜にかけての間と想定されるが、5月29日と30日の両高値でダブルトップ型を形成したところの水準に届かずに戻り高値を切り下げての失速のため、戻り高値を切り下げた後の安値も切り下がりへ進み、6月1日深夜安値を割り込んでダブルトップから二段下げ型へと発展する可能性もあるところと注意したい。140円超えからは強気転換注意とするが、上昇期入りは6月5日夕高値140.45円超えからとする。
60分足の一目均衡表では6月5日夜の急落で遅行スパンが悪化した。6月6日午前序盤時点では先行スパンから転落しつつあるため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、先行スパンから転落する場合は下げ足が速まる可能性もあると注意する。26本基準線が戻りの抵抗となりやすいと思われるが、26本基準線超えから続伸の場合は強気転換注意とし、遅行スパン好転からは上昇再開と考える。
60分足の相対力指数は6月5日午前から午後にかけての高値更新に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られてから30ポイント台へ急低下した。50ポイント以下での推移中は一段安余地ありとし、下げ足が速まる場合は20ポイント前後を試す可能性もあると注意する。強気転換は50ポイント超えからとする。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、139.00円を下値支持線、140.00円を上値抵抗線とする。
(2)140円以下での推移中は一段安余地ありとし、139円割れからは6月1日深夜安値138.45円試しへ向かうとみる、138.50円以下は買い戻しも入りやすいとみるが、1日深夜安値を割り込む場合は先安感が強まると注意する。また139.70円以下での推移か直前安値から1円を超える反騰が見られないうちは7日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)140円手前は戻り売りにつかまりやすいとみる。140円超えからは6月5日高値140.45円手前を試すとみるがその後の反落警戒とする。140.45円を超えるには新たなドル高材料ないし円の独歩安材料が欲しいところだ。
【当面の主な予定】
6/6(火)
休場 韓国
10:30 (豪) 1-3月期 経常収支 (10-12月 141億豪ドル、予想 144億豪ドル)
13:30 (豪) 豪中銀行 政策金利 (現行 3.85%、予想 3.85%)
15:00 (独) 4月 製造業新規受注 前月比 (3月 -10.7%、予想 3.5%)
15:00 (独) 4月 製造業新規受注 前年同月比 (3月 -11.0%、予想 -8.6%)
18:00 (欧) 4月 小売売上高 前月比 (3月 -1.2%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 -3.8%、予想 -3.0%)
6/7(水)
未 定 (中) 5月 貿易収支・米ドル建て (4月 902.1億ドル、予想 941.5億ドル)
未 定 (中) 5月 貿易収支・人民元建て (4月 6184.4億元)
08:20 (豪) ロウ豪中銀総裁、講演
08:50 (豪) ブロック豪中銀副総裁、銀行協会討論会参加
10:30 (豪) 1-3月期 GDP 前期比 (10-12月 0.5%、予想 0.3%)
10:30 (豪) 1-3月期 GDP 前年同期比 (10-12月 2.7%、予想 2.4%)
14:00 (日) 4月 景気先行指数速報値 (3月 97.7、予想 98.2)
14:00 (日) 4月 景気一致指数速報値 (3月 98.8、予想 99.0)
15:00 (独) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 -3.4%、予想 0.5%)
15:00 (独) 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 1.8%、予想 1.4%)
16:00 (世) OECD経済見通し
16:50 (欧) デギンドスECB副総裁、金融統合関連会合参加
18:10 (欧) パネッタECB理事、パネル討論会参加
21:30 (米) 4月 貿易収支 (3月 -642億ドル、予想 -752億ドル)
23:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 4.50%、予想 4.50%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
28:00 (米) 4月 消費者信用残高 前月比 (3月 265.1億ドル、予想 220.0億ドル)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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