ドル円見通し 米6月利上げ見送り公算、141円手前からの下落続き139円割れ(23/6/1)

ドル円、6月1日午前序盤にも139円を割り込むところまで続落、下値の懸念が引き継がれている。

ドル円見通し 米6月利上げ見送り公算、141円手前からの下落続き139円割れ(23/6/1)

米6月利上げ見送り公算、141円手前からの下落続き139円割れ

〇ドル円、5/31午後に上海総合株価指数や日経平均の下落を見て139.30まで安値切り下げる
〇その後、夜に140.37へ戻したものの、6/1午前序盤にも139円を割り込むところまで続落
〇FRB理事、フィラデルフィア連銀総裁が6月のFOMC利上げ見送りと7月以降の追加利上げの可能性を示唆
〇5/31 シカゴ購買部景況指数は低下、4月雇用動態調査4か月振りに増加と、米経済指標は強弱まちまち
〇米地区連銀景況報告、全般的経済活動不変として景況判断据え置き、企業の成長見通しは「若干悪化」
〇5/31 米10年債利回りは利上げ予想の後退で低下、NYダウ、ナスダック総合指数も下落
〇138.80割れからは138円台序盤(138.30から138.00)への下落を想定
〇139.70超えからは強気転換注意として31日夜高値140.37試しとする

【概況】

ドル円は5月30日午後に140.92円を付けて年初来高値を更新したものの141円に届かず、日銀・金融庁・財務省による三者会談報道をきっかけとして下落に転じて30日夜には139円台後半へ下落し、31日午後には中国PMI悪化を嫌気した上海総合株価指数や日経平均の下落を見て139.30円まで安値を切り下げた。
31日夜の米4月JOLTS求人件数が予想外に4か月振りの増加となったことで140.37円へ戻したものの、FRB高官らによる6月利上げ見送り支持発言から再び売られ、米長期債利回りの低下と共に31日午後安値を割り込んだ。6月1日午前序盤にも139円を割り込むところまで続落、下値の懸念が引き継がれている。
米連邦債務上限問題については先週末のバイデン大統領と共和党マッカーシー下院議長による基本合意を受けて31日の下院本会議(日本時間1日9時半頃)で可決される見通しで、共和党右派の反対による混乱も懸念されているが共和党上院トップのマコネル院内総務が31日の下院可決と2日までには上院も通過する見通しと述べておりデフォルト回避感がやや優勢となっている。

【6月FOMCでは利上げ見送りの公算】

5月31日にジェファーソンFRB理事は6月のFOMCで利上げを見送り、どの程度の追加利上げが必要かを決定する前にさらに多くのデータを見極める必要があるとし、いったん利上げを停止する可能性があるとの見方を示した。しかし「次回会合で金利据え置きとしても利上げ局面のピークに達したと捉えられるべきではない」「インフレは依然として高すぎる」として7月以降の追加利上げの可能性を示唆した。利上げの見送りについてはこれまでの利上げ効果と共に信用不安による与信厳格化の影響を見極めたいという姿勢のようだ。
米フィラデルフィア連銀のハーカー総裁も6月のFOMCについては「現時点で利上げの見送りを支持している」と述べた。「利上げの一時停止というのはしばらく金利を維持すること」であり「あくまで利上げ停止ではなく見送りだ」とし、6月2日の5月雇用統計次第で考えが変わる可能性もあるとした。また現在よりも引き締めが必要となれば「どの会合でも利上げすることができるし、すべての会合で利上げする必要もない」とした。

先週まではFRB高官や地区連銀総裁らによる利上げ継続の可能性を支持する発言が多く、5月31日のジェファーソン理事やハーカー総裁の発言前では金利先物市場における6月利上げ確率は6割を超えていたが、両者の発言後は6月据え置きの確率が7割に達したようだ。

【米経済指標は強弱まちまち】

5月31日の米経済指標はまちまち。MNIインディケーターズによる5月のシカゴ購買部景況指数は40.4となり、4月の48.6から大幅低下して市場予想の47.0を下回った。金融引き締めと信用不安による景気減速感を示したことで一時的にドル売り材料となった。
しかしその後に米労働省が発表した4月の雇用動態調査(JOLTS)における非農業部門求人数は1010万3000件となり、3月から35万8000件増と4か月振りに増加した。3月分は当初の959万件から974.5万件に上方修正された。市場予想は937.5万件への減少だったが予想外の増加となり発表後はドル高に反応した。
米FRBによる全米12地区連銀景況報告(ベージュブック)では4月から5月初めにかけての米国経済活動は「全般的にほぼ変わらなかった」とし、4月報告から景況判断を据え置いたが、企業の将来的な成長見通しについては「若干悪化した」とした。 

【米10年債利回りは低下、NYダウは下落】

5月31日の米長期債利回りは総じて低下した。長期金利指標の10年債利回りは前日比0.04%低下の3.65%となり5月30日の0.10%低下からの続落となった。30年債利回りは0.03%低下の3.86%となり、30日の0.06%低下から続落。利上げに敏感な2年債利回りは0.04%低下の4.41%となり、30日の0.12%低下から続落となった。先週末までの6月利上げ予想が後退したことで米長期債利回りの上昇が一服、ドル円には円高圧力となっている。
5月31日のNYダウは前日比134.51ドル安と下落、30日の50.56ドル安からの続落となり、ナスダック総合指数も82.14ポイント安と下落し、30日に41.74ポイント高と上昇して昨年8月以来の高値を更新したところからの反落となった。米債務上限問題での米下院通過情勢を見守っているところだが、中国の経済指標が弱いことで上海総合株価指数が下落したことも米国株には圧迫感をもたらしている。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は5月29日午前と30日午後の上昇で共に141円手前から失速したためにダブルトップ型を形成して下落に転じており、5月11日の米PPI発表後に付けた安値133.74円以降の上昇に一服感が出ている。
5月26日夕安値を基準として目先の安値形成期は6月2日夕にかけて想定されたが、31日夜に一時140円台へ戻してから一段安しているため、安値形成期が来週序盤へ延びる可能性もあると注意する。139.70円超えからは31日夜高値試しとするが現時点からの強気転換は31日夜高値超えからとする。 

60分足の一目均衡表では5月30日午後からの下落で遅行スパンが再び悪化し、先行スパンからも転落したが、その後も両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とみる。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とし、強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとする。

60分足の相対力指数は5月31日夜に50ポイントを一時超えてから30ポイント台序盤へ低下しているのでまだ一段安余地ありとし、下げ足が速まる場合は10ポイント台へ向かう可能性もあるとみる。強気転換は次に50ポイントを超えるところからとする。 

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、138.80円を下値支持線、139.70円を上値抵抗線とする。
(2)139.70円以下での推移中は一段安余地ありとし、138.80円割れからは138円台序盤(138.30円から138.00円)への下落を想定する。138.20円以下は反騰注意とするが、139.50円以下での推移が続く場合や直前安値から1円を超える反騰が見られないうちは6月2日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)139.70円超えからは強気転換注意として31日夜高値140.37円試しとするが、高値更新へ進めないうちはその後に139.70円を割り込むところから下げ再開とする。

【当面の主な予定】

6/1(木)
休場 インドネシア
10:30 (豪) 1-3月期 民間設備投資 前期比 (10-12月 2.2%)
10:45 (中) 5月 財新製造業PMI (4月 49.5、予想 49.5)
15:00 (独) 4月 小売売上高 前月比 (3月 -2.4%、予想 1.0%)
15:00 (独) 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 -6.5%、予想 -5.0%)
16:55 (独) 5月 製造業PMI改定値 (速報 42.9、予想 42.9)
17:00 (欧) 5月 製造業PMI改定値 (速報 44.6、予想 44.6)
17:30 (英) 5月 製造業PMI改定値 (速報 46.9、予想 46.9)
18:00 (欧) 5月 HICP(消費者物価指数)速報値 前年同月比 (4月 7.0%、予想 6.3%)
18:00 (欧) 5月 HICPコア指数速報値 前年同月比 (4月 5.6%、予想 5.5%)
18:00 (欧) 4月 失業率 (3月 6.5%、予想 6.5%)
20:30 (欧) 欧州中銀(ECB)理事会議事要旨

21:15 (米) 5月 ADP民間非農業部門就業者数 前月比 (4月 29.6万人、予想 17.0万人)
21:30 (米) 1-3月期 非農業部門労働生産性改定値 前期比 (速報 -2.7%、予想 -2.5%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.9万件、予想 23.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 179.4万人、予想 180.0万人)
22:45 (米) 5月 製造業PMI改定値 (4月 48.5、予想 48.5)
23:00 (米) 5月 ISM製造業景況指数 (4月 47.1、予想 47.0)
23:00 (米) 4月 建設支出 前月比 (3月 0.3%、予想 0.2%)
24:00 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演

6/2(金)
休場 シンガポール、インドネシア
08:50 (日) 5月 マネタリーベース 前年同月比 (4月 -1.7%)
21:30 (米) 5月 非農業部門就業者数 前月比 (4月 25.3万人、予想 19.0万人)
21:30 (米) 5月 失業率 (4月 3.4%、予想 3.5%)
21:30 (米) 5月 平均時給 前月比 (4月 0.5%、予想 0.3%)
21:30 (米) 5月 平均時給 前年同月比 (4月 4.4%、予想 4.4%)

注:ポイント要約は編集部

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