ドル円見通し 141円手前から下落、米債務上限問題基本合意もまだ難航の可能性も
〇ドル円、米債務上限問題基本合意報道を受け5/29午前140.91へ上昇、1/16安値127.22以降の高値更新
〇その後は141円台へ乗せられず140.0円まで失速、140円割れは回避し5/30午前序盤140円台中盤を回復
〇米債務上限問題、基本合意に達し下院の法案可決への楽観姿勢を示したが、共和党強硬派の反対も
〇5/29は米国市場は休場、米10年債利回りは時間外取引で低下、上昇一服感も
〇今週末の米雇用統計など米経済指標が強ければ、6月利上げ継続、7月追加利上げの見方が強まる可能性
〇140円以上を維持するうちは上昇余地ありとし、140.91超えからは142円を目指す上昇を想定する
〇140円割れから続落の場合は5/26安値139.49試しとし、139.49割れからは139円前後試しを想定する
【概況】
ドル円はバイデン政権と共和党マッカーシー下院議長が債務上限問題で基本合意に達したとの報道を受けて29日午前に140.91円へ上昇、1月16日安値127.22円以降の高値を更新したが、その後は米長期債利回りが時間外取引で低下したことや、共和党強硬派が基本合意に反対しているとの報道により141円台へ乗せられずに140.08円まで失速した。140円割れは回避して30日午前序盤は140円台中盤を回復している。
5月29日は英国がスプリングバンクホリデー、米国がメモリアルデーでそれぞれ休場となり、主要指標の発表もなく手掛かり難だったが、今週末の米雇用統計発表へ向けて30日からは重要指標の発表も相次ぐためやや慎重な動きが観測されている。
【米債務上限問題、30日の下院規則委員会が焦点、共和党強硬派の反対も】
米連邦政府の債務上限引き上げを巡るバイデン大統領と野党共和党のマッカーシー下院議長による協議は基本合意に達した。双方ともに下院の法案可決への楽観姿勢を示したが、共和党内の強硬派が反対姿勢を示していることで法案可決にもたつくようだとイエレン米財務長官が示しているデフォルト発生への猶予期限である6月5日を超えてしまう可能性も取り沙汰されている。
米下院は野党共和党が過半数を占めるもののマッカーシー下院議長の選出時には共和党内での反対派もあり決定にはかなりの時間と採決の繰り返しが発生した経緯もある。
バイデン大統領と下院議長の基本合意では債務上限を2025年1月まで適用停止とする一方で、2024年度(20233年10月〜2024年9月)と2025年度の国防費以外の支出を抑制するとしたが、共和党右派は大幅な歳出削減を求めており、基本合意には納得していないとの反対表明も相次いでいる。来年は大統領選挙もあるため共和党が政権を奪還するためには安易な妥協を図るべきではないとの圧力もかかっているようだ。
6月5日の期限までに下院で法案成立となればデフォルトは回避されるものの、その前に米国の格付けが引き下げられる可能性も取り沙汰されている。
予定では30日に下院規則員会で審議、31日に下院本会議での採決となる。
【米10年債利回りは上昇一服、ダウ先物は上昇】
5月29日は米国市場が休場だったが、米長期債利回りは時間外取引で概ね低下している。
長期金利指標の10年債利回りは先週末の5月26日を前日比0.03%低下の3.79%としていたが、29日夜には3.76%まで低下した。5月12日から5月22日まで7連騰し、23日に反落を入れて24日に0.05%上昇、25日に0.07%上昇と連騰し、26日は一時3.86%まで高値を伸ばしたもののその後に失速でマイナスとなっていた。29日の時間外取引も低下したことで目先は上昇一服感も見られる。
利上げに敏感な2年債利回りは4.58%まで一時低下してから4.60%近辺へ戻している。5月12日から22日へ7連騰し、23日は前日比変わらずだったが高値を伸ばし、24日に0.05%上昇、25日に0.16%の大幅上昇となり26日も0.03%上昇の4.57%とし、一時は4.66%を付けたが、その後は上昇一服感が出ている。
米銀破綻問題が落ち着いていることと高インフレ状態が継続しているため、金利先物市場における6月利上げの可能性は6割程度まで上昇しており、今週末の米雇用統計へ向けた米経済指標が強ければ6月の利上げ継続、7月も追加利上げがあり得るとの見方が強まる可能性がある。しかし一方では利上げサイクルの終了も迫っているとの認識は変わらず、昨年3月の利上げ開始からハイペース利上げへ進んだ時のような勢いを再現することにはならないのではないかと思われる。
NYダウの5月26日終値は前日比328.69ドル高の33093.34ドルで高値では33162.06ドルを付けた。29日は休場だったもののCMEダウ先物は米債務上限問題での基本合意報道により29日午前序盤に33330ドルへ上昇、その後も高止まりしている。債務上限問題が暗礁に乗り上げていたことが5月に入ってからの下落要因だったところ、解決の目途が見えたことで買われているが、まだ下院可決には紆余曲折もあり得るところだ。また米FRBによる追加利上げの可能性が高まってきていることも重石となっている。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は5月11日夜の米4月PPI発表直後に付けた安値133.74円を起点として上昇期に入り、5月19日に138.74円を付けてから5月19日夜にいったん137.42円まで反落したものの、5月24日の米GDP上方修正、26日の米PCEデフレーターが予想を上回る上昇率だったことをきっかけに140円台へ到達し、米債務上限問題での基本合意報道で141円に迫った。
140円台を維持するうちは5月29日午前高値140.91円超えからは6月2日にかけての上昇期に入るとみて142円台を目指す上昇を想定するが、140円割れを弱気転換注意とし、26日安値139.49円割れからはいったん調整安に入るとみて6月5日にかけての下落を想定する。
60分足の一目均衡表では5月29日午前高値からの反落で遅行スパンが悪化しているが140円台を維持しいるために再び好転しやすい位置にあるが、先行スパンの上限に接している。また140円割れからは両スパンそろっての悪化となる。このため先行スパンからの転落を回避するうちは上昇余地ありとし、遅行スパン好転から高値試し優先とするが、先行スパンから転落の場合はいったん下げに入る可能性ありとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は5月29日夜の40ポイント台からやや戻しているが60ポイント近辺に抵抗感がある。60ポイント超えからは70ポイント台を目指す上昇を想定するが、45ポイント割れからは下向きとし、40ポイント割れからは30ポイント前後への低下を伴う下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、140.00円を下値支持線、5月29日午前高値140.91円を上値抵抗線とする。
(2)140円以上を維持するか一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとし、140.91円超えからは142円を目指す上昇を想定する。141.50円以上はいったん売られやすいとみるが、140円割れを回避するうちは31日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)140円割れから続落の場合は5月26日安値139.49円試しとし、26日安値割れからは139円前後試しを想定する。139円台序盤は買い戻されやすい水準とみるが、5月26日安値を割り込んだ後も140円以下での推移が続く場合は31日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
5/30(火)
18:00 (欧) 5月 消費者信頼感確定値 (速報 -17.4、予想 -17.4)
18:00 (欧) 5月 経済信頼感 (4月 99.3、予想 98.9)
22:00 (米) 3月 米連邦住宅金融局住宅価格指数 前月比 (2月 0.5%、予想 0.2%)
22:00 (米) 3月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (2月 0.4%、予想 -1.6%)
23:00 (米) 5月 コンファレンスボード消費者信頼感指数 (4月 101.3、予想 99.0)
26:00 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、インタビュー
5/31(水)
08:00 (豪) ロウ豪中銀総裁、上院委員会出席
08:50 (日) 4月 鉱工業生産速報値 前月比 (3月 1.1%、予想 1.4%)
08:50 (日) 4月 鉱工業生産速報値 前年同月比 (3月 -0.6%、予想 1.9%)
08:50 (日) 4月 小売業販売額 前年同月比 (3月 7.2%、予想 7.1%)
10:00 (NZ) 5月 ANZ企業信頼感 (4月 -43.8)
10:30 (中) 5月 国家統計局製造業PMI (4月 49.2、予想 49.5)
10:30 (豪) 4月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (3月 6.3%、予想 6.4%)
14:00 (日) 4月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (3月 -3.2%、予想 -0.8%)
14:00 (日) 5月 消費者態度指数・一般世帯 (4月 35.4、予想 36.0)
16:55 (独) 5月 失業率 (4月 5.6%、予想 5.6%)
21:00 (独) 5月 CPI(消費者物価指数)速報値 前月比 (4月 0.4%、予想 0.2%)
21:00 (独) 5月 CPI(消費者物価指数)速報値 前年同月比 (4月 7.2%、予想 6.4%)
21:50 (米) コリンズ・ボストン連銀総裁、ボウマンFRB理事、イベント開会挨拶
22:15 (英) マン英中銀委員、講演
22:45 (米) 5月 シカゴ購買部協会景況指数 (4月 48.6、予想 47.3)
23:00 (米) 4月 雇用動態調査(JPLTS)求人件数 (3月 959.0万件、予想 940.0万件)
25:20 (米) コリンズ・ボストン連銀総裁、イベント閉会挨拶
25:30 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
東京市場のドルは154円台後半で推移、日銀による追加利上げ観測が円安のブレーキ役に(24/11/22)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
東京市場はドルが小高い。やや激しめの乱高下をたどるなか、最終的にドルは高値引け。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:編集人K
2024.11.22
ドル円154円台前半、本邦CPI高止まり等で一時154円割れ (11/22午前)
22日午前の東京市場でドル円は「往って来い」。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2023.05.30
ドル円、米債務上限基本合意で直近高値更新するも、英米市場休場に伴うポジション調整で反落(5/30朝)
週明け29日(月)のドル円相場は上昇後に反落。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。