ドル円見通し 先週末からの急伸一服、136円到達後は伸び悩む
〇ドル円、先週末からの急伸の流れで5/15夕刻に136.32へ高値を切り上げる
〇5/15夜の経済指標の結果を受け一時135.71まで下げたが、市場の反応は限定的で早々に136円台へ戻す
〇米地区連銀総裁、追加利上げに含み持たせつつ慎重姿勢を示す発言相次ぐ
〇米10債・2年債利回りは続伸、NYダウは5営業日続落後の反発
〇135.71を上回るうちは上昇余地ありとし、136.35超えからは136円台後半への上昇を想定する
〇135.71割れからは135.50試しとし、135.50割れからは135円前後への下落を想定する
【概況】
ドル円は5月11日夜の米4月PPI発表後に133.74円へ下げたところから切り返しに入り、12日夜はミシガン大消費者調査における5年先期待インフレ率の上昇等をきっかけに135円台後半へ急伸し、15日夕刻には136.32円へ高値を切り上げた。ベンダーによっては15日夜に136.34円まで高値を伸ばしているところもある。4月28日に日銀が金融緩和政策の検証に1年から1年半をかけるとしたことをきっかけとした急伸で5月2日に137.76円へ上昇したところから5月4日未明の米FOMCを通過して5日未明に133.46円まで4.30円の下落幅となったが、その3分の2戻しに当たる136.33円前後の水準まで戻した計算だ。
15日夜のニューヨーク連銀による5月製造業景況指数がマイナス31.8となり、4月の10.8から大幅に低下して市場予想のマイナス2.5を下回ったことでドル円は一時135.71円まで下げたが、市場の反応は限定的で早々に136円台へ戻した。
米地区連銀総裁らの金融政策姿勢に関する発言も相次いだが決め手に欠きながらも追加利上げへの慎重姿勢も垣間見られたことや、米連邦債務上限問題もバイデン大統領とマッカーシー下院議長の交渉が16日とされたものの解決への懸念が継続していることがドル円の上昇をやや重くしている印象がある。
【米地区連銀総裁発言相次ぐ、追加利上げに含み持たせつつ慎重姿勢】
5月4日未明の米FOMCでは0.25%利上げが決定されたものの声明文から「追加の金融引き締めが適切」との文言が削除されたことで利上げ停止感を招いたが、FOMC直後の会見でパウエルFRB議長が「利上げ停止を決定したわけではない」と述べたことによりインフレ指標次第では7月に再利上げされる可能性もあると市場は受け止めた。5月5日の米4月雇用統計が強かったことで再利上げ可能性が意識されてドル高となり、5月10日と11日の米インフレ指標が弱かったことでいったんドル安へ巻き戻されたが、12日からは再びドル高へ傾斜するなど、市場も方向性を探っている。米金利先物市場では6月の現状維持、7月の再利上げについては若干の可能性ありとしつつ、年後半には利下げへ向かうのではないかとの期待が先行している。
ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は15日に「インフレ鈍化に向け金融当局にはやるべき仕事がまだ残されている」「インフレ鈍化にはまだ長い道のりが残されている」と述べて追加利上げの可能性を示唆した。
シカゴ連銀のグールズビー総裁は前回FOMCでの利上げ賛成は「五分五分の判断だった」とし、「これまでの引き締めによる影響の多くがこれから表面化し、信用状況の引き締まりもあるので非常に慎重になるべきだと思う」と述べて追加利上げに対しては慎重姿勢を示した。
ボスティック米アトランタ地区連銀総裁は「もし今日、金融政策の投票が行われるとしたら金利据え置きに投票する」としたが次回会合については「利上げに関しては何も排除せず」と述べた。
米リッチモンド地区連銀のバーキン総裁は「インフレが安定的に低下しているとまだ確信できていない」として追加利上げへの含みを残したが、「銀行の信用問題や連邦債務上限を巡る不確実性が存在していることを踏まえ判断を保留している」と述べた。
【米10年債利回りは週末から上昇、NYダウは6日ぶり反発】
5月15日の米長期債利回りは総じて上昇した。長期金利指標の10年債利回りは前日比0.04%上昇となり12日の0.08%上昇からの連騰となった。3月2日の4.09%から4月6日の3.25%まで下げ、4月19日に3.64%まで戻した後は3.30%前後を支持線としつつ右肩下がりの展開が続いており、15日もその範囲内にとどまっている。
2年債利回りは前日比0.02%上昇の4.01%となり、12日の0.08%上昇から小幅続伸した。3月8日の5.08%から3月24日の3.56%まで低下してからは安値圏で持ち合いとなり、4月19日に4.29%まで戻した後は右肩下がりの展開で推移している。
一方でNYダウは前日比47.98ドル高と小幅上昇した。5月2日から4日へ4営業日続落し、5日に反騰したものの8日から12日まで5営業日続落してきたが、週明けは下げ一服で6日ぶりにプラスとした。ナスダック総合指数は前日比80.47ポイント高と上昇し12日の43.77ドル安から切り返して昨年10月底以降の高値を更新した。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は5月11日夜安値を起点として反騰入りしてきた。5月10日午後高値を基準とすれば高値形成期は15日午後から17日午後にかけての間と想定され、15日夕刻ないし夜の高値から上げ渋りのために反落注意とするが、15日夜に小反落したところの安値135.71円を上回るうちは一段高余地ありとし、135.71円割れを弱気転換注意とし、135.50円割れからはいったん下げに入る可能性が高まるとみて18日夜にかけての下落を想定する。
60分足の一目均衡表では5月11日夜からの反騰で遅行スパンが好転して先行スパンを上抜いたが、15日夜からは136円を挟んだ揉み合いとなり遅行スパンは悪化しやすい位置にある。先行スパンを上回るうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開とするが、先行スパンへ潜り込む場合は下げ再開を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は70ポイント台へ上昇したところから50ポイント台へ低下している。50ポイント以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは65ポイント超えから70ポイント台を目指す上昇を想定するが、45ポイント割れからは下落期入りとみて30ポイント台前半への下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5月15日夜安値135.71円を下値支持線、136.35円を上値抵抗線とする。
(2)135.71円を上回るうちは上昇余地ありとし、136.35円超えからは136円台後半への上昇を想定する。136.75円以上は反落警戒とするが、136円を上回っての推移なら17日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)135.71円割れからは135.50円試しとし、135.50円割れからは135円前後への下落を想定する。135円以下は反騰注意とするが、135.71円を割り込んでの推移が続く場合は17日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
5/16(火)
10:30 (豪) 豪中銀、金融政策会合議事要旨
11:00 (中) 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 10.6%、予想 21.0%)
11:00 (中) 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 3.9%、予想 10.9%)
15:00 (英) 3月 失業率・ILO方式 (2月 3.8%、予想 3.8%)
18:00 (独) 5月 ZEW景況感 (4月 4.1、予想 -5.3)
18:00 (欧) 5月 ZEW景況感 (4月 6.4)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.1%、予想 0.1%)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 1.3%、予想 1.3%)
18:00 (欧) 3月 貿易収支・季調済 (2月 -1億ユーロ)
18:00 (欧) 3月 貿易収支・季調前 (2月 46億ユーロ)
21:15 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
21:30 (米) 4月 小売売上高 前月比 (3月 -1.0%、予想 0.8%)
21:30 (米) 4月 小売売上高・除自動車 前月比 (3月 -0.8%、予想 0.4%)
21:55 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
22:15 (米) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 0.4%、予想 0.0%)
22:15 (米) 4月 設備稼働率 (3月 79.8%、予想 79.7%)
23:00 (米) 3月 企業在庫 前月比 (2月 0.2%、予想 0.0%)
23:00 (米) 5月 NAHB住宅市場指数 (4月 45、予想 45)
23:00 (米) ラガルドECB総裁、講演
23:00 (米) バーFRB副議長、下院金融サービス委員会証言
25:15 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、公開討論
28:15 (米) ローガン・ダラス連銀総裁、討論会司会
5/17(水)
休場 ノルウェー
08:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、グールズビー・シカゴ連銀総裁、公開討論
08:50 (日) 1-3月期 GDP速報値 前期比 (10-12月 0.0%、予想 0.2%)
08:50 (日) 1-3月期 GDP速報値・年率換算 (10-12月 0.1%、予想 0.8%)
10:30 (豪) 1-3月期 賃金指数 前期比 (10-12月 0.8%、予想 0.9%)
13:30 (日) 3月 鉱工業生産確報値 前月比 (速報 0.8%)
13:30 (日) 3月 鉱工業生産確報値 前年同月比 (速報 -0.7%)
13:30 (日) 3月 設備稼働率 前月比 (2月 3.9%)
18:00 (欧) 4月 HICP(消費者物価指数)改定値 前年同月比 (速報 7.0%、予想 7.0%)
18:00 (欧) 4月 HICPコア指数改定値 前年同月比 (速報 5.6%、予想 5.6%)
21:30 (米) 4月 住宅着工件数・年率換算 (3月 142.0万件、予想 140.0万件)
21:30 (米) 4月 住宅着工件数 前月比 (3月 -0.8%、予想 -1.4%)
21:30 (米) 4月 建設許可件数・年率換算 (3月 141.3万件、予想 143.0万件)
21:30 (米) 4月 建設許可件数 前月比 (3月 -8.8%、予想 0.0%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
24:15 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
26:00 (米) 財務省20年債入札
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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