ドル円見通し 135円を挟んだ揉み合いだが若干高値を切り上げつつ米CPIへ向かう(23/5/10)

ドル円は、10日夜の米CPI発表を控えてユーロなどが持ち高調整的に売られたことによるドル高感もドル円を支えたが、勢い付くには至らずにいる。

ドル円見通し 135円を挟んだ揉み合いだが若干高値を切り上げつつ米CPIへ向かう(23/5/10)

135円を挟んだ揉み合いだが若干高値を切り上げつつ米CPIへ向かう

〇ドル円、米雇用統計後に米長期債利回りが上昇し、週明けも連騰していることが支えに
〇今夜の米CPI、利上げ停止感が強まるか、利上げ再開感や年内利下げはないとの見方が強まるかが焦点
〇連邦債務上限問題による一時的デフォルトの懸念、米中対立による地政学的リスクなども関心事
〇米長期債利回りは続伸、株式市場はリスク回避で上値重い
〇5月9日午後安値134.72を下値支持線、135.61を上値抵抗線とする
〇米CPI反応で勢い付く場合は136円試しへ上値目途を引き上げる
〇134.72割れからは戻り一巡による下落期入りとみて134円台序盤への下落を想定

【概況】

ドル円は4月28日の日銀金融政策決定会合での現状維持と政策検証に1年から1年半をかけるとしたことによる円安で直前安値133.36円から5月2日高値137.76円へ上昇したが、3月8日高値137.91円には届かず、5月2日のJOLTS求人数の減少や米政府高官らの利上げ牽制発言等から下落に転じ、4日未明のFOMCが0.25%利上げを決定したものの「追加の引き締めが適切」との文言を削除したことでの利上げ停止観測から大幅続落となり、5月5日未明安値133.46円まで4.30円の下落幅となった。

5月5日の米雇用統計が予想以上の就業者増加と失業率の改善及び平均時給の高止まりとなったため、FOMC後の会見でパウエル議長が「利上げ停止を決定したわけではない」との発言が再認識されて135円台へ反騰した。その後はやや手掛かりに欠けて134円台後半へ下げるところは買われて135円を挟んだ揉み合いの様相ながら、8日は135.29円、9日は午前に135.32円、夜に135.35円とわずかずつ高値を切り上げている。
米長期債利回りが米雇用統計後に上昇し、週明けも連騰していることでドル円は支えられてる。また10日夜の米CPI発表を控えてユーロなどが持ち高調整的に売られたことによるドル高感もドル円を支えたが、勢い付くには至らずにいる。

【今夜の米4月CPIが焦点】

ドル円を巡っては米国のインフレ高止まりに際しての利上げ再開の可能性、連邦債務上限問題が暗礁に乗り上げて早ければ6月1日にも財務省が資金ショートする一時的デフォルトの懸念、米中対立による地政学的リスクなどが関心事となっているが、今夜の米CPI内容次第では6月と7月の利上げ停止感が強まるのか、7月の利上げ再開感や年内の利下げはないとの見方が強まるのか試され、ドル円としても先週の大幅下落解消へ向かう上昇となるのか、戻り一巡による下落期に入るのか試されるところだ。

4月の米CPI(消費者物価指数)の上昇率については全体の前月比が0.4%で3月の0.1%から伸び、前年同月比は3月の5.0%と変わらずに高止まりすると予想されている。エネルギーと食品を除くコア指数では前月比が3月と変わらずの0.4%、前年同月比は3月の5.6%から5.5%へとわずかに低下すると予想されている。

インフレの高止まりと米銀破綻からの信用不安の拡大に対する二つのリスクの間でFOMCは難しい判断を強いられているところだが、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は9日に、「利上げが終わったと判断するのは時期尚早」「追加措置が必要になれば政策当局者はためらわず行動する」と述べ、「3月に始まった銀行部門に対するストレスは最悪期を脱した」「インフレ率を4%から2%へ確実に引き下げるにはかなり長い間の制約的な政策スタンスを維持する必要がある」「年内に利下げする理由は見当たらない」とタカ派姿勢を述べている。

CPIが予想を上回る上昇率となれば再利上げの可能性も含めて米長期債利回り上昇とドル高反応へ進み、逆に予想を下回る低下なら利上げ停止観測が強まり米長期債利回り低下とドル安へ進みやすくなると思われる。ただし、仮にドル高反応としてもFRBの利上げサイクルが終了期に来ていることに対してECBやBOEには追加利上げの圧力がかかっていることを踏まえれば昨年9月底を起点としたユーロやポンドの中期的な上昇基調は変わらないのではないかと思われる。またドル円としても昨年10月にかけての歴史的大上昇を招いたような日米長期金利差の拡大基調が再開するというところまでの心配は薄いのではないかと考える。

【米長期債利回りは続伸、株式市場はリスク回避で上値重い】

5月9日の米長期債利回りは総じて上昇した。長期金利指標の10年債利回りは前日比0.01%上昇で3.52%となりとわずかな上昇ではあるが5月5日の0.06%上昇、8日の0.07%上昇から3連騰となった。
利上げに敏感な2年債利回りは前日比0.02%上昇の4.03%となり、5月5日の0.11%上昇、8日の0.10%上昇から3連騰となったが勢いは鈍っている。インフレ高止まりと再利上げの可能性や米連邦債務上限問題への懸念が交錯するところだ。
一方でNYダウは前日比56.88ドル安と下落した。5月1日から4日まで4営業日続落したところから5日に546.64ドル高と大幅反発したが、8日の55.69ドル安に続いての続落で上値が抑えられた。ナスダック総合指数は5月1日から4日へ続落後、5日に269.01ポイント高と反騰して8日も21.51ポイント高と小幅続伸で戻したが9日は反落している。米銀破綻問題はファースト・リパブリック銀の買収でやや落ち着き、5月4日の銀行株大幅下落も一服しているところだが、先行き不透明感が拭えずにいる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は5月5日安値133.46円から反騰したが、5日夜以降は135円台序盤で売られつつ134.60円台までで買い戻される持ち合いが続いている。徐々に高値を切り上げており、9日夜に高値を切り上げて10日午前も135円台序盤で確りしているため、9日午後安値を起点として持ち合い上放れを試しているところと思われる。9日午後安値を起点とした上昇期と仮定し、9日午後安値割れを回避するうちは10日夜から長引けば16日夜にかけての間への上昇余地ありとするが、9日午後安値割れからは下落期入りとみて12日午後から16日午後にかけての間への下落を想定する。ただし、米CPI発表後の騰落次第ではその後の流れも変わると注意する。

60分足の一目均衡表では5月5日夜から持ち合い型の推移が続いているものの徐々に高値が切り上がっているために遅行スパンが好転し、先行スパン上限が下値支持線となっているので、遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパンから転落する場合は下落再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は5月5日深夜から高値を徐々に切り上げているものの指数のピークが切り下がっている。50ポイント割れは買い戻されているので60ポイント超えからは70ポイント台を目指す上昇余地ありとするが、45ポイント割れからは下落期に入るとみて30ポイント台への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5月9日午後安値134.72円を下値支持線、135.61円を上値抵抗線とする。
(2)9日午後安値を割り込まないうちは5月2日から5日への下落幅に対する半値戻しに当たる135.61円を目指すとみる。135.55円以上は反落注意とするが、米CPI反応で勢い付く場合は136円試しへ上値目途を引き上げる。また135円以上での推移なら11日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)134.72円割れからは戻り一巡による下落期入りとみて134円台序盤への下落を想定する。米CPI反応から下げ足が速まる場合は134円割れを試す可能性もあると注意する。また134.72円以下での推移が続く場合は11日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

5/10(水)
英中銀金融政策委員会初日
14:00 (日) 3月 景気先行指数CI・速報値 (2月 98.0、予想 97.9)
15:00 (独) 4月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前月比 (速報 0.4%、予想 0.4%)
15:00 (独) 4月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (速報 7.2%、予想 7.2%)
21:30 (米) 4月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (3月 0.1%、予想 0.4%)
21:30 (米) 4月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (3月 5.0%、予想 5.0%)
21:30 (米) 4月 CPIコア指数 前月比 (3月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 4月 CPIコア指数 前年同月比 (3月 5.6%、予想 5.5%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省10年債入札(350億ドル)
27:00 (米) 4月 月次財政収支 (3月 -3781億ドル、予想 2350億ドル)

5/11(木)
G7財務相・中央銀行総裁会議(5/13まで)
08:50 日銀金融政策決定会合における主な意見(4月27-28日分)
08:50 (日) 3月 経常収支・季調前 (2月 2兆1972億円、予想 2兆8907億円)
08:50 (日) 3月 経常収支・季調済 (2月 1兆892億円、予想 1兆3538億円)
08:50 (日) 3月 貿易収支・国際収支ベース (2月 -6041億円、予想 -4500億円)
10:30 (中) 4月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (3月 0.7%、、予想 0.3%)
10:30 (中) 4月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (3月 -2.5%、予想 -3.2%)
14:00 (日) 4月 景気ウオッチャー現状判断DI (3月 53.3、予想 54.0)
14:00 (日) 4月 景気ウオッチャー先行判断DI (3月 54.1、予想 55.1)

20:00 (英) 英中銀(BOE) 政策金利 (現行 4.25%、予想 4.50%)
20:30 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、会見
21:30 (米) 4月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (3月 -0.5%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (3月 2.7%、予想 2.5%)
21:30 (米) 4月 PPIコア指数 前月比 (3月 -0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 4月 PPIコア指数 前年同月比 (3月 3.4%、予想 3.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 24.2万件、予想 24.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 180.5万人、予想 182.0万人)
23:15 (米) ウォラーFRB理事、講演
26:00 (米) 財務省30年債入札(210億ドル)

注:ポイント要約は編集部

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