来週の為替相場見通し:『ドル円相場の持ち直しを想定。来週は米CPIとPPIがメインイベント』(5/6朝)

ドル円は今週前半(5/2)にかけて、約2ヵ月ぶり高値137.78まで急伸しましたが、その後は133.51まで急落後に135.00絡みへ反発する荒々しい値動きとなりました。

来週の為替相場見通し:『ドル円相場の持ち直しを想定。来週は米CPIとPPIがメインイベント』(5/6朝)

『ドル円相場の持ち直しを想定。来週は米CPIとPPIがメインイベント』

〇ドル円、5/2にかけ週間高値137.78まで上昇後、週後半にかけ一時133.51まで急落
〇米FOMCのハト派的な結果、米国で広がる金融システム不安が重石に
〇週末は米雇用統計の予想以上の好調に134.80レベルに戻す
〇ユーロドル、ECB理事会での利上げ幅縮小等に1.10台前半に反落して越週
〇ドル円、高値圏から急落するも、4/26安値133.01を死守し、テクニカル的には上昇トレンドは継続中
〇ファンダメンタルズも日米金利差拡大に伴う円キャリートレード再開の思惑がサポート
〇ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):133.00ー137.00、(EURUSD):1.0850−1.1150

今週のレビュー(5/1−5/5)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初136.29で寄り付いた後、(1)前週末金曜日以降のドル買い・円売りの流れの継続(日銀金融政策決定会合および植田日銀総裁記者会見のハト派的な結果や米3月PCEコアデフレータの市場予想を上回る結果を受けて日米金利差が急拡大→ドル買い・円売り)や、(2)日経平均株価の堅調推移(リスク選好の円売り圧力)、(3)米4月ISM製造業景況指数(結果47.1、予想46.8)の良好な結果、(4)米4月ISM支払価格(結果53.2、予想49.0)の市場予想を上回る結果、(5)上記3、4を背景とした米長期金利の更なる上昇、(6)米JPモルガン・チェース銀行による米ファースト・リパブリック銀行の預金・資産の取得・買収報道(金融システム不安の後退期待)、(7)豪中銀(RBA)による25bpのサプライズ利上げ(RBAは据え置き予想に反して25bpの利上げを決定→豪ドル円急上昇→ドル円連れ高)が支援材料となり、翌5/2にかけて、週間高値137.78(3/8以来、約2ヵ月ぶり高値圏)まで急伸しました。

しかし、3/8高値137.92をバックに伸び悩むと、(8)上値の重さを嫌気した短期筋の見切り売り(利食い売り)や、(9)米3月JOLT雇用動態調査(結果959.0万件、予想977.5万件)の冴えない結果、(10)米FOMCのハト派的な結果(市予想通り25bpの利上げが決定されるも、声明文の中から「some additional policy firming may be appropriate(いくらかの追加引き締めが適切かもしれない)」との追加利上げを示唆する文言が削除)、(11)米金利低下に伴うドル売り圧力、(12)米主要株価指数の冴えない動き、(13)米国で広がる金融システム不安(米パックウエスト・バンコープや米ウェスタン・アライアンス・バンコープの身売り検討報道→米金融機関の連鎖破綻懸念→リスク回避の円買い圧力)が重石となり、週後半にかけて、週間安値133.51まで急落しました。

もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(14)米4月非農業部門雇用者数(結果25.3万人、予想17.9万人)の力強い結果や、(15)米4月失業率(結果3.4%、予想3.6%)の大幅改善、(16)米4月平均時給(結果+4.4%、予想+4.3%、※前年比)の伸び率加速、(17)米金利上昇に伴うドル買い圧力が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間5/6午前1時30分現在)では、134.80前後まで持ち直す動きとなっております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1035で寄り付いた後、(1)米4月ISM製造業景況指数の良好な結果や、(2)米4月ISM支払価格の市場予想を上回る結果、(3)上記1、2を背景とした米長期金利の急上昇、(4)ECBによる「ユーロ圏の銀行の与信基準が1ー3月期に予想以上に厳格化した」との見解公表(ECBによる金融引き締め休止観測再燃)が重石となり、翌5/2にかけて、週間安値1.0942まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(5)米国で広がる金融システム不安や、(6)米長期金利の急低下、(7)ユーロ圏4月消費者物価指数速報値(結果+7.0%、予想+6.9%)の市場予想を上回る結果、(8)米FOMCのハト派的な結果が支援材料となり、週央にかけて、週間高値1.1092まで反発しました。

もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(9)4/26に記録した年初来高値1.1096を背にした戻り売り圧力(上値の重さを嫌気した見切り売り・利食い売り)や、(10)ECB理事会での利上げ幅縮小(ECB理事会は予想通り25bpの利上げを決定→3会合ぶりに利上げ幅縮小→ドイツ債利回り低下→ユーロ売り)、(11)世界的なリスク回避ムード再来(米株急落→欧州株連れ安)、(12)米4月雇用統計の力強い結果、(13)米長期金利の一転上昇が重石となり、本稿執筆時点(日本時間5/6午前1時30分現在)では、1.1022前後まで反落する動きとなっております。尚、ラガルドECB総裁はECB理事会後の定例記者会見で「利上げサイクルを停止しないことは明らか」「数人の委員は50bpの利上げが適切だと示唆」「利下げについてはコミットしない」とタカ派的な発言を繰り返しましたが、市場の反応は限定的となりました。

来週の見通し(5/8−5/12)

<ドル円相場>
ドル円は3/24に記録した安値129.65をボトムに反発に転じると、今週前半(5/2)にかけて、約2ヵ月ぶり高値137.78まで急伸しましたが、その後は133.51まで急落後に135.00絡みへ反発する荒々しい値動きとなりました。但し、高値圏から急落しつつも、4/26に記録した安値133.01を死守できたこと(ダウ理論の上昇トレンド崩壊を回避→下値の堅さを再確認)や、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」が継続していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、上昇トレンドは継続中と判断できます(今週の下落は上昇トレンドの過程で見られる一時的なポジション調整)。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる年内利下げ観測の後退(今週開催された米FOMCおよびパウエルFRB議長会見で「年内利下げ」を示唆するコメント・発言は見られず。代わりに「今後の政策判断はあくまでデータ次第」との見解を強調。週末に発表された米4月雇用統計が強かったことから年内利下げ観測は一段と後退する見通し→来週発表される米インフレ指標が市場予想を上回れば、追加利上げ観測が再燃する恐れあり)や、(2)日銀による金融緩和の修正観測の後退(植田日銀総裁は当面の間、金融緩和政策を続ける公算大)、(3)上記1、2を背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米金利差拡大に伴う円キャリートレード再開の思惑)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。米地銀の連鎖破綻懸念など金融システム不安が広がっていますが、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ように、金融システム不安に関するヘッドラインは日に日に鮮度を失っていくことが予想されます(同ヘッドラインの賞味期限は近い)。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は5/10に予定されている米4月消費者物価指数、5/11の米4月生産者物価指数、5/12の米4月輸出入物価指数、米5月ミシガン大消費者信頼感指数速報値に注目が集まります(上記で述べた通り、パウエルFRB議長は今後の金融政策の一手を完全にデータ次第としていることから、米経済指標への注目度は極めて高い→イベント直後のボラティリティ急拡大に要注意)。

来週の予想レンジ(USDJPY):133.00ー137.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は3/15に記録した安値1.0516をボトムに反発に転じると、4/26に約1年1カ月ぶり高値となる1.1096(昨年3/31以来の高値圏)まで急伸しましたが、今週は上値トライに失敗する形で週末にかけて反落しました(5/3高値1.1092、5/4高値1.1092と2日連続で4/26高値1.1096をトライするも共に失敗→上値の重さを嫌気した短期筋の見切り売り・利食い売りを誘発)。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線、ボリンジャーミッドバンド、21日移動平均線)を下抜けしたこと等を踏まえると、テクニカル的に見て、上値は重たいと判断できます。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる年内利下げ観測の後退や、(2)ECBによる金融引き締め打ち止め観測の再燃(今週開催されたECB理事会は予想通り25bpの利上げを決定。但し、市場参加者の中には50bp利上げを予測する向きも多かったことから3会合ぶりの利上げ幅縮小がハト派的と捉えられドイツ債利回りは急低下)、

(3)上記1、2を背景とした欧米金利差縮小観測の後退(ここ数週間は米金利低下+欧州金利上昇の組み合わせでユーロ買い・ドル売りが進んできたが、こうした動きが当面の間収まる見通し)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。当方ではこれまでユーロドル相場の上昇をメインシナリオとして予想してきましたが、来週以降は見通しを弱気(ベア)に転換いたします。尚、来週は5/8に予定されているドイツ3月鉱工業生産、5/10のドイツ4月消費者物価指数確報値以外に目立った経済イベントが予定されていないため、米インフレ指標(4月消費者物価指数や米4月生産者物価指数など)を睨みながらの神経質な展開を予想いたします(ユーロ主導では無く、米ドル主導の動きを想定)。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0850−1.1150

注:ポイント要約は編集部

『ドル円相場の持ち直しを想定。来週は米CPIとPPIがメインイベント』

ドル円日足

オーダー/ポジション状況

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