ドル円見通し 135円到達後は伸びず、米長期債利回り低下で134円を試す(23/4/21)
〇ドル円、4/20深夜134円ちょうどを試すところまで失速、その後も134円台序盤にとどまる
〇4/20夜発表の米経済指標が軒並み不冴えで、米長期債利回りが低下したことがドル円失速の背景
〇FRB高官は追加利上げ姿勢を強調、ドル安のブレーキとなり134円割れをひとまず回避した印象も
〇米長期債利回り米経済指標が悪化したことで低下、米株価も下落
〇134.50超えからは上昇再開とみて135.11試しとし、高値更新からは135円台中盤への上昇を想定する
〇133.82割れからは、133円台前半(133.50から133.00)への下落を想定する
【概況】
ドル円は4月19日夕刻高値で135.11円をつけて3月24日安値129.63円以降の高値を更新したものの、その後は135円台を維持できずに上値が重くなり、20日夜に発表された一連の米経済指標が予想を下回る悪化となり米長期債利回りが低下したことで深夜には134円ちょうどを試すところまで失速、その後も134円台序盤にとどまっている。
米フィラデルフィア連銀の4月製造業業況指数が3年ぶり低水準、週間新規失業保険申請件数が2週連続の悪化、米不動産業者協会(NAR)の3月中古住宅販売件数が市場予想を下回り前月比2.4%減、3月のコンファレンスボード景気先行指数が2年4か月ぶり低水準など、経済指標の悪化がFRBによる追加利上げ姿勢を削ぐとしてドル安反応となったのだが、クリーブランド連銀のメスター総裁が「インフレはほとんど改善していない」として利上げ継続姿勢を強調したことがドル安のブレーキとなったために134円割れをひとまず回避した印象だ。
【米経済指標が軒並み悪化】
米労働省による新規失業保険申請件数は4月15日までの週間で前週比5000件増の24万5000件となり、2週連続の悪化で市場予想の24.0万件を上回った。失業保険受給者総数は4月8日までの週間で186万5000人となり、前週から6万1000人増加して市場予想の182.0万人を上回った。
米フィラデルフィア連銀による4月製造業景況指数はマイナス31.3となり、3月のマイナス23.2から低下して市場予想のマイナス19.2を大幅に下回った。
米不動産業者協会(NAR)による3月中古住宅販売件数(年換算)は前月比2.4%減の444万戸となり、市場予想の450万戸を下回った。2月は1年1か月振りのプラスだったものの再び悪化したことはFRBによる利上げを背景とした住宅ローン金利の上昇で中古住宅市場が冷え込んでいることを示している。販売件数は前年同月比は22.0%減、販売価格中央値は前月比3.3%上昇したが、前年同月比では0.9%低下して低下幅は2012年1月以来11年2か月振りだった。
米コンファレンスボードによる3月景気先行指数は108.4で前月比1.2%低下となり、2020年11月以来2年4か月振りの低水準で市場予想の0.6%低下を大幅に下回った。コンファレンスボードは「経済環境が悪化に向かっており、今後数か月で経済の弱さが拡大して2023年半ばには景気後退すると予想している」としている。
【FRBの追加利上げ姿勢は変わらず】
クリーブランド連銀のメスター総裁は講演において「根強いサービス価格の上昇により基調的なインフレはほとんど改善していない」「金融政策は景気抑制的な領域へさらにいくらか動く必要がある」、「政策金利は5%を上回る水準とし、実質金利も暫くはプラスにとどめる必要がある」と述べて追加利上げ支持姿勢を示した。また今後の利上げ幅については経済及び金融動向次第とし、米銀破綻をきっかけとした信用不安については「米国の銀行システムは健全で強固」とした。
またダラス連銀のローガン総裁も20日の講演で「FRBは大幅利上げで経済の需給均衡回復を図っている」とし、現状についても「インフレはあまりに高すぎる」として追加利上げの必要を主張した。
5月2日−3日に開催される次回FOMCへ向けて4月22日からはいわゆるブラックアウト期間とされてFRB高官や地区連銀総裁らによる金融政策への言及が制限される。
【米長期債利回りは総じて低下】
4月20日の米長期債利回りは米経済指標が軒並み予想より悪化したことで総じて低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.05%低下の3.54%となった。4月6日の3.25%から上昇してきたが、4月19日に一時3.64%まで続伸したところから低下に転じている。
30年債利回りは4月6日の3.53%から上昇してきたが、19日に3.83%をつけてから低下に転じ、20日は前日比0.04%低下の3.75%となった。利上げに敏感な2年債利回りは前日比0.10%低下の4.15%となった。4月19日に4.28%まで上昇して3月15日以来の高水準としたところから低下に転じている。
一方でNYダウは前日比110.39ドル安となり4月18日から3営業日続落、ナスダック総合指数も前日比97.67ポイント安と反落した。いずれも米経済指標の悪化を見て売られた印象だ。
ドル円にとっては米長期債利回りの低下と米国株安が共に円高ドル安に寄与した。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は4月18日夜に134円を割り込んでから4月19日夜への上昇で4月18日午前高値を超えて3月24日以降の高値を更新したために4月20日午前時点では4月18日夜安値を起点として新たな上昇期に入ったところとしたが、19日夜高値の後は伸びずに20日深夜に134.00円へ下落して18日夜安値割れへの余裕が乏しくなっている。18日夜安値割れを回避して134.50円以上へ戻すところからは上昇再開とし、19日夜高値超えからは25日午前にかけての上昇を想定するが、18日夜安値133.82円を割り込む場合は下落期入りとして25日夜にかけての下落を想定する。
60分足の一目均衡表では4月20日夜の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、先行スパンを上抜き返す場合は上昇再開として遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は4月19日夜の上昇で70ポイントを超えたもののその後は伸びず、20日夜の下落で40ポイント割れへ低下した。その後も50ポイント回復へ進めずにいるので20ポイント台への低下を伴う下落を想定する。強気転換は50ポイント超えからとし、その際は60ポイント台中盤への上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、4月18日夜安値133.82円を下値支持線、19日夜高値135.11円を上値抵抗線とする。
(2)134円割れを回避するか一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとし、134.50円超えからは上昇再開とみて19日夜高値135.11円試しとし、高値更新からは135円台中盤(135.30円から135.70円)への上昇を想定する。135.50円以上は反落警戒とするが、134.50円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)4月19日夜安値133.82円割れからは133円台前半(133.50円から133.00円)への下落を想定する。133.25円以下は反騰注意とするが、133.82円を割り込んだ後も134円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
4/21(金)
休場 トルコ インドネシア、ブラジル
15:00 (英) 3月 小売売上高 前月比 (2月 1.2%、予想 -0.5%)
15:00 (英) 3月 小売売上高 前年同月比 (2月 -3.5%、予想 -3.0%)
15:00 (英) 3月 小売売上高・除自動車 前月比 (2月 1.5%、予想 -0.5%)
15:00 (英) 3月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (2月 -3.3%、予想 -3.1%)
16:30 (独) 4月 製造業PMI・速報値 (3月 44.7、予想 45.6)
16:30 (独) 4月 サービス業PMI・速報値 (3月 53.7、予想 53.2)
17:00 (欧) 4月 製造業PMI・速報値 (3月 47.3、予想 48.0)
17:00 (欧) 4月 サービス業PMI・速報値 (3月 55.0、予想 54.5)
17:30 (英) 4月 製造業PMI・速報値 (3月 47.9、予想 48.5)
17:30 (英) 4月 サービス業PMI・速報値 (3月 52.9、予想 53.0)
22:45 (米) 4月 製造業PMI・速報値 (3月 49.2、予想 49.0)
22:45 (米) 4月 サービス業PMI・速報値 (3月 52.6、予想 51.5)
29:35 (米) クックFRB理事、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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