ドル円見通し 米雇用統計から上昇するも週間ではマイナスに終わる(週報4月第二週)

ドル円はひとまず3月24日安値割れを回避して買い戻されているところだが、戻り一巡からの下落再開へと進みかねないところと思われる。

ドル円見通し 米雇用統計から上昇するも週間ではマイナスに終わる(週報4月第二週)

ドル円見通し 米雇用統計から上昇するも週間ではマイナスに終わる

〇ドル円、米3月雇用統計の失業率低下に132.37へ上昇、その後は高値を伸ばせず越週
〇米雇用統計、NFPは23万6000人増、失業率は予想外の3.5%へ低下、平均時給前年比は4.2%へ鈍化
〇結果受けての印象は、次回FOMCで後1回0.25%の利上げを妨げないものの、それ以上の利上げは不要
〇植田日銀新総裁、10日には就任会見か、今週は12日の米3月CPIが焦点
〇14日の米小売売上高やミシガン大調査における期待インフレ率等がドル安へのきっかけとなりやすい
〇131.52以上での推移中は132.50超えから133円前後を試す上昇を想定
〇131.52を割り込むところからは130.63、130.00、3/24安値129.63を順次試して行く流れか

【概況】

ドル円は4月7日夜の米3月雇用統計で非農業部門就業者数が予想に近い水準となる一方、失業率が予想外に低下したため、発表後のドル高反応により発表前安値131.52円から132.37円へ上昇したが、その後は132円台を維持するも高値を伸ばせずに週を終えた。
3月10日の米シリコンバレー銀等の破綻報道をきっかけとした信用不安によるリスク回避的な円高により3月8日高値137.91円から3月24日安値129.63円まで8.28円の下落幅となり、クレディ・スイスやシリコンバレー銀の買収救済により信用不安がやや落ち着いたとして4月3日高値133.74円まで4.11円の戻り幅として半値戻しに迫ったが、先週は4月3日の米ISM製造業景況指数、4日の米JOLTS求人数、5日の米ADP民間雇用とISMサービス業景況指数が予想を下回ったことで米長期債利回り低下と共に5日夜安値130.63円まで失速した。
4月7日の米雇用統計及び聖金曜日の連休を控えて6日から持ち直し、雇用統計後に戻り高値を切り上げて4月3日以降の下げ幅に対する半値戻しを若干超えて週を終えたが、週間では4週続落後の戻りが続かずに前週比マイナスで終了している。

【米雇用統計、失業率低下であと1回の利上げに寄与】

4月7日に発表された3月の米雇用統計では非農業部門就業者数が前月比23万6000人増となり、2月の32万6000人増から増加数が減少、市場予想の23万9000人増を若干下回った。また1月分は当初の50万4000人増から47万2000人増へ下方修正されたが2月分は当初の31万人増から32万6000人増へ上方修正された。1月から増加数は減少しているものの20万人以上を維持している。失業率は2月の3.6%から変わらずとの予想に反して3.5%へ改善した。インフレ指標である平均時給の伸び率は前月比で0.3%となり、市場予想と一致したものの2月の0.2%から若干上昇したが、前年同月比は2月の4.6%から4.2%へと大幅に鈍化して市場予想の4.3%も下回った。
これらは労働市場が確りしていることを示す一方、前年同月比での平均時給の伸びの鈍化も踏まえ、FRBが次回FOMCであと1回の0.25%利上げを決定することを妨げないもののそれ以上の利上げは不要との印象を与えた。4月12日の米CPI上昇率が予想を下回るようだと利上げ終了と利上げ状態維持期間の短縮への思惑でドル安も進みやすくなると思われる。

【米長期債利回りは低下】

4月7日は聖金曜日で為替市場は通常通りだったが株式と商品市場は休場で債券市場は現地正午までの短縮取引となり、現地午前の米雇用統計発表を見て長期債利回りは総じて上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは3月29日に3.61%を付けたところから反落に転じて4月5日まで6営業日続落となり、6日は3.27%まで低下してから前日比変わらずまで戻していたが、7日は前日比0.09%上昇の3.40%と反発した。30年債利回りは3月29日の3.82%から4月6日に一時3.53%まで低下して7営業日続落となっていたが、7日は0.06%上昇の3.61%へ反発した。利上げに敏感な2年債利回りは3月31日の4.17%から4月5日には一時3.65%まで低下して4営業日続落だったが、6日は0.04%上昇と反発、7日は0.15%上昇の3.98%へ続伸した。

長期債利回り低下は一服だが、3月序盤から大幅低下した後も低水準にとどまっており、年後半には利下げもあり得るとの認識が優勢という印象だ。
米国株式市場は休場だったが、短縮取引のCMEダウ先物は米雇用統計発表後に直前安値から200ドル近い反発を見せてダウ比では237ドル高、ナスダック100先物も121ポイント高と上昇した。株式市場にとってはあと1回で利上げが打ち止めとなる見通しによる楽観と米銀破綻やこれまでの金融引き締めによる景気減速への懸念が交錯する状況にある。

【4月10日から植田日銀体制に】

黒田前日銀総裁は4月8日で退任となり、既定通りに植田総裁が4月9日付けで就任した。10日には就任会見が行われると思われる。植田新総裁は起用決定からこれまでに、「日銀の現在の金融政策については適切」「工夫を凝らしながら金融緩和を継続することが適切だ」とし、2%の物価上昇目標を記した政府・日銀共同声明については「直ちに見直す必要があるとは考えていない」としており、当面は黒田総裁時代の金融緩和政策を継続すると思われるが、「異次元」金融緩和から「通常」へ修正し、国債市場の機能不全を招いているYCC(イールドカーブコントロール=長短金利操作」については「さまざまな副作用を生じさせている面は否定できない」と述べていることから徐々に修正へと向かうものと思われる。
就任早々の会見でサプライズ的な発言は行わないと思われるが、米国が利上げサイクルの終了へ向かう中で異次元緩和からの脱却を目指す姿勢が強調されればドル円にとっては円高を招くことも考えられる。

【4月12日の米CPI等を見ながら下落再開を試すか】

【4月12日の米CPI等を見ながら下落再開を試すか】

ドル円はひとまず3月24日安値割れを回避して買い戻されているところだが、インフレの鈍化と米経済指標の低調さが続き米銀破綻からの信用不安問題も払拭しきれたとまでは言えない状況のため、次回FOMCで0.25%の追加利上げが決定された後は利上げが打ち止めとなり、早ければ年後半に利下げもあり得るとの見方が強まってきていることを踏まえると、戻り一巡からの下落再開へと進みかねないところと思われる。
今週は4月12日の米3月CPIが焦点となる。昨年11月10日にはCPIの伸びが大幅に鈍化したことで「逆CPIショック」と呼ばれるドル安のトリガーとなったが、3月のCPI前年同月比については2月の6.0%から5.1%への鈍化が見込まれており、4月14日の米小売売上高やミシガン大消費者調査における期待インフレ率等がドル安へのきっかけとなりやすいところと注目したい。

日足チャートにおいては3月24日安値からの戻りでは一目均衡表の26日基準線を上抜き返せず、遅行スパンが実線を割り込む悪化状態を継続し、先行スパン突破へ進めずにいるところだ。相対力指数も30ポイント台へ低下したところから戻したものの50ポイント手前が戻りを抑えている。
4月3日高値133.74円を超えれば一目均衡表の各指標も総じて強気転換し、相対力指数も50ポイント超えへ進み、3月24日安値に対して4月5日夜安値を押し目とした上昇の継続感が強まると思われるが、そのためにはドル全面高となる必要があるものの米CPI等で強気サプライズが無ければ難しいのではないかと考える。
4月5日夜安値130.63円を割り込む場合は4月3日高値を起点とした下落基調の再開として3月24日安値129.63円試しへ向かい、底割れに至れば昨年10月21日天井からの下落基調継続として先安感=円高感が強まってゆくと思われる。その際は日足チャートにおいては三尊天井型が形成されての下落となるため、先行きにおいては3月8日高値への戻り幅の倍返しとして120円割れを試して行くことも考えられる。

以上を踏まえ、当面のポイントを示す。
(1)当初、4月7日夜安値131.52円を下値支持線、132.50円を上値抵抗線とする。
(2)131.52円以上での推移中は132.50円超えから133.00円前後を試す上昇を想定する。133円前後では戻り売りも出やすいと注意するが、米CPI等を強気で通過する場合は4月3日高値133.74円へ向けて上昇を継続する可能性があるとみる。
(3)131.52円を割り込むところからは4月5日深夜以降の戻り一巡による下落期入りとみて4月5日深夜安値130.63円、130.00円、3月24日安値129.63円を順次試して行く流れと考える。

注:ポイント要約は編集部

【当面の主な予定】

4/10(月)
休場 英国、独、仏、伊、スイス、ベルギー、ノルウェー、オランダ
スペイン、ギリシャ、ポーランド、ハンガリー、香港、オーストラリア
ニュージーランド、南ア、フィリピン  
未 定 (日) 植田日銀新総裁、就任会見
08:50 (日) 2月 経常収支・季調前 (1月 -1兆9766億円、予想 2兆5357億円)
08:50 (日) 2月 経常収支・季調済 (1月 2163億円、予想 1兆4524億円)
08:50 (日) 2月 貿易収支・国際収支ベース (1月 -3兆1818億円、予想 -5178億円)
14:00 (日) 3月 消費者態度指数・一般世帯 (2月 31.1、予想 31.8)
15:00 (日) 3月 景気ウオッチャー現状判断 (2月 52.0、予想 52.8)
15:00 (日) 3月 景気ウオッチャー先行判断 (2月 50.8、予想 50.9)
23:00 (米) 2月 卸売売上高 前月比 (1月 1.0%、予想 0.6%)
29:15 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会参加

4/11(火)
09:00 (世) 国際通貨基金(IMF)世界経済見通し
09:30 (豪) 4月 ウエストパック消費者信頼感指数 (3月 78.5)
10:30 (中) 3月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (2月 1.0%、予想 1.0%)
10:30 (中) 3月 生産者物価指数(PPI) 前年同月比 (2月 -1.4%、予想 -2.5%)
10:30 (豪) 3月 NAB企業景況感指数 (2月 17)
18:00 (欧) 2月 小売売上高 前月比 (1月 0.3%、予想 -0.8%)
18:00 (欧) 2月 小売売上高 前年同月比 (2月 -2.3%、予想 -3.5%)
26:00 (米) 財務省3年債入札
26:30 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、講演

4/12(水)
G20財務相・中央銀行総裁会議(4/13迄)
07:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
08:30 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、イベント参加
08:50 (日) 3月 国内企業物価指数 前月比 (2月 -0.4%、予想 0.0%)
08:50 (日) 3月 国内企業物価指数 前年同月比 (2月 8.2%、予想 7.1%)
08:50 (日) 2月 機械受注 前月比 (1月 9.5%、予想 -6.7%)
08:50 (日) 2月 機械受注 前年同月比 (1月 4.5%、予想 4.5%)
13:45 (豪) ブロック豪中銀副総裁、討論会参加

21:30 (米) 3月 消費者物価指数(CPI) 前月比 (2月 0.4%、予想 0.2%)
21:30 (米) 3月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (2月 6.0%、予想 5.1%)
21:30 (米) 3月 CPIコア指数 前月比 (2月 0.5%、予想 0.4%)
21:30 (米) 3月 CPIコア指数 前年同月比 (2月 5.5%、予想 5.6%)
21:30 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
22:00 (米) バ ーキン・リッチモンド連銀総裁、投資関連会議で挨拶
22:00 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、講演
23:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 4.50%、予想 4.50%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省10年債入札
27:00 (米) 3月 月次財政収支 (2月 -2624億ドル)
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨

4/13(木)
休場 タイ
未 定 (中) 3月 貿易収支・米ドル (2月 780.1億ドル、予想 410.0億ドル)
未 定 (中) 3月 貿易収支・人民元 (2月 5501.1億元)
08:50 (日) 3月 マネーストックM2 前年同月比 (2月 2.6%)
10:30 (豪) 3月 新規雇用者数 (2月 6.46万人、予想 2.00万人)
10:30 (豪) 3月 失業率 (2月 3.5%、予想 3.6%)
15:00 (独) 3月 消費者物価指数(CPI)改定値 前月比 (速報 0.8%、予想 0.8%)
15:00 (独) 3月 消費者物価指数(CPI)改定値 前年同月比 (速報 7.4%、予想 7.4%)
15:00 (英) 2月 月次GDP 前月比 (1月 0.3%、予想 0.1%)
15:00 (英) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 -0.3%、予想 0.2%)
15:00 (英) 2月 鉱工業生産 前年同月比 (1月 -4.3%、予想 -3.7%)
15:00 (英) 2月 貿易収支・物品 (1月 -178.55億ポンド、予想 -170.00億ポンド)
15:00 (英) 2月 貿易収支 (1月 -58.61億ポンド、予想 -49.00億ポンド)

18:00 (欧) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 0.7%、予想 1.0%)
18:00 (欧) 2月 鉱工業生産 前年同月比 (1月 0.9%、予想 1.6%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.8万件、予想 23.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 182.3万人、予想 179.0万人)
21:30 (米) 3月 生産者物価指数(PPI) 前月比 (2月 -0.1%、予想 0.0%)
21:30 (米) 3月 生産者物価指数(PPI) 前年同月比 (2月 4.6%、予想 3.0%)
21:30 (米) 3月 PPIコア指数 前月比 (2月 0.0%、予想 0.3%)
21:30 (米) 3月 PPIコア指数 前年同月比 (2月 4.4%、予想 3.5%)
22:00 (英) ピル英中銀理事、講演
26:00 (米) 財務省30年債入札
27:00 (独) ナーゲル独連銀総裁、講演

4/14(金)
休場 タイ、インド、ギリシャ
15:00 (独) 3月 卸売物価指数(WPI) 前月比 (2月 0.1%)
21:30 (米) 3月 小売売上高 前月比 (2月 -0.4%、予想 -0.4%)
21:30 (米) 3月 小売売上高・除自動車 前月比 (2月 -0.1%、予想 -0.4%)
21:30 (米) 3月 輸入物価指数 前月比 (2月 -0.1%、予想 0.1%)
21:30 (米) 3月 輸出物価指数 前月比 (2月 0.2%、予想 -0.3%)
22:15 (米) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 0.0%、予想 0.3%)
22:15 (米) 3月 設備稼働率 (2月 78.0%、予想 79.0%)
23:00 (米) 4月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (3月 62.0、予想 62.8)
23:00 (米) 2月 企業在庫 前月比 (1月 -0.1%、予想 0.3%)
25:00 (英) テンレイロ英中銀委員、講演
27:15 (独)  ナーゲル独連銀総裁、講演

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