ドル円見通し 信用不安後退とリスク選好での上昇に一服感(週報4月第一週)

欧米長期債利回りの低下と3月24日からの上昇も1週間を経過したことで利益確定売りが優勢となり、ユーロやポンドが下落する一方でドル円も下落した。

ドル円見通し 信用不安後退とリスク選好での上昇に一服感(週報4月第一週)

ドル円見通し 信用不安後退とリスク選好での上昇に一服感

〇ドル円、27日以降は新たな破綻報道もなくリスク選好感が優勢、円高後退
〇31日夕刻には133.57円まで高値を伸ばすも、4月1日未明にかけては利益確定売りが優勢となり下落
〇2月の米個人消費支出物価指数(PCEデフレーター)2021年9月以来の低水準
〇米2年債利回りの月間低下率は過去最大、ダウは連騰
〇132円台を維持するうちは高値を切り上げる可能性、133.57超えからは134円を試す上昇を想定
〇132円割れから続落の場合は131円台前半への下落を想定する

【概況】

ドル円は米銀破綻を発端とした信用不安による円高が一巡し、3月24日安値129.63円からの持ち直しを継続して31日夕刻には133.57円まで高値を伸ばしてこの間の戻り幅を3.94円としたが、4月1日未明にかけては欧米長期債利回りの低下と3月24日からの上昇も1週間を経過したことで利益確定売りが優勢となり、ユーロやポンドが下落する一方でドル円も下落した。
3月10日の米シルバーゲート銀の自廃、シリコンバレー銀破綻、米中堅ファーストリパブリック銀株暴落、3月13日朝の米地銀シグネチャー銀破綻、3月15日のクレディ・スイス株暴落、3月17日の米SVBファイナンシャル・グループの破産申請、3月24日のドイツ銀株急落と信用不安事案が相次いできたが、クレディ・スイスとシリコンバレー銀が買収されたことで破綻の連鎖不安が落ち着き、27日以降は新たな破綻報道もなくリスク選好感が優勢となり、ユーロやポンド等が上昇してドルストレートではドル安となる一方、ドル円は米長期債利回り上昇とクロス円での円安及びリスク回避の円高が後退したことにより上昇してきた。

3月31日夜から1日早朝にかけてはユーロやポンド等が下落するとともにドル円も失速しており、ドルストレートでドル安一服となり、クロス円の反落により円高感がやや強まり、米長期債利回りも低下したことでドル円の上昇にも一服感が出たという印象だ。

【米インフレ指標は伸びの鈍化示す】

3月31日夜に発表された2月の米個人消費支出物価指数(PCEデフレーター)の上昇率は前年同月比5.0%となり、1月の5.3%及び市場予想の5.1%を下回り2021年9月以来の低水準となった。価格変動の激しいエネルギー・食品を除いたコア指数では前年同月比4.6%となり、1月の4.7%から低下、予想の4.7%を下回った。コア指数の前月比も0.3%で1月の0.5%から低下して市場予想の0.4%も下回った。ただ、モノの上昇率は前年同月比で3.6%に鈍化したもののサービスは5.7%で3か月連続で上昇しており、まだインフレの高止まり感が解消していない印象も残した。
米ミシガン大による3月の消費者信頼感指数は62.0となり、2月の67.0から悪化して市場予想の63.2を下回った。現況指数は2月の70.7から66.3へ悪化、期待指数も64.7から59.2へと悪化しており、金融引き締めによる景況感の失速が反映されているが、期待インフレ率は1年先で2月の4.1%から3.6%へ低下しており、インフレの鈍化傾向を示している。

PCEデフレーターとミシガン大調査での期待インフレ率はともに米FRBによるあと1回の利上げを肯定しつつ利上げの終了見通しに寄与するものといえる。
米FRBにとってはひとまず信用不安が落ち着いているとしても突然米銀複数行の破綻が発生した不安定な状況も金融引き締めの影響であること、信用不安が落ち着いても銀行は今後の融資により慎重さを求められるために利上げと同様の引き締め効果をもたらすことも指摘されており、今後の米雇用統計やCPI等を見ながら、あと1回の0.25%利上げで利上げサイクルの終了となる可能性が高まっているところと思われる。

【米2年債利回りの月間低下率は過去最大、ダウは連騰】

3月31日の米長期債利回りは総じて低下、長期金利指標の10年債利回りは0.08%低下の3.47%、30年債利回りは0.08%低下の3.65%、2年債利回りは0.09%低下の4.03%で終了した。
10年債利回りは月間では2020年3月以来の大幅低下で0.42%低下した。大幅利上げ再開の可能性が高まったことによる上昇で3月2日に4.09%をつけたところから信用不安による安全資産としての債券買い・利回り低下に見舞われて3月24日の3.29%へ低下し、信用不安が緩んで29日に3.57%まで戻したが、30日、31日と失速した。
利上げに敏感な2年債利回りは月間では0.73%低下となり、2008年1月以来で最大の低下となった。3月8日に5.08%を付けて2020年以降の最高水準としたところから3月24日には一時3.56%まで低下し、その後の反騰で31日は一時4.17%を付けてから失速した。
一方でNYダウは前日比415.12ドル高と上昇、3月29日からは3連騰でリスク選好感が戻っている印象だ。ナスダック総合指数も208.44ポイント高で29日から3連騰。利上げのピークが見えたことと、米銀破綻からの信用不安もまだ2008年型の金融危機には発展しないだろうとの楽観が支えているようだ。

【ドル円の中長期的な位置づけ】

ドル円は2021年1月6日底102.56円から2022年10月21日高値151.94円まで49.38円、2020年3月9日安値101.23円からは50.71円の歴史的な大上昇となったが、今年1月16日安値127.22円まで24.72円の下落で凡そ半値を削った。このため、概ね8年周期(7年から10年)による天井・底打ちサイクルにおける天井を2022年10月21日高値で付けて下落期に入っている可能性が高いと考える。昨年10月までは米FRBによる利上げと日銀の異次元金融緩和継続による日米金利差の拡大が背景であり、その後の下落は米FRBの利上げペース減速と日銀が異次元金融緩和の出口へ向かい始めたことによる日米金利差の縮小が背景であった。
1月16日からの上昇は日銀人事を巡り急速な路線変更が回避されるとの安心感と米国のインフレ高止まりによる利上げペース再加速の可能性が背景であったが、米銀破綻をきっかけとした信用不安によりFRBの利上げサイクルの終了が近づいたとの見方とリスク回避型の円高により3月8日高値137.91円から3月24日安値129.63円まで8.28円の下落に見舞われた。

信用不安の落ち着きで日足の一目均衡表においては26日基準線まで戻したところにあり、同線を超えて続伸に入り、先行スパンを上抜いて遅行スパンも好転してくるなら1月16日安値を底、3月24日安値を押し目底として上昇再開に入る可能性が高まるが、26日基準線前後で上値が抑えられて先行スパンからの転落と遅行スパンの悪化が続くようなら、3月24日安値割れから1月16日安値試しへ向かい、底割れに至れば昨年10月21日高値からの下落が第二段階に入り、120円台序盤を目指してゆく下落が想定される。
昨年10月21日高値を中心の頭とすれば、昨年7月14日高値が左肩、今年3月8日高値を右肩とした三尊形成にもなりえるところだ。4月7日の米雇用統計、4月12日の米CPI等を通過して三尊完成からの下落へ向かうのか、3月8日高値を超えて三尊破りの上昇へ進むのか、初夏へ向けた流れも決まってくるのではないかと思われる。新たな欧米金融機関の破綻や経営危機等が発生すれば三尊完成による下落感が強まってゆくと思われる。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

今週は4月3日の米ISM製造業景況指数、4月4日の雇用動態調査(JOLTS)求人件数、4月5日のADP民間雇用報告とISMサービス業景況指数、4月7日の米雇用統計と重要指標の発表が相次ぐ。FRB高官や地区連銀総裁らの発言もある。4月7日はグッドフライデーの祝日でもあり、相場の変動も大きくなりやすいと注意される。

(1)3月24日安値を起点とした上昇トレンドの下値支持線は132円前後にあり、上値抵抗線は134円台に来ている。
(2)132円台を維持するか一時的に割り込んでも回復するうちはまだ高値を切り上げる可能性があるとみて、3月31日高値133.57円超えからは134円を試す上昇を想定する。米雇用統計に対する反応次第では3月8日からの下落幅に対する3分の2戻しに当たる135.15円を目指す可能性も浮上するとみる。
(3)132円割れから続落の場合は3月24日安値からの上昇一巡による下落期とみて131円台前半への下落を想定する。131円台前半では買われやすいとみるが、信用不安の再拡大を伴う下落や米雇用統計等を弱気して下げ足が速まる場合には130円に迫る下落を想定する。

【当面の主な予定】

4/3(月)
休場 台湾
08:50 (日) 1-3月期 日銀短観・大企業製造業業況判断 (10-12月 7、予想 3)
08:50 (日) 1-3月期 日銀短観・大企業製造業先行き (10-12月 6、予想 3)
08:50 (日) 1-3月期 日銀短観・大企業非製造業業況判断 (10-12月 19、予想 20)
08:50 (日) 1-3月期 日銀短観・大企業非製造業先行き (10-12月 11、予想 17)
08:50 (日) 1-3月期 日銀短観・大企業全産業設備投資 前年度比 (10-12月 19.2%、予想 14.4%)
10:30 (豪) 2月 住宅建設許可件数 前月比 (1月 -27.6%、予想 10.0%)
10:45 (中) 3月 財新製造業PMI (2月 51.6、予想 51.5)
16:55 (独) 3月 製造業PMI・改定値 (速報 44.4 予想 44.4)
17:00 (欧) 3月 製造業PMI・改定値 (速報 47.1、予想 47.1)
17:30 (英) 3月 製造業PMI・改定値 (速報 48.0、予想 48.0)
22:45 (米) 3月 製造業PMI・改定値 (速報 49.3、予想 49.3)
23:00 (米) 3月 ISM製造業景況指数 (2月 47.7、予想 47.5)
23:00 (米) 2月 建設支出 前月比 (1月 -0.1%、予想 0.0%)

4/4(火)
G7貿易相会合
休場 台湾
08:50 (日) 3月 マネタリーベース 前年同月比 (2月 -1.6%)
13:30 (豪) 豪中銀 政策金利 (現行 3.60%、予想 3.60%)
15:00 (独) 2月 貿易収支 (1月 167億ユーロ、予想 166億ユーロ)
18:00 (欧) 2月 生産者物価指数(PPI) 前月比 (1月 -2.8%)
18:00 (欧) 2月 生産者物価指数(PPI) 前年同月比 (1月 15.0%)
18:15 (英) テンレイロ英中銀委員、講演
23:00 (米) 2月 製造業新規受注 前月比 (1月 -1.6%、予想 -0.5%)
23:00 (米) 2月 雇用動態調査(JOLTS)求人件数 (1月 1082.4万件)
25:30 (英) ピル英中銀理事、講演

4/5(水)
休場 中国、香港、台湾
07:15 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
11:00 (NZ) ニュージーランド中銀 政策金利 (現行 4.75%、予想 5.00%)
11:30 (豪) ロウ豪中銀総裁、講演
15:00 (独) 2月 製造業新規受注 前月比 (1月 1.0%、予想 0.7%)
15:00 (独) 2月 製造業新規受注 前年同月比 (1月 -10.9%)
16:55 (独) 3月 サービス業PMI・改定値 (速報 53.9、予想 53.9)
17:00 (欧) 3月 サービス業PMI・改定値 (速報 55.6、予想 55.6)
17:30 (英) 3月 サービス業PMI・改定値 (速報 52.8、予想 52.8)
18:15 (英) テンレイロ英中銀委員、講演
21:15 (米) 3月 ADP非農業部門就業者数 前月比 (2月 24.2万人、予想 20.5万人)
21:30 (米) 2月 貿易収支 (1月 -683億ドル、予想 -685億ドル)
22:45 (米) 3月 サービス業PMI・改定値 (2月 53.8)
23:00 (米) 3月 ISM非製造業景況指数 (2月 55.1、予想 54.6)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計

4/6(木)
ロシア外相、トルコ訪問(4/7まで)
休場 ノルウェー、メキシコ、タイ、フィリピン
10:30 (豪) 2月 貿易収支 (1月 116.88億豪ドル、予想 117.19億豪ドル)
10:45 (中) 3月 財新サービス業PMI (2月 55.0、予想 55.0)
15:00 (独) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 3.5%)
15:00 (独) 2月 鉱工業生産 前年同月比 (1月 -1.6%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 19.8万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 168.9万人)
23:00 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演

4/7(金)
休場 米国(グッドフライデー、為替は通常、債券は短縮、株式と商品は休場)
休場 カナダ、ドイツ、スイス、フランス、英国、イタリア、ノルウェー、メキシコ、南ア、インド
休場 ニュージーランド、オーストラリア、香港、シンガポール、インドネシア、ブラジル等
休場 マレーシア(ゴム休場、株式と金融債券は通常取引)
08:30 (日) 2月 全世帯消費支出 前年同月比 (1月 -0.3%、予想 4.8%)
14:00 (日) 2月 景気先行指数CI・速報値 (1月 96.6)
14:00 (日) 2月 景気一致指数CI・速報値 (1月 96.4)
21:30 (米) 3月 非農業部門就業者数 前月比 (2月 31.1万人、予想 24.0万人)
21:30 (米) 3月 失業率 (2月 3.6%、予想 3.6%)
21:30 (米) 3月 平均時給 前月比 (2月 0.2%、予想 0.3%)
21:30 (米) 3月 平均時給 前年同月比 (2月 4.6%、予想 4.3%)

4/8(土)
黒田日銀総裁任期満了

4/10(月)
休場 英国、ドイツ、フランス、スイス、ベルギー、イタリア、ノルウェー
休場 香港、オーストラリア、ニュージーランド、南ア、フィリピン等 

注:ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る