来週の為替相場見通し:『ドル円はリスクオフ後退で反発に転じるも上値余地は限定的か』(4/1朝)

ドル円は3/24に記録した安値129.65(2/3以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、一時133.59(3/17以来の高値圏)まで急伸しました。

来週の為替相場見通し:『ドル円はリスクオフ後退で反発に転じるも上値余地は限定的か』(4/1朝)

『ドル円はリスクオフ後退で反発に転じるも上値余地は限定的か』

〇ドル円週末にかけ133.59まで急伸後132円台に反落
〇金融システム不安をめぐる過度な警戒感が後退、リスク選好の円売り再開
〇週末にかけては米2月PCEデフレーターやミシガン大学消費者信頼感指数の不冴えが重石に
〇ユーロドル、週後半にかけて、週間高値1.0927まで急伸、ECB関係者の相次ぐタカ派発言が支持
〇ドル円、テクニカル的に見て、地合いの好転を印象付けるチャート形状となりつつある
〇但し、アップサイドに主要レジスタンスポイントが並んでいる点には留意が必要
〇ファンダメンタルズもドル円相場の下落を連想させる材料揃う
〇引き続き、ドル売り・円買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):130.50ー134.50、(EURUSD):1.0700−1.1000

今週のレビュー(3/27−3/31)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初130.54で寄り付いた後、翌3/28に週間安値130.40まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(1)バイデン米大統領による「米銀行が今後さらに破綻する場合には米連邦預金保険が1口座当たり25万ドルの保護上限額を超えて適用される可能性がある」との3/24付けの発言や、(2)米地銀ファースト・シチズンズ・バンクシェアーズによるシリコンバレー銀行の買収合意発表、(3)上記1、2を背景とした株式市場の持ち直し(金融システム不安を巡る過度な警戒感が後退→リスクセンチメント改善→アジア株・欧米株急上昇→リスク選好の円売り再開)、(4)米1月住宅価格指数(結果+0.2%、予想▲0.3%)の伸び率上昇、(5)米3月リッチモンド連銀製造業指数(結果▲5、予想▲10)の市場予想を上回る結果、(6)米3月コンファレンスボード消費者信頼感指数(結果104.2、予想101.0)の力強い結果、

(7)氷見野日銀副総裁による「金融緩和を継続して経済支えることで企業が賃上げできる環境を整えることが重要」とのハト派的な発言、(8)一目均衡表雲突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売り、(9)イエレン米財務長官による「バイデン米大統領の最優先事項はインフレの抑制」とのタカ派的な発言、(10)米共和党ハーン下院議員による「パウエルFRB議長は会合で年内にさらに1回の利上げを実施する可能性を示唆」とのタカ派的な発言、(11)米金利上昇に伴うドル買い圧力、(12)リッチモンド連銀バーキン総裁による「インフレが続く場合、FRBはさらなる利上げが可能」とのタカ派的な発言、(13)ボストン連銀コリンズ総裁による「インフレを低下させるためにいくらかの追加利上げが必要」とのタカ派的な発言、

(14)ミネアポリス連銀カシュカリ総裁による「インフレをより低下させるために1年を通して金利を高く保つ必要がある」とのタカ派的な発言、(15)本邦輸入企業の実需のドル買い(年度末・月末・期末に絡むドル買い・円売り)が支援材料となり、週末にかけて、週間高値133.59まで急伸しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(16)米2月PCEデフレーター(結果+5.0%、予想+5.1%)の市場予想を下回る結果や、(17)米2月PCEコアデフレーター(結果+4.6%、予想+4.7%)の市場予想を下回る結果、(18)米3月ミシガン大学消費者信頼感指数(結果62.0、予想63.3)の冴えない結果(1年先の期待インフレ率も前回の3.8%から3.6%へ下方修正)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間4/1午前2時30分時点)では、132.85前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0767で寄り付いた後、早々に週間安値1.0745まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(1)ドイツ3月Ifo期待指数(結果91.2、予想88.3)のポジティブサプライズ(約1年ぶり高水準)や、(2)ドイツ連銀ナーゲル総裁による「量的引き締めを今夏から加速させるべき」「インフレは依然として高すぎる」とのタカ派的な発言、(3)シュナーベルECB専務理事が「さらなる利上げの可能性」という文言をECB声明文に明記するよう求めているとの観測報道、(4)エストニア中銀ミュラー総裁による「利上げの余地はあるだろう」とのタカ派的な発言、(5)ドイツ4月GFK消費者信頼感(結果▲29.5、予想▲30.0)の市場予想を上回る結果、

(6)スロバキア中銀カジミール総裁による「金利の引き上げを継続すべき」「コアインフレが直近の意思決定の鍵」とのタカ派的な発言、(7)エルダーソンECB専務理事による「インフレ見通しが合致すれば利上げすべき」とのタカ派的な発言、(8)ドイツ3月CPI速報値(結果+7.4%、予想+7.3%)の市場予想を上回る結果、(9)ドイツ3月HICP速報値(結果+7.8%、予想+7.5%)の市場予想を上回る結果、(10)欧州債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力(ECBによる金融引き締め長期化観測)、(11)欧州株の堅調推移が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.0927まで急伸しました。週末にかけて反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間4/1午前2時00分時点)では、1.0865前後で推移しております。

来週の見通し(4/3−4/7)

<ドル円相場>
ドル円は3/24に記録した安値129.65(2/3以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、一時133.59(3/17以来の高値圏)まで急伸しました。この間、一目均衡表転換線や雲上限を上抜けした他、強い売りシグナルを示唆する三役逆転も消失するなど、テクニカル的に見て、地合いの好転を印象付けるチャート形状となりつつあります。但し、アップサイドに90日移動平均線やボリンジャーミッドバンド、一目均衡表基準線といった主要レジスタンスポイントが並んでいる点には留意が必要でしょう。上値の重さが意識されれば、一転して反落に転じるシナリオも想定されることから、余程強いドル買い・円売り材料が出てこない限り、ここからの更なる上昇は容易では無いと考えられます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)世界的な金融システム不安の伝播リスク(世界的な金融システム不安は、政府・当局による強力サポートや、UBSによるクレディスイス買収、ファーストシチズンズによるシリコンバレー銀行買収などを経てひとまず落ち着きを取り戻しているが、本質的な解決には至っておらず、再びリスクオフが到来する恐れあり)や、(2)上記1を背景とした潜在的な円買い圧力(リスク回避局面で選好され易いとされている米ドル・スイスフラン・日本円の内、米国とスイスは今回のショックの震源地であるため、消去法的に日本円が独歩高となり易い)、(3)米FRBによる金融引き締め打ち止め観測(市場は年内利下げをも織り込む動き→米長期金利に低下圧力)、(4)日銀による金融緩和の修正観測(4/27ー4/28に予定されている植田次期総裁最初の会合で、サプライズ修正およびサプライズ発言が出てくるとの思惑)、

(5)上記3、4を背景とした日米金利差縮小観測(IMM通貨先物市場で投機筋の円ショートが高水準で残っているため、サプライズ修正が行われれば円ショートの大規模な巻き戻しを誘発する恐れ)など、ドル円相場の下落を連想させる材料が揃っています。こうした中、来週は上記4を確認する上で、4/3に予定されている日銀短観、上記3を確認する上で、4/7の米3月雇用統計に注目が集まります。日銀短観で非製造業主導の力強さや、企業物価見通しの更なる上昇が示される場合や、米3月雇用統計が市場予想を下回る場合などには、日銀による早期緩和修正への思惑を背景とした円高圧力と、米国の早期利下げを織り込むドル売り圧力が組み合わさることから、ドル円に強い下押し圧力が加わるリスクが想定されます。また、来週金曜日よりイースター休暇が始まることも、ポジション調整主導のドル円反落を想起させます(上記5で示した高水準の円ショートが連休前に解消されるリスク)。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル売り・円買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(USDJPY):130.50ー134.50

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は3/24に記録した直近安値1.0713をボトムに反発に転じると、今週後半にかけて、一時1.0927まで急伸しました。3/23に記録した直近高値1.0931にはあと一歩届かなかったものの、日足・ローソク足が主要テクニカルポイントを軒並み上抜けしていることや、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の上昇トレンド」が軒並み成立していること等を踏まえれば、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)ECB当局者による相次ぐタカ派発言(今週はドイツ連銀ナーゲル総裁、シュナーベルECB専務理事、エストニア中銀ミュラー総裁、スロバキア中銀カジミール総裁、エルダーソンECB専務理事、ラガルドECB総裁など複数の当局者が軒並みタカ派姿勢を強調)や、(2)米FRBによる金融引き締め打ち止め観測、(3)上記1、2を背景とした欧米金融政策の方向性の違い(利上げ最終局面の米国と、利上げ余地が多く残されている欧州との金融政策格差)、

(4)欧州株の堅調推移(UBSによるクレディスイス救済合意で欧州金融不安がひとまず後退)など、ユーロドル相場のアップサイドリスクを連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の続伸をメインシナリオとして予想いたします(状況次第では2/2に記録した年初来高値1.1034を試すシナリオも想定)。尚、来週は4/5に予定されているドイツ2月製造業受注や、4/6のドイツ2月鉱工業生産以外に目立った経済イベントが予定されておらず、また、週末よりイースター休暇が始まることもあり、ユーロドルは主体性を欠いた動き(米ドル主導の動き)となりそうです。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0700−1.1000

注:ポイント要約は編集部

『ドル円はリスクオフ後退で反発に転じるも上値余地は限定的か』

ドル円日足

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