ドル円見通し SVB買収で信用不安後退するもドル安継続でドル円の上値重い(23/3/29)

ドル円は米地銀ファースト・シチズンズ銀が破綻したシリコンバレー銀を買収したことにより連鎖破綻への不安が後退したとして3月28日未明高値131.75円まで戻した。

ドル円見通し SVB買収で信用不安後退するもドル安継続でドル円の上値重い(23/3/29)

SVB買収で信用不安後退するもドル安継続でドル円の上値重い

〇ドル円、欧米金融機関連鎖破綻への不安後退で3/28未明高値131.75まで戻す
〇米住宅市況は低調、今後は米長期債利回り急低下による住宅ローン金利低下で住宅取得意欲の回復も
〇米長期債利回り連騰、ダウは上げ渋る。FRBインフレ抑制の利上げ問題も浮上するためやや慎重な動き
〇131.50を下回るうちは一段安余地あり、130.40割れからは3/24安値129.63試しとする
〇131.50超えからは3/28未明高値131.75試しとし、高値更新からは132円台前半への上昇を想定

【概況】

ドル円は3月10日の米シグネチャー銀等の破綻報道をきっかけとした信用不安と、米長期債利回りの大幅低下を背景に3月8日高値137.91円から3月24日安値129.63円まで大幅下落してきたが、UBSが経営危機に陥ったクレディ・スイスを買収、米地銀ファースト・シチズンズ銀が破綻したシリコンバレー銀(SVB)を買収したことにより連鎖破綻への不安が後退したとして3月28日未明高値131.75円まで戻した。
3月28日は信用不安後退によるリスク選好感の回復で為替市場ではユーロやポンド、豪ドル等が上昇してドル安感が強まったためにドル円は28日夜安値で130.40円まで失速したが、一方では米国債への安全資産買いが後退したことにより米債券安・長期債利回り上昇となったためにドル円の下落は限定的で29日朝には131円台まで戻している。

【金融機関の連鎖破綻への不安は後退】

3月10日の米シルバーゲート銀の自主廃業、シリコンバレー銀の破綻、米中堅ファーストリパブリック銀株の暴落、3月13日朝の米地銀シグネチャー銀の破綻、3月15日のクレディ・スイス株暴落、3月17日の米SVBファイナンシャル・グループの破産申請、3月24日のドイツ銀株急落と信用不安事案が相次いできたが、クレディ・スイスとシリコンバレー銀が買収されることで破綻の連鎖不安が落ち着いた。
3月28日の米上院銀行委員会では、グルーエンバーグFDIC総裁が「SVBとシグネチャー銀の破綻については深刻な波及リスクがあった」とし、「総資産1000億ドル以上の銀行には連鎖破綻を招く恐れがある」としたが、現在は「米地銀の流動性は安定している」と述べた。

米FRBのバー副議長は「SVBの経営破綻は金利と流動性リスク管理の失敗によるもの」「教科書のような経営失敗のケース」とし、「サンフランシスコ連銀が問題を指摘していたがSVBが対応しなかった」と述べたが、「大半の銀行は金利と流動性リスクに効果的に対応している」とし、事態が落ち着いていることを示した。
セントルイス連銀のブラード総裁は28日に「セントルイス連銀の金融ストレス指数は2008年のリーマン・ショック時や2020年のパンデミック発生時と比較すれば低くとどまっている」とし、「米銀破綻による信用不安を抑えつつ適切な金融政策でインフレを抑制することは可能」とした。

【米住宅市況は低調、CB消費者信頼感指数は改善】

米連邦住宅金融庁(FHFA)による1月住宅価格指数は前年同月比5.3%上昇で12月の6.7%から鈍化したが前月比は0.2%上昇となり、市場予想の0.3%低下に反して12月の0.1%低下から改善した。
1月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数は前年同月比3.8%上昇で市場予想と一致したが12月の4.7%上昇を下回って9か月連続で伸びが鈍化、前月比は0.2%低下したが、米長期債利回りが急低下したことによる住宅ローン金利の低下で今後は住宅取得意欲が回復するのではないかとの見方もあるようだ。
米コンファレンス・ボードによる3月の消費者信頼感指数は104.2となり、2月の103.4から上昇、市場予想の101.0を上回った。現況指数は2月の153から151.1へ悪化したが、期待指数は2月の70.4から73.0へ改善した。また向こう1年間の期待インフレ率は6.3%で2月の6.2%から上昇した。発表後にはダウが買われる場面が見られたが為替市場の反応は限定的だった。

【米長期債利回りは連騰、ダウは上げ渋る】

欧米金融機関の破綻連鎖への不安感が後退する中で米長期債利回りは債券売り・利回り上昇となり28日から連騰した。長期金利指標の10年債利回りは3月24日に一時3.29%まで低下して3月2日の4.09%以降の最低としたが、27日は前日比0.17%上昇の3.54%とし、28日も0.03%上昇の3.57%と連騰した。
利上げに敏感な2年債利回りは3月24日に一時3.56%をつけて3月8日の5.08%以降の最低としたところから反騰入りし、27日は前日比0.31%上昇の4.01%とし、28日も0.07%上昇の4.08%へと続伸した。

一方でNYダウは28日に前日比37.83ドル安と小幅下落した。米銀破綻をきっかけとした下落は3月15日安値で落ち着き、3月22日に前日比530.49ドル安の大幅下落となった翌日から27日まで3連騰で上昇していたが、28日は上昇一服で利益確定売りが優勢となったようだ。ナスダック総合指数も前日比52.76ポイント安となり27日の55.12ポイント安からの続落となった。信用不安は後退しているものの不安が一掃されたとまでは言えず、金融機関の連鎖破綻リスクが後退すればFRBによるインフレ抑制のための利上げ問題が浮上するためにやや慎重な動きを採っている印象だ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は3月24日安値129.63円を起点に戻したが、28日未明高値131.75円で戻り一巡となり失速しているところだが、130円割れは回避して下げ渋っている。28日未明高値を超えないうちは31日夜にかけての下落余地ありとして130円割れからは129円前後を試す下落を想定するが、28日未明高値を上抜く場合は24日安値を起点とした上昇の継続とし、3月8日以降の戻り高値を切り下げてきた下降トレンドからの脱却とみて4月3日朝にかけての上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では3月28日未明高値からの反落で遅行スパンが悪化したものの28日夜安値からの下げ渋りにより再び好転しつつある。28日夜には先行スパンから一時的に転落したものの再び潜り込んできている。3月28日未明高値を超えないうちは一段安余地ありとし、28日夜安値割れからは遅行スパン悪化中の安値試し優先とするが、先行スパンを上抜き返すところからは28日未明高値試しとし、高値更新からは上昇継続とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は3月28日昼に30ポイント台へ低下したもののその後は下げ渋っている。50ポイント台に到達したところで売られているので55ポイント以下での推移中は一段安余地ありとして次の40ポイント割れからは下げ再開とするが、55ポイント超えからは上昇継続と仮定して60ポイント台中盤への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、130.40円を下値支持線、131.50円を上値抵抗線とする。
(2)131.50円を下回るうちは一段安余地ありとし、130.40円割れからは3月24日安値129.63円試しとする。24日安値近辺では買い戻しも入りやすいとみるが、リスク回避要因で下げる場合は129円前後試しへ下値目途を引き下げ、30日への続落を想定する。
(3)131.50円超えからは3月28日未明高値131.75円試しとし、高値更新からは132円台前半への上昇を想定する。また131円以上での推移なら30日も高値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

3/29(水)
米下院金融委員会、最近の銀行破綻への対応巡りFRBとFDIC幹部が議会証言
15:00 (独) 4月 GFK消費者信頼感 (3月 -30.5、予想 -29.2)
23:00 (米) 2月 住宅販売保留指数 前月比 (1月 8.1%、予想 -2.3%)
23:00 (米) 2月 住宅販売保留指数 前年同月比 (1月 -22.4%)
23:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
24:30 (米) 財務省2年変動利付債入札
26:00 (米) 財務省7年債入札

3/30(木)
06:45 (NZ) 2月 住宅建設許可件数 前月比 (1月 -1.5%)
09:00 (NZ) 3月 ANZ企業信頼感 (2月 -43.3)
18:00 (欧) 3月 消費者信頼感・確定値 (速報 -19.2)
18:00 (欧) 3月 経済信頼感 (2月 99.7、予想 99.8)

21:00 (独) 3月 消費者物価指数(CPI)速報値 前月比 (2月 0.8%、予想 0.6%)
21:00 (独) 3月 消費者物価指数(CPI)速報値 前年同月比 (2月 8.7%、予想 7.3%)
21:30 (米) 10-12月期 GDP・確定値 前期比年率 (改定値 2.7%、予想 2.7%)
21:30 (米) 10-12月期 GDP個人消費・確定値 前期比年率 (改定値 1.4%、予想 1.5%)
21:30 (米) 10-12月期 コアPCE・確定値 前期比年率 (改定値 4.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 19.1万件、予想 19.6万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 169.4万人)
25:45 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
25:45 (米) コリンズ・ボストン連銀総裁、講演


注:ポイント要約は編集部

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