SVB買収報道でリスク回避がやや後退、米長期債利回り上昇でドル円も戻す
〇ドル円、SVB買収報道等からリスク回避感がやや後退したとして、3/28未明131.75円まで戻す
〇信用不安事案が相次いできたが、SVB買収やFRBの緊急資金支援策拡充検討報道で信用不安に一服感
〇米長期債利回りは安全資産買いが後退したとして大幅上昇、ダウは3連騰
〇131円以上での推移中は一段高余地ありとし、131.75超えからは132円台序盤を試すとみる
〇130.80割れを弱気転換注意とし、130.50割れからは下げ再開に入ったとみて129.63試しを想定する
【概況】
ドル円は3月10日の米銀破綻報道をきっかけとした信用不安による米長期債利回り低下とリスク回避の円高により3月8日につけた年初来高値137.91円から3月24日安値129.63円まで8.28円の下落となったが、週明けは24日の130円割れを買い戻された流れを継続、米連邦預金保険公社(FDIC)が経営破綻した米中堅銀行シリコンバレー銀(SVB)を米地銀ファースト・シチズンズ銀が買収すると発表したことやFRBが米地銀ファースト・リパブリック銀支援へ向けて資金供給拡充を検討していると報じられたこと等からリスク回避感がやや後退したとして28日未明には131.75円まで戻した。
3月24日安値からの戻り幅は今のところ2.12円だが、3月13日夜安値から15日夜高値への戻り幅2.82円や3月20日夕安値から22日夜高値への戻り幅2.44円などと同様に3円に満たない戻り幅であり、3月8日高値以降の戻り高値を切り下げては一段安を繰り返してきた下降トレンドの範囲にとどまっている。信用不安を払拭しきるようなさらなる押し上げ材料が出てこないうちは新たな不安材料の出現で下落再開へと進みかねない状況にあるのではないかと思われる。
【SVB買収やFRBの資金供給拡充で信用不安一服感】
3月10日の米シルバーゲート銀の自主廃業、シリコンバレー銀の破綻、米中堅ファースト・リパブリック銀株の暴落、3月13日朝の米地銀シグネチャー銀の破綻、3月15日のクレディ・スイス株暴落、3月17日の米SVBファイナンシャル・グループの連邦破産法11条適用申請、3月24日のドイツ銀等欧銀株急落と信用不安事案が相次いできた。
クレディ・スイスについてはスイス中銀の資金供給と先週のUBSによる買収で救済見通しが立ち、シリコンバレー銀については米地銀ファースト・シチズンズ・バンクシェアーズが預金・融資債権・一部資産を米連邦預金保険公社(FDIC)から取得すると3月26日に発表したことで落ち着いた。
3月27日にはFRBがシリコンバレー銀破綻直後に打ち出した銀行向け緊急資金支援策の拡充を検討していると報じられ、米地銀ファースト・リパブリック銀への支援と受け止められてこの案件にも一服感が出ている。
FRBのバー副議長は3月28日の議会証言への準備書面を公表、「シリコンバレー銀の経営破綻は取引相手が特定業界に偏り資産規模を短期間で急拡大させるなど、経営失敗の教科書のような事例」とし、「全ての預金は安全だと保証する」「どんな規模の金融機関に対しても必要ならあらゆる措置を行使する用意がある」と示して市場の安心を誘った。
英中銀のベイリー総裁も3月27日の講演で、「世界の銀行セクターには大きなひずみがある」ものの「英国の銀行には耐性がある」とし、「英中銀のMPC(金融政策委員会)はインフレ率の目標回帰という重要な責務に集中できる」と述べて信用不安拡大への不安払拭に努めた。
【米長期債利回りは反騰、ダウは連騰】
3月27日の米長期債利回りは信用不安の払拭に寄与する材料を背景に安全資産買いが後退したとして総じて大幅上昇した。長期金利指標の米10年債利回りは前週末比で0.17%上昇の3.54%となった。3月2日の4.09%から3月24日には一時3.29%まで大幅低下し、24日終了時は3.37%として前日比0.04%低下に終わったものの下げ幅を大きく解消していたが、週明けの続伸で大幅低下に一服感が出ている。
利上げに敏感な2年債利回りは先週末比0.31%上昇の4.01%となった。3月8日につけた2020年以降の最高値5.08%から大幅低下して3月24日は一時3.56%をつけたところから3.77%まで戻して週を終えていたところからさらに続伸した。
一方でNYダウはリスク回避感が後退したとして先週末比194.55ドル高と上昇して3連騰となったが、ナスダック総合指数は長期債利回りの大幅上昇が圧迫要因となり55.12ポイント安と伸び悩んだ。
欧米金融機関への信用不安問題が払拭されれば株高が継続し、インフレ抑制へ向けた金融引き締め姿勢の再強化による米長期債利回りの再上昇ということも考えられるが、相次ぐ破綻により小中銀行からの預金流出は続いており、簡単には信用不安問題は片付かないのではないかと懸念される。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は3月22日夜高値を起点として3月24日に130円割れへ一段安した流れがひとまず落ち着いて戻しているところであり、131円台を維持するか一時的に割り込んでも回復するうちは29日夜にかけての上昇余地ありとするが、130.80円割れからは下げ再開を警戒、130.50円割れからは下げ再開に入ったと仮定して31日夜にかけての下落を想定する。その際は128円台ないし127円台へ向かう流れとみる。
60分足の一目均衡表では3月24日夜安値からの反騰により遅行スパンが好転し、27日夜には先行スパンも上抜いた。28日午前序盤も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、26本基準線割れを弱気転換注意とし、先行スパンから転落する場合は下落再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は3月28日未明へ上昇では70ポイントに届かず27日夜夜から28日未明にかけては指数のピークが切り下がる小規模な弱気逆行が見られる。50ポイント以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは60ポイント超えからの上昇再開余地ありとするが、45ポイント割れからは下落再開とみて30ポイント前後を目指す下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、130.50円を下値支持線、3月28日未明高値131.75円を上値抵抗線とする。
(2)131円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは一段高余地ありとし、131.75円超えからは132円台序盤(132.00円から132.25円)を試すとみる。132円以上は反落注意とするが、131円以上での推移なら29日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)130.80円割れを弱気転換注意とし、130.50円割れからは下げ再開に入ったとみて3月24日夜安値129.63円試しを想定する。底割れからは129.00円、128.50円等を順次試してゆく流れとみる。
【当面の主な予定】
3/28(火)
米上院銀行委員会、最近の銀行破綻と連邦当局の対応巡る公聴会
09:30 (豪) 2月 小売売上高 前月比 (1月 1.9%、予想 0.1%)
17:45 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、シリコンバレー銀行破綻関連で証言
21:30 (米) 2月 卸売在庫 前月比 (1月 -0.4%)
22:00 (米) 1月 米連邦住宅金融局住宅価格指数 前月比 (12月 -0.1%)
22:00 (米) 1月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (12月 4.7%、予想 2.5%)
23:00 (米) 3月 リッチモンド連銀製造業指数 (2月 -16、予想 -10)
23:00 (米) 3月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (2月 102.9、予想 101.0)
26:00 (米) 財務省5年債入札
3/29(水)
米下院金融委員会、最近の銀行破綻への対応巡りFRBとFDIC幹部が議会証言
09:30 (豪) 2月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (1月 7.4%、予想 7.2%)
15:00 (独) 4月 GFK消費者信頼感 (3月 -30.5、予想 -29.5)
23:00 (米) 2月 住宅販売保留指数 前月比 (1月 8.1%、予想 -2.3%)
23:00 (米) 2月 住宅販売保留指数 前年同月比 (1月 -22.4%)
23:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
24:30 (米) 財務省2年変動利付債入札
26:00 (米) 財務省7年債入札
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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