ドル円見通し 信用不安やや落ち着き132円台へ戻し、23日未明のFOMCへ向かう
〇ドル円、3/20安値130.55へ下落後下げ渋り、FOMCを控えたポジション調整で3/22未明132.62へ戻す
〇米財務長官による預金者保護姿勢などから、信用不安の拡大懸念が後退しドル円も持ち直す
〇3/21-3/22開催のFOMCでは、0.25%利上げで落ち着くのではないかとの見方が優勢
〇米長期債利回りは総じて上昇、米株価は連騰、不安心理の改善で株買い・債券売りへの揺れ返しか
〇132円以上での推移中は上昇余地ありとし、133円超えからは134円を目指す上昇を想定する
〇131.70割れからは下げ再開の可能性を優先して、131円前後試しとする
【概況】
ドル円は3月20日安値で130.55円まで下落した後は下げ渋っていたが、イエレン米財務長官による預金者保護姿勢や取り付け騒ぎは落ち着いたとの見方から信用不安の拡大懸念が後退して持ち直し、3月23日未明のFOMCを控えたポジション調整で22日未明には132.62円まで戻した。
3月10日にシルバーゲート銀行とシリコンバレー銀行が破綻、3月13日早朝にNY州の地銀シグネチャー銀行が破綻、クレディ・スイス株暴落による経営危機の発生、17日にはシリコンバレー銀行の親会社SVBファイナンシャル・グループの連邦破産法11条適用申請と信用不安が急拡大したことでドル円は3月8日につけた年初来高値137.91円からの下落を継続して3月20日安値130.55円までの下げ幅を7.36円へ拡大してきた。
しかしスイス中銀によるクレディ・スイスへの資金供給、UBSによる買収救済で欧州への飛び火懸念がひとまず落ち着き、日米欧等主要6中銀がドル資金供給拡大を決定したことに加え、19日は新たな破綻報道はなくイエレン米財務長官が2008年のような金融危機には至らず情勢は落ち着くとの見方を示したことでドル円も持ち直した。
【イエレン米財務長官、状況は改善】
3月21日にイエレン米財務長官は「預金流出が全体で落ち着いてきており状況は改善している」「銀行システムと預金が安全であると預金者に確信させる上で必要な措置を行う用意がある」と述べて市場を安心させた。長官はまた「2008年の金融危機とは状況が大きく違う」「2008年の金融危機は銀行の支払い能力に関する危機だったが、現状は他行へ波及しやすい取り付け騒ぎ」とし、「FRBは流動性が必要な金融機関に対して充分な資金供給ができる」と述べた。
2008年の金融危機=リーマンショックでは不動産バブルの崩壊による住宅ローンの焦げ付きが金融機関の破綻の連鎖を招き、大手証券会社の破綻やGMなど製造業大手の経営危機等へと負の連鎖が拡大していった。現状はまだ市場のパニックは発生していないが、パンデミック対策による世界的な金融緩和が不動産バブルを発生させ、インフレ抑制へ金融引き締めが始まったことで住宅ローンの上昇が不動産市況の悪化を招き、NYダウやナスダックが史上最高値を更新したところから下落に転じてきたところでの米銀破綻と欧州への飛び火であり、2008年とは違うから安心とは言い切れない側面もある。
不動産市況には先行きの不安感をにじませる統計が続いているが、3月21日に発表された米不動産業者協会(NAR)による2月の中古住宅販売件数(年換算)は前月比14.5%増の458万戸となり1年1か月ぶりにプラスとなったものの、1月までは過去最長となる12カ月連続で前月比マイナスだった。2月の販売件数は前年同月比22.6%減、販売価格中央値は前年同月比0.2%低下で132カ月ぶりのマイナスとなっている。
【FOMCは0.25%利上げへ】
3月21-22日に開催される米FOMCでは0.25%利上げが予想されている。インフレの高止まりにより一時は0.50%の大幅利上げの可能性が高まっていたものの、米銀の相次ぐ破綻による信用不安の発生直後には利上げそのものが見送られるのではないかとの見方も出ていた。しかし3月16日にECBが0.50%利上げを決定して金融危機には至らずインフレ抑制が重要との姿勢を示し、イエレン米財務長官も「バイデン政権の最重要課題はインフレ抑制」と述べてFRBによる利上げを支持する発言を行ったことで0.25%利上げで落ち着くのではないかとの見方が優勢となっている。
市場としては0.25%利上げを織り込んだ状況と思われ、仮に0.50%の大幅利上げを行えばサプライズとしてドル全面高を招く可能性も無いとは言えないが、逆に利上げを見送る場合にはそれだけ米銀破綻の拡大懸念が濃厚だということを示してしまうためにドル全面安へ向かうと思われる。市場予想通りに0.25%利上げとすれば一時的なドル高反応が見られたとしてもその後は信用不安問題へと市場の関心も戻り、信用不安の解消への期待が高まる状況が確認できればリスク選好でドル円は上昇し、不安がくすぶるならドル円の下落基調継続へと進みやすいのではないかと思われる。
【米長期債利回りは反騰、ダウも連騰】
3月21日の米長期債利回りは総じて上昇した。長期金利指標の米10年債利回りは前日比0.13%上昇の3.61%となり、20日の急落時につけた凡そ6か月振り安値3.29%からの反騰を継続した。
30年債利回りは0.06%上昇の3.73%で20日の0.04%上昇から続伸、2年債利回りは0.21%上昇の4.18%となり20日に3.64%まで急低下したところからの反騰を継続した。
一方でNYダウは前日比316.02ドル高と上昇、20日の382.60ドル高から連騰し、ナスダック総合指数は184.57ポイント高で20日の45.03ポイント高から連騰した。信用不安による株売り・債券買いで長期債利回りの急低下が続いたが、ひとまず不安心理の改善で株買い・債券売りへと揺れ返している印象だ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は3月8日高値137.91円から3月13日夜安値132.27円までの下落を一段目とし、3月15日夕高値135.09円から3月20日夕安値130.55円までの下落を二段目とすれば、二段目の下げがひとまず落ち着いて戻りを試しているところと思われる。
131.70円を上回るうちは上昇余地ありとし、FOMCを強気で通過できれば24日朝にかけての上昇を想定するが、FOMCを下落反応で通過する場合は下げ再開を警戒し、3月20日夕安値を割り込むところからは3月8日高値からの下落が三段目に入るとみて3月27日夕刻にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では3月20日夕安値からの反騰により遅行スパンが好転し、先行スパンも上抜いているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、遅行スパンが悪化するところからは下げ再開とし、先行スパンから転落する場合は下げ足が速まる可能性があると注意する。
60分足の相対力指数は3月20日の下落時に30ポイントを割り込んでから戻したが70ポイントに届かずにいる。50ポイント以上での推移中は70ポイント超えへ向かう可能性ありとするが、50ポイント割れからは戻り一巡による下げ再開と仮定して30ポイント前後への低下を伴う下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、131.70円を下値支持線、133.00円を上値抵抗線とする。
(2)132円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとし、133円超えからは134円を目指す上昇を想定する。133円手前で戻り売りにつかまりやすいとみるが、132円を上回っての推移か直前高値から1円を超える反落が発生しないうちは23日の日中も上昇を継続する可能性ありとみる。
(3)131.70円割れからは下げ再開の可能性を優先して131円前後試しとし、下げ足が速まる場合は3月20日安値130.55円試しへ向かう流れとみる。130円台後半は買い戻しも入りやすいとみるが、130.55円を割り込む場合は129円、128円を順次試してゆく下落期に入るのではないかと考える。
【当面の主な予定】
3/22(水)
休場 インドネシア
英中銀金融政策委員会(MPC)初日
16:00 (英) 2月 消費者物価指数(CPI) 前月比 (1月 -0.6%、予想 0.6%)
16:00 (英) 2月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (1月 10.1%、予想 9.9%)
16:00 (英) 2月 コアCPI 前年同月比 (1月 5.8%、予想 5.7%)
16:00 (英) 2月 小売物価指数(RPI) 前年同月比 (1月 13.4%、予想 13.2%)
17:45 (欧) ラガルドECB総裁、講演
18:00 (欧) 1月 経常収支・季調済 (12月 159億ユーロ)
22:45 (欧) パネッタECB理事、講演
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
25:45 (独) ナーゲル独連銀総裁、講演
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、政策金利 (現行 4.50-4.75%、予想 4.75-5.00%)
27:30 (米) パウエル米FRB議長、定例記者会見
3/23(木)
EU首脳会議(3/24まで)、米韓合同軍事演習最終日
17:30 (ス) スイス中銀 政策金利 (現行 1.00%、予想 1.50%)
18:00 (ノ) ノルウェー中銀 政策金利 (現行 2.75%、予想 3.00%)
20:00 (ト) トルコ中銀 政策金利 (現行 8.50%、予想 8.50%)
21:00 (英) 英中銀 政策金利 (現行 4.00%、予想 4.25%)
21:30 (米) 10-12月期 経常収支 (7-9月 -2171億ドル、予想 -2136億ドル)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 19.2万件、予想 20.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 168.4万人)
23:00 (米) 2月 新築住宅販売件数・年率換算 (1月 67.0万件、予想 65.0万件)
23:00 (米) 2月 新築住宅販売件数 前月比 (1月 7.2%、予想 -3.0%)
24:00 (欧) 3月 消費者信頼感・速報値 (2月 -19.0、予想 -18.5)
24:00 (英) マン英中銀委員、講演
25:00 (欧) レーンECB理事、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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