ドル円見通し 米長期債利回り反落で全般ドル安、日銀会合から米雇用統計へ向かう
〇ドル円、米長期債利回り低下でドル安が進み3/9夜135.94をつける、その後136.47まで戻すも上値重い
〇米新規失業保険申請件数は3週ぶり悪化、米予算教書は低成長予測、米長期債利回り低下に影響
〇本日、黒田総裁最後の日銀金融政策決定会合、夜は米雇用統計発表、注目集まる
〇米長期債利回りは総じて大幅低下、NYダウは仮想通貨関連の廃業報道などから大幅下落し3営業日続落
〇136.70以下での推移中は一段安余地ありとし、135.94割れからは135円台序盤への下落を想定する
〇136.70超えからは上向きとし、137.00超えからは137.91超えを目指す上昇期に入ると考える
【概況】
ドル円はパウエルFRB議長による半期に一度の上院議会証言が予想以上にタカ派姿勢だったことをきっかけとしたドル全面高により3月8日高値137.91円へ上昇して年初来高値を更新したが、その後は年初からの上昇幅が10円を超えたことでの高値警戒感、黒田総裁最後の日銀金融政策決定会合を控えたポジション調整、パウエル議長の上下院証言を通過したことでのユーロやポンドの巻き戻し的に買い戻されたこと等を背景に9日夜には136円を一時割り込んだ。
3月9日夜は米週間新規失業保険申請件数が3週ぶりに悪化したこと、仮想通貨関連の廃業報道等と関連株及びNYダウの大幅下落、バイデン大統領による2024会計年度予算教書における長期金利見通し等をきっかけに前日まで急伸してきた米2年債利回りが急低下し、10年債利回り等も大幅低下したことでドル安が進み、ドル円は9日夜に135.94円をつけた。NY市場の中盤、136.47円まで戻した後にも136円を割り込むなど上値の重い展開となったが、10日スタートは調整安が落ち着き、買い戻しが観測されて136円台前半で推移している。
【米新規失業保険申請件数は3週ぶり悪化、米予算教書は低成長を予測】
3月9日夜に発表された米労働省の新規失業保険申請件数は前週から2万1000件増加の21万1000件となり、前週の19万件から増加、3週ぶりの悪化で市場予想の19万5000件を上回った。1週遅れの失業保険受給者総数も前週比6万9000人増加して171万8000人となり、市場予想の165万9000人を上回った。この発表をきっかけに米長期債利回りが低下した。
バイデン米大統領は2024会計年度の予算教書を発表したが、歳出総額を6兆8000億ドルに拡大するものの、トランプ政権において2017年に導入された法人税減税の一部廃止などが盛り込まれ、今後10年間で財政赤字を3兆ドル程度削減する方針としたが、予算教書策定のための前提となる各種見通しにおいては、長期金利を2023年は3.9%、2024年は3.6%、消費者物価上昇率は2023年を4.3%上昇、2024年を2.4%上昇とし、GDP見通しについては2023年を0.6%増、2024年を1.5%増とした。
FRB議長を務めたイエレン財務長官を主導とした見通しとすれば、FRBの利上げ水準やインフレ率については現在の市場予想よりも低く落ち着く一方で、成長率は低い見通しという印象だった。米長期債利回りは予算教書発表後に低下幅を拡大した。
【黒田総裁体制で最後の日銀金融政策決定会合、夜には米雇用統計】
日銀は3月10日昼頃に金融政策を発表するが、4月8日に任期満了となる黒田総裁としては最後の金融政策決定会合となる。昨年12月会合で長期金利ゼロ%誘導のための許容変動幅上限を従来の0.25%から0.50%へ引き上げたことが事実上の利上げと受け止められて円高が勢い付いたが、1月の前回会合では金融緩和政策の維持を強調して共通担保資金供給オペの拡充による長期金利抑制姿勢を強めたことでドル円の上昇再開へ向けたきっかけとなった。
既に植田新総裁体制が出来上がり、今後は「異次元」金融緩和に対する評価や修正が検討されてゆき、夏以降には「異次元」からの脱却を目指す動きも明確になってゆくのではないかと思われ、退任前の今会合では新たな追加修正等はないと思われるが、本邦10年債利回りは度々許容上限の0.50%を超えて債券市場の機能不全が顕著となっていることもあるため、植田体制へのつなぎとして何等かの追加修正やYCC(長短金利操作)に関する若干の修正などの可能性も多少あると注意したい。
3月10日夜には2月の米雇用統計の発表がある。市場の事前予想では非農業部門就業者数は前月比20.5万
人増と見込まれ、1月の51.7万人増ほどにはならないとしても堅調な数字となるのではないかとみられている。
3月8日に発表されたADP民間の非農業部門就業者数は24.2万人増で1月の11.9万人増から倍増している。
雇用統計が就業者数や平均時給の伸びにおいて予想を大幅に下回る場合はサプライズ的なドル安となる可能性もあるだろうが、予想通りならドル高へ進み、予想を大幅に超える場合はドル全面高が勢いを回復することも考えられる。
【米2年債利回りは急低下、NYダウは3日続落】
3月9日の米長期債利回りは総じて大幅低下した。
利上げに敏感な2年債利回りはパウエル議長発言をきっかけとして3月7日に前日比0.12%上昇で5.01%をつけて、8日は0.07%上昇の5.08%へと続伸して2007年以来16年ぶり高水準に達したが、米雇用統計を控えて急上昇に対する修正から9日は前日比0.21%低下の4.87%となった。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.09%低下の3.91%、30年債利回りも0.05%低下の3.85%と下げた。
一方で、NYダウは仮想通貨関連の廃業報道による関連株の急落と新規失業保険申請件数や予算教書の低成長見通しを見て前日比543.54ドル安と大幅下落し、一時は下げ幅が600ドルを超えて3営業日続落となった。長期債利回り低下にかかわらずFRBの利上げ長期化への懸念と景気減速感が勝る状況と思われる。ナスダック総合指数も237.65ポイント安と反落した。
米地銀SVBファイナンシャル・グループ関連のシルバーゲート・キャピタルが仮想通貨関連業者を顧客とする傘下行を自主廃業すると報じられSVB株とシルバーゲート株が暴落したことも金融市場全般に不安をもたらしたようだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は3月8日午後高値137.91円からの調整安が続いている。安値形成期は13日にかけて想定されるので本日の日銀金融政策決定会合と夜の米雇用統計から上昇再開となる可能性があるが、それらを弱気で通過する場合には週明けへの一段安もあり得るところだ。136.70円超えを強気転換注意とし、137円超えからは上昇再開に入り3月8日高値試しへ向かい、高値更新からは139円台を目指してゆく流れと考えるが、米雇用統計から下落の場合は135円前後を試してゆく流れと考える。
60分足の一目均衡表では3月9日夕刻に遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落したが、その後も両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、遅行スパン好転からは上昇再開の可能性を優先して高値試し優先とし、先行スパンを上抜き返すところからは上昇が勢い付く可能性があると考える。
60分足の相対力指数は3月9日夜の下落時に30ポイントへ低下した後はやや持ち直しているので、55ポイント超えからは上昇再開の可能性を優先して60ポイント台への上昇を想定するが、再び40ポイントを割り込む場合は20ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、135.94円を下値支持線、136.70円を上値抵抗線とする。
(2)136.70円以下での推移中は一段安余地ありとし、135.94円割れからは135円台序盤への下落を想定する。日銀政策や米雇用統計等から急落商状の場合は134円台後半へ下値目途を引き下げ、週明け午前にかけて安値試しを続けやすいとみる。
(3)136.70円手前は戻り売りも出やすいとみるが、136.70円超えからは上向きとし、137.00円超えからは上昇再開により3月8日高値137.91円超えを目指す上昇期に入ると考える。137円を超えた後も136.70円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
3/1(金)
昼 頃 (日) 日銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
15:30 (日) 黒田日銀総裁、定例記者会見
16:00 (独) 2月 消費者物価指数(CPI)改定値 前月比 (速報 0.8%、予想 0.8%)
16:00 (独) 2月 消費者物価指数(CPI)改定値 前年同月比 (速報 8.7%、予想 8.7%)
16:00 (英) 1月 月次GDP 前月比 (12月 -0.5%、予想 0.1%)
16:00 (英) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 0.3%、予想 -0.1%)
16:00 (英) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 -4.0%、予想 -4.0%)
16:00 (英) 1月 貿易収支・物品 (12月 -192.71億ポンド、予想 -177.50億ポンド)
16:00 (英) 1月 貿易収支・全体 (12月 -71.50億ポンド、予想 -71.00億ポンド)
22:30 (米) 2月 非農業部門就業者数 前月比 (1月 51.7万人、予想 20.5万人)
22:30 (米) 2月 失業率 (1月 3.4%、予想 3.4%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前月比 (1月 0.3%、予想 0.3%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前年同月比 (1月 4.4%、予想 4.7%)
28:00 (米) 2月 月次財政収支 (1月 -388億ドル、予想 -2560億ドル)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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