ドル円見通し FRB議長のタカ派証言でドル全面高、ドル円は年初来高値を更新(23/3/8)

ドル全面高となる中で3月8日早朝には137.19円へ上昇、3月2日夜高値137.09円を超えて年初来高値を更新した。

ドル円見通し FRB議長のタカ派証言でドル全面高、ドル円は年初来高値を更新(23/3/8)

ドル円見通し FRB議長のタカ派証言でドル全面高、ドル円は年初来高値を更新

〇ドル円、FRB議長のタカ派証言からドル全面高となり、3/8早朝に137.19へ上昇、年初来高値を更新
〇パウエルFRB議長の半期議会証言は市場予想以上にタカ派的な発言となり、サプライズ感もたらす
〇米2年債利回りは急伸し5%を超え2007年7月以来の高水準、利上げの長期化懸念しNYダウは大幅下落
〇137円以上での推移中は上昇継続とし、137.50超えからは138円を目指す上昇を想定する
〇136.75割れからは、136.50前後への下落を想定する

【概況】

ドル円は3月7日深夜のパウエルFRB議長による半期に一度の上院議会証言におけるタカ派姿勢からドル全面高となる中で3月8日早朝には137.19円へ上昇、3月2日夜高値137.09円を超えて年初来高値を更新した。9日午前もさらに高値を切り上げている。
2月3日の1月米雇用統計、2月14日の1月米CPI、2月24日の米PCEデフレーターとインフレ市場等が軒並み市場予想を上回ったことでドル高が進行してきた。2月28日以降は欧州の長期債利回り上昇によりユーロ等が戻してドル高に一服感が出ていたため、ドル円は3月2日夜に137.09円をつけて2月28日夜高値136.93円をわずかに超えたものの3月6日には135.36円へ下落するなど大幅高が一服した状況で136円を挟んだ持ち合いの様相となっていた。パウエル議長証言をきっかけに米2年債利回りが5%超へ急伸したため、ドル高が再び勢い付き、利上げの長期化を懸念してNYダウが大幅下落、ドル高株安を嫌って原油やゴールドが下げる中でドル円は年初来高値を更新して2月28日以降の高値圏持ち合いから上放れ始めた印象だ。

【パウエルFRB議長の半期議会証言は予想よりもタカ派】

パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、上院銀行委員会における証言で「最近発表された堅調な経済指標を受けて金利を従来の想定以上に引き上げる必要がある公算が大きく、今後入手される情報全体がインフレ抑制に向け一段の厳しい措置が必要であることを示唆すれば、より大幅な措置を講じる用意がある」と表明した。また「物価安定の責務から程遠いところにある」とし、「金融引き締めが行き過ぎとの兆候はない」、「利上げペースを加速させる用意がある」などと市場予想以上にタカ派的な発言を行った。特に「大幅な措置=大幅利上げ」に言及したことはサプライズ感をもたらした。

FRBは昨年3月のFOMCで0.25%利上げ、5月に0.50%利上げ、その後の4会合連続で0.75%利上げを実施してきたが、12月会合では0.50%利上げとし、今年1月31-2月1日の前回会合では0.25%利上げへと減速してきた。しかし最近の米CPI、PPI、PCEデフレーターは市場予想を上回る高止まりないしは上昇再開気配を示す数字となっており、市場は次回FOMCでは0.50%利上げの可能性もあるのではないかとの懸念を強めてきた。今回の議長発言により、金利先物市場における0.50%利上げの予想確率は50%を超えたようだ。

今週末の米2月雇用統計では非農業部門就業者数が20.3万人増と予想されており、1月の51.7万人増という急増程ではないとしても堅調な増加が見込まれ、インフレ指標の平均時給前年比についても1月の4.4%上昇から4.7%上昇へと伸びが加速すると予想されている。
3月8日夜には前哨戦となるADP民間雇用者数の発表があるが、増加数が予想の20万人増を上回る場合はドル高が勢いを増す可能性もあると思われる。また3月8日24時からは下院における議長証言もあるため、上院証言に対するドル高反応を踏まえてややトーンダウンするのか市場反応を当然としてタカ派姿勢を強調するものになるのか注目される。

【米2年債利回り5%超、2007年7月以来の高水準に】

パウエル米FRB議長の議会証言を受けて3月7日の米2年債利回りは前日比0.12%上昇の5.01%となり、2007年7月以来15年8か月振りの高水準に達し、8日午前には5.02%を超えて続伸している。
FRBによる利上げペースが再加速し、利上げピーク水準が切り上がり、利上げ状態の継続期間も長期化すると受け止めての反応だが、2年債が売られて利回りが急上昇する一方で年限の長い10年債や30年債が買われる裁定が働き、長期金利指標の10年債利回りは0.01%上昇の3.97%にとどまり、30年債利回りは0.03%低下の3.87%となった。ただし10年債利回りは3月6日に一時3.90%まで低下したところから持ち直しており7日も3.93%まで再び低下したところから戻している。30年債利回りも3月6日に一時3.83%まで低下したところから持ち直した状況の範囲にある。

一方でNYダウは前日比574.98ドル安と大幅下落した。3月1日から6日まで4連騰していたものの2年債と10年債の逆イールドが拡大したことを嫌気して一時は600ドルを超える下落幅となった。ナスダック総合指数も145.41ポイント安と下落した。
米2年債と10年債の利回り格差は105.3ベーシス・ポイントに拡大したが1981年8月以来の大きさとなり、逆イールドによる景気後退懸念が強まった。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は3月6日昼過ぎ安値135.36円に対して7日夕安値は135.54円にとどまって底割れを回避して一段高へ進んでいる。3月2日夜高値137.09円を超えて年初来高値を更新するとともに2月2日以降の136円を中心とした高値圏持ち合いから上放れに入っているため、今週末の米雇用統計発表へ向けて高値追及を続けやすい局面と思われる。136.50円を割り込む場合はいったん仕切り直しの下落とみるが、大きな情勢変化が無ければ136円前後では押し目買いされて次の上昇期に備える展開と考える。

60分足の一目均衡表では3月7日深夜の急伸により遅行スパンが好転し、先行スパンを上抜いたが、その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中の高値試し優先とする。26本基準線前後は押し目買いされやすいところとし、26本基準線割れから続落の場合は遅行スパンの悪化を警戒する。

60分足の相対力指数は3月7日夕刻の40ポイント割れから80ポイント到達まで急伸している。調整安が入っても60ポイント台後半以上での推移なら一段高へ進む可能性ありとみる。65ポイント割れからは50ポイント台序盤への低下を想定するがそこは押し目買いされやすい水準とみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、136.75円を下値支持線、137.50円を上値抵抗線とする。
(2)137円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは上昇継続とし、137.50円超えからは138円を目指す上昇を想定する。138円手前では売りも出やすいとみるが、137円以上での推移なら9日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)136.75円割れからは136.50円前後への下落を想定する。136.50円以下は買い拾われやすいとみるが136.75円以下での推移が続く場合は9日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

3/8(水)
休場 ロシア
14:00 (日) 1月 景気先行指数CI・速報値 (12月 97.2、予想 96.9)
14:00 (日) 1月 景気一致指数CI・速報値 (12月 99.1、予想 96.4)
14:00 (日) 2月 景気ウオッチャー・現状判断 (1月 48.5、予想 49.0)
14:00 (日) 2月 景気ウオッチャー・先行判断 (1月 49.3、予想 49.7)

16:00 (独) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 -3.1%、予想 1.4%)
16:00 (独) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 -3.9%、予想 -3.7%)
16:00 (独) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -5.3%、予想 2.8%)
16:00 (独) 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 -6.6%、予想 -5.0%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP確定値 前期比 (改定値 0.1%、予想 0.0%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP確定値 前年同期比 (改定値 1.9%、予想 1.9%)
19:00 (欧) ラガルド欧州中銀(ECB)総裁、講演

22:15 (米) 2月 ADP非農業部門民間就業者数 前月比 (1月 10.6万人、予想 20.0万人)
22:30 (米) 1月 貿易収支 (12月 -674億ドル、予想 -689億ドル)
24:00 (米) パウエル米FRB議長、下院金融委員会半期議会証言
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省10年債入札
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

3/9(木)
日銀・金融政策決定会合初日
バイデン米大統領、予算教書
08:50 (日) 2月 マネーストックM2 前年同月比 (1月 2.7%)
08:50 (日) 10-12月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.2%、予想 0.2%)
08:50 (日) 10-12月期 GDP改定値 年率換算 (速報 0.6%、予想 0.8%)
10:30 (中) 2月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (1月 2.1%、予想 1.9%)
10:30 (中) 2月 生産者物価指数(PPI) 前年同月比 (1月 -0.8%、予想 -1.4%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 19.0万件、予想 19.5万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 165.5万人、予想 166.5万人)
24:00 (米) バーFRB副議長、暗号通貨関連の講演
27:00 (米) 財務省30年債入札



注:ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る