ドル円見通し 年初来高値更新後は調整安、日銀新総裁らの所信表明待ち
〇ドル円、2/23夜135.36をつけ年初来高値更新するも、135円台維持できず2/24未明134円台前半へ下落
〇本日日銀新総裁らの国会所信表明と質疑行われる、新体制での金融緩和政策姿勢を見定めたいところ
〇昨日早朝FOMC議事要旨発表、一部で0.5%利上げの主張あり
〇昨日発表の米GDP改定値は下方修正、PCEデフレーター改定値は上方修正、失業保険関連は良好な結果
〇米長期債利回りは低下傾向、NYダウは続落からの反発、ナスダックは続伸
〇135円以下での推移中は、134円前後試しとする
〇135円超えからは2/23夜高値135.36試しとし、高値更新からは136円台を目指す上昇を想定する
【概況】
ドル円は2月23日夜高値で135.36円をつけて1月16日安値127.21円以降の高値を更新したが、その後は135円台を維持できずに24日未明には134円台前半へ下げた。
2月14日の米CPI、15日の米小売売上高等、16日の米PPIが予想を上回ったことによるドル高で2月17日夜に135.10円に到達して年初来高値を更新、2月21日深夜に135.22円へ高値を切り上げ、22日夜に134.35円まで調整安を入れてから23日早朝のFOMC議事録要旨公開後に再び買われ、23日夜の米GDP改定値及び週間新規失業保険申請件数の発表等からさらに高値を切り上げてきた。
米インフレ指標が高止まりの様相となり、FRBによる利上げ回数が2月2日早朝の前回FOMCにおけるパウエル議長会見で示されたあと2回から3回へと増える可能性や、利上げピーク水準が5%台前半へ切り上がる可能性及び利上げ状態の継続期間が2023年末までには終了しないとの見方が強まってきたことがドル高円安の背景であるが、ある程度は材料として織り込まれてきている。
本日は日銀新総裁と副総裁の国会所信表明と質疑があるため、新体制での金融緩和政策姿勢を見定めたいところであり、夜には米1月PCEデフレーターの発表もあるため、それらの内容次第では乱高下となることもあり得ると注意したい。
【日銀新総裁らの所信表明】
2月24日午前に衆院の議院運営委員会で日銀新総裁候補の元日銀審議委員で経済学者の植田和男氏による所信表明と質疑が行われる。午後には副総裁候補の氷見野良三前金融庁長官、内田真一日銀理事の所信表明と質疑も行われる。
黒田現総裁による「異次元」金融緩和政策が行き詰まりを見せる中、新総裁体制で「異次元」からの出口戦略がどの程度進んでゆくのか、大胆な政策転換姿勢が示されるのか、現状を維持しつつ緩やかな調整にとどまるのか注目される。また2%の物価上昇目標を明記した政府・日銀の共同声明に対する政府側からの修正の動きに対して新総裁らがどのように考えているのかも注目される。市場が金融政策修正への動きを強く意識すれば円高に、緩い修正姿勢とみれば円安に反応しやすいと思われる。
現在の副総裁任期は3月19日まで、総裁任期は4月8日までのため、本日の審議を受けて3月19日までに日銀人事案が両院の本会議で可決されれば新体制が決まる。
【FOMC議事要旨、一部で0.5%利上げの主張あり】
2月23日早朝には1月31-2月1日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が公開された。それによれば「ほぼ全ての参加者」が0.25%利上げへのペースダウンに賛同したが、「インフレ率が明確に2%に回帰する道筋がつくまでは金利を高水準に維持する必要がある」との姿勢が示されていた。
参加者は「インフレは受け入れがたいほど高い」とし、全員が「利上げ継続は適切」とし、一部には0.50%利上げを主張した」とされた。またこれまでの利上げにより「インフレ圧力が緩和し始めた」としたものの「労働需給が極めて逼迫しており賃金と物価には上振れ圧力が続いている」とし、「賃金上昇に連動しやすいサービス分野の物価上昇には鈍化の兆候がほぼ見られない」との懸念を示した。
議事録に対する市場の反応がさほど大きくはなかったのは、当該FOMC後の2月3日夜に発表された米1月雇用統計、2月14日のCPIと16日のPPIの上昇率が予想を大きく上回ったことにより状況も変化しているためと思われる。
【米GDP改定値は下方修正】
2月23日に発表された2022年10-12月期GDP改定値は年率換算の前期比で2.7%増となり、2期連続のプラス成長となっているものの速報値の2.9%増から下方修正された。GDPの約7割を占める個人消費は1.4%増で速報の2.1%増から下方修正されたことが響いたが、設備投資は速報の0.7%増から3.3%増へ上方修正された。落ち込みの激しい住宅投資は速報の26.7%減から25.9%減へ若干上方修正されたが住宅ローン金利の上昇により大きく落ち込んでいる。
10-12月期のPCEデフレーター改定値は3.7%上昇で速報の3.2%から上方修正、コア指数では4.3%で速報の3.9%から上方修正された。24日夜の米1月PCEデフレーターの発表が注目される。
米労働省による新規失業保険申請は2月18日までの週間で前週比3000件減の19万2000件となり、市場予想の20万件を下回り、失業保険受給者総数は2月11日までの週間で165万4000人となり、前週から3万7000人減となり、市場予想の170万人を下回った。
【米長期債利回りは低下】
米長期債利回りは2日連続で低下した。指標の10年債利回りは2月23日に前日比0.04%低下の3.88%となったが、2月22日の0.04%低下からの続落となった。2月22日には一時3.97%をつけ、23日も3.96%をつける場面もあったが、当面の利上げ回数増加や利上げ期間長期化等を織り込んで2月2日安値3.33%以降の上昇一服の様相だ。
30年債利回りは2月23日に前日比0.03%低下の3.89%となり、2月22日の0.05%低下から続落した。
2年債利回りは2月22日に0.03%低下の4.70%となり、23日は前日比変わらずに終わったものの一時は4.75%を付けて2月2日の4.04%以降の最高値を更新しており高止まりの様相だ。
一方でNYダウは2月22日に前日比84.50ドル安と下げて2月21日の前日比697.10ドル安からの続落となったが、23日は一時200ドルを超える下落となったものの終盤の持ち直しで108.82ドル高と反発した。ナスダック総合指数は83.33ポイント高と上昇、22日の14.77ポイント高からの続伸となったが、2月2日以降の下落基調の範囲にとどまっている。利上げ長期化が株式市場には重石となっている。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は2月17日夜高値135.10円からの調整安で2月20日夜に133.91円まで下げたところを起点として上昇期に入ったが、2月23日夜高値135.36円で目先のピークをつけ、日銀新総裁らの所信表明を控えて調整安に入っている。2月23日夜高値を超えないうちは27日深夜にかけての下落余地ありとするが、23日夜高値を超えるところからは新たな上昇期に入るとみて3月2日夜にかけての上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では2月23日夜高値からの反落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落しているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開からの一段高を想定して遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は2月23日夜に70ポイント台をつけてから40ポイント割れへ反落しているため、50ポイント以下での推移中は一段安警戒とする。強気転換は30ポイントを割り込んだ後の50ポイント超えか、30ポイント台を維持した上で55ポイントを超えるところからとし、強気転換の条件がそろわないうちは安値試しを続けやすいとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、134.00円を下値支持線、135.00円を上値抵抗線とする。
(2)135円以下での推移中は134円前後試しとする。134円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、日銀新総裁所信等で急落商状の場合は133円前後へ下値目途を引き下げる。134.50円以下での推移か、直前安値から1円を超える反騰が見られない場合は週明けも安値試しを続けやすいとみるが、24日夜の米PCEデフレーター発表から反騰入りする可能性もあると注意する。
(3)135円超えからは2月23日夜高値135.36円試しとし、高値更新からは136円台を目指す上昇を想定する。136円以上は反落注意とするが、135円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
2/24(金)
09:30 (日) 日銀総裁候補植田氏への所信聴取と質疑(衆院議院運営委員会)
13:00 (日) 日銀副総裁候補内田、氷見野両氏への所信聴取と質疑(衆院議院運営委員会)
16:00 (独) 10-12月期 GDP・改定値 前期比 (速報 -0.2%、予想 -0.2%)
16:00 (独) 10-12月期 GDP・改定値 前年同期比 (速報 0.5%、予想 0.5%)
16:00 (独) 3月 GFK消費者信頼感 (2月 -33.9、予想 -30.4)
22:30 (米) 1月 個人所得 前月比 (12月 0.2%、予想 1.0%)
22:30 (米) 1月 個人消費支出(PCE) 前月比 (12月 -0.2%、予想 1.3%)
22:30 (米) 1月 PCEデフレーター 前年同月比 (12月 5.0%、予想 5.0%)
22:30 (米) 1月 PCEコア・デフレーター 前月比 (12月 0.3%、予想 0.4%)
22:30 (米) 1月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (12月 4.4%、予想 4.3%)
24:00 (米) 1月 新築住宅販売件数・年率換算 (12月 61.6万件、予想 62.0万件)
24:00 (米) 1月 新築住宅販売件数 前月比 (12月 2.3%、予想 0.7%)
24:00 (米) 2月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 66.4、予想 66.4)
24:15 (米) ジェファーソンFRB理事、講演
25:30 (英) テンレイロ英中銀委員、講演
27:30 (米) コリンズ・ボストン連銀総裁、講演
27:30 (米) ウォラーFRB理事、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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