ドル円見通し 日銀人事巡る思惑交錯、深夜からは米長期債利回り反騰で戻す
〇ドル円、ややレンジを拡張しているものの131円を中心とした騰落での持ち合い状況
〇政府の日銀総裁後任人事案、2/14に国会に提示する方向で調整と複数TV報じ、市場心理落ち着かず
〇米長期債利回りは総じて上昇、ダウとナスダックは続落
〇131円以上での推移中は上昇余地ありとし、131.64超えからは132円前後への上昇を想定
〇130.80割れから下げ再開警戒し2/9夜安値130.33試し、底割れからは130.00ー129.50へ下落を想定
【概況】
ドル円は2月8日未明安値130.46円からの持ち直しを試し、9日午前に131.82円へ上昇、いったん下げかけた午後には日銀総裁人事を巡る自民党議員発言をきっかけに乱高下、一時的に131.72円へつけてから再下落するなど日銀総裁人事を気にした展開となった。
2月9日夜にかけては米長期債利回りの低下や米新規失業保険申請件数が4週ぶりに悪化したこと等からドル安優勢となったためにドル円は130.33円へ下落、2月8日未明安値を割り込んだが、米30年債入札が不調だったことから米長期債利回りが急反発したために10日早朝には131.64円まで切り返した。
米労働省による新規失業保険申請は2月4日までの週間で前週比1万3000件増の19万6000件となり、市場予想の19万件を超えて4週ぶりの悪化、失業保険受給者総数も1月28日までの週間で168万8000人となり、前週比3万8000人増で市場予想の165万8000人を上回った。
リッチモンド連銀のバーキン総裁は9日に公開されたインタビューで「我々の足が明らかにブレーキを踏んでいると確信している」と述べて利上げペース減速を支持し、「より慎重な運転が妥当だ」と述べてややハト派的な姿勢だった。
【日銀新総裁人事案は2月14日に国会提示の見込み】
2月9日午後3時前に自民党議員の話として「日銀総裁人事でアベノミクス転換示唆なら調整難航」、「山口元副総裁では党内がまとまらない」等と一部メディアが報じたことで若干の乱高下が見られた。夜には複数TVが政府の日銀総裁後任人事案が2月14日に国会に提示する方向で調整に入ったと報じた。
2月6日朝には雨宮現副総裁を新総裁に起用との観測報道があり2月3日夜の米雇用統計後に128円台序盤から131円台序盤へ上昇していたところからさらに132.56円まで一段高し、夜には全般のドル高に加えて来週の人事案国会提出見込み報道で続伸となり、7日未明には132.90円まで高値を切り上げた。その後はやや過剰反応だったとして修正安に入ったが、来週には新総裁候補が確定する見込みとなったことで市場心理も落ち着かなくなっているようだ。
現時点での有力候補としては雨宮現日銀副総裁、大和総研理事長の中曾氏、山口日興リサーチセンター理事長らの名前が挙がっている。山口氏は黒田総裁前の白川総裁時代の副総裁であり、起用されれば政府によるアベノミクスからの脱却と呼応した日銀異次元金融緩和政策から出口へ向かう流れが勢い付くと受け止められるが、自民党最大派閥の安倍派の信認を得られずに政局が混乱する可能性もあるとされる。自民党議員からのリーク報道により山口氏起用の可能性が後退したとすれば、日銀の出口戦略も緩やかなものに落ち着く可能性があるという見方もできる。
2月14日には米1月CPIの発表もあり、日銀総裁人事と共に春へ向けた方向付けとなるタイミングかもしれない。
【米10年債利回りは終盤に反騰、ダウとナスダックは続落】
2月9日の米長期債利回りは総じて上昇した。長期金利指標の10年債利回りは前日比0.05%上昇の3.66%となった。当初は米新規失業保険申請件数の悪化やリッチモンド連銀総裁の利上げへの慎重姿勢等から3.58%へ低下したことで夜にかけてのドル安要因となっていたが、米30年債入札不調から急反発となり一時は3.68%をつけた。30年債利回りは前日比0.06%上昇の3.73%で3.63%まで低下していたところからの急反発となった。2年債利回りは前日比0.06%上昇の4.49%で、4.41%まで低下していたところからの反騰となった。
米財務相は210億ドルの30年債入札を実施したが、最高落札利回りは3.686%で入札前水準を上回り応札倍率は2.25倍で昨年12月以来の低水準だった。今週は7日の3年債400億ドルの入札が低調だったが、8日の10年債350億ドル入札は好調だった。
2月3日の米雇用統計が予想を超える就業者増加と失業率改善だったために米FRBの利上げ継続期間に対する短縮期待が後退したとして米長期債利回りは総じて反騰入りしたが今週も高止まりの様相だ。
一方でNYダウは前日比249.13ドル安と下落して8日の207.68ドル安からの続落となり、ナスダック総合指数は120.94ポイント安で2月8日から3日続落となった。利上げペース減速と利上げ状態継続期間の短縮期待が年初からの株高を支えてきたが、ここにきて楽観がやや後退して上昇一服感が出ている。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は2月8日未明安値から戻していたものの9日夜に8日未明安値をいったん割り込み、その後の反騰で8日未明安値以降の高値を更新する乱高下となった。ややレンジを拡張しているものの131円を中心とした騰落での持ち合い状況と思われる。
2月10日早朝高値131.64円を超える場合は9日夜安値を起点とした上昇期として14日未明にかけての上昇を想定するが、131円割れから続落に入る場合は下向きとして9日夜安値試しとし、底割れの場合は16日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では2月9日夜への下落とその後の反騰により遅行スパンは実線と交錯し、9日夜への下落時には先行スパンからはいったん転落したがその後の反騰で先行スパンへ潜り込んでいる。方向感に欠ける展開だが、先行スパンを上回るところでは遅行スパン好転中の高値試し優先とし、先行スパンから転落している場合は遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は2月9日夜の下落時に30ポイントを割り込んでから60ポイント台到達まで戻しているので、45ポイント以上での推移中は70ポイント台を目指す上昇余地ありとするが、45ポイント割れからは再び30ポイント以下を目指す下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、130.80円を下値支持線、131.64円を上値抵抗線とする。
(2)131円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとし、131.64円超えからは132円前後への上昇を想定する。132円前後では戻り売りにつかまりやすいと注意するが、131.50円以上を維持しての推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)130.80円割れからは下げ再開を警戒して2月9日夜安値130.33円試しとし、底割れからは129円台後半(130.00円から129.50円)への下落を想定する。129.70円以下は反騰注意とするが、130.80円を下回っての推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
2/10(金)
10:30 (中) 1月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (12月 1.8%、予想 2.2%)
10:30 (中) 1月 生産者物価指数(PPI) 前年同月比 (12月 -0.7%、予想 -0.5%)
16:00 (英) 10-12月期 GDP・速報値 前期比 (7-9月 -0.3%、予想 0.0%)
16:00 (英) 10-12月期 GDP・速報値 前年同期比 (7-9月 1.9%、予想 0.4%)
16:00 (英) 12月 月次GDP 前月比 (11月 0.1%、予想 -0.3%)
16:00 (英) 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 -0.2%、予想 -0.2%)
16:00 (英) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 -5.1%、予想 -5.2%)
16:00 (英) 12月 貿易収支・物品 (11月 -156.23億ポンド、予想 -164.00億ポンド)
16:00 (英) 12月 貿易収支・全体 (11月 -18.02億ポンド、予想 -28.00億ポンド)
23:00 (英) ピル英中銀理事、講演
24:00 (米) 2月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (1月 64.9、予想 65.0)
26:30 (米) FRBウォラー理事、暗号資産関連講演
28:00 (米) 1月 月次財政収支 (12月 -850億ドル、予想 630億ドル)
30:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、暗号資産関連講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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